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公園にて(時雨目線)
しおりを挟むこの世界はどうしようもないくらい綺麗で、けれど、意味もないくらい屑みたいな人間が住み着いている。
そう、意識し出したのはいつからだろうか。飲み物を奢ってくれると言って、自販機に向かっている友達の後ろ姿をただじんわりと見つめなが
・
ら、私は考えていた。
自分を偽り、また、世界を虚無しながら私は、最果てのない空ろな虚空を見つめ、ただ生きている。
活力ない瞳で写し出す世界はいやに空っぽでこの先には何もないような脱力感に日々襲われる。
そう言えば、ここら辺に自動販売機あったかな。いや、なかった気がする。その思考が合致したように、飲み物を買おうとした彼はここらに存在しない自販機をキョロキョロと探し出す。しかし結局なかったのか、彼はこの公園から出て、自販機を探しに行った。
空を見る。
此方に伸びる消え入るそうな弱い日の光は、闇に飲まれようとしていた。実際、ここらはもう暗くなり始めている。
前を見る。
すると、いつ来たのかは知らないが、柄の悪そうな奴等がたむろっていた。ま、見なけりゃ絡まれる事もないだろう。
私は、いつ戻ってくるかも分からない友を待ちながら、ベンチに座っていた。
しばらくして。
「ちょっと、まって! ブランチ!」
遠くからそんな声が聞こえた。
しかし、私はそんな声より気にしないといけないことがある。それは目の前にいる、尻尾をフリフリしながら私をキラキラした目で見ている犬だろう。
犬種は多分シェパードだ。なかなか大きいところを見ると、年はそれなりに取っていそうだ。頭を撫でてあげると、それだけでシェパードは嬉しそうに降る尻尾の早さを早めた。
「すみません! うちのブランチ、なにかしませんでした?」
声かけに前を見ると、そこには可憐な少女が居た。双方にはえている、髪止めされたツインテールを揺らしながら、ウエストはくびれ、しかし出るところは出ている胸を見ているといかんせんイラッとした。しかし、まるでゆさちーみたいな人だな。......ん? と言うか、前に居る人ゆさちーじゃ?
「...ゆさちー?」
ヤバイ、勝手に声が出てしまった。
でも、いたしかたないだろう。アイドルが確かに来ることは噂に聞いていたが、まさか有名人が目の前にいるだなんて。驚いて、呆気にとられ、名前を呟いてしまうのは仕方のない事だ。
「はは、わかっちゃいましたか?」
ばつが悪そうに微笑み、頬をかく彼女はやはりテレビで見ているゆさちーだった。
まさか孜が本当の事をいっているとは思わなかった。
どうしよう。サインを貰ったほうがいいのかな?
「ん? おい、あれってゆさちーじゃね?」
と、少し考えていたら、向こうに居た柄が悪そうな集団の中にいる金髪が、言ってきた気がした。
「おお、まじじゃん」
「どうするよ?」
「らちっちゃう?」
「人目も少ないしな」
って、おいおいおい。らちっちゃうって完全なる犯罪でしょ。目の前にいるゆさちーは表情が恐怖のせいか凍りついちゃってるよ。
ここって平和な日本じゃなかったっけ?
私はすかさずこの脅威を対処するために、ゆさちーの手をとった。
「えっ?」
間抜けな声が響く。
「逃げるよ!!」
脱兎の如くとは上手くいかないものだな。
逃げるに至らず、すぐに囲まれてしまった。
「クッ、お前ら犯罪だぞ!?」
「おいおーい。白馬の王子さま気取りですかぁ? このやろうぅ?痛い目見たくなけりゃ女おいてどっかにいったいった」
最初にゆさちーを見つけた金髪がヘドのような声を吐き出すと、私の手を握っている彼女の手の力が少しばかり強くなった。
よほど、怖いのだろう。
守ってあげなきゃ。そんな保護欲に掻き立てられる。
「あ、あの。私のことは、いいから。逃げてくだざい」
ゆさちーは、私に安心をあたようとしているのか、あからさまに露骨な無理をしている笑顔を私に向けた。
そんな顔して、見捨てれるはずないじゃん。
「バカ言わない。本当は怖いんでしょ。僕が囮になるから、君は逃げて」
「で、でも」
どうしよう。と、彼女はよけいに心配そうな表情で私を見た。
「すぐに、逃げてね」
私は彼女の手を振りほどくと、一層に声を荒げる。
「ほら、早くにげろ!!」
その拍子にぎょっとなる犯罪集団。私はその中へと一心不乱に暴れながら入っていった。
時には殴り、時には蹴って。
しかし、すぐにこうそくされて暴力を仕返しされた。
「うぐっ!」
無慈悲な蹴りが、私にみぞうつ。
「この! この!」
どうやら彼女は逃げたみたいだった。姿はもうない。よかった。なんとか、なったみたいだ。
それより、ヤバイな。さすがはらちろうとするほどの暴力集団。いっこうに蹂躙が終わらない。
「くそが! お前のせいでゆさちーに逃げられたじゃねえか!」
私はやられっぱなしは嫌なので、機嫌のわるい目の前の金髪に鼻で笑ってやった。
「くっ! このぉ!」
「うぐぅ!」
金髪はかんにさわったのか、私を遠慮なしに思いっきり殴った。
よろめく私に、私を拘束している後ろのデカイやつもたじろいだ。その瞬間だ。嫌な感触に私は背中に寒気が走る。つまるところ胸を触られたのだ。私は女だ。さらしで胸を抑えてはいるが多少の感触や突起はある。触られるのに嫌悪感があるし、私が女だと気づかれたのではないかという危機感もある。
「ひッ!?」
危機感は杞憂に終わらず、気づかれて揉まれてしまった。
「はぁ? お前女なの?」
私は顔を即座にそらす。
「きゃはは、こいつ女だぜぇ」
私を捕まえている男がそう吐きちらす。
「離せっ!」
怖い。怖いよ。誰か助けてッ!
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