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第2部 女児向けアニメ史
2009・10年女児向け作品事情~パティシエールとクッキンアイドルの巻~
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…今回で2009~10年に放送された番組の分析の最後となる。最後はともに料理をテーマとした2作品を分析していこう。
まずは2009年より開始したEテレの子供向け料理番組「クッキンアイドルアイ!マイ!まいん」。今やすっかり国民的女優の仲間入りを果たした福原遥さんの出世作としてあまりにも有名な作品である。
前番組「味楽る!ミミカ」に続いてアニメ×実写の構成となったが、アニメの中に実写をはめ込んだ前作に対し、本作はストーリーパートがアニメ、料理パートが実写となっており、アニメと実写がシームレスにつながる形式となった。
ストーリーも前番組、前々番組の主人公が一般家庭のごく普通の子供という設定(ひとりでできるもんの最終シリーズはストーリー性がなくレギュラー子役がいないし、ミミカはお嬢様の設定なので一般家庭のごく普通の子供とは言い難いかもしれないが)なのに対し、まいんはタイトルが示す通り芸能活動を行っている。作品はただの料理番組というだけでなく「まいんのクッキンアイドルとしての成長物語」でもある。
さらに主人公が芸能人という設定を生かすべく、料理パートは作中でまいんがレギュラー出演している設定の「クッキンアイドル」なる番組の体裁をとっている。いわば劇中劇をコーナーにした感じだ。
まいんが先輩番組と比べてもうひとつ特徴的なのは実写パートのみならずアニメパートにも子役を起用していること。
例えば初期から登場するライバルのみちかは福原さんと同い年の開始当時小5の出野泉花さんが演じていたし、まいんと同じ事務所のゆきのは開始当時小4の諸星すみれさんが演じていた。これらのキャラはアニメパートのみの出演のため、当然画面上では子供が演じてることがわからないが、当然本物の子供の声は大人が作って出す子供の声とは全然違うものだから子供たちにとっても「このキャラは子供がやってる」というのをわかってる子は少なからずいたはずであり、視聴者層と近い年代の演者をアニメパートでも起用することにより作品をより身近なものにしている。
ちなみに同じくまいんと同じ事務所に所属するやすのしん役の入野自由さんも元々は子役出身。出演した子役たちにとっては子役界の大先輩からたっぷり刺激をいただけたことだろう。
こういった様々な趣向が成功し、番組は前作の3年間を超える4年間続くヒット作となった。
4年間の間にストーリー面でも新たなライバルの登場、まいんの所属事務所の解散と移籍、新事務所での妹分ひなとの出会い、そして最後はパートナー妖精であるミサンガとの別れ…といった風に本来料理がメインのはずの番組において悪い言い方をしてしまえば添え物・オマケに過ぎないストーリーパートでも子供たちを楽しませる盛りだくさんのストーリーが展開される。決してストーリーをただのオマケにしていないのだ。
子供向け料理番組としてだけでなく、単にアニメ・ドラマとして見ても顕色ないストーリー性。料理とアニメ、両方でしっかり楽しませたことが子供たちと大きなお友達に支持されて4年間続いた要因であろう。
まあ、一部の大きなお友達には「アニメパートは不要」とまで発言する「実写パート原理主義者(誉め言葉のつもり)」も少なからずいたらしいが…
次に紹介するのは「夢色パティシエール」。りぼんからのアニメ化作品でタイトル通り「パティシエ」(タイトルは女性形のパティシエールだが、ここでの呼び名は男女関係なくパティシエとする)をテーマとした作品だ。
パティシエといういつの時代も子供たちのあこがれの職業の代表格、そしてお菓子作りという女児に普遍的に人気のあるテーマを取り扱うなど女児層へのアピールはばっちり。
原作はりぼんで前年の10月号から連載が始まり、それから1年ちょっとという異例の速さでのアニメ化となった。
さらにアニメ化前のタイミングで「スイーツデコカード」なる玩具がコナミから発売されるなど早くもこの時期のりぼんの看板作品として台頭していた。
放送は日本テレビ系で行われたが、アニメ開始半年ほど前のタイミングでテレビ東京系のおはスタにて本作のメインキャラふたりが週1レギュラーのCGキャラとして登場しており、スイーツに関するクイズなどを出演者と視聴者に出題したりした。この時点ですでにアニメ化が決定してたか否か、決定してたとして当初はテレ東系での放送を予定してたのかは不明だが、僕は当時日テレでのアニメ化を知った時に「テレ東でやるんじゃないのかよ!?」と心の中で叫んだのを覚えている。
いずれにせよ「アニメ化までにキャラをCGとして先行で映像化することで人気を盛り上げていこう」という策略だったのは間違いない。
ちなみに同じ年に同じりぼんから「絶叫学級」と「MOMO」もおはスタで同形式でコーナーが設けられた。前者は後に短編アニメと実写映画が製作されたが、後者はこれが唯一のアニメ化(いちおうVOMICは制作されたがTVシリーズ等は制作されなかった)であった。同時期におはスタの制作会社である小学館プロダクションが小学館集英社プロダクションとなったことからこの頃から集英社の作品も番組内で取り上げるようになってきた。
さて、本題の内容の分析に入ろう。
作品は全寮制の製菓専門学校を舞台に主人公のいちごがパティシエとして成長していく王道の成長ストーリー。
さらに社団法人日本洋菓子協会連合会が協力、パリに店を構える現役のパティシエである青木定治氏が監修としてクレジットされるなど菓子作りの描写はよりリアルにえがかれているのが特徴的だが、「スイーツ精霊」という主人公たちのパートナーとなる精霊の存在、さらにその精霊たちの住まう「スイーツ界」の存在、精霊たちがお菓子を美味しく美しく仕上げる魔法を使うなどの低年齢層向けのファンタジー要素も強い作品。
もっと本格的な菓子作りアニメを期待していた進路に真剣に考えはじめるようなお年頃の年齢層にとっては「なんでい、子供だましやないかい」なのかもしれないが、低年齢層のパティシエへの興味の入口としては申し分ない作品だろう。
主題歌でもOPに初代プリキュアアーティストとして知られる五條真由美さんを起用し、より低年齢層の取り込みを強化したイメージだ。
アニメは1年間の放送ののち、2年目となる「SPプロフェッショナル」も制作されたがこちらは1クールで終了。1年続いた1期の後の2期が1クールで終わるのも珍しい例だが、後番組は同じ集英社原作の「べるぜバブ」であることを考えれば当初の予定通りでべるぜバブが始まるまでの猶予期間しか延長できなかったのか、不人気ではなく後番組が急に決まったことによる打ち切りなのかは不明だ。
しかし本作以降、全日帯30分枠全国ネットにおけるちびまる子ちゃん以外のりぼん原作アニメの放送は10年以上途絶えたままである。おはスタでの短編アニメや、深夜帯で放送予定のハニーレモンソーダなどは存在するが、全日帯での30分放送の新作は長らく途絶えている。そもそも3大小中学生少女漫画誌(りぼん・なかよし・ちゃお)が2010年代以降は週刊少年誌に比べてアニメ化に消極的という事情もあるが。
まずは2009年より開始したEテレの子供向け料理番組「クッキンアイドルアイ!マイ!まいん」。今やすっかり国民的女優の仲間入りを果たした福原遥さんの出世作としてあまりにも有名な作品である。
前番組「味楽る!ミミカ」に続いてアニメ×実写の構成となったが、アニメの中に実写をはめ込んだ前作に対し、本作はストーリーパートがアニメ、料理パートが実写となっており、アニメと実写がシームレスにつながる形式となった。
ストーリーも前番組、前々番組の主人公が一般家庭のごく普通の子供という設定(ひとりでできるもんの最終シリーズはストーリー性がなくレギュラー子役がいないし、ミミカはお嬢様の設定なので一般家庭のごく普通の子供とは言い難いかもしれないが)なのに対し、まいんはタイトルが示す通り芸能活動を行っている。作品はただの料理番組というだけでなく「まいんのクッキンアイドルとしての成長物語」でもある。
さらに主人公が芸能人という設定を生かすべく、料理パートは作中でまいんがレギュラー出演している設定の「クッキンアイドル」なる番組の体裁をとっている。いわば劇中劇をコーナーにした感じだ。
まいんが先輩番組と比べてもうひとつ特徴的なのは実写パートのみならずアニメパートにも子役を起用していること。
例えば初期から登場するライバルのみちかは福原さんと同い年の開始当時小5の出野泉花さんが演じていたし、まいんと同じ事務所のゆきのは開始当時小4の諸星すみれさんが演じていた。これらのキャラはアニメパートのみの出演のため、当然画面上では子供が演じてることがわからないが、当然本物の子供の声は大人が作って出す子供の声とは全然違うものだから子供たちにとっても「このキャラは子供がやってる」というのをわかってる子は少なからずいたはずであり、視聴者層と近い年代の演者をアニメパートでも起用することにより作品をより身近なものにしている。
ちなみに同じくまいんと同じ事務所に所属するやすのしん役の入野自由さんも元々は子役出身。出演した子役たちにとっては子役界の大先輩からたっぷり刺激をいただけたことだろう。
こういった様々な趣向が成功し、番組は前作の3年間を超える4年間続くヒット作となった。
4年間の間にストーリー面でも新たなライバルの登場、まいんの所属事務所の解散と移籍、新事務所での妹分ひなとの出会い、そして最後はパートナー妖精であるミサンガとの別れ…といった風に本来料理がメインのはずの番組において悪い言い方をしてしまえば添え物・オマケに過ぎないストーリーパートでも子供たちを楽しませる盛りだくさんのストーリーが展開される。決してストーリーをただのオマケにしていないのだ。
子供向け料理番組としてだけでなく、単にアニメ・ドラマとして見ても顕色ないストーリー性。料理とアニメ、両方でしっかり楽しませたことが子供たちと大きなお友達に支持されて4年間続いた要因であろう。
まあ、一部の大きなお友達には「アニメパートは不要」とまで発言する「実写パート原理主義者(誉め言葉のつもり)」も少なからずいたらしいが…
次に紹介するのは「夢色パティシエール」。りぼんからのアニメ化作品でタイトル通り「パティシエ」(タイトルは女性形のパティシエールだが、ここでの呼び名は男女関係なくパティシエとする)をテーマとした作品だ。
パティシエといういつの時代も子供たちのあこがれの職業の代表格、そしてお菓子作りという女児に普遍的に人気のあるテーマを取り扱うなど女児層へのアピールはばっちり。
原作はりぼんで前年の10月号から連載が始まり、それから1年ちょっとという異例の速さでのアニメ化となった。
さらにアニメ化前のタイミングで「スイーツデコカード」なる玩具がコナミから発売されるなど早くもこの時期のりぼんの看板作品として台頭していた。
放送は日本テレビ系で行われたが、アニメ開始半年ほど前のタイミングでテレビ東京系のおはスタにて本作のメインキャラふたりが週1レギュラーのCGキャラとして登場しており、スイーツに関するクイズなどを出演者と視聴者に出題したりした。この時点ですでにアニメ化が決定してたか否か、決定してたとして当初はテレ東系での放送を予定してたのかは不明だが、僕は当時日テレでのアニメ化を知った時に「テレ東でやるんじゃないのかよ!?」と心の中で叫んだのを覚えている。
いずれにせよ「アニメ化までにキャラをCGとして先行で映像化することで人気を盛り上げていこう」という策略だったのは間違いない。
ちなみに同じ年に同じりぼんから「絶叫学級」と「MOMO」もおはスタで同形式でコーナーが設けられた。前者は後に短編アニメと実写映画が製作されたが、後者はこれが唯一のアニメ化(いちおうVOMICは制作されたがTVシリーズ等は制作されなかった)であった。同時期におはスタの制作会社である小学館プロダクションが小学館集英社プロダクションとなったことからこの頃から集英社の作品も番組内で取り上げるようになってきた。
さて、本題の内容の分析に入ろう。
作品は全寮制の製菓専門学校を舞台に主人公のいちごがパティシエとして成長していく王道の成長ストーリー。
さらに社団法人日本洋菓子協会連合会が協力、パリに店を構える現役のパティシエである青木定治氏が監修としてクレジットされるなど菓子作りの描写はよりリアルにえがかれているのが特徴的だが、「スイーツ精霊」という主人公たちのパートナーとなる精霊の存在、さらにその精霊たちの住まう「スイーツ界」の存在、精霊たちがお菓子を美味しく美しく仕上げる魔法を使うなどの低年齢層向けのファンタジー要素も強い作品。
もっと本格的な菓子作りアニメを期待していた進路に真剣に考えはじめるようなお年頃の年齢層にとっては「なんでい、子供だましやないかい」なのかもしれないが、低年齢層のパティシエへの興味の入口としては申し分ない作品だろう。
主題歌でもOPに初代プリキュアアーティストとして知られる五條真由美さんを起用し、より低年齢層の取り込みを強化したイメージだ。
アニメは1年間の放送ののち、2年目となる「SPプロフェッショナル」も制作されたがこちらは1クールで終了。1年続いた1期の後の2期が1クールで終わるのも珍しい例だが、後番組は同じ集英社原作の「べるぜバブ」であることを考えれば当初の予定通りでべるぜバブが始まるまでの猶予期間しか延長できなかったのか、不人気ではなく後番組が急に決まったことによる打ち切りなのかは不明だ。
しかし本作以降、全日帯30分枠全国ネットにおけるちびまる子ちゃん以外のりぼん原作アニメの放送は10年以上途絶えたままである。おはスタでの短編アニメや、深夜帯で放送予定のハニーレモンソーダなどは存在するが、全日帯での30分放送の新作は長らく途絶えている。そもそも3大小中学生少女漫画誌(りぼん・なかよし・ちゃお)が2010年代以降は週刊少年誌に比べてアニメ化に消極的という事情もあるが。
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