リョーマ伝～小学生編～

おこぼれ話69 大乱闘は学校でもの巻

小2の3学期、僕たちの間を突如ある遊びが席捲した。それは「スマブラごっこ」である。
ちょうどこの時期、スマブラシリーズ第3作「大乱闘スマッシュブラザーズX」が発売されたころだ。
周りのみんなも誰もがプレイしていて、僕ももちろんプレイしていた。発売からしばらく品薄で手に入らなかったのを覚えている。それぐらいその人気はすさまじかったのだ。
そしてスマブラをプレイできない学校に行っている間もそれを楽しめる画期的な遊びとして生まれたのがスマブラごっこだ。発案者はダンジョンごっこと同じトモくんだ。

中休み、参加者は体育館に集まったら自分のなりたいキャラを決めていく。
僕はXでよく使っていたソニックや、ルカリオなどの大好きなポケモン系をよく使っていた。
キャラはスマブラXのキャラクターに限定（故にXに出てこないミュウツーとかは対象外）。人気のあるキャラは取り合いになりそうだが、意外にそのような状況になることは一度たりともなかった。スマブラのキャラの多さ＝選択肢の多さがその要因であろう。

キャラが決まったら乱闘開始。スマブラって殴り合いでしょ？そんな物騒なこと学校でやっていいの？とお思いの方もいらっしゃるだろうが暗黙のルールとして出血を伴ったり、骨折などの大きなケガにつながるような攻撃をしてはならない。と定められているのでご安心を。攻撃手段は基本エアパンチやエアキック。相手に直接触れる場合でも肩たたき程度に相手の体をポンとたたいたり、軽く押したりする程度だ。マリオのファイアボールやフォックス系キャラのブラスターといった飛び道具系攻撃などの生身で再現不可能な攻撃はポーズをとることで再現。その後に相手の体に触れて攻撃の効果を再現する場合もある。
そしてスマブラXといえば最後の切り札が初登場したシリーズだ。もちろんごっこでもそれはばっちり再現。
参加者の誰かがスマッシュボール役になり（この時、スマッシュボールであることを示すために手は何かを持つポーズをとる）、そいつに向かってエア攻撃を一定回数与えると切り札を発動できるのだ。
最後の切り札は生身で再現不可能なものばかりであったため上記の通りポーズと動きで可能な限り再現。でも普通の技に比べて動きが複雑だったりするものも多いので。みようみまねで動きがおかしくなってたり何ともカオスな状況になることもしばしばあった。

だがそれでも僕はみんなの動きが本物の技に見えてきた。
ネス役がPKスターストームのポーズをとれば自然に脳内で技のエフェクトが生成され、フォックス役の子がランドマスター！とコールすればまるで目の前にランドマスターがあるかのように錯覚し、ファルコン役の子がブルーファルコンを呼び出せば自然とあのコースが目の前に広がり、ルイージ役がネガティブゾーンのダンスを踊れば不思議と不思議空間が目の前に広がり、あの音楽が頭の中に流れ始めた。
子供たちは想像力という大人には計り知れない最大の武器を持っている。想像力がいつもの学校を一気に大乱闘の戦場へと変貌させたのだ。
なんにでもなれてどんな技でも使えてしまう想像力。それこそがあの頃の僕らの「最後の切り札」といっても過言ではないだろう。