リョーマ伝～小学生編～

記録ノ25 81の壁を越えろ～九九免許試験～

秋になって僕たち2年生は算数にて2年生最大の課題と言える”アレ”に挑むこととなる。
そう、”アレ”とはかけ算九九である。
かけ算といえば3年生で習う割り算において必要となるし、面積の計算の公式にも使われている。
この先の人生、日常的にも必要になる場面が多くあるし、就く職業によっては足し算引き算より使う機会が多いという子も多いだろう。
小2だけでなく小学生の算数、ひいては義務教育の算数・数学史上最大の課題と言えるだろう。

そして授業では九九の暗唱が行われる。
授業中に1人ずつ前に出て先生の前で指定の段を暗証し、間違えずに言えたら合格、10秒以内に言えたら”スーパー”に認定される。授業中に達成できなかった場合は休み時間にリベンジ可能である。
すべての段で合格できた人には「九九免許証」がプレゼントされる。
これは運転免許を模したカードで、本物の免許のように自分の顔写真が入っている。
なお、写真は夏休み前に学校でひとりひとり撮られたもので、このときは「この写真は2学期にあることに使う」とだけ言われこの免許のことは九九を習い始めるまでトップシークレットであった。

僕はこの免許が欲しくて苦手な算数において初めて心から頑張ろうと思えた。
なんとしても一番乗りで手に入れてやろうと思った。
そして僕の免許試験…もとい暗唱テストが始まった。
習う順番はバラバラだ。最初は5の段からスタート。初回でいきなり多くのクラスメイトが合格していく中、僕は授業時間中に2度チャレンジしたが残念ながら不合格。
その悔しさをバネに帰宅後猛特訓、何度も暗唱しまくった5の段。
そして翌日の授業、スーパーは達成できなかったが、かまず間違えずに合格。

そして残りの段も合格、願わくば5の段で達成できなかったスーパーで合格するため（なお、免許は全部スーパーでやらなくても合格さえすればもらえる。）、毎日九九の猛特訓。
ある時は学年誌の付録でついてきたポケモンの九九ポスターを見て、またある時は進研ゼミの付録の九九CDなるものを耳にタコができるまで聞いて…あの時が人生で一番算数数学に真面目になってた時期かもしれない。

そして僕も目標通り次に習った2の段で見事スーパー合格を達成し、以降の段も次々とスーパーで合格達成。
最後に習ったのが9の段。言ってしまえば9×9以外は今までの各段の×9の答えと同じなので正直個人的には1の段並みに簡単に感じた。先生も「9の段は今までのおさらいのようなもの」と言ってたぐらいだ。
正直言って最初の5の段が一番苦戦したかもしれない。あの時は勉強不足だっただけかもしれないが。

そして暗唱を披露する瞬間がやってきた…
「…9×7＝63、9×8＝72、9×9＝81。」
「リョーマくん、9の段スーパー、合格です！」
ついに僕はすべての段を制覇した。算数苦手人間の僕が1番乗りの全段制覇者（一番乗りはほかにもいっぱいいたけどね）となったのだ。
努力って本当に報われるんだと子供心に痛感した。正直自転車に乗れた時より感動したかもしれない。

そして翌日、僕たち一番乗り合格者に免許が交付された。免許証には自分の写真、名前とともにこんな一文が記されていた。
「あなたは九九をいつどこでも誰に聞かれても答えることができます。
生きている間ずっと有効」