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第3部 アニメ・特撮総合史

2000年代少年サンデーアニメの低年齢路線

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週刊少年誌原作アニメも2000年代~10年代初頭にかけても数多くのヒット作を出してきた。
その中で今回フォーカスするのは「週刊少年サンデー」原作アニメ。
2000年代のサンデー原作アニメにはジャンプやマガジンに比べて低年齢層を意識した作品が目立つ。
その大きな転機となったのが「金色のガッシュベル!!」のヒットだろう。
2001年より連載開始した「金色のガッシュ!!」は2003年に「金色のガッシュベル!!」のタイトルでアニメ化。アニメ開始と同時期にコロコロコミックで4コマ版の連載を行ったり、同誌や学年誌などにも記事を掲載し、カードゲームをはじめとする玩具・グッズ展開を積極的に行うなどサンデー読者層よりも下の世代にもアピール。当時は既に小学校高学年~中高生以上の世代が週刊少年誌の中心的読者層となっていたがそれらよりも低年齢層に向けてアピールをしたことで幅広いファンを獲得することに成功。結果としてアニメは3年にわたるロングランとなり、映画も2本製作されるなど当時のサンデー、ひいては小学館のドル箱コンテンツとなった。
そしてこの成功を機に、サンデーはメディアミックスにおいて本来の中心読者層より下の低年齢層を狙った策に出る。今回はそんな時期の作品から3作を紹介しよう。

まずは2005年にアニメ化された「メルヘヴン」。
原作のタイトルは「MAR(メル)」で連載開始は2003年。アニメ化前からアンケート等で「サンデーで最もアニメ化が望まれた作品」と言われたほどの人気を誇り、単行本はアニメ開始3か月前に発売した8巻の時点ですでに350万部。当時のサンデー作品の中ではサンデー不動の4番である「名探偵コナン」に次ぐ2番目の売り上げであり、同作やガッシュとともにサンデーの看板となっていた。
本作は「ARM(アーム)」という特殊能力を秘めたアクセサリーを用いて戦うファンタジーバトル作品。原作者の安西信行先生のかねてからの趣味であるシルバーアクセサリーをファンタジーの世界に落とし込んだかたちだ。
アクセサリーとファンタジーの親和性は高い。古くは「指輪物語」などアクセサリーがキーアイテムとして登場するファンタジーは歴史上多数作られてきた。
アームは指輪からブレスレット、ネックレスなど様々な形状が存在。能力も武器に変形したり、氷などの属性系の攻撃や身体強化を行ったり、魔獣や魔人(その中には神話のモンスターや童話のキャラクターをモチーフとしたものも多い)を召喚したりなど様々。
アクセサリー類というのは古くからの子供たちのあこがれのアイテムで度々漫画やアニメでもキーアイテムとして描かれてきた。だが「アクセサリー=おしゃれ=女児向け」という先入観からかそれらを取り入れた多くは女児向けの作品であり、男児向け・少年向け作品ではあまり取り上げられてこなかった。戦隊やウルトラの一部作品で指輪が変身アイテムとして使われたぐらいだろうか。何もアクセサリーに性別など関係ないのに。意外に男児向けに落とし込まれた作品は少なかったのだ。
だがメルヘヴンはそれらを「カッコいい武器・魔法のアイテム」として表現することにより少年層に向けてアクセサリーの魅力をアピールすることに成功した。
関連商品はカードゲームをメインとして展開し、その使用アイテムとしてアームが立体化された。立体化にあたって原作やアニメでは非指輪型のアームも指輪に変更されている。カードゲームの発売元であるコナミの早川英樹氏(後に同社社長)の「商品化するならこれしかない」という判断に基づくものであった。確かに指輪は子供たちにとっても親がつけている結婚指輪など最も目にする機会も多くて身近で憧れのアクセサリーなのは間違いない。それにコレクションアイテムと考えた場合も場所をとらないし、何しろカードゲームに使うアイテムとして考えればブレスレットやネックレスではでかすぎる。ナイス判断だったと言えよう。

続いて2004年にアニメ化された「焼きたて!!ジャぱん」。パン作りをテーマとし、ぶっ飛んだリアクションと原作最終回の「ダルシム」があまりにも有名な作品。
アニメはゴールデンで放送されたといえ、作風を考えると低年齢向けに入るかは微妙だが、僕はこのアニメをある意味広義の「ホビーアニメ」に入るととらえているのでここで取り上げることとする。
なぜパン作りのアニメがホビーアニメなのか?それは戦隊やライダーがある種玩具を売るための番組であるように、この作品がある種「パン」を売るためのアニメだったからである。
アニメ放送当時、ヤマザキパンから本作に登場するパンの一部が商品化された。アニメ開始と同時に販売が開始され、総売り上げは放送開始4か月の時点で600万個を超える番組発の食品としては異例のヒット商品となった。
「漫画やアニメに出てくる食べ物を食べたい」これは誰もが一度は思ったことがあるだろう。これ以前にも作品の食べ物を商品化した作品はあったが、本作は何しろ料理(パン作り)ものの作品かつ主人公が「ジャぱん(世界に誇れる日本のパンの意)」の完成を追求するというストーリー上、次から次へと個性的なパンが登場する。ヤマザキはそれらを次々に商品化していった。さらにそのいくつかはアニメでの登場と同日の発売であった。
アニメを見て「このパン美味しそう、食べてみたい」と思ったら「商品化するんだって!やった!」…視聴者の立場から考えてアニメのパンをタイムリーに食べられる。これほどうれしいことはないだろう。
商品化したパンをいくつか取り上げてみると、作中で主人公が初めて作ったパンである豆乳を使った「豆乳食パン」、竹炭の入った黒いクロワッサン、七味唐辛子でおなじみの麻の実を使った「大麻ジャぱん(大事なことなので2回言うが七味唐辛子に入ってる麻の実のことである。作中でもそのことはしっかり説明されてたし、商品化したときは「麻の実ベーグル」の名称であった)」、クッキー部分とパン生地を別々に焼き上げて間にクリームをサンドした「クッキーメロンパン(作中での名称は「メロン寿司パン」。さらに作中では登場しないチョコ味やイチゴ味も商品化された)」、さらには桃屋とのコラボで誕生した(原作・アニメ共に桃屋のCMでおなじみの三木のり平が登場し、原作のその回が乗った単行本とアニメでの当該回の放送時のタイトルが「焼きたてジャぱんですよ」に変更されるほどの力の入れよう)「ごはんですよトースト」などなど食材やフレーバー、調理方法がどれも個性的なものばかりが目立つ。
このユニークなラインナップは店頭で目をひいたことは間違いなし。原作やアニメを知らない人も店頭で見かけて「なんかこの変わったパン美味そう、買ってみるか」→「これアニメとのコラボなんだ。面白そうだから観てみるか」と「パンきっかけ」で作品に触れる機会となったであろう。
「原作から入った」「アニメから入った」だけでなく「パンから入った」という新たな入り口を作るといったところでもユニークな策略である。
原作やアニメのファンは作中で観て憧れたパンを食べられるし、原作やアニメを知らなくてもパンは当然楽しめる、そして作品に触れるきっかけとなる。それになんたってパンはおもちゃより低価格だから(おまけに当時なんて消費税5%の時代)次々にリピーターも現れる。焼きたてジャぱんは「パン」という「味わえるホビー」でアニメの新たな入り口を作った革命的作品であった。

最後に2006年にアニメが放送された「妖逆門(ばけぎゃもん)」。こちらはアニメと原作が同時に開始したメディアミックスを前提とした作品で、うしおととらの藤田和日郎先生(本作連載開始時点でまだギリギリからくりサーカスを連載中でもあった)が原案を担当した。
「逆日本」と呼ばれる日本にそっくりな世界を舞台に、妖怪たちによる「げえむ」に主人公が挑む物語だ。
妖怪がテーマということもあり、ゲームを上記のように「げえむ」と書き、その参加者をプレイヤーならぬ「ぷれい屋」と表現するなど横文字を和風変換した用語も特徴的。
さらに放送と並行して作中に登場するアイテムを模した玩具と連動させたカードゲームを展開。しかしカードといえばメルヘヴンやガッシュ(ちょうど本作と入れ替わる形でアニメ終了)とかぶってしまったためかあまり伸びずに1年で終了。低年齢層を狙ったとはいえ、タイアップ色の強い作風が(といっても原作とアニメは展開が大きく異なるが)本来のサンデー読者層に幼稚に写ってしまったか。
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