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記録ノ102 リョーマが見た3.11~後編~

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震災から一夜明け土曜日、TVはまだ震災関連の番組が続いている。当然、自分の好きな番組は休止だ。
前回にも書いた通り、当然の措置なのはわかっているが、やはり気が滅入る。「被災した子供たちは好きなことをしたくてもできない状況なんだぞ」ってあの時の自分に言ってやりたい。

それからお昼前ごろに僕は両親と一緒に大型スーパーへ買い物へ行った。
やはり気持ちが滅入ってることには変わりはない。少しでもリフレッシュになればと思ってだ。もちろん、被災者の気持ちを考えればやすやすとそんなこと言ってられないが。
その大型スーパー内に設置されたTVにもやはり被災地の状況が映っており、足を止めてその様子を見ている人たちが何人もいた。
フードコートで食事を済ませたら家路へ。一時の解放感は我が家のドアを開けた瞬間再び暗い現実へ戻る。

帰宅後、僕は父に昨日からせがみ続けているあのことをまたせがんた。
「レンタルビデオ屋に連れてってほしい」と
もちろん最初は昨日のようにかたくなに拒否されたが、せがみ続けた結果か、僕があまりにもしつこくて折れたか、父も行きたかったからか、その全部が理由か…ついにこの日の夕方、父に連れてってもらえることとなった。
実はレンタルビデオ屋に行くのも何年かぶりだったりする。父が仕事等の帰りに借りてきてくれたことはあったが、自分が直接店に入るのは久しぶりのことであった。

いざ店に入ってみると、結構な人が借りに来ていた。やはりみんな同じ考えか。レンタル中で借りられない作品もいっぱいあった(震災前のタイミングで借りられてたやつもあるだろうが)。
僕はいろいろ悩んだ結果、ケロロ軍曹を2本、何のアニメか忘れたが別のアニメを1本、計3本借りた。
父も洋画のDVDを2本借りていた。

その夜、夕飯を済ませた後いよいよお待ちかねのDVD鑑賞の時間。
最初に観たのはこの日ちょうど休止だったケロロ。3年目シリーズでケロロが着ぐるみショーする話とかが入ってる巻だ。
暗い状況下の中、たっぷりと笑いをいただいた。こういう時こそ笑いを…とまでは考えたチョイスではなく、単に好きだから選んだのだが、このセレクトは正解だったと言える。
1本見終わったら「次はお父さんの番よ」との母の一言で次は父が見たい作品に交代。「オレの出番は終わった」と言わんばかりに僕は寝る支度をした。
今ならあの時の自分にこう言ってやりたい。
「レンタル連れてってもらって、好きなモン観れて、たっぷり笑えてよかったな。だが被災地の子供たちはこんな自由なことはできないし、笑ってられる状況じゃないということを胸にとどめておけ」と。

翌日曜もまだ震災関連の番組が続いている。
でもTVH(テレ東系)は通常の日曜朝のアニメをやってくれている…が、僕の好きな「ポケモンスマッシュ」だけは休止、その後の「メタルファイトベイブレード」以降が通常のアニメであった。
まだ子供だった僕は「ポケスマだけ休みなのはポケモンファンに対する差別・冒涜だ!」とキレた。テレ東もいろいろ事情があったのだろうから仕方ない。
ところでこの前日深夜にテレ東は予定通りテガミバチを放送してかなりの抗議が来たのは結構有名な話かと思うが、その翌日、僕のようなポケモンファンが絶望に追いやられたことを忘れないでほしい。
テレ東さん、あの時はキレてごめんなさい…
結局この日はDVDの続きを見たりして過ごした。

そしてこの日の夜、今回の地震・震災を「東北地方太平洋沖地震」「東日本大震災」と命名するとの発表があった。
TVには避難所の様子が映されていた。不安そうな子供たちの様子も映った。「自分が被災者だったらどうだったか」をこの時考え始めるようになった。

3月14日月曜、震災後初の登校日。
学校の廊下の照明も節電対策で消されていた。「やっぱり公共の場は対策が速いな」と思った。
教室に入ってもやはり皆が震災の話ばかりしていた。あるクラスメイトは「被害は阪神淡路の〇〇倍だから復興は絶望的」なんて軽々しく言っていた。子供故に配慮が足りなかったのだろうが、被災者の前でそんなことは言ってはいけない。
そしてM上先生が入ってきて朝の会。あいさつした後の第一声も当然震災の話題だった。
「みんなは震災の特番を観てましたか?」
それに対する答えは皆が「観てない」「好きな番組やってないからゲームやってた」みたいな感じだった。もちろん僕も「DVD観てた」と答えた。
そして先生は「先生はずっとその番組を観てました」との返答。
「被災者の過酷な現状に涙し、懸命に生きる様子に勇気をもらいました。我々も力を合わせて頑張っていきましょう」と生徒たちに放った。
同日、千葉のいとこの父(つまり僕の叔父)から連絡があり、いとこ一家の無事が確認された。その翌日には福島の友人の母からの連絡があり、彼の無事も確認。身内の無事が立て続けに判明して安堵した。

この7年後、僕は胆振東部地震で停電や食糧不足の被害にあい、この時東北の被災者たちがあった被害を肌で感じることになる。
あの時は子供故に理解しきれてない部分もあったが、自分が被災を経験した今ならあの時の大変さがわかる。
この小説を読んでくださってる方々の中にも、自然災害の被災経験者がいらっしゃるかもしれない。
大地震、震災、大きな自然災害を知る者ができることは被害や当時の状況を後世に伝え、自分や大切な人の命を守るため、またいつ起きるかわからない災害に備えることである。


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