リョーマ伝~小学生編~

一刀星リョーマ

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記録ノ39 王の資格

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月は巡って10月下旬。学芸会に向けて動き出す。
僕たち3年生が行う劇は「ぞうのたまごのたまごやき」だ。
ご存じのない方のために説明すると「ぞうのたまごのたまごやき」は寺村輝夫氏の童話シリーズ、「ぼくは王さま」の一編。
たまご、特に卵焼きが大好物の王様の国で王子様が誕生し、お祝いのパーティを行うこととなったのだが王さまは祝いの席で卵焼きをださないとお祝いはやめだと言い出してしまう。
でもたくさんの卵は用意できない…ならば象のたまごで作ればいい!というわけで大臣たちは象の卵を探すことに…というストーリーだ。
「象は卵を産まないのに象の卵とはこれいかに?」とお思いであろうが、これがクライマックスの伏線だったりする。

まず準備は学年目標決めから始まった。何人かにアイデアを出してもらい、学年の多数決で決めるのだ。
僕もアイデアを出した。「自分たちだけではなく見ている人たちに夢と感動を与えよう」というものだ。
…なんてカッコつけな目標なのだろう。実際カッコつけて考えたのだが。
実際この時僕のそばに座っていたクラスメイトのある男子からも「どうやって夢と感動を与えるんだよ」と散々ダメ出しされた。
しかし多数決の結果学年の8割近くの得票による圧勝で学年目標は僕のアイデアが採用されることとなった。
ダメ出ししていた彼は「なんでだよ…」的な表情であった。

…さて、役決めであるが僕の一番希望は王さまだ。
もちろん定員オーバーならオーディションとなる。
前回、前々回と一番希望の役を逃しているので3度目の正直といったところであった。
しかしこの劇は5幕構成であるが王さまが出るのは1幕~3幕の計3幕でその3幕すべて一人でこなすので王さま役の定員はわずか一人。
そして希望者は僕含め7人。今まででいちばん倍率が高い。
まさに「絶対に負けられない戦い」だ。自分にとっちゃこの年の北京五輪より熱い戦いであった。

オーディションのお題となるのは王さまがお抱えのシェフに今日の食事は何がいいかと尋ねらた際のこのセリフ。
「た・ま・ごっ!卵焼きが一番おいしいよ。甘くてふんわりしたのがいいね。」
僕の順番は最後から2番目。
僕のひとつ前の出番だったクラスメイトのDくんがユーモラスな演技で審査員のS男先生からも「かわいい」と太鼓判を押されており、自分は「ああ、これで負けた!」と思った。
問題の自分の番。自分の中では王さま役はDくんで決まりだろうと思ってたから「どうせ負けるんだ、気楽に行こうぜ!でも自分なりの全力を出そう!」と演技に挑んだ。
僕はこの王さまを「ふくよかでダンディーで金持ちなおじさん」と頭の中でイメージしていた。
だから金持ちでダンディーな感じで演技した。負けると思いながらも精いっぱいの実力を出して。

そしていよいよS男先生の口から結果発表が…
「王さま役は…リョーマくんです!」
「やったー!」僕は思わずガッツポーズした。」苦節3年、高倍率の激戦を制し念願の一番希望を勝ち取ったのだ。
自分の中では負けると思っていたから感動もひとしおだ。

さて、果たして僕たちは劇を成功させ、夢と感動を与えられるのか!?
続きは次回!
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