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おこぼれ話175 ガムが食えん…

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小2の秋、虫歯ができたので幼稚園の時以来2年ぶりの歯医者に行き、治療することに。
物心ついたころから虫歯にはなりがちな人間なので治療なんて慣れっこ(イヤかどうかは別として)だが、この時、歯医者の先生からこんなことを告げられる。

「治療の跡が固まるまで…だいたい3週間ぐらいですかね。その間は治療材が取れてしまう恐れがありますのでガムとかキャラメルとかくっつくようなものは食べないでください…」
…正直ショックだった。今まで生きてきた中で何度も歯の治療は経験してきている。だがそれにより食べるものの制限がかけられたことは8年生きてきてここまで一切なかったからだ。
自分はガムは特別好きとまでではないが割と好きなほうだし、キャラメルも特別好きとまではいかないが割と好きな部類に入るお菓子だ(というか嫌いなお菓子なんてほぼないかもしれない)。
普段なら数週間食べなくても禁断症状的な状態にはならないのに、しばらく食べられないと言われたら急に食べたくなってしまう。”ダメと言われたらやりたくなる”。カリギュラ効果とはこのことか。

それから3週間、僕のガム&キャラメル禁止生活が始まった。
買い物に行ったときにお菓子売り場でガムやキャラメルの類を見てしまうと涙が出そうになった…「ああ…オレは今食えないんだ」と。
チョコボールを買う時も当然キャラメル味は買えず、ピーナッツやイチゴとかで我慢してた。キャラメル味のパッケージのキョロちゃんと売り場で目が合うたびに「ごめんな…」という感じであった。まるで別れたくないけど別れなければいけない恋人のように…チョコボールは全部うまいけどね。
日がたつにつれて、僕は再びガムやキャラメルを口にできるようになるまであと何日かとカウントダウンするようになっていった。僕の治療の状況を知らなかった親戚の叔父さんがお土産に観光地で限定のガムを買って持ってきてくれた時は申し訳ないと思った。賞味期限あるから大丈夫なんだけどね。
そしてその間も週1で歯医者。治療の経過観察だったか他の歯の治療だったか忘れたが。

そして時がたちついにやってきた3週間後。この日で歯医者通いも終わり、先生からもOKをもらったのでついに僕はガムキャラメル禁止令から解放された。
その日の帰り、スーパーでさっそくキャラメルを買ってもらい、翌日実食。やはり3週間ぶりの味は格別であった。涙が出そうであった。キャラメルで泣きそうになったことなんて後にも先にもきっとこれだけだろう。

できるときには別にやらなくてもいいやと思うけど、できないとなったならやりたくなるのが人間の性。僕は8歳にしてそのことを身をもって思い知った。この時の経験があったからこそ今、商品の販売終了のニュースが発表されたときに品薄になるニュースを観て「やっぱ手に入らなくなると思えばほしくなるんだな」と共感できるのであろうと思う。
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