6 / 6
恋を知りたいアンドロイドと教えたくない主様
しおりを挟む 女子会の翌日、私は、直面した大きな問題をひとまず横に置いて、必死に働いていた。
そう、それはそれは、必死に……。
「オリアナ様っ! こちらの書類をお願いします!」
「すみません、こちらの確認もっ」
「オリアナ様、財務部から問い合わせが……」
「あぁっ、クソ! これも全て、殿下のせむぐっ」
「あー、はいはい、不敬罪にされたくなければ、黙っていましょうねー」
そんな周囲の声に包まれながら、私達は激務に見舞われていた。
原因は、同僚の一人が叫びかけたもの。
ヴァイラン魔国の王子の一人によって引き起こされた事件のせいだ。
「ふふふふ、大丈夫ですよ。殿下には、しっかりと、そのお立場を理解していただくので」
そして、そんな激務の中、静かに、しかし、猛烈に怒りを顕にしているのが、宰相閣下本人だった。
顔は笑顔なのに、目が全く笑っていない宰相閣下は、凄まじい速度で様々な書類を処理していく。
昨夜、ヴァイラン魔国の王子であるリウスが、突如として失踪した。それも、大量の仕事を溜めた状態で、恐らくは計画的に。
この国は、ジークフリート陛下とユウカ皇后陛下のお二方が統治しておられる。そして、そのお二方は仲睦まじく、三人のお子様がおられた。
一人目は、第一王子のルーク様で、現在、二十七歳、二人目は、第二王子のリウス様、十七歳。そして、三人目は、第一王女のユリアナ様、五歳だ。
今回問題となっているのは、第二王子のリウス様。陛下と皇后陛下は、もうすぐ行われる豊穣祭の準備を行っており、第一王子殿下、外交のために他国へ赴いているという状況下で、陛下方の準備を一緒に手伝っていたはずのリウス様の失踪だ。行き先は不明だが、目的だけははっきりしている。
こんな時に、片翼だなんてっ!
そう、リウス様は、片翼を見つけたので、口説きに行きます、という手紙だけを残して、どこかへ向かったのだ。
もちろん、事件性も疑わなければならないので、騎士達は血眼になってリウス様を捜している。しかし、現状では、この忙しい最中に大量の仕事を意図的に残して、こちらを動けなくさせていることといい、手紙に他者の魔力が干渉した形跡も、別人が置き手紙を書いた形跡もないため、リウス様の暴走という線が強い。
片翼に対する想いが強いのは、魔族であれば一定の理解は得られるだろう。しかし、この対応に対しては、さすがに全員が憤慨していた。
とはいえ、魔族は基本的にお花畑思考だと考えていた私の認識は、あながち間違い、というわけでもなく……。
「殿下の片翼だなんて、一体どんな方なんでしょう」
「そりゃあ、うんと素敵な方に決まってるわっ」
そんな侍女達の悪意なき言葉に、殺気立つ者が続出したのは、言うまでもない。
結局、リウス様が見つかったのは、三日後であり、その隣には、筋骨隆々の……女性(?)が立っていたそうだ。
そう、それはそれは、必死に……。
「オリアナ様っ! こちらの書類をお願いします!」
「すみません、こちらの確認もっ」
「オリアナ様、財務部から問い合わせが……」
「あぁっ、クソ! これも全て、殿下のせむぐっ」
「あー、はいはい、不敬罪にされたくなければ、黙っていましょうねー」
そんな周囲の声に包まれながら、私達は激務に見舞われていた。
原因は、同僚の一人が叫びかけたもの。
ヴァイラン魔国の王子の一人によって引き起こされた事件のせいだ。
「ふふふふ、大丈夫ですよ。殿下には、しっかりと、そのお立場を理解していただくので」
そして、そんな激務の中、静かに、しかし、猛烈に怒りを顕にしているのが、宰相閣下本人だった。
顔は笑顔なのに、目が全く笑っていない宰相閣下は、凄まじい速度で様々な書類を処理していく。
昨夜、ヴァイラン魔国の王子であるリウスが、突如として失踪した。それも、大量の仕事を溜めた状態で、恐らくは計画的に。
この国は、ジークフリート陛下とユウカ皇后陛下のお二方が統治しておられる。そして、そのお二方は仲睦まじく、三人のお子様がおられた。
一人目は、第一王子のルーク様で、現在、二十七歳、二人目は、第二王子のリウス様、十七歳。そして、三人目は、第一王女のユリアナ様、五歳だ。
今回問題となっているのは、第二王子のリウス様。陛下と皇后陛下は、もうすぐ行われる豊穣祭の準備を行っており、第一王子殿下、外交のために他国へ赴いているという状況下で、陛下方の準備を一緒に手伝っていたはずのリウス様の失踪だ。行き先は不明だが、目的だけははっきりしている。
こんな時に、片翼だなんてっ!
そう、リウス様は、片翼を見つけたので、口説きに行きます、という手紙だけを残して、どこかへ向かったのだ。
もちろん、事件性も疑わなければならないので、騎士達は血眼になってリウス様を捜している。しかし、現状では、この忙しい最中に大量の仕事を意図的に残して、こちらを動けなくさせていることといい、手紙に他者の魔力が干渉した形跡も、別人が置き手紙を書いた形跡もないため、リウス様の暴走という線が強い。
片翼に対する想いが強いのは、魔族であれば一定の理解は得られるだろう。しかし、この対応に対しては、さすがに全員が憤慨していた。
とはいえ、魔族は基本的にお花畑思考だと考えていた私の認識は、あながち間違い、というわけでもなく……。
「殿下の片翼だなんて、一体どんな方なんでしょう」
「そりゃあ、うんと素敵な方に決まってるわっ」
そんな侍女達の悪意なき言葉に、殺気立つ者が続出したのは、言うまでもない。
結局、リウス様が見つかったのは、三日後であり、その隣には、筋骨隆々の……女性(?)が立っていたそうだ。
0
お気に入りに追加
23
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる