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第3部 アニメ・特撮総合史
過去のモチーフの再生産~ハリケン・アバレンに見る戦隊の可能性~
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スーパー戦隊シリーズも21世紀に入るとシリーズを重ねたことにより過去に使用したモチーフの再使用がより多くみられるようになってきた。
しかしすでに使用したモチーフを使っても過去の同一モチーフの作品とは差別化を図り、まったく同じ作品にならないように工夫している。20世紀での例をあげれば高校生を主人公にし、妖精というファンタジー要素に中盤からはシリアス色もより強まっていくターボレンジャーに対して全体を通してギャグ色・ネタ性が強く、船体の中でも異色なシュールな作風となっているカーレンジャー。同じ車モチーフでもこれだけ180度違う作風を描いてきたのだ。
今回は過去に使用したモチーフを再使用した作品から2作品を分析し、戦隊の持つ作風の広さやアイデア力を分析していこう。
まずは2002年放送の「忍風戦隊ハリケンジャー」。カクレンジャー以来8年ぶり2回目の忍者戦隊だ。
カクレンジャーとの大きな違いのひとつが「流派」の存在。カクレンジャーのメンバーは高名な忍者の末裔ではあったが、「流派」という概念は存在しなかった。一方ハリケンジャーはライブマン以来となる3人スタートで3人は「疾風流」という流派の忍者。
さらに追加戦士であるゴウライジャーの2人はそのライバルである「迅雷流」の忍者。故に登場当初はハリケンジャーと対立するライバルポジションで、敵組織であるジャカンジャとも手を組んだ。
さらに6人目の戦士であるシュリケンジャーも「天空忍者」としてハリケンジャー・ゴウライジャーとはまた独立した存在である。ハリケンジャー・ゴウライジャー・シュリケンジャーで最終的には6人になるわけだが、ゴウライジャーもシュリケンジャーもそれぞれ本来別チーム扱いなので「ハリケンジャー」としては最後まで3人のままである。
3人スタートにしたのはキャラクター個々の描写に重点を置くためというのが大きな理由だが、追加戦士をオリジナルメンバーとは別チーム扱いにすることによってさらにその描写に深みを出すことに成功している。これらも「一度使用したモチーフを使っても新たな発明を取り入れることによって新たなヒーロー像を生み出す」というスタッフの
狙いがあったのだ。まさに的中といったところだろう。
続いて翌2003年放送の「爆竜戦隊アバレンジャー」。ジュウレンジャー以来11年ぶりの恐竜戦隊である。
ジュウレンジャーとの大きな違いのひとつと言えるのが「パートナーである爆竜の存在」。
ジュウレンジャーにおけるパートナーの守護獣は恐竜人類をつかさどる神という設定のため、「恐竜型メカ」といっても謙遜ないメカニカルなデザインの中にもどこか神々しさを感じさせる存在であったが、アバレンジャーの爆竜は人間的な知性を持つ生命体で、人間とコミュニケーションの取れる親しみやすい存在。金属製のボディをもちながらも、守護獣と比べてより元の生物に近いデザインも特徴的。このデザイン面にはこの11年の間の恐竜研究の進歩や世間における各恐竜のイメージの変化も影響している。
ジュウレンジャーのティラノザウルスは直立した姿勢のいわゆる「ゴジラ型」と言われる姿勢で立っている。当時の研究や世間一般のティラノのイメージはゴジラのような直立2足歩行と考えられていたからだ。例えば「映画ドラえもん のび太の恐竜(1980)」でも直立2足歩行のティラノが登場するなど長年「ティラノはゴジラみたいに歩いていた」が多くの人々の定説だったのだ。
しかしその後の研究の進歩や「ジュラシックパーク」のヒットにより背を曲げた姿勢の我々が現在イメージするティラノ像が浸透してきたことから、アバレンジャーのティラノは背を曲げた姿勢となった。名前も「ティラノ”サウルス”」と近年のイメージに合わせたものであった。
ストーリー面においては、4人目の戦士であるアバレブラックが1話の時点でいきなり登場するが、その時点では変身不能になり、7話で復活。5人目の戦士アバレキラーは当初アバレンジャーと敵対する存在として描かれるなど追加戦士の書き方にも新たな要素が取り入れられている。
ギャグを取り入れながらも、シリアスも織り交ぜた文字通り「アバレた作風」がまた新たなヒーロー像を生み出したのだ。
しかしすでに使用したモチーフを使っても過去の同一モチーフの作品とは差別化を図り、まったく同じ作品にならないように工夫している。20世紀での例をあげれば高校生を主人公にし、妖精というファンタジー要素に中盤からはシリアス色もより強まっていくターボレンジャーに対して全体を通してギャグ色・ネタ性が強く、船体の中でも異色なシュールな作風となっているカーレンジャー。同じ車モチーフでもこれだけ180度違う作風を描いてきたのだ。
今回は過去に使用したモチーフを再使用した作品から2作品を分析し、戦隊の持つ作風の広さやアイデア力を分析していこう。
まずは2002年放送の「忍風戦隊ハリケンジャー」。カクレンジャー以来8年ぶり2回目の忍者戦隊だ。
カクレンジャーとの大きな違いのひとつが「流派」の存在。カクレンジャーのメンバーは高名な忍者の末裔ではあったが、「流派」という概念は存在しなかった。一方ハリケンジャーはライブマン以来となる3人スタートで3人は「疾風流」という流派の忍者。
さらに追加戦士であるゴウライジャーの2人はそのライバルである「迅雷流」の忍者。故に登場当初はハリケンジャーと対立するライバルポジションで、敵組織であるジャカンジャとも手を組んだ。
さらに6人目の戦士であるシュリケンジャーも「天空忍者」としてハリケンジャー・ゴウライジャーとはまた独立した存在である。ハリケンジャー・ゴウライジャー・シュリケンジャーで最終的には6人になるわけだが、ゴウライジャーもシュリケンジャーもそれぞれ本来別チーム扱いなので「ハリケンジャー」としては最後まで3人のままである。
3人スタートにしたのはキャラクター個々の描写に重点を置くためというのが大きな理由だが、追加戦士をオリジナルメンバーとは別チーム扱いにすることによってさらにその描写に深みを出すことに成功している。これらも「一度使用したモチーフを使っても新たな発明を取り入れることによって新たなヒーロー像を生み出す」というスタッフの
狙いがあったのだ。まさに的中といったところだろう。
続いて翌2003年放送の「爆竜戦隊アバレンジャー」。ジュウレンジャー以来11年ぶりの恐竜戦隊である。
ジュウレンジャーとの大きな違いのひとつと言えるのが「パートナーである爆竜の存在」。
ジュウレンジャーにおけるパートナーの守護獣は恐竜人類をつかさどる神という設定のため、「恐竜型メカ」といっても謙遜ないメカニカルなデザインの中にもどこか神々しさを感じさせる存在であったが、アバレンジャーの爆竜は人間的な知性を持つ生命体で、人間とコミュニケーションの取れる親しみやすい存在。金属製のボディをもちながらも、守護獣と比べてより元の生物に近いデザインも特徴的。このデザイン面にはこの11年の間の恐竜研究の進歩や世間における各恐竜のイメージの変化も影響している。
ジュウレンジャーのティラノザウルスは直立した姿勢のいわゆる「ゴジラ型」と言われる姿勢で立っている。当時の研究や世間一般のティラノのイメージはゴジラのような直立2足歩行と考えられていたからだ。例えば「映画ドラえもん のび太の恐竜(1980)」でも直立2足歩行のティラノが登場するなど長年「ティラノはゴジラみたいに歩いていた」が多くの人々の定説だったのだ。
しかしその後の研究の進歩や「ジュラシックパーク」のヒットにより背を曲げた姿勢の我々が現在イメージするティラノ像が浸透してきたことから、アバレンジャーのティラノは背を曲げた姿勢となった。名前も「ティラノ”サウルス”」と近年のイメージに合わせたものであった。
ストーリー面においては、4人目の戦士であるアバレブラックが1話の時点でいきなり登場するが、その時点では変身不能になり、7話で復活。5人目の戦士アバレキラーは当初アバレンジャーと敵対する存在として描かれるなど追加戦士の書き方にも新たな要素が取り入れられている。
ギャグを取り入れながらも、シリアスも織り交ぜた文字通り「アバレた作風」がまた新たなヒーロー像を生み出したのだ。
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