6 / 17
第六話 第三回夏祭り実行委員会
しおりを挟む
第六話 第三回夏祭り実行委員会
季節はすでに盛夏を迎え七月も最後の土曜の夕方、ふるさと会館では環境福祉部主催の健康講座「認知症にどう向き合うか」が終了したところである。
「これはアナタのための講座だわ。これ終わったら実行委員会でしょ?ついでなんだから勉強してきなさい」
と妻に厳命され、いやいや聴講させられた。講座の冒頭で「認知症自己診断チェック」というのがあり、その結果によると俺の認知の進行度はかなりヤバくて七十代後半の老人とほぼ同じデータであった。まじかよ…。予想外のショックだった。おかげで真剣に拝聴させていただきました。
環境福祉部長は講師の先生を車で駅まで送りにいった。残った俺と町会長のハカセは、この後始まる夏祭り実行委員会のためにイスとテーブルを並び替えていた。
「いやぁ、ためになるお話だったねぇ。うちには年寄りいないけど、僕たちももうすぐ六十歳だからねぇ」
「…そうだな」
「ショウちゃんちのおばさん、元気そうだけどおいくつになったんだい?」
「…八十何歳だ、たぶん」
「たぶんて…。自分の親の年、知らないのかい?」
「…そんなもんだ」
「そんなものなのかねぇ。まあいいけどさ。ところでショウちゃん認知症チェックやっただろ?何歳だった?僕なんか六十代後半だよ、笑っちゃうよねハハハハ」
…俺は泣きたいわ。
「うるさいよ、お前は。黙ってテーブル運びなさい」
「…なんか機嫌悪いねぇ」
二人で黙々とレイアウト変更していると、パラパラと実行委員が集まってきた。
「わぁー、クーラー効いてて気持ちいいねぇ、舞ちゃん。あっ、会長、今日うちのパパお仕事で舞ちゃんの面倒みれないからぁ、連れてきちゃったんですけどいいですかぁ?」
「ハハハ、いいよいいよ。今日はひっくり返すものないし、ハハハハ」
「いいってさ、舞ちゃん、良かったねぇ」
堀北、町会長様は先日のワックスぶちまけ事件、けっこう根に持っているみたいだぞ。
「あら、舞ちゃん来てたの?おねえちゃんと遊ぼうか?」
……浅井先生、先生は確かにお若くておきれいだと思いますが、さすがに「おねえちゃん」はいかがなものでしょうか?なぁ、堀ちゃん。と堀北を見たら、微妙に俺の視線を逸らしやがった。
「おう、ヒロシ。京北ガスの方は俺と野球部の吉田で話つけてきたぞ、へへへ」
「ありがとうございます、墨田さん。じゃあその話は委員会の中で皆さんに報告していただけますか?」
「おう、任せておけ!」
えっらそうに…。
「えっらそうに…。墨田のくせに」
「おう、マサか。お前、認知症講座いなかったな。とてもためになったぞ。青魚がいいらしい。なぜさぼった?」
「あのなぁ、ショウ君。俺の仕事はなんだったか覚えているか?」
「あっそうか、介護福祉士。認知症のスペシャリスト。プロだったな、プロの認知症」
「なんだよそれ。それを言うなら『認知症のプロ』だろ?それに今日は五時まで仕事だった。今帰ってきた」
「あら、おかえりなさい」
「よせよ、気持ち悪いな。それより、うちのおふくろは聞きに来ていたか?」
「いやぁ、年寄りみんな同じに見えたから良く分かんないけど、たぶんいなかったと思うぞ。そういえばうちの婆もいなかったな」
「…やっぱりな。あれほど聞いておけって言ったのに…。ボケてる奴ほど自分がボケてるって分かんないんだよ。困ったもんだ」
マサ、介護福祉士としてその発言はどうかと思うが、それは誰のことを言っているのかな。お前の母親のことだよな?うちの婆ならいいけど、まさか俺のことか?俺なのか?
「なあ、マサ、そのボケてる奴って…」
「はーい、環境部長さんお戻りになりましたぁ。皆さんお揃いですので、第三回夏祭り実行委員会、始めまぁす」
やっぱり俺はボケているのだろうか。帰りに青魚を買いにいくか…。
いつのまにか小学校三年の浅井先生の娘さん、有希ちゃんが来ていて堀北の娘の相手をしていた。さすがは浅井先生だ。あれ?さっきの「おねえちゃんと遊ぼうか」のおねえちゃんは有希ちゃんのことだったのか?まあどっちでもいいか、確認取れないしな、絶対に。
「ええと、実行委員会も今日で三回目、お祭りの本番まで残り一か月となりましたぁ。お暑い中ご苦労様でぇす。今日は準備工程表に基づいて各役職・各部ごとの進捗状況をチェックして……」
夏祭りにおける役員の役割だが、町会長・ハカセが実行委員会の委員長として全体的な統括を行う。副委員長として総務広報部長・堀北が計画から管理までを行う。実質こいつが一番忙しい。専業主婦で時間的には良かったのだが、小さい娘をどうしようかという問題が発生した。これについては浅井さんのご両親が面倒をみてくれることになり解決した。浅井さんの娘の有希ちゃんも妹ができたようで、喜んでかわいがっているそうだ。もちろん浅井さんは婦人会の手配をしながら堀北の専任相談役だ。夏祭りの主幹は総務広報部なので、マサをはじめ一般部員も休日返上で堀北の補佐に入っている。町会長と総務広報部が夏祭りの実質的なブレーンであり、各部との調整・祭り当日の進行管理等もここが行う。
文化体育部は子供会と一緒に、祭り当日の子供神輿パレードとちびっこ模擬店を主幹する。とくに子供神輿は盆踊り前のメインとなるイベントだ。昔に比べれば町内の子供の数は激減しているのだが、祭りの日は別居している子や孫が帰省する。こいつらが参加するので、当日は昔のような賑わいを見せるのだ。
環境福祉部は老人会・婦人会そして四菱OB野球部と一緒に、祭り当日の模擬店を主幹する。模擬店は焼きソバ・焼きフランクフルト・焼きイカを作って販売するのだが、これら作成に火を使うものは老人会というか実質は四菱OB野球部が行うそうだ。馬鹿だけに火が好きなのだろう。婦人会はビール・ジュース類の飲み物コーナーを任されるとともに、来賓等の接待手伝いとなる。この来賓接待自体は町会長と副会長の仕事だ。
防災防犯部は祭り当日の子供神輿パレードの交通整理と安全確保、祭り会場周辺の交通整理、そして祭り終了までの町内の防犯防災パトロールを行う。祭り自体は楽しめないうえ、くそ暑いのに屋外労働という哀れなお仕事だ。もちろん部員だけでは手が回らず、老人会からも応援が入る。元気だな、老人会。
祭り当日の夜の部のメインとなる盆踊りは、婦人会と子供会が担当し、当日までの練習会も担当する。子供会は併せてビンゴ大会の担当でもある。ビンゴ大会は子供向けなのだが、大人向けにはお楽しみ抽選会がある。これは事前に各世帯一枚ずつ通し番号の入った抽選券を配布し、祭りのラストに町会長が抽選を行って賞品を交付する。一等は3DSとかママチャリとかでけっこう盛り上がるそうだ。抽選にもれた人もハズレ抽選券と交換にボックスティッシュがもらえる。抽選会の担当は総務広報部なのだが、今年は町会長様が主幹するそうだ。ハカセよ、何たくらんでる?
副会長の伊藤は文化体育部、小松崎は環境福祉部のそれぞれ補佐をする。一番気楽なポジションなんだからそれくらい当然だ。
で、会計の俺はというと、各部・各役職への諸経費交付後は、総務広報部の補佐をしている。祭り当日は一日中会場となるふるさと会館に詰め、来賓等受付と各部各役職への連絡係になるようだ。
小さな町内会の祭りとはいえ、これだけの内容のイベントを準備・開催するのだ。正直たいしたものだと思う。10年位前まではこれを二日間開催していたそうだ。信じられん。一日だけの開催でも嫌になっているというのに。
「…ということで各部・各役職の進捗状況は把握できたと思うんですけどぉ、この時期は他の町会さんも夏祭りを行いますのでぇ、外部業者さんとの調整は確実にしておいて下さぁい。ええとぉ、盆踊りの櫓を組む大倉建築さんと配線工事の窪田電気さんは私が確認取ったのでぇ、模擬店のガス関係はどうですかぁ?」
「おぅ、俺と野球部の吉田で京北ガスへ行って手配してきた。へへへ、問題ない。前日にはボンベとコンロを取ってくる。消防署にも届を出してきた」
「模擬店の食材関係の手配はどうですかぁ?」
「そっちは前日に公設市場に行って仕入れてくる。保管は野球部のメンバーで分けて、家の冷蔵庫でするから」
「ハハハ、さすが墨田さんですねぇ。抜かりないですねぇ」
ハカセ、お前は太鼓持ちか?
「へへへへ、もう何年もやってんだ。任せとけ」
うざいわ墨田。
「当日の盆踊りの太鼓を叩くのは、盆踊りのご指導していただいてる関口先生のお嬢さんご夫婦ですよねぇ。大丈夫ですかぁ?浅井さん」
「はい、先日小西さんと関口先生のお宅に伺い、ご挨拶してまいりました。先生とお嬢さんにはこころよくご了解いただいております」
うちの婆に聞いたのだが、この関口先生は町内にご自宅があり、毎年この時期にはわずかな謝礼で盆踊りの指導、当日の太鼓叩きにご協力いただいているそうだ。めったに人を褒めない婆が珍しく「いい人」と評する、本物のいい人らしい。それにしてもマサ、いつのまに浅井さんと…。うらやましい。
「ついでですが、飲み物コーナーの飲み物と接待関係の飲食物は、今年も町内の笠井酒店さんにお願いしてあります」
この町内には食料品を扱う店はハカセの南田米穀店と、この笠井酒店の二店舗しかない。
「ありがとうございますぅ。子供会さんはちびっこ模擬店で販売する駄菓子やおもちゃ、子供神輿で配るアイスとジュースは大丈夫ですかぁ?」
「アイスとジュースは笠井酒店さんに手配済みです。駄菓子とおもちゃは前日に公設市場で購入予定です」
ちなみにさっき堀北が言っていた大倉建築と窪田電気も町内の業者だ。ハカセの話だともっと安く工事をしたり、商品を購入できる業者はあるそうだ。しかしこの町会では昔から、出来るだけ町内の業者を使って利益を上げてもらう。そしてその見返りとして、希望の工事日にしてもらったり希望の日時に配達してもらったりしているらしい。たとえば子供神輿パレードの休憩地点である白熊公園では、子供たちや役員・警備の老人会有志にアイスやジュースを配る。「何時何分、白熊公園にアイスとジュースを配達してくれ」と笠井酒店に頼んでおけば買い出しや冷却保管の手間暇を考えないで済む、ということだ。なるほど合理的だ。アイス百個、ジュース百五十本入れとく冷蔵庫なんかないもんな。
「えっとぉ、あとなんか話し合うことあったかなぁ?」
「堀北さん、ほら、あの話あったでしょ?」
「えっ?浅井先生なんだっけ…」
「ほら、コレよ、コレ」
そう言うと浅井先生は、直立歩行する目の小さい猫の絵が入ったトートバッグから、紙袋を取り出して堀北に渡した。
「あっ、そうだった。検便、検便だぁ!」
……検便容器を振りかざして「検便!」と叫ぶ若妻を見るのは、たぶん生まれて初めてだな。
「模擬店調理担当の方十二人分の検査容器でぇす。野球部の吉田さんにお渡ししますからぁ、担当者に配布して検便してもらって下さぁい。来週火曜日までに回収してぇ私に提出して下さいねぇ。水曜日に保健所に持っていきまぁす」
「へぇ、なんだそれ?聞いてないぞ?」
「えっ?墨田さん、こないだの定例役員会でぇちゃんと説明しましたよねぇ?」
「おい、吉田聞いてるか?」
「…知らねぇなぁ」
こいつら…。会議内容はちゃんと聞いておけよ。…俺も聞いてないけど…。
「吉田さんは夏風邪で欠席されていたのでぇ、墨田さんが『吉田には俺から伝えるからいい』っておっしゃってたじゃないですかぁ」
「言ったかな?覚えてねぇぞ…」
「えー、言ってましたよぅ。ね、小西さん?」
「言ったな。間違いない」
「ほんとかあ?お前、嘘ついてんじゃないのか?」
「ふふふふ、失礼な男だな。このボイスレコーダーにアンタの偉そうな声が残っている」
「うははは、俺も覚えているぞ、検便の話だよな」
覚えてないけど。
「墨田さん、確かに堀北部長は説明してましたねぇ。今年から保健所も厳しくなりましてね。食中毒とかノロウイルスとかね。それで調理した料理を販売する場合は、調理担当者の検便が義務付けられたんだそうです。夏祭りで調理するのは模擬店の焼き物コーナーだけですから、野球部の調理担当者は検便提出して検査結果が陽性の人は調理禁止だそうです。じゃあ吉田さんには伝わってなかったんですか?」
「…ああ。墨田さんよぉ、こういったことはちゃんと連絡してもらわないと…。まいったなぁ、今からみんなに説明して、ウンコ取ってもらって…」
「そんなもん黙ってればいいじゃねぇか?大丈夫だって、へへへ」
「ハハハハ、さすがにそういう訳にはいきませんねぇ。皆さん、どう思われます?」
「食中毒とか発生したら最悪の場合、マスコミとかに取り上げられます。そうなると来年以降のお祭り中止とかにもなりかねません。季節も真夏です。衛生管理は最優先事項です」
「浅井さんのおっしゃるとおりです。食中毒になって一番苦しむのは小さな子供たちです。子供会としましても看過できません。きちんと検便して下さい」
子供会会長、目立たないけど言うべきときは、ちゃんと言うなぁ。
「墨田さんよぉ、そりゃまずいって。保健所が言ってんだしよぉ。これから野球部のみんなの家に行って説明してウンコ取ってもらって…」
「吉田テメェまで…。ヒロシよぉ、今まで食中毒なんか誰もなってないんだから大丈夫だって。な?かたいこと言うなよ」
「保健所さんの指導に従わないわけにはいきませんよ」
「だから保健所には調理はしませんって言っとけばいいじゃねぇか。内緒にしとけばバレないって、な?」
「うははは、あきらめなさい。今の発言は道義的にも問題有りだな。さぁ自分のミスを認めて、きりきりとウンコを出すんだ」
「くそぉ、タダシ、テメェは!」
「くそではない。ウンコだ」
「ふっ、ふふ、ふふふふショウ君、ふふふ」
「堀ちゃん、我慢しなくていいんだ。マサのようにな、笑いたいときは笑っていいんだぞ」
「お、お前ら…。ふっ不愉快だっ!帰る!」
デジャブー。
「…お前ら、またかよ…」
南田会長、いつもすみません。
「まぁ、いいや。吉田さん、火曜日までになんとかなりますか?」
「うーん、正直ちょっと厳しいかもしれん」
「堀北部長、提出期限は少し伸ばせるかい?」
「ええとぉ、ぎりぎり木曜日なら。金曜までには保健所行きたいんでぇ」
「よし分かった。うちも木曜でなんとかしよう。じゃあヒロシ会長、さっそくみんなに検便の容器配って説明せんといかん。退席していいか?」
「分かりました。お願いしますね。皆さんによろしくお伝え下さい。何かありましたら連絡しますから」
「おう、悪かったな。それからタダシ、マサヒコ。少しは手加減してやれ。墨田も悪い奴じゃないんだ、頭は悪いけどよ」
「…はい」
「…はい」
やっぱり頭悪いんだ、あいつ。
墨田と吉田さんが帰ってしまい、検便以外の大きな懸案事項もなかったので、今日の実行委員会はお開きとなった。いつのまにか二階の和室で遊び疲れて寝ていた有希ちゃんと舞ちゃんを連れて、浅井さんと堀北部長も帰っていった。残っているのは俺たち三人だけだった。
「あの醜い大人の泥試合を、天使のような少女たちに見られなくて良かった、良かった」
「泥試合にしたのは、ショウ君なんだけどな」
「言っていることが分からんぞ、マサ。今日は全面的に墨田が悪いだろうが。ちゃんと話を聞いていなかったあいつが悪いのだよ」
「お前も検便の話、覚えてなかっただろう?またお前、話聞いてなかったな?俺の目はごまかせん」
「な、何をいうか。俺は墨田とは違うぞ。話はちゃんと聞いていた。すぐに忘れてしまっただけだ」
「…認知症かよ、ショウ君。屁理屈ばっかりこねやがって」
「やっぱり俺がボケてたのか…。参ったな、青魚か。青魚だよなぁ…」
「ハハハハ何言ってんだか分かんないけど、確かに今日の墨田さんはひどかったねぇ。なあなあで済まされる問題じゃないからねぇ」
「当然だな。浅井さんも言ってたけど、万一祭りで食中毒でも出してみろよ、翌日にはワイドショーで叩かれまくりだ」
「そうなると南田町会長、テレビカメラの前で謝罪会見かぁ…。悪いが俺は出ないぞ、なにせシャイだからな」
「ハハハハ。でも笑い事じゃないよね。経費が若干増えても除菌スプレーとか除菌シートとかも買っておこう」
「そうだな。野球部の爺ども、雑菌のかたまりみたいなものだからな」
「それだけでは足りん。焼きソバとか入れる透明なパックにな、『本日中にお召し上がり下さい』というシールを作って貼るのだ」
「ほう、見直したぞ。たまにはいいこと言うじゃないか、ショウ君」
「うむ、万一食中毒になっても消費者サイドに責任転嫁出来るかもしれん」
「…見損なったわ。陰湿だな、こいつ」
吉田さんがあれから頑張ったようで、なんとか翌木曜日までに検便容器は回収され、流川保健所への提出は間に合った。後日保険所から検査結果が郵送され、許可が下りた。ただし一人だけ陽性反応があり、当然その人は調理担当から外されることになった。なんと墨田だ。あいつO157とかだったのかと思ったら、通知書には「回虫潜伏の疑い」とあったそうだ。浅井先生が電話で保健所に問い合わせたところ、最近では回虫が原因で陽性になることは珍しく、まして検便で判明することも稀なのだそうだ。さすがの浅井先生も自分の口からこの事実を墨田に伝えることは出来なかったらしい。かわりにハカセが墨田に伝え、病院行きを勧めたそうだ。奴も相当ショックだったのだろう。「このことは絶対口外してくれるな」とハカセに頼んだらしい。この腹黒メタボに頼んでも無駄なのにな。すでに俺とマサは浅井さんから聞いてるし。俺はそれをオモシロおかしく脚色し、知らない人に周知していたし。
「ショウちゃん、それはまずいよ。僕が墨田さんに怒られちゃうよ」
「お前は『僕は絶対言ってないです、野球部の人が言いふらしてるみたいっす』とでも言っておけばいいじゃねえか」
「ハハそれもそっかぁ。それもそれで面白いしねぇ。さすがショウちゃんだ、ハハハ」
「…やっぱハカセ、お前が一番悪いよなぁ…」
こんな面白い話、知らない人がいたらかわいそうではないか。うははは。
それにしても、いまどきどうすれば回虫など体内で飼育するができるのか。昭和は遠く過ぎ去り、平成になってもう何年も経っているというのに…。ある意味、恐ろしい男である。
季節はすでに盛夏を迎え七月も最後の土曜の夕方、ふるさと会館では環境福祉部主催の健康講座「認知症にどう向き合うか」が終了したところである。
「これはアナタのための講座だわ。これ終わったら実行委員会でしょ?ついでなんだから勉強してきなさい」
と妻に厳命され、いやいや聴講させられた。講座の冒頭で「認知症自己診断チェック」というのがあり、その結果によると俺の認知の進行度はかなりヤバくて七十代後半の老人とほぼ同じデータであった。まじかよ…。予想外のショックだった。おかげで真剣に拝聴させていただきました。
環境福祉部長は講師の先生を車で駅まで送りにいった。残った俺と町会長のハカセは、この後始まる夏祭り実行委員会のためにイスとテーブルを並び替えていた。
「いやぁ、ためになるお話だったねぇ。うちには年寄りいないけど、僕たちももうすぐ六十歳だからねぇ」
「…そうだな」
「ショウちゃんちのおばさん、元気そうだけどおいくつになったんだい?」
「…八十何歳だ、たぶん」
「たぶんて…。自分の親の年、知らないのかい?」
「…そんなもんだ」
「そんなものなのかねぇ。まあいいけどさ。ところでショウちゃん認知症チェックやっただろ?何歳だった?僕なんか六十代後半だよ、笑っちゃうよねハハハハ」
…俺は泣きたいわ。
「うるさいよ、お前は。黙ってテーブル運びなさい」
「…なんか機嫌悪いねぇ」
二人で黙々とレイアウト変更していると、パラパラと実行委員が集まってきた。
「わぁー、クーラー効いてて気持ちいいねぇ、舞ちゃん。あっ、会長、今日うちのパパお仕事で舞ちゃんの面倒みれないからぁ、連れてきちゃったんですけどいいですかぁ?」
「ハハハ、いいよいいよ。今日はひっくり返すものないし、ハハハハ」
「いいってさ、舞ちゃん、良かったねぇ」
堀北、町会長様は先日のワックスぶちまけ事件、けっこう根に持っているみたいだぞ。
「あら、舞ちゃん来てたの?おねえちゃんと遊ぼうか?」
……浅井先生、先生は確かにお若くておきれいだと思いますが、さすがに「おねえちゃん」はいかがなものでしょうか?なぁ、堀ちゃん。と堀北を見たら、微妙に俺の視線を逸らしやがった。
「おう、ヒロシ。京北ガスの方は俺と野球部の吉田で話つけてきたぞ、へへへ」
「ありがとうございます、墨田さん。じゃあその話は委員会の中で皆さんに報告していただけますか?」
「おう、任せておけ!」
えっらそうに…。
「えっらそうに…。墨田のくせに」
「おう、マサか。お前、認知症講座いなかったな。とてもためになったぞ。青魚がいいらしい。なぜさぼった?」
「あのなぁ、ショウ君。俺の仕事はなんだったか覚えているか?」
「あっそうか、介護福祉士。認知症のスペシャリスト。プロだったな、プロの認知症」
「なんだよそれ。それを言うなら『認知症のプロ』だろ?それに今日は五時まで仕事だった。今帰ってきた」
「あら、おかえりなさい」
「よせよ、気持ち悪いな。それより、うちのおふくろは聞きに来ていたか?」
「いやぁ、年寄りみんな同じに見えたから良く分かんないけど、たぶんいなかったと思うぞ。そういえばうちの婆もいなかったな」
「…やっぱりな。あれほど聞いておけって言ったのに…。ボケてる奴ほど自分がボケてるって分かんないんだよ。困ったもんだ」
マサ、介護福祉士としてその発言はどうかと思うが、それは誰のことを言っているのかな。お前の母親のことだよな?うちの婆ならいいけど、まさか俺のことか?俺なのか?
「なあ、マサ、そのボケてる奴って…」
「はーい、環境部長さんお戻りになりましたぁ。皆さんお揃いですので、第三回夏祭り実行委員会、始めまぁす」
やっぱり俺はボケているのだろうか。帰りに青魚を買いにいくか…。
いつのまにか小学校三年の浅井先生の娘さん、有希ちゃんが来ていて堀北の娘の相手をしていた。さすがは浅井先生だ。あれ?さっきの「おねえちゃんと遊ぼうか」のおねえちゃんは有希ちゃんのことだったのか?まあどっちでもいいか、確認取れないしな、絶対に。
「ええと、実行委員会も今日で三回目、お祭りの本番まで残り一か月となりましたぁ。お暑い中ご苦労様でぇす。今日は準備工程表に基づいて各役職・各部ごとの進捗状況をチェックして……」
夏祭りにおける役員の役割だが、町会長・ハカセが実行委員会の委員長として全体的な統括を行う。副委員長として総務広報部長・堀北が計画から管理までを行う。実質こいつが一番忙しい。専業主婦で時間的には良かったのだが、小さい娘をどうしようかという問題が発生した。これについては浅井さんのご両親が面倒をみてくれることになり解決した。浅井さんの娘の有希ちゃんも妹ができたようで、喜んでかわいがっているそうだ。もちろん浅井さんは婦人会の手配をしながら堀北の専任相談役だ。夏祭りの主幹は総務広報部なので、マサをはじめ一般部員も休日返上で堀北の補佐に入っている。町会長と総務広報部が夏祭りの実質的なブレーンであり、各部との調整・祭り当日の進行管理等もここが行う。
文化体育部は子供会と一緒に、祭り当日の子供神輿パレードとちびっこ模擬店を主幹する。とくに子供神輿は盆踊り前のメインとなるイベントだ。昔に比べれば町内の子供の数は激減しているのだが、祭りの日は別居している子や孫が帰省する。こいつらが参加するので、当日は昔のような賑わいを見せるのだ。
環境福祉部は老人会・婦人会そして四菱OB野球部と一緒に、祭り当日の模擬店を主幹する。模擬店は焼きソバ・焼きフランクフルト・焼きイカを作って販売するのだが、これら作成に火を使うものは老人会というか実質は四菱OB野球部が行うそうだ。馬鹿だけに火が好きなのだろう。婦人会はビール・ジュース類の飲み物コーナーを任されるとともに、来賓等の接待手伝いとなる。この来賓接待自体は町会長と副会長の仕事だ。
防災防犯部は祭り当日の子供神輿パレードの交通整理と安全確保、祭り会場周辺の交通整理、そして祭り終了までの町内の防犯防災パトロールを行う。祭り自体は楽しめないうえ、くそ暑いのに屋外労働という哀れなお仕事だ。もちろん部員だけでは手が回らず、老人会からも応援が入る。元気だな、老人会。
祭り当日の夜の部のメインとなる盆踊りは、婦人会と子供会が担当し、当日までの練習会も担当する。子供会は併せてビンゴ大会の担当でもある。ビンゴ大会は子供向けなのだが、大人向けにはお楽しみ抽選会がある。これは事前に各世帯一枚ずつ通し番号の入った抽選券を配布し、祭りのラストに町会長が抽選を行って賞品を交付する。一等は3DSとかママチャリとかでけっこう盛り上がるそうだ。抽選にもれた人もハズレ抽選券と交換にボックスティッシュがもらえる。抽選会の担当は総務広報部なのだが、今年は町会長様が主幹するそうだ。ハカセよ、何たくらんでる?
副会長の伊藤は文化体育部、小松崎は環境福祉部のそれぞれ補佐をする。一番気楽なポジションなんだからそれくらい当然だ。
で、会計の俺はというと、各部・各役職への諸経費交付後は、総務広報部の補佐をしている。祭り当日は一日中会場となるふるさと会館に詰め、来賓等受付と各部各役職への連絡係になるようだ。
小さな町内会の祭りとはいえ、これだけの内容のイベントを準備・開催するのだ。正直たいしたものだと思う。10年位前まではこれを二日間開催していたそうだ。信じられん。一日だけの開催でも嫌になっているというのに。
「…ということで各部・各役職の進捗状況は把握できたと思うんですけどぉ、この時期は他の町会さんも夏祭りを行いますのでぇ、外部業者さんとの調整は確実にしておいて下さぁい。ええとぉ、盆踊りの櫓を組む大倉建築さんと配線工事の窪田電気さんは私が確認取ったのでぇ、模擬店のガス関係はどうですかぁ?」
「おぅ、俺と野球部の吉田で京北ガスへ行って手配してきた。へへへ、問題ない。前日にはボンベとコンロを取ってくる。消防署にも届を出してきた」
「模擬店の食材関係の手配はどうですかぁ?」
「そっちは前日に公設市場に行って仕入れてくる。保管は野球部のメンバーで分けて、家の冷蔵庫でするから」
「ハハハ、さすが墨田さんですねぇ。抜かりないですねぇ」
ハカセ、お前は太鼓持ちか?
「へへへへ、もう何年もやってんだ。任せとけ」
うざいわ墨田。
「当日の盆踊りの太鼓を叩くのは、盆踊りのご指導していただいてる関口先生のお嬢さんご夫婦ですよねぇ。大丈夫ですかぁ?浅井さん」
「はい、先日小西さんと関口先生のお宅に伺い、ご挨拶してまいりました。先生とお嬢さんにはこころよくご了解いただいております」
うちの婆に聞いたのだが、この関口先生は町内にご自宅があり、毎年この時期にはわずかな謝礼で盆踊りの指導、当日の太鼓叩きにご協力いただいているそうだ。めったに人を褒めない婆が珍しく「いい人」と評する、本物のいい人らしい。それにしてもマサ、いつのまに浅井さんと…。うらやましい。
「ついでですが、飲み物コーナーの飲み物と接待関係の飲食物は、今年も町内の笠井酒店さんにお願いしてあります」
この町内には食料品を扱う店はハカセの南田米穀店と、この笠井酒店の二店舗しかない。
「ありがとうございますぅ。子供会さんはちびっこ模擬店で販売する駄菓子やおもちゃ、子供神輿で配るアイスとジュースは大丈夫ですかぁ?」
「アイスとジュースは笠井酒店さんに手配済みです。駄菓子とおもちゃは前日に公設市場で購入予定です」
ちなみにさっき堀北が言っていた大倉建築と窪田電気も町内の業者だ。ハカセの話だともっと安く工事をしたり、商品を購入できる業者はあるそうだ。しかしこの町会では昔から、出来るだけ町内の業者を使って利益を上げてもらう。そしてその見返りとして、希望の工事日にしてもらったり希望の日時に配達してもらったりしているらしい。たとえば子供神輿パレードの休憩地点である白熊公園では、子供たちや役員・警備の老人会有志にアイスやジュースを配る。「何時何分、白熊公園にアイスとジュースを配達してくれ」と笠井酒店に頼んでおけば買い出しや冷却保管の手間暇を考えないで済む、ということだ。なるほど合理的だ。アイス百個、ジュース百五十本入れとく冷蔵庫なんかないもんな。
「えっとぉ、あとなんか話し合うことあったかなぁ?」
「堀北さん、ほら、あの話あったでしょ?」
「えっ?浅井先生なんだっけ…」
「ほら、コレよ、コレ」
そう言うと浅井先生は、直立歩行する目の小さい猫の絵が入ったトートバッグから、紙袋を取り出して堀北に渡した。
「あっ、そうだった。検便、検便だぁ!」
……検便容器を振りかざして「検便!」と叫ぶ若妻を見るのは、たぶん生まれて初めてだな。
「模擬店調理担当の方十二人分の検査容器でぇす。野球部の吉田さんにお渡ししますからぁ、担当者に配布して検便してもらって下さぁい。来週火曜日までに回収してぇ私に提出して下さいねぇ。水曜日に保健所に持っていきまぁす」
「へぇ、なんだそれ?聞いてないぞ?」
「えっ?墨田さん、こないだの定例役員会でぇちゃんと説明しましたよねぇ?」
「おい、吉田聞いてるか?」
「…知らねぇなぁ」
こいつら…。会議内容はちゃんと聞いておけよ。…俺も聞いてないけど…。
「吉田さんは夏風邪で欠席されていたのでぇ、墨田さんが『吉田には俺から伝えるからいい』っておっしゃってたじゃないですかぁ」
「言ったかな?覚えてねぇぞ…」
「えー、言ってましたよぅ。ね、小西さん?」
「言ったな。間違いない」
「ほんとかあ?お前、嘘ついてんじゃないのか?」
「ふふふふ、失礼な男だな。このボイスレコーダーにアンタの偉そうな声が残っている」
「うははは、俺も覚えているぞ、検便の話だよな」
覚えてないけど。
「墨田さん、確かに堀北部長は説明してましたねぇ。今年から保健所も厳しくなりましてね。食中毒とかノロウイルスとかね。それで調理した料理を販売する場合は、調理担当者の検便が義務付けられたんだそうです。夏祭りで調理するのは模擬店の焼き物コーナーだけですから、野球部の調理担当者は検便提出して検査結果が陽性の人は調理禁止だそうです。じゃあ吉田さんには伝わってなかったんですか?」
「…ああ。墨田さんよぉ、こういったことはちゃんと連絡してもらわないと…。まいったなぁ、今からみんなに説明して、ウンコ取ってもらって…」
「そんなもん黙ってればいいじゃねぇか?大丈夫だって、へへへ」
「ハハハハ、さすがにそういう訳にはいきませんねぇ。皆さん、どう思われます?」
「食中毒とか発生したら最悪の場合、マスコミとかに取り上げられます。そうなると来年以降のお祭り中止とかにもなりかねません。季節も真夏です。衛生管理は最優先事項です」
「浅井さんのおっしゃるとおりです。食中毒になって一番苦しむのは小さな子供たちです。子供会としましても看過できません。きちんと検便して下さい」
子供会会長、目立たないけど言うべきときは、ちゃんと言うなぁ。
「墨田さんよぉ、そりゃまずいって。保健所が言ってんだしよぉ。これから野球部のみんなの家に行って説明してウンコ取ってもらって…」
「吉田テメェまで…。ヒロシよぉ、今まで食中毒なんか誰もなってないんだから大丈夫だって。な?かたいこと言うなよ」
「保健所さんの指導に従わないわけにはいきませんよ」
「だから保健所には調理はしませんって言っとけばいいじゃねぇか。内緒にしとけばバレないって、な?」
「うははは、あきらめなさい。今の発言は道義的にも問題有りだな。さぁ自分のミスを認めて、きりきりとウンコを出すんだ」
「くそぉ、タダシ、テメェは!」
「くそではない。ウンコだ」
「ふっ、ふふ、ふふふふショウ君、ふふふ」
「堀ちゃん、我慢しなくていいんだ。マサのようにな、笑いたいときは笑っていいんだぞ」
「お、お前ら…。ふっ不愉快だっ!帰る!」
デジャブー。
「…お前ら、またかよ…」
南田会長、いつもすみません。
「まぁ、いいや。吉田さん、火曜日までになんとかなりますか?」
「うーん、正直ちょっと厳しいかもしれん」
「堀北部長、提出期限は少し伸ばせるかい?」
「ええとぉ、ぎりぎり木曜日なら。金曜までには保健所行きたいんでぇ」
「よし分かった。うちも木曜でなんとかしよう。じゃあヒロシ会長、さっそくみんなに検便の容器配って説明せんといかん。退席していいか?」
「分かりました。お願いしますね。皆さんによろしくお伝え下さい。何かありましたら連絡しますから」
「おう、悪かったな。それからタダシ、マサヒコ。少しは手加減してやれ。墨田も悪い奴じゃないんだ、頭は悪いけどよ」
「…はい」
「…はい」
やっぱり頭悪いんだ、あいつ。
墨田と吉田さんが帰ってしまい、検便以外の大きな懸案事項もなかったので、今日の実行委員会はお開きとなった。いつのまにか二階の和室で遊び疲れて寝ていた有希ちゃんと舞ちゃんを連れて、浅井さんと堀北部長も帰っていった。残っているのは俺たち三人だけだった。
「あの醜い大人の泥試合を、天使のような少女たちに見られなくて良かった、良かった」
「泥試合にしたのは、ショウ君なんだけどな」
「言っていることが分からんぞ、マサ。今日は全面的に墨田が悪いだろうが。ちゃんと話を聞いていなかったあいつが悪いのだよ」
「お前も検便の話、覚えてなかっただろう?またお前、話聞いてなかったな?俺の目はごまかせん」
「な、何をいうか。俺は墨田とは違うぞ。話はちゃんと聞いていた。すぐに忘れてしまっただけだ」
「…認知症かよ、ショウ君。屁理屈ばっかりこねやがって」
「やっぱり俺がボケてたのか…。参ったな、青魚か。青魚だよなぁ…」
「ハハハハ何言ってんだか分かんないけど、確かに今日の墨田さんはひどかったねぇ。なあなあで済まされる問題じゃないからねぇ」
「当然だな。浅井さんも言ってたけど、万一祭りで食中毒でも出してみろよ、翌日にはワイドショーで叩かれまくりだ」
「そうなると南田町会長、テレビカメラの前で謝罪会見かぁ…。悪いが俺は出ないぞ、なにせシャイだからな」
「ハハハハ。でも笑い事じゃないよね。経費が若干増えても除菌スプレーとか除菌シートとかも買っておこう」
「そうだな。野球部の爺ども、雑菌のかたまりみたいなものだからな」
「それだけでは足りん。焼きソバとか入れる透明なパックにな、『本日中にお召し上がり下さい』というシールを作って貼るのだ」
「ほう、見直したぞ。たまにはいいこと言うじゃないか、ショウ君」
「うむ、万一食中毒になっても消費者サイドに責任転嫁出来るかもしれん」
「…見損なったわ。陰湿だな、こいつ」
吉田さんがあれから頑張ったようで、なんとか翌木曜日までに検便容器は回収され、流川保健所への提出は間に合った。後日保険所から検査結果が郵送され、許可が下りた。ただし一人だけ陽性反応があり、当然その人は調理担当から外されることになった。なんと墨田だ。あいつO157とかだったのかと思ったら、通知書には「回虫潜伏の疑い」とあったそうだ。浅井先生が電話で保健所に問い合わせたところ、最近では回虫が原因で陽性になることは珍しく、まして検便で判明することも稀なのだそうだ。さすがの浅井先生も自分の口からこの事実を墨田に伝えることは出来なかったらしい。かわりにハカセが墨田に伝え、病院行きを勧めたそうだ。奴も相当ショックだったのだろう。「このことは絶対口外してくれるな」とハカセに頼んだらしい。この腹黒メタボに頼んでも無駄なのにな。すでに俺とマサは浅井さんから聞いてるし。俺はそれをオモシロおかしく脚色し、知らない人に周知していたし。
「ショウちゃん、それはまずいよ。僕が墨田さんに怒られちゃうよ」
「お前は『僕は絶対言ってないです、野球部の人が言いふらしてるみたいっす』とでも言っておけばいいじゃねえか」
「ハハそれもそっかぁ。それもそれで面白いしねぇ。さすがショウちゃんだ、ハハハ」
「…やっぱハカセ、お前が一番悪いよなぁ…」
こんな面白い話、知らない人がいたらかわいそうではないか。うははは。
それにしても、いまどきどうすれば回虫など体内で飼育するができるのか。昭和は遠く過ぎ去り、平成になってもう何年も経っているというのに…。ある意味、恐ろしい男である。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
古屋さんバイト辞めるって
四宮 あか
ライト文芸
ライト文芸大賞で奨励賞いただきました~。
読んでくださりありがとうございました。
「古屋さんバイト辞めるって」
おしゃれで、明るくて、話しも面白くて、仕事もすぐに覚えた。これからバイトの中心人物にだんだんなっていくのかな? と思った古屋さんはバイトをやめるらしい。
学部は違うけれど同じ大学に通っているからって理由で、石井ミクは古屋さんにバイトを辞めないように説得してと店長に頼まれてしまった。
バイト先でちょろっとしか話したことがないのに、辞めないように説得を頼まれたことで困ってしまった私は……
こういう嫌なタイプが貴方の職場にもいることがあるのではないでしょうか?
表紙の画像はフリー素材サイトの
https://activephotostyle.biz/さまからお借りしました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる