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おこぼれ話113 禁じられた逃走

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小4のある日、クラスにおける遊びの中心人物であるシュウジくんにより教室にあるものが置かれる。
「逃走中箱」というものだ。
今でも子供たちに根強い人気を誇る逃走中だが、僕が小学生のころからすでに人気が出始めていた。この箱が置かれた前日に逃走中の放送があり(USJでロケした回だったと記憶している)、ちょうどその時に僕も逃走中を始めて観てその面白さを知ったころであった。クラスでもたくさんの人が見ており、その日は教室で逃走中の話題で皆盛り上がっていた。
そんな中でシュウジくんは休み時間の遊びとして逃走中を行うことを提案。その参加者を募るために設置されたのが逃走中箱だ。設置の翌日の中休みにさっそく逃走中を行うこととなり、参加希望者は自分の名前と逃走者とハンターどっちをやりたいかを紙に書いて投函するのだ。逃走中に魅せられたばかりの僕もその楽しさとスリルを疑似体験できるならと参加を希望した。ちなみに逃走者役だ。
その日の夜は明日の逃走が楽しみすぎて親にも自慢げに言うなど遠足の前の日の浮かれように近いぐらい浮かれていた。学校でみんなと遊ぶのがここまで楽しみすぎてたまらなかった経験はそうそうない。

そして翌日中休み、さっそく逃走開始。といっても逃走中のアイデンティティともいえるミッションは僕ら小学生の技術では再現できないのでそこはフォローされていない。故にそれではただの鬼ごっこになってしまうのでは?とお思いだろうがこの逃走は普通の鬼ごっことは違い体育館のような限られたスペースではなくより視野を広くして校舎全体を舞台に行われてるのだ。毎回大型施設や街中を舞台に繰り広げられる逃走中の醍醐味をこれだけで十分味わえるのだから僕は満足であった。
ハンター役の人は何か目印になるものを身につけるようにということでバンダナとかを持ってきてつけていた。本家のようなサングラスをつけている人は1人ぐらいいたようないなかったような…
校舎の1階から3階まで全体を使って行っているため普通の鬼ごっこと比べて意外に鬼(ハンター)に見つかったりロックオンされたりするケースは少ない。会場も広いわけだから隠れるのも作戦のうち。記憶の中では僕はほとんどハンターに追いかけられなかった。本家の逃走中だって常にハンターに追いかけられるわけじゃないし、身をひそめるのも作戦のうちである。身をひそめ、ハンターの気配を感じたら逃げて…僕はすっかり番組の逃走者たちになりきっていた。

番組の世界に入り込んだような夢見心地の気分の中中休みは終了…
しかし余韻もつかの間、僕たちは先生方からこんな忠告をされてしま忠告をされてしまう。
「他の人にぶつかったら危険なので今後逃走中ごっこは禁止!」
…これは致し方ないだろう。実際にこの日そのような事故があったかは不明だが、このような禁止令が出るぐらいなら未遂ぐらいはあったのだろう。学校の狭い廊下を使ってる以上他の生徒とぶつかったり、怪我したりというリスクは大きい。広い体育館を使うおにごっことはわけが違う。だいいち廊下を走るのはマナー違反だ。こうして逃走中ごっこは幻の遊びとして闇に葬られることとなった。

誤解のないよう書いておきますが逃走中という番組に罪はありません。悪いのは危険を顧みず廊下でそれをマネしようとした僕らです。
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