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第1部 アーケードカードゲーム史
怪獣・百獣・サイヤ人~戦国時代を生きた男児向けゲーム達~
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さて、今回はアーケードカードゲーム戦国時代といえる2005~2007年頃に稼働したタイトルの中から、代表的な男児向けタイトル3作品を自分なりに分析してみることにする。
最初に取り上げるのは2005年稼働開始の「データカードダス ドラゴンボールZ」。データカードダスの黎明期を代表する、データカードダスの名を世間に知らしめたタイトルだ。
バンダイがデータカードダスを投入したきっかけは、ムシキングやラブ&ベリーのヒットである。それまでセガの独壇場であった市場に、すでに玩具メーカーとしてその名をとどろかせ、ゲーム開発でも多くの実績を持つバンダイという新勢力の殴り込みが、戦場に大きな変化をもたらすこととなる。
そして最初の刺客としてはなったのがドラゴンボール。この時点では新作TVシリーズは中断期間であったが、この3年前ほどからDVDの発売や新装版コミックスの発売などで再注目され、家庭用ゲームや各種グッズも多数発売されるなどリバイバルブームが起きており、原作やアニメの「GT」終了後に産まれた世代にも広く浸透していた。
データカードダスの主要顧客層である当時の幼児~小学生層はまさにリバイバルブームの中でドラゴンボールを知った世代だ。そんな中で現行でアニメ放送中の作品でなく、あえてドラゴンボールを最初のタイトルに選んだバンダイの選択は正解だったと思う。
2005年時点でDBの原作開始からは21年、アニメ開始からは19年経過。当時の子供たちの親世代の中にもDBで育った世代はすでに相当数いたはずであり、僕が考える「子供たちに受け入れられるコンテンツは親世代にも受け入れられるコンテンツであるべき」といった点ではまさに「親子2代の支持」といった点であてはまる。親子のコミュニケーションのきっかけともなるドラゴンボールを題材にしたから親世代にも受け入れられ、現在のスーパードラゴンボールヒーローズまで続くロングラン作品となったに違いない。
このゲームでドラゴンボールを知った当時の子供たちも多いだろう。まさに僕の周りがそうだった。ムシキング・恐竜キングに次ぐ男児向けアーケードカードの第三勢力となったDBは僕の周りでアニメ現行のポケモンなどの作品に並ぶ人気作品となった。このゲームは当時の子供たちによりドラゴンボールを浸透させる役割を果たしたわけである。ゲーム稼働時期と同時期にDBがハッピーセットのオマケに数回登場したことからも見て取れる。アニメ中断中の作品の登場はハッピーセットでは異例だ。
次に取り上げるのは2007年稼働開始の同じくデータカードダスの「大怪獣バトル」。ウルトラ怪獣同士のバトルが繰り広げられる作品だ。
ウルトラシリーズも稼働前年に40周年を迎え、すでに親子二代の支持。これまたバンダイは「親世代にも受け入れられるコンテンツ」であるウルトラシリーズを題材に選んできた。当時の子供向け雑誌の宣伝記事でも「懐かしの怪獣たちもたくさん登場するのでお父さんと一緒に楽しもう」なんてキャプションが書かれていたことからバンダイとしてもDB以上に親子で筐体の行列に並んでいただこうとしていたのが見て取れる。
そして「ウルトラマン」ではなく「怪獣」を主役に置いたのも面白い。「ウルトラマンの真の主役は怪獣である」と考える方も多いだろうし「ウルトラ戦士より怪獣のほうが好き」という人も多いだろう。僕個人としても「ウルトラシリーズはウルトラマンだけが主役ではなく、ウルトラマンと怪獣が主役の物語」としてとらえている。ウルトラ怪獣はグッズも多数出ているわけだからビッグブランドといっても過言ではない。怪獣は数がヒーローより多いわけだから多数のカードを出す必要があるアーケードカード市場において適役といえよう。怪獣とカードの相性はばっちりといえる。
稼働当時はちょうどウルトラマンメビウスが終了し、ウルトラの新作TVシリーズが中断期間に突入した時期であった。そんな状況下でも子供たちにウルトラの灯を消させない、ウルトラへの思いを途切れさせないという目的もこのゲームにあったはずだ。
実際ウルトラシリーズは何度もTVシリーズの中断期間があるが、どの中断期間中にも必ず何らかの展開を行っており、空白期間の子供たちにシリーズを認知させる役割を担ってきた。
古くはウルトラセブン終了から帰ってきたウルトラマン開始までの期間に始まった「ウルトラファイト」。低予算のイメージが強い作品だが、空白期間の子供たちにTVで怪獣たちに会える機会をあたえ、ウルトラを認知させるきっかけとなり、帰りマン以降の昭和第2期ウルトラシリーズにつながったと言われている。
大怪獣バトルの直近においても、ウルトラマンコスモス終了~ウルトラマンネクサス開始までの期間に「ウルころ」というシリーズの総集編と新規映像からなる平日5分間の帯番組をテレビ東京系にておはスタの手前の時間で放送していた。
TV作品でこそないが、本ゲームも円谷プロお得意の空白期間のつなぎ作品としての役割を果たしたであろう。
最後に紹介するのは同じく2007年稼働開始のこれまたデータカードダスの「百獣大戦アニマルカイザー」。
データカードダスとしては史上初のアニメや特撮、既存のバンダイ玩具などの既存キャラを使っていない完全オリジナル新作作品。タイトルが示す通り様々な動物たちがバトルする作品だ。バンダイも初のオリジナル作品にはセガのムシキングや恐竜キングのように「動物」という流行り廃りなく不変的に人気のあるモチーフを選んできた。
各弾のキャッチフレーズには「サメ対ライオン」「ゾウ対トラ」のように人気の動物同士の対決を謳い、「決して交えることのない動物同士の戦い」という本作最大のセールスポイントを強くアピールしていた。
動物同士の戦いという点では近年児童書界で人気の「最強王図鑑」を先取りした内容といえる。バンダイの先見の明というべきか。
「ライオンとトラ戦ったらどっちが勝つだろう?」みたいなことは子供の頃誰もが一度は考えたことがあるだろう。それをゲーム化しようと考えたバンダイの発想力には脱帽である。子供に受けるコンテンツを作るにはやはり子供の心に戻ってみるのが重要なのだろう。
とはいえ、これはあくまでも科学的・動物学的なシミュレーションではなく娯楽作品。ムシキングのムシたちや恐竜キングの恐竜たちが学術的というか現実的にあり得ないような技を繰り出すのと同じように、本作の動物たちも現実的にはあり得ない荒唐無稽な技を使う。さらに上記の「サメ対ライオン」のように「水中生物対陸上生物」という現実ではまずありえない顔あわせも実現できるが、その場合でもサメが宙を浮きサバンナで戦ったりとか、逆に陸上動物が水中ステージで平然と戦うといったムシキングや恐竜キング以上に荒唐無稽ともいえる演出が多々見られるのも特徴だ。
グラフィックはムシキングなどと同様リアル調であるが(といっても個人的にはムシキングよりはデフォルメきいてる感じがした)、リアルな動物たちが荒唐無稽な戦いを繰り広げるのはリアルな戦いを期待した大人たちにとってはバカバカしく感じたかもしれない。
だがこれも主要顧客である子供たちにリサーチした結果だという。この動物たちのバトルに「学術的にあり得ん」とかは禁句だ。それを言うならムシキングや恐竜キングにも同じことが言えるし、そもそもこれは学術的な発表の場ではない。大事なのは「子供たちに夢を見てもらうこと」。いくら荒唐無稽であろうが、子供たちが大好きな動物同士のありえない戦いをゲームでみせること、そして子供たちに動物への興味の入口となること。それこそがこのゲームの狙いだったに違いない。
僕の周りにも多くはなかったがプレイヤーはそこそこいた。彼らもこのゲームの「荒唐無稽な必殺技」に魅力を感じていた。中でも「ポテトで一休み」(技名間違えてるかもしれません)という技が大人気だった。
荒唐無稽であれ、結局子供たちはそういう派手な技が大好きなのだ。バンダイの狙いは成功だろう。
さて、次回はラブ&ベリーを脅かした女児向けアーケードカードゲームを分析してみることにしよう。
最初に取り上げるのは2005年稼働開始の「データカードダス ドラゴンボールZ」。データカードダスの黎明期を代表する、データカードダスの名を世間に知らしめたタイトルだ。
バンダイがデータカードダスを投入したきっかけは、ムシキングやラブ&ベリーのヒットである。それまでセガの独壇場であった市場に、すでに玩具メーカーとしてその名をとどろかせ、ゲーム開発でも多くの実績を持つバンダイという新勢力の殴り込みが、戦場に大きな変化をもたらすこととなる。
そして最初の刺客としてはなったのがドラゴンボール。この時点では新作TVシリーズは中断期間であったが、この3年前ほどからDVDの発売や新装版コミックスの発売などで再注目され、家庭用ゲームや各種グッズも多数発売されるなどリバイバルブームが起きており、原作やアニメの「GT」終了後に産まれた世代にも広く浸透していた。
データカードダスの主要顧客層である当時の幼児~小学生層はまさにリバイバルブームの中でドラゴンボールを知った世代だ。そんな中で現行でアニメ放送中の作品でなく、あえてドラゴンボールを最初のタイトルに選んだバンダイの選択は正解だったと思う。
2005年時点でDBの原作開始からは21年、アニメ開始からは19年経過。当時の子供たちの親世代の中にもDBで育った世代はすでに相当数いたはずであり、僕が考える「子供たちに受け入れられるコンテンツは親世代にも受け入れられるコンテンツであるべき」といった点ではまさに「親子2代の支持」といった点であてはまる。親子のコミュニケーションのきっかけともなるドラゴンボールを題材にしたから親世代にも受け入れられ、現在のスーパードラゴンボールヒーローズまで続くロングラン作品となったに違いない。
このゲームでドラゴンボールを知った当時の子供たちも多いだろう。まさに僕の周りがそうだった。ムシキング・恐竜キングに次ぐ男児向けアーケードカードの第三勢力となったDBは僕の周りでアニメ現行のポケモンなどの作品に並ぶ人気作品となった。このゲームは当時の子供たちによりドラゴンボールを浸透させる役割を果たしたわけである。ゲーム稼働時期と同時期にDBがハッピーセットのオマケに数回登場したことからも見て取れる。アニメ中断中の作品の登場はハッピーセットでは異例だ。
次に取り上げるのは2007年稼働開始の同じくデータカードダスの「大怪獣バトル」。ウルトラ怪獣同士のバトルが繰り広げられる作品だ。
ウルトラシリーズも稼働前年に40周年を迎え、すでに親子二代の支持。これまたバンダイは「親世代にも受け入れられるコンテンツ」であるウルトラシリーズを題材に選んできた。当時の子供向け雑誌の宣伝記事でも「懐かしの怪獣たちもたくさん登場するのでお父さんと一緒に楽しもう」なんてキャプションが書かれていたことからバンダイとしてもDB以上に親子で筐体の行列に並んでいただこうとしていたのが見て取れる。
そして「ウルトラマン」ではなく「怪獣」を主役に置いたのも面白い。「ウルトラマンの真の主役は怪獣である」と考える方も多いだろうし「ウルトラ戦士より怪獣のほうが好き」という人も多いだろう。僕個人としても「ウルトラシリーズはウルトラマンだけが主役ではなく、ウルトラマンと怪獣が主役の物語」としてとらえている。ウルトラ怪獣はグッズも多数出ているわけだからビッグブランドといっても過言ではない。怪獣は数がヒーローより多いわけだから多数のカードを出す必要があるアーケードカード市場において適役といえよう。怪獣とカードの相性はばっちりといえる。
稼働当時はちょうどウルトラマンメビウスが終了し、ウルトラの新作TVシリーズが中断期間に突入した時期であった。そんな状況下でも子供たちにウルトラの灯を消させない、ウルトラへの思いを途切れさせないという目的もこのゲームにあったはずだ。
実際ウルトラシリーズは何度もTVシリーズの中断期間があるが、どの中断期間中にも必ず何らかの展開を行っており、空白期間の子供たちにシリーズを認知させる役割を担ってきた。
古くはウルトラセブン終了から帰ってきたウルトラマン開始までの期間に始まった「ウルトラファイト」。低予算のイメージが強い作品だが、空白期間の子供たちにTVで怪獣たちに会える機会をあたえ、ウルトラを認知させるきっかけとなり、帰りマン以降の昭和第2期ウルトラシリーズにつながったと言われている。
大怪獣バトルの直近においても、ウルトラマンコスモス終了~ウルトラマンネクサス開始までの期間に「ウルころ」というシリーズの総集編と新規映像からなる平日5分間の帯番組をテレビ東京系にておはスタの手前の時間で放送していた。
TV作品でこそないが、本ゲームも円谷プロお得意の空白期間のつなぎ作品としての役割を果たしたであろう。
最後に紹介するのは同じく2007年稼働開始のこれまたデータカードダスの「百獣大戦アニマルカイザー」。
データカードダスとしては史上初のアニメや特撮、既存のバンダイ玩具などの既存キャラを使っていない完全オリジナル新作作品。タイトルが示す通り様々な動物たちがバトルする作品だ。バンダイも初のオリジナル作品にはセガのムシキングや恐竜キングのように「動物」という流行り廃りなく不変的に人気のあるモチーフを選んできた。
各弾のキャッチフレーズには「サメ対ライオン」「ゾウ対トラ」のように人気の動物同士の対決を謳い、「決して交えることのない動物同士の戦い」という本作最大のセールスポイントを強くアピールしていた。
動物同士の戦いという点では近年児童書界で人気の「最強王図鑑」を先取りした内容といえる。バンダイの先見の明というべきか。
「ライオンとトラ戦ったらどっちが勝つだろう?」みたいなことは子供の頃誰もが一度は考えたことがあるだろう。それをゲーム化しようと考えたバンダイの発想力には脱帽である。子供に受けるコンテンツを作るにはやはり子供の心に戻ってみるのが重要なのだろう。
とはいえ、これはあくまでも科学的・動物学的なシミュレーションではなく娯楽作品。ムシキングのムシたちや恐竜キングの恐竜たちが学術的というか現実的にあり得ないような技を繰り出すのと同じように、本作の動物たちも現実的にはあり得ない荒唐無稽な技を使う。さらに上記の「サメ対ライオン」のように「水中生物対陸上生物」という現実ではまずありえない顔あわせも実現できるが、その場合でもサメが宙を浮きサバンナで戦ったりとか、逆に陸上動物が水中ステージで平然と戦うといったムシキングや恐竜キング以上に荒唐無稽ともいえる演出が多々見られるのも特徴だ。
グラフィックはムシキングなどと同様リアル調であるが(といっても個人的にはムシキングよりはデフォルメきいてる感じがした)、リアルな動物たちが荒唐無稽な戦いを繰り広げるのはリアルな戦いを期待した大人たちにとってはバカバカしく感じたかもしれない。
だがこれも主要顧客である子供たちにリサーチした結果だという。この動物たちのバトルに「学術的にあり得ん」とかは禁句だ。それを言うならムシキングや恐竜キングにも同じことが言えるし、そもそもこれは学術的な発表の場ではない。大事なのは「子供たちに夢を見てもらうこと」。いくら荒唐無稽であろうが、子供たちが大好きな動物同士のありえない戦いをゲームでみせること、そして子供たちに動物への興味の入口となること。それこそがこのゲームの狙いだったに違いない。
僕の周りにも多くはなかったがプレイヤーはそこそこいた。彼らもこのゲームの「荒唐無稽な必殺技」に魅力を感じていた。中でも「ポテトで一休み」(技名間違えてるかもしれません)という技が大人気だった。
荒唐無稽であれ、結局子供たちはそういう派手な技が大好きなのだ。バンダイの狙いは成功だろう。
さて、次回はラブ&ベリーを脅かした女児向けアーケードカードゲームを分析してみることにしよう。
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