リョーマ伝~小学生編~

一刀星リョーマ

文字の大きさ
上 下
164 / 504

おこぼれ話26 これが真の交換日記の巻

しおりを挟む
時は3年生の秋。前回取り上げた「即席交換日記」から1年ほどが過ぎ、その存在が僕を含めた人々の記憶から消え去って等しいころ…僕はセイタくんから誘われた
「交換日記やろうと思うんだけど、お前もどうだ?」
「交換日記…そういや1年ほど前にそんなんやってたこともあったな…懐かしいじゃねーか…」
交換日記の懐かしさと昨年あっさり終わってしまったことの無念を一瞬にして思い出した僕の返答は「イエス」だった。こうして「本格的交換日記」の幕が切って落とされたのであった。

まずはこの交換日記のシステム・ルールを説明しよう。
本来の交換日記のルールにのっとり、1日につき書くのは1人。翌日の登校の際にノートをもっていって次の人に渡すのだ。
土日祝日や夏休みなどの長期休暇時は中断。休みの前の日に自分の番が回ってきた人は休みの期間中ノートを保管(もちろん日記もしっかり書く)し、休み明けの登校日に持っていくのだ。僕も休み前の金曜日に回ってきたことは何回もあるし、夏休みだったか冬休みだったかの前の終業式の日に回ってきたことも1回ある。

最初は僕とセイタくんとトモくんの3人から始まったが、期間中メンバーの加入や脱退が複数回あった。
開始して1カ月ほどで最初の追加メンバー、ソラくんが加入。わずかな期間で4人体制となった。
それからさらに1~2ヵ月ほどたって、唯一の女子メンバー、セイちゃんが加入。5人体制となる。
しかし彼女はソラくんとのトラブルがあったらしく、4年生の初めあたりで脱退。それと入れ替わる形でシュウジくんが加入し、5人体制が保たれた。

メンバーが書く内容にはいろいろと特色があったほか、長期化するなかでグループ間で様々な流行も生まれた。
トモくんやソラくんは自分の考えたキャラのイラストを添えることが多く、これがグループ内での「オリキャラ創作ブーム」につながった。
元々はトモくんが積極的にオリキャラを発表していたのだが、それにソラくんが続き、さらにセイタくんや僕も続いた形だ。

そしてそこから派生したブームが「オリキャラを探せ!」ブームだ。
これは他の人のものを含めた過去の記述欄にオリキャラを数体描き加え、その日の自分の記述欄にオリキャラのイラストとともに「このキャラを〇体探せ!」と記述し、他のみんなに探してもらうというものだ。発起人はセイタくんで、僕やソラくんも後に続いた。
本来なら自分の記述に書き足されることを不快に思う人もいるかもしれないが、僕含めメンバーにはそのことを不快に思ってた人はだれ一人おらず、僕はむしろオリキャラが描き加えられることは名誉なことと思っていた。実際僕の記述にセイタくんがオリキャラを描き加えてくれた時はうれしかったものだ。そのうえ僕含め「オリキャラを探せ!」を行った人たちは「他の人の記述を必要以上に改変したり、オリキャラを描き加えるために消したりしない」という暗黙のルールをしっかり守っていた。
ちなみにキャラの隠し場所はぱっと見でわかるものもあれば、セイタくんは「芯を出してないシャーペンでなぞってできた跡でキャラを描く」という凝った隠し方をしていた。

セイちゃんはキレイな字とかわいらしいイラストが特徴的で、当時人気だったペン問のイラストも描いていた。彼女には2つ上の兄と1つ下の弟がいて、彼らがコロコロを読んでいたという影響もあるだろう。
脱退を発表したときの記述欄には涙を流すイルカのイラストが描かれ、何か悲しげな雰囲気をかもし出していた。
上記のような理由で脱退したということもあるが。
ちなみに脱退後、セイタくんが彼女の記述欄にツッコミなどのいたずら書きを行うことが彼のマイブームとなっていた。

で、僕はどんなことを書いてたかというと…結構一言であっさり済ませることが多かった。
念のため言っておくが日記がめんどくさかったとか嫌々参加してたとかではない。欄いっぱい埋めるようなネタも思いつかないし、思いついたことを書いちゃえと言った感じであった。
疲れ果てたときには「疲れた、今日」と突然倒置法で記述したこともある。
みんなだって毎日勉強と遊びで疲れてんだし、しかも習い事やってるやつもいて、彼らもしっかり書いてるんだし欄を埋めろとまではいわんがもうちょいしっかり書けよ…
オマケに字も汚かったんで(周知の事実とは言え)そのことも散々つっこまれた。

紆余曲折ありながらも1年以上にわたって続いた日記。
しかし4年生の3学期ごろから急に回ってこなくなり、メンバーからも交換日記について言及されることはなくなっていった。
そんななかで僕はセイタくんに日記のことを聞いたが、「ノートが行方不明になったので中断」のこと。
中断前に最後に誰がノートを持ってたかもわからないのこと。
こうして本格的交換日記も闇の中へと消えていく形で幕を閉じた…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

リョーマ的Y2K子供文化史考

一刀星リョーマ
エッセイ・ノンフィクション
あの時少年だった筆者があの時の少年少女とそうでなかった人たちに贈る、2000年代~10年代初頭の子供文化に関する考察と持論集

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...