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おこぼれ話37 人はなぜ牛乳1本ごときでここまで熱くなるのか
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5・6年生の頃、給食の時間の開始とともにある戦いのゴングが鳴り始めた。
それは欠席者や残した人の分の牛乳の争奪戦。またの名を「牛乳ジャンケン」である。
いただきますをした直後、すぐさま進行役(彼が勝手に仕切ってるだけ)のシュウジくんが牛乳の入ったかごの前に駆け付け「牛乳ジャンケン!」の掛け声とともに参加者が彼のもとに集まり、戦いのゴングが鳴らされる。
欠席者がいない日でも牛乳を残す人の存在により牛乳は2~3本ほど用意されている。
そしてこのジャンケンの参加者はだいたい8~10人ほど。この話を聞いた母は「牛乳なら家でも飲めるのになぜそんなに人が群がるのか?わざわざ牛乳にこだわる必要はあるのか?」と疑問を呈していたが、牛乳は給食で飲める唯一の飲み物、そして学校で飲める唯一の水以外の飲み物だ。だから僕にとっては給食の牛乳をもう一つ手に入れることにはかなりの意義があった。他のみんなも同じ思いだったかどうかはわからないが、牛乳は給食の影の人気メニューといっても過言ではないだろう。
人数が多い場合は数グループに分けてじゃんけんを行う。このやり方だと例えば牛乳2本の場合は2グループに分かれてそれぞれの勝者1名ずつに分け与えられるという形にできるので牛乳の数が複数本であればこのやり方のほうがスムーズと言えよう。
そして僕はこのジャンケンで連勝し続けることがかなりの栄誉であると思っていた。
最大で11連勝ぐらいしたことがある。
10連勝をしたあたりでシュンくんから「10連勝!やっぱりリョーマはジャンケン強いな~!」なんて言われて、僕は少しか天狗になっていた。リョーマよ、あまり調子に乗りすぎるなよ。グー最強神話の末路を忘れたのか?
数々の激戦が繰り広げられた牛乳ジャンケン。その中で一番熱かった戦いはどれかと言えば、5年生の秋ごろに行われた僕対シュウジくんの三本先取勝負だろう。
この日はおかわり用の牛乳が一本だけだったが、相変わらずジャンケンには多数の生徒が集まったので2グループに分かれて予選をし、各グループで勝利した僕とシュウジくんで決勝を行ったという形だ。三本先取ルールはシュウジくんの提案だ。
まず1本目が僕がグー、シュウジくんがパーでシュウジくんが白星発進。
「リョーマ!まだ1本目だ!」いつの間にか僕のセコンド的な立場で見守ってくれてたシュンくんが僕のそばで声援を送る。さあ、仕切り直して2回目の勝負だ。
「最初はグー!ジャンケンポン!」
しかしまたしても僕はグー、シュウジくんはパーで僕の負け。あっという間に後がなくなってしまい、クラス中もシュウジ3戦全勝の雰囲気がただよってきた。だがこんなところでひるんでいるわけにはいかない。9回2アウトランナーなしからでも十分逆転できるということを見せてやろうじゃないか。
そしてセコンドシュンくんからアドバイスが…
「リョーマ、ここまでシュウジはパーで来てるからチョキを出すべきじゃないか?」
…彼には申し訳ないが、このアドバイスには少し懐疑的であった。果たしてそんな簡単にいくものか?向こうだって僕がチョキを出すと思ってグーで来るかもしれない…」
迷いもあったが、僕はシュンくんを信じることにした。
そしていよいよ3戦目、教室のボルテージも最高潮。まるで皆格闘技を観てるかのようだった。
「最初はグー!じゃんけんポン!」
僕はチョキ、しかしシュウジくんはこちらが危惧していた通りグーを出してきた。3戦全敗で僕の負けだ。
「スマンリョーマ!オレもグーで来るかもって迷ったんだよ!」とシュンくんが僕に謝る。君は何にも悪くない。最終的にチョキを出すと決めたのは僕の意思だし、僕も相手がグーを出すかもと危惧していたから…
このジャンケンはぼくの人生で最も熱かったジャンケンといっても過言ではない。敗北の経験は基本黒歴史にするのが僕という生き物の習性だが、この敗北はまた別だ。小学校生活の給食時間で最も熱かった1日だ。今も思い返すとあの日の熱気がよみがえってくる。
敗者がいればもちろん勝者もいる。この牛乳ジャンケンの勝者のみに許された奥義がある。それは「ダブル飲み」である。2本の牛乳(紙パック)をその名の通り同時飲みするのだ。2つの牛乳を手に入れた者にのみ許された技だ。
もちろん僕も何度も勝者になっているので何度もこの奥義を行っている。2本の牛乳を同時に吸い上げるあの感覚は忘れられない。あの感覚を味わった瞬間「オレは勝者なんだ!」という感覚が五感にしみわたってきた。
2本飲み牛乳はいつもより濃厚に感じた。この感覚を味わうために僕は牛乳ジャンケンの戦場にかりだしだといっても過言ではなかっただろう。
それは欠席者や残した人の分の牛乳の争奪戦。またの名を「牛乳ジャンケン」である。
いただきますをした直後、すぐさま進行役(彼が勝手に仕切ってるだけ)のシュウジくんが牛乳の入ったかごの前に駆け付け「牛乳ジャンケン!」の掛け声とともに参加者が彼のもとに集まり、戦いのゴングが鳴らされる。
欠席者がいない日でも牛乳を残す人の存在により牛乳は2~3本ほど用意されている。
そしてこのジャンケンの参加者はだいたい8~10人ほど。この話を聞いた母は「牛乳なら家でも飲めるのになぜそんなに人が群がるのか?わざわざ牛乳にこだわる必要はあるのか?」と疑問を呈していたが、牛乳は給食で飲める唯一の飲み物、そして学校で飲める唯一の水以外の飲み物だ。だから僕にとっては給食の牛乳をもう一つ手に入れることにはかなりの意義があった。他のみんなも同じ思いだったかどうかはわからないが、牛乳は給食の影の人気メニューといっても過言ではないだろう。
人数が多い場合は数グループに分けてじゃんけんを行う。このやり方だと例えば牛乳2本の場合は2グループに分かれてそれぞれの勝者1名ずつに分け与えられるという形にできるので牛乳の数が複数本であればこのやり方のほうがスムーズと言えよう。
そして僕はこのジャンケンで連勝し続けることがかなりの栄誉であると思っていた。
最大で11連勝ぐらいしたことがある。
10連勝をしたあたりでシュンくんから「10連勝!やっぱりリョーマはジャンケン強いな~!」なんて言われて、僕は少しか天狗になっていた。リョーマよ、あまり調子に乗りすぎるなよ。グー最強神話の末路を忘れたのか?
数々の激戦が繰り広げられた牛乳ジャンケン。その中で一番熱かった戦いはどれかと言えば、5年生の秋ごろに行われた僕対シュウジくんの三本先取勝負だろう。
この日はおかわり用の牛乳が一本だけだったが、相変わらずジャンケンには多数の生徒が集まったので2グループに分かれて予選をし、各グループで勝利した僕とシュウジくんで決勝を行ったという形だ。三本先取ルールはシュウジくんの提案だ。
まず1本目が僕がグー、シュウジくんがパーでシュウジくんが白星発進。
「リョーマ!まだ1本目だ!」いつの間にか僕のセコンド的な立場で見守ってくれてたシュンくんが僕のそばで声援を送る。さあ、仕切り直して2回目の勝負だ。
「最初はグー!ジャンケンポン!」
しかしまたしても僕はグー、シュウジくんはパーで僕の負け。あっという間に後がなくなってしまい、クラス中もシュウジ3戦全勝の雰囲気がただよってきた。だがこんなところでひるんでいるわけにはいかない。9回2アウトランナーなしからでも十分逆転できるということを見せてやろうじゃないか。
そしてセコンドシュンくんからアドバイスが…
「リョーマ、ここまでシュウジはパーで来てるからチョキを出すべきじゃないか?」
…彼には申し訳ないが、このアドバイスには少し懐疑的であった。果たしてそんな簡単にいくものか?向こうだって僕がチョキを出すと思ってグーで来るかもしれない…」
迷いもあったが、僕はシュンくんを信じることにした。
そしていよいよ3戦目、教室のボルテージも最高潮。まるで皆格闘技を観てるかのようだった。
「最初はグー!じゃんけんポン!」
僕はチョキ、しかしシュウジくんはこちらが危惧していた通りグーを出してきた。3戦全敗で僕の負けだ。
「スマンリョーマ!オレもグーで来るかもって迷ったんだよ!」とシュンくんが僕に謝る。君は何にも悪くない。最終的にチョキを出すと決めたのは僕の意思だし、僕も相手がグーを出すかもと危惧していたから…
このジャンケンはぼくの人生で最も熱かったジャンケンといっても過言ではない。敗北の経験は基本黒歴史にするのが僕という生き物の習性だが、この敗北はまた別だ。小学校生活の給食時間で最も熱かった1日だ。今も思い返すとあの日の熱気がよみがえってくる。
敗者がいればもちろん勝者もいる。この牛乳ジャンケンの勝者のみに許された奥義がある。それは「ダブル飲み」である。2本の牛乳(紙パック)をその名の通り同時飲みするのだ。2つの牛乳を手に入れた者にのみ許された技だ。
もちろん僕も何度も勝者になっているので何度もこの奥義を行っている。2本の牛乳を同時に吸い上げるあの感覚は忘れられない。あの感覚を味わった瞬間「オレは勝者なんだ!」という感覚が五感にしみわたってきた。
2本飲み牛乳はいつもより濃厚に感じた。この感覚を味わうために僕は牛乳ジャンケンの戦場にかりだしだといっても過言ではなかっただろう。
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