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おこぼれ話51 あんたが名人

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3年生の頃、S藤先生が授業で活躍したり、学校生活で何か良い働きをした生徒を「名人」としてたたえ、その名前を教室内に掲示するという制度を導入した。

最初にこの制度が使われたのは1学期終わり~2学期初めあたりの国語の授業。
授業で読んだ物語の感想文を発表し、他の生徒たちが班の仲間の中で発表のしかたがよかった人、文章の内容がよかった人を選び、各班で多く票を集めた人を「発表名人」「作文名人」として表彰するものだった。
目立ち対ちゃんな僕はもちろん名人狙い。だが文章力はまだしもこの時の僕の発表の仕方は聞き取りやすさなんて二の次な超絶早口で聞き取りにくいことこの上なしであり、発表が終わった直後も先生や一部の生徒からこのことへの苦言が出てくるほどであった。
それでも自分は名人狙いをあきらめなかった。
そして班のみんなの票の集計の時間。先生が一人一人あてて言って、あてられた生徒が発表がよかった人、文章がよかった人を挙げていくというものだ。
僕の班の番になっても、やはり僕に票が集まらない…そりゃあんな早口だったから仕方ない…しかし、ある女子の番
で…

「作文名人はリョーマくんがいいと思います!」

…ついに僕に1票が入った。彼女は「発表の仕方には難があったが、文章の内容は良かったと思う」と評してくれた。
そしてほかの班員たちも立て続けに…
「私もリョーマくんの作文がよかったと思います!」
「僕も同じです!」
…次々と作文名人の票を僕に入れてくれた。そして僕は班の作文名人に見事輝き、教室には僕の名前と「作文名人」の文字が書かれた短冊が掲示された。
発表との2冠とはならなかったが、今回の評価で自分の発表に対する問題点もわかり、今後の発表への反省ともなった。

それから数日後の学活の時間で、生徒たちから最近他のクラスメイトにしてもらってうれしかったことや、よい働きをしている生徒の話を挙げてもらい、その生徒を名人として表彰することとなった。
ここでまたしても僕が名人の冠を手にすることとなる。今度は「落とし物拾い名人」だ。
授業中などに近くの席のクラスメイトが鉛筆等を落としてしまった時に、僕がよく拾っていたことが評価されたのだ。小さな親切の積み重ねが評価につながった。
こうして僕には「落とし物拾い名人」という2つ目の冠がついた。
あの頃の自分はいつも目立つことばかり考えていたが、このような影の活躍でこそ光る人間なのかもしれない。
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