リョーマ伝~小学生編~

一刀星リョーマ

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おこぼれ話36 ジャンケンはグーが最強という神話

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小学2年生の冬頃、僕はおはスタで後に自分の人生を微妙に変えるある企画を目にした。
それは「人はジャンケンでどの手をいちばんよく出すのか?」というものだ。
この企画ではレポーター役の子役が道行く人数十人ほどとじゃんけんを行い、グー・チョキ・パーどれを出す人が一番多いのかを調査するというものだ。
結果としてチョキを出した人数が圧倒的に多かった。その数日後に観た別の番組でも同じような企画をやってたが、そこでもチョキを出した人数が圧倒的であった。
このことから僕は「ジャンケンはグーだしときゃ高確率で勝てるんじゃね?グーが最強なんじゃね?」と考えるようになってきた。ジャンケンに最強なんてないのに。

それから僕はジャンケンで最初には必ずグーを出すようになっていった(念のため言っておくが”最初はグー”のことを言っているわけじゃない)。「グー最強神話時代」の始まりだ。あいこの時は他の手も出したけどね。
実際番組で見た通り、自分と対戦した相手は高確率でチョキを出していた。そして僕はグーを出して数えきれないぐらい勝っていった。故に「グー最強神話」の信ぴょう性は自分の中で日を追うごとに増していくこととなる。
「グーを出し続ければオレはほぼ無敵だ!矢でも鉄砲でも持ってきやがれ!オレ様のグーで返り討ちにしてやるぜ!」…自分はまるでジャンケンの世界チャンピオンになったかのように天狗になっていった。

だがそんな最強神話にも陰りが見え始める。
3年生の秋~冬ごろ、全校生徒参加の集会でペアになった人とじゃんけんして、負けた人は電車のように勝った人の後ろにくっつくというジャンケン列車というゲームをやった時のこと。
自分は4戦目まで勝ち進んでいた。それもすべてグーで勝利した。
僕の後ろにくっついていた6年生たちも「オレチョキ出してリョーマに負けた。」「え?お前も?オレもそう。」みたいな会話をしていた。そんな話を小耳にはさめば「ああ…やっぱりグーは最強なのだ…」と余計天狗になっていく。
しかしこの後の5戦目、下級生との女子との対決でついに神話にレクイエムが流れ始める。
彼女と向かい合った瞬間、さっきの自信はどこへやら。僕は急に弱気になり始め、嫌な予感がしてきた。「グー最強神話はいまだ続いているがどんな記録や物語にも終わりはある。記録はいつも儚いなんて言葉があるじゃないか…ここまで勝ち続けられているなんて物語としてできすぎじゃないか?ここまできれいに続くのだろうか?次の相手はそろそろパーを出してきそうな予感がする…そろそろチョキを出すべきではないか?」
…このように迷いがあったが自分はすぐに「いや!やっぱりオレはグー最強神話を信じたい!」と、グーで勝負を挑むことにした。
そして運命の時…

「最初はグー!じゃんけんポン!
…やった~!パーで私の勝ち~!」
…僕はついにグーで負けてしまった。当然悔しさが募る。ずっと信じてきたグーで負けたのだから。
その後の移動で通りかかったクラスメイトのトモくんがまだ生き残ってたからますます悔しくて…
しかしこの時点では「今はたまたま負けただけ。オレはこれに懲りずまだまだグーを信じ続けるぜ!」とまだ最強神話は継続中であった。

しかし時を同じくして「リョーマは最初に必ずグーを出す」という話がクラス中でまことしやかに知られ始めるようになる。
あれから数か月後、今度は学年集会でジャンケン列車をやることとなったが、この時僕は1戦目でリュウくんと対戦し、自分はグー、リュウくんはパーで僕は初戦敗退。
その後行われた2回目でも僕は初戦でリュウくんと対戦。同じく僕はグーで敗れた。
そして僕も「自分はグーばっかだす」ということが周りに知られ始めていることを知ることとなる。
それからさらに数日後に転機が訪れる。体育の授業でドッジボールをやる際にチーム分けのために向かいあった人とじゃんけんをすることとなった。
僕の対戦相手は同じ列に並んでいたセイタくんから「パーを出すように」と指示をされているのを横目に見てしまった。「リョーマはグーを出す」の話を広めたのはおそらく彼か。
「よし!ならば!」と僕はそいつに対してチョキを出してやることにした。
その結果、相手はやはりパーだったのでこっちの勝利。
しかしそれから数日後にもセイタくんは同じく僕とじゃんけんすることとなった別の子にパーを出せの指示を出してきた。
もちろん僕はチョキで返り討ち。彼の作戦またも破れたり。
これで僕もようやく目が覚めた。「ジャンケンに最強はない」ということを思い出したのだ。
以降僕は最初にチョキやパーも出すようになっていった。
こうして「グー最強神話」はまさに幻のように消えていき、幕を閉じた。
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