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記録ノ132 劇団6年生解散公演~有終の…美?~

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いよいよ迎えた保護者公開日当日。泣いても笑ってもこれが6年間の学芸会の最後。
児童公開日は2日で全学年の発表を行うが、保護者公開日は朝から夕方近くまで1日だけで全学年の発表を行う。
生徒たちは自分の学年の発表時間に合わせて登校する形だ。ゆえに自分たちは年によって午前中に登校したり、午後から登校したりとバラバラだった。
だが毎年1年生はトップバッターで、6年生が大トリを務めることは基本変わらない。
つまり僕たちは今年はラストバッター。全学年で最も遅く登校する。

登校時間は昼の1時過ぎ近く。家で昼食を済ませた後に学校に行く経験は初めてだ。義務教育じゃ後にも先にもない。
教室に全員がそろった後、M上先生から「これが本当に最後だから悔いの残らぬよう頑張ろう」的なお言葉をいただき、クラスの士気が高まった。きっと1組も同じ気持ちだったであろう。
その後移動した待機場所の理科室でちょうど行われていたあの3年生の発表の様子をTVで見ながら、僕はゆっくり深呼吸。
自信はそれなりにあるとはいえ、やっぱりこれが最後の舞台だと思うと緊張する。
だが焦らず行こう。数年後振り返った時にあの時はよくやったと思えるような舞台にしようじゃないか。心の中でそう呟いて僕は体育館へ向かった。
「さあ、最高のフィナーレにしようぜ」

…しかしそんな調子いいこと言ったり、直すところないとか言って調子乗ってバチがあたったのか、その肝心な最後の舞台で僕は大失態を犯す。
ゲーリックがサボった住民たちを監獄島に送った直後のセリフ「私に逆らうものは皆監獄島に送って思い通りの王国を作るのだー!フハハハハ!」というゲーリックの恐ろしさ、残虐さを観客に訴えるという意味でとても重要なセリフがあるのだが、僕は最後の「フハハハハ!」という笑い声を忘れてしまった。
「思い通りの王国を作るのだ」でこのセリフを言いきったぞ!って気になってしまってたものであった。しかしその後次のセリフに移らず一同シーンとしていたもんだから僕は「ヤベッ!」となって慌てて「フハハハハ!」の笑い声を発した。でも発したのはごまかし笑いではなくしっかりとした悪役の高笑いであったのでご安心を。

ここでちょっと寄り道の話をしよう。前回取り上げたシュンくんもそうだが僕はこの劇では他の人の演技やアクションに関心を寄せたり、感銘を受けたりすることが多かった。
今までそのようなことは数えるほどしかなかったが、今回は感銘を受けた演技が本当に多かった。
僕の最初の出番の次の幕でシュウジくんが演じた老人役は、彼の老人的な動きのうまさに感動した。まるで本物の老人のようだった。児童公開日でも下級生や先生方から彼の動きに称賛の声が多数寄せられており「動きひとつでここまで人の心をつかむってすごいな」と感心した。
主人公、ミシェル役のエノウエさんも僕の出番が終わった後の幕で酒と絶望に酔いつぶれて勇気を忘れてしまった大人たちに勇気を思い出せと訴えるシーンも迫力があり、まるでプロ級であった。作品の大きなテーマの一つである「勇気の大切さ」をしっかり観客に訴えることに大きな役割を果たしたと思う。
当該セリフはミシェル役のオーディションのお題で、ゲーリック役のオーディションが終わっていろいろ準備したりしている中で横目にその様子を観ていたが、その時点ですでに演技が完成されていた。1枠は間違いなく彼女で決まりだな(ミシェル役も2枠)と思いながら観ていた。

話は戻って僕の次の出番の5幕。
ここは間違えずにスムーズに進められた…そう、終盤のセリフになるまでは。
そう、一番最後のセリフ、ゲーリックがミシェルにかかってこいというストーリー上重要なセリフ、僕のこの劇での最後のセリフ、そして僕の小学校生活での学芸会での最後のセリフ、6年間の集大成となるべき大事なセリフでまたもや大失態を犯してしまう。
「ミシェルよ!わたしのおしょろ…恐ろしさを思い知らせてやる!」
…ハイ、かみました(本日2回目)。直すところないとか思い込んだり褒められてちょっと天狗になっちゃってるからこうなるんだよオマエは。
こうして僕の最後の出番は幕を閉じた。

その後のエンディング。キャスト紹介が行われ、僕はシュンくんと一緒に決めポーズ。
2人でいろいろ考えた結果、ゲーリックの超能力発動時のポーズになった。
最後はみんなで合唱して6年間の学芸会を締めくくった。
発表が終わった後の後片づけの前に6年生全員で記念撮影。
皆なんでもいいからポーズ取ってとのことだったので派手なポーズをしたくなかった僕は同じゲーリック役のシュンくんの横で腕を組んだ。
この時の写真は卒業アルバムの1ページ目に使われている。今でもアルバムを開くと1ページ目で真顔で腕を組む僕が出迎えてくれる。

こうして僕の最後の学芸会は失敗という汚点とともに幕を閉じた。
他のみんなはよくやった。僕を除いては完璧な舞台になったと思う。
僕だけが唯一の汚点だったのだ。みんなごめん…
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