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初期化しなくちゃって思うのに…
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家に着いた途端、疲労感に襲われた。
「疲れた……」
「お疲れ様です」
「助けてくれてありがとう。不本意だけど、アンタに抱きしめられたときはちょっと安心したよ。頼もしいところもあるんだねぇ」
JJ109の頭をポンポンと撫でて、シャワーを浴びるべく脱衣所に向かった。
男に触れられたところが気持ち悪い。全部、洗い流したい。
シャワーを浴びて寝る用意を済ませると、JJ109は充電用のイスから立ち上がり、私を寝室へとエスコートした。
「はぁー、あっつ。シャワー浴びすぎたかも。触られたところが気持ち悪くって、長湯しちゃったよ」
ベッドの上に座って取るに足らない雑談をする私に、隣に座るJJ109がゆっくりと目を瞬く。でも急に、なにを考えたのか私の手を取って自分の頬に当てた。
やっぱり、変だ。
「なにも感じません」
「あ、当たり前でしょ」
「とても残念です。感じられたらいいのに」
目の前のコレは機械。だけど、アンドロイドではなく、もっと違うものになろうとしている。前よりずっと人間に近付いている気がした。
もうダメだと思った。
コイツの変化は止められない。
「恋について検索した結果、様々なことが書かれていました。そのなかでもワタシが有用であると判断した説は」
今すぐこの手を振り払わないと。
初期化しないと。
「"相手と触れ合いたいと思う気持ち"だという説です。ワタシはいつも、主様に触れたいと思っています」
初期化……。
「ワタシのこの気持ちは」
「違う、恋じゃない! アンタはアンドロイドだよ? 今持っているのは擬似感情であって、それは本物じゃない。アンタに本物の感情なんてない!」
「本物の感情とはなんですか?」
「それは……わからないけど」
強い力で押し倒され、景色が変わる。
JJ109の無表情な顔に感情の色が広がっていく。切羽詰まったような悲しげな表情が、綺麗な顔に浮かび上がった。
その瞬間、私のなかでJJ109をアンドロイドだと意識していたものが揺らいだ。
心臓がドキドキと波打って、顔が熱くなった。
「ワタシが機械でも、学習によって得た偽物の感情でも構いません。あなたと同じになれなくてもいい。だけど、ワタシはあなたに恋がしたいです」
「初期化されたいの?!」
「構いません。何度だって、あなたに恋をします」
「っ……なに、言ってんの……」
こんな熱烈な口説き文句、人生で一度も言われたことがない。
私はJJ109の綺麗な顔を眺めて、もういいやと思った。
初期化はいつでもできる。もう少しだけその日を先延ばしにして、今のJJ109と過ごしてみよう。
理由は至ってシンプル。愛着がわいてしまったというだけ――名前もあだ名も付けてないのにね。
「ねぇ、触れたいってどこまで触れたい?」
JJ109が目を瞬いて、首を傾げた。
青い瞳のなかでガラスが動く。私の表情や仕草を見て、意図を汲み取ろうとしているみたいだ。
なんだかいじらしく感じてしまって、頭を撫でてしまう。
「恋をしてると思うなら、ここは答えられないと」
「……わかりません」
「よかった、アンタはやっぱりアンドロイドだね。……恋愛ドラマみたいな展開にちょっとドキドキしたから、クリーニングしたあとアンタで遊んでみようかな」
「ワタシと遊んでくれるんですか?」
「うん、いいよ。高性能な大人のおもちゃの実力、見せてもらおうじゃない」
「疲れた……」
「お疲れ様です」
「助けてくれてありがとう。不本意だけど、アンタに抱きしめられたときはちょっと安心したよ。頼もしいところもあるんだねぇ」
JJ109の頭をポンポンと撫でて、シャワーを浴びるべく脱衣所に向かった。
男に触れられたところが気持ち悪い。全部、洗い流したい。
シャワーを浴びて寝る用意を済ませると、JJ109は充電用のイスから立ち上がり、私を寝室へとエスコートした。
「はぁー、あっつ。シャワー浴びすぎたかも。触られたところが気持ち悪くって、長湯しちゃったよ」
ベッドの上に座って取るに足らない雑談をする私に、隣に座るJJ109がゆっくりと目を瞬く。でも急に、なにを考えたのか私の手を取って自分の頬に当てた。
やっぱり、変だ。
「なにも感じません」
「あ、当たり前でしょ」
「とても残念です。感じられたらいいのに」
目の前のコレは機械。だけど、アンドロイドではなく、もっと違うものになろうとしている。前よりずっと人間に近付いている気がした。
もうダメだと思った。
コイツの変化は止められない。
「恋について検索した結果、様々なことが書かれていました。そのなかでもワタシが有用であると判断した説は」
今すぐこの手を振り払わないと。
初期化しないと。
「"相手と触れ合いたいと思う気持ち"だという説です。ワタシはいつも、主様に触れたいと思っています」
初期化……。
「ワタシのこの気持ちは」
「違う、恋じゃない! アンタはアンドロイドだよ? 今持っているのは擬似感情であって、それは本物じゃない。アンタに本物の感情なんてない!」
「本物の感情とはなんですか?」
「それは……わからないけど」
強い力で押し倒され、景色が変わる。
JJ109の無表情な顔に感情の色が広がっていく。切羽詰まったような悲しげな表情が、綺麗な顔に浮かび上がった。
その瞬間、私のなかでJJ109をアンドロイドだと意識していたものが揺らいだ。
心臓がドキドキと波打って、顔が熱くなった。
「ワタシが機械でも、学習によって得た偽物の感情でも構いません。あなたと同じになれなくてもいい。だけど、ワタシはあなたに恋がしたいです」
「初期化されたいの?!」
「構いません。何度だって、あなたに恋をします」
「っ……なに、言ってんの……」
こんな熱烈な口説き文句、人生で一度も言われたことがない。
私はJJ109の綺麗な顔を眺めて、もういいやと思った。
初期化はいつでもできる。もう少しだけその日を先延ばしにして、今のJJ109と過ごしてみよう。
理由は至ってシンプル。愛着がわいてしまったというだけ――名前もあだ名も付けてないのにね。
「ねぇ、触れたいってどこまで触れたい?」
JJ109が目を瞬いて、首を傾げた。
青い瞳のなかでガラスが動く。私の表情や仕草を見て、意図を汲み取ろうとしているみたいだ。
なんだかいじらしく感じてしまって、頭を撫でてしまう。
「恋をしてると思うなら、ここは答えられないと」
「……わかりません」
「よかった、アンタはやっぱりアンドロイドだね。……恋愛ドラマみたいな展開にちょっとドキドキしたから、クリーニングしたあとアンタで遊んでみようかな」
「ワタシと遊んでくれるんですか?」
「うん、いいよ。高性能な大人のおもちゃの実力、見せてもらおうじゃない」
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