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記録ノ11 ウッス!オラオーディション!~さるかにリベンジマッチ~
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1年生の学芸会、僕たちが行う演目は「さるかに合戦」の劇だ。
僕の通っていた小学校では学芸会は1年生は1年生全クラス、2年生は2年生全クラスといったように1学年1演目、同じ学年の全クラス合同で演目を行う。
すなわち1組は1組の演目、2組は2組の演目。という形式でなく1組と2組、2クラス合同で一つのものを作り上げるのだ。
他のクラスとひとつのものを作り上げるなんて幼稚園の頃はほとんど経験してこなかったので新鮮だった。
劇は基本的に1役につき演者が複数人割り当てられる。
同じ役でも場面によってどの児童が演じるのかが異なるのだ。
…さて、僕が第一志望として希望した役は臼である。
臼といえばサルにトドメを刺す重要な役割を担うキャラクターだ。
ではなぜ臼が第一志望だったかの言うと、実は幼稚園年少の時のお遊戯会でもさるかに合戦をやっていて、自分は臼になりたかったけど、あの時はなれなかったからである。(この時僕は栗役)
しかし役ごとに定員は決まっている。定員オーバーした場合はオーディションで決まるのだ。
オーディションは先生が審査員となり、児童が指定されたセリフを読み上げ、演技がうまかった人が正式に役になるというシステムだ。
臼役の定員は2名に対し、立候補者は僕を含め3人、確率は3分の2。
自分にとってこれはまさにリベンジマッチ。たかが学校行事だというのにこのオーディションにすべてをかけるかのような熱量の入れ方であった。
今の僕はまさに人生をかけた新人俳優だ。
オーディションの課題となったセリフはサルに立ち向かう仲間を探すカニを呼び止める「かにどんかにどん、どこへ行く?」というセリフ。
先生は僕たち3人に「大きな声で言ってください」と注文した。
僕の順番は最後。
僕は精いっぱいの無邪気なぐらいの大きな声で「かにどんかにどん、どこへ行く?」を叫んだ。
…全員の演技が終わった直後、先生から即結果発表。
「Kくんの演技よかったですね~!Yくんもよかったですね~!二人とも合格で~す!」
…僕は幼稚園のころからの3年越しの雪辱を果たすことができなかった…
僕はその場で泣き崩れた、リベンジを果たすことができなかったこと、第一志望の役になれなかったこと、自分だって精いっぱい大きな声で演技したのに受け入れられなかったこと…悔しさと解せぬ気持ちで胸がいっぱいになった。
しかしその後学芸会終了後に送られてきた劇を見た6年生からの感想に「臼役の声が大きくて迫力がありました。」との声が複数あったのを見て僕は子供心に「だからあの2人は選ばれたんだな、臼役はあの2人だからできたんだな」と納得した。
あれから数年たって理解した。あの時オーディションで先生が求めていたのは「野太い声」だったことを。
臼は言うまでもなくパワータイプなイメージだ。当然先生もそれに見合った野太い声のイメージを持っていたのだろう。
でも小1のこに「野太い声」なんて言っても到底理解できないだろうからわかりやすく「大きな声」と説明したのだろう。
でも僕の演技は大声は大声でも先生の求めるパワータイプ的な野太い声とはかけ離れた「無邪気な大声」であった。
でも合格した2人はしっかりと「野太い声」であった。
「大きな声」の解釈が勝敗を分けたのだ。
その後、僕は2番希望のサル役となるのだがその話は次回。
僕の通っていた小学校では学芸会は1年生は1年生全クラス、2年生は2年生全クラスといったように1学年1演目、同じ学年の全クラス合同で演目を行う。
すなわち1組は1組の演目、2組は2組の演目。という形式でなく1組と2組、2クラス合同で一つのものを作り上げるのだ。
他のクラスとひとつのものを作り上げるなんて幼稚園の頃はほとんど経験してこなかったので新鮮だった。
劇は基本的に1役につき演者が複数人割り当てられる。
同じ役でも場面によってどの児童が演じるのかが異なるのだ。
…さて、僕が第一志望として希望した役は臼である。
臼といえばサルにトドメを刺す重要な役割を担うキャラクターだ。
ではなぜ臼が第一志望だったかの言うと、実は幼稚園年少の時のお遊戯会でもさるかに合戦をやっていて、自分は臼になりたかったけど、あの時はなれなかったからである。(この時僕は栗役)
しかし役ごとに定員は決まっている。定員オーバーした場合はオーディションで決まるのだ。
オーディションは先生が審査員となり、児童が指定されたセリフを読み上げ、演技がうまかった人が正式に役になるというシステムだ。
臼役の定員は2名に対し、立候補者は僕を含め3人、確率は3分の2。
自分にとってこれはまさにリベンジマッチ。たかが学校行事だというのにこのオーディションにすべてをかけるかのような熱量の入れ方であった。
今の僕はまさに人生をかけた新人俳優だ。
オーディションの課題となったセリフはサルに立ち向かう仲間を探すカニを呼び止める「かにどんかにどん、どこへ行く?」というセリフ。
先生は僕たち3人に「大きな声で言ってください」と注文した。
僕の順番は最後。
僕は精いっぱいの無邪気なぐらいの大きな声で「かにどんかにどん、どこへ行く?」を叫んだ。
…全員の演技が終わった直後、先生から即結果発表。
「Kくんの演技よかったですね~!Yくんもよかったですね~!二人とも合格で~す!」
…僕は幼稚園のころからの3年越しの雪辱を果たすことができなかった…
僕はその場で泣き崩れた、リベンジを果たすことができなかったこと、第一志望の役になれなかったこと、自分だって精いっぱい大きな声で演技したのに受け入れられなかったこと…悔しさと解せぬ気持ちで胸がいっぱいになった。
しかしその後学芸会終了後に送られてきた劇を見た6年生からの感想に「臼役の声が大きくて迫力がありました。」との声が複数あったのを見て僕は子供心に「だからあの2人は選ばれたんだな、臼役はあの2人だからできたんだな」と納得した。
あれから数年たって理解した。あの時オーディションで先生が求めていたのは「野太い声」だったことを。
臼は言うまでもなくパワータイプなイメージだ。当然先生もそれに見合った野太い声のイメージを持っていたのだろう。
でも小1のこに「野太い声」なんて言っても到底理解できないだろうからわかりやすく「大きな声」と説明したのだろう。
でも僕の演技は大声は大声でも先生の求めるパワータイプ的な野太い声とはかけ離れた「無邪気な大声」であった。
でも合格した2人はしっかりと「野太い声」であった。
「大きな声」の解釈が勝敗を分けたのだ。
その後、僕は2番希望のサル役となるのだがその話は次回。
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