リョーマ的Y2K子供文化史考

一刀星リョーマ

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第3部 アニメ・特撮総合史

ディケイドTVシリーズ未完問題を考える。

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2009年8月30日、ディケイドは7カ月という短い戦いを終え、「W」にバトンを渡した…
しかしその結末は議論を呼んだ。
ディケイドがスーパーアポロガイストを倒した後に「ライダー大戦」が始まるのだが、その戦いの結末は描かれず、本放送時のラストにこの約4か月後に公開される映画「仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010」(この時点ではタイトル未公表)でその続きが描かれるとの告知が流れて終了したのだ(一応、TVシリーズ完結直前に公開した「オールライダー対大ショッカー」のラストで冬の映画の告知は事前に行っていたが)。
最終回で物語が完結せず、TVシリーズで続編作る予定ならまだしも、「続きは映画館で」的な宣伝行為ともとれるこの施策には当時かなりの批判が殺到し、BPO案件にまでなった。

この演出、個人的にはやり方が汚いところもあると思うが、やり方を間違えなければ決して悪いことではないと思う。そもそもTVシリーズの続きを映画で描くなんてディケイド以前から実写・アニメ問わずやっている手法だ。ディケイドの演出が問題になった後もTVシリーズの続きを劇場版で描くということは多くの作品でやっている。現に鬼滅の刃はそれで記録を打ち立てたのだから(鬼滅の場合はすでに短期間放送のアニメが主流になってたこと、原作ありのため区切りよくシーズンを終わらせたというのもあるが)。
そもそもディケイドはライダーを秋スタートにずらすための「つなぎ」でもあるのだからちゃんと後番組の「W」に視聴者をそのまま誘導できなければ意味がない。プロデューサーの白倉氏も「すっきりとした結末を提示したがためにそこで視聴をやめられてしまっては目的を果たせない」と話している。やり方はやや間違えた感も否めないが、ディケイドをすっきりと完結させて、それで満足した視聴者が翌週からWにチャンネルを合わせることもなく、12月に劇場に足を運ぶこともなければ本末転倒だ。

「最終回で物語が完結しない」という手法だが、何もこれはディケイドだけで取っているわけではない。
コロコロコミックではドラえもんやポケモンの映画公開時期に一時時期短期集中連載でコミカライズを毎年掲載していた時期がある。どちらも3カ月ほど連載をやって、映画公開直前に刊行される号で完結するが、雑誌掲載時は物語の結末は描かれずに最終ページに「続きは劇場で!」と言ったアオリ文が描かれて終わり、映画公開と同時に出される単行本にて描きおろしで結末が掲載される。連載開始前の予告では当然「物語は途中で終わります」とか「本誌では最後まで描きません」なんてことは一切言わない。だがこの形式は長年使われてきたが(大山時代の大長編ドラえもんでは結末まで掲載されていたこともあったが)、雑誌では未完に終わることには一切のクレームはなく、ネットが普及して以降も炎上することはなかった。そもそも番組単体が「商品」であるディケイドと違い、これらのコミカライズはそれ自体が映画の宣伝を目的としているという違いもあるが。
僕も子供の頃はこれらのコミカライズを雑誌で読んで毎年のように「まあそうなるわな、公開前の映画のオチを描けばみんな映画観に行かなくなるからしゃあないわな」と思いながら、尻切れトンボに終わった最後のページと「続きは劇場で」のアオリを眺めていた。

前のシリーズが終わった後は、視聴者をそのまま次の番組につなげるのはもちろん大前提だ。映画の公開を控えているのであれば、視聴者をそのまま劇場に呼び込むのも大前提だ。
だからディケイドでやったことはあながち間違いではない。だが中途半端に終わって「あとは劇場でね」になってしまったのが問題となった原因であったのだろう。
続きを映画でやるならやるで、TVシリーズはある程度の決着をつけて、映画につなげるべきだったのかもしれない。
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