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ナツキルート
キスの練習
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つかさはアルミホイルに小さな丸型のクッキー生地を並べ、背の高いラックに置いてあるオーブントースターに入れた。それから、ナツキへと振り返り加熱時間を尋ねる。
「何分だっけ?」
「三分だよ」
「りょーかい」
メモリに合わせてツマミを回した。
あとは焼き上がりを待つだけだ。その間に洗い物を済ませようと身体の向きを変えたときだった。
シンクに寄りかかっていたナツキが、一歩つかさに近づいた。
つかさは目を瞬き、歩きかけた足を止めた。不意なことだったため、心臓がドキッと跳ねた。
「ねぇ、つかささん」
「な、なに?」
「タイマーが止まるまで、キスシーンの練習させてよ」
予想もしなかった発言にまた驚く。
カッと頬が熱くなって、たちまち鼓動が速くなる。
「やっ、やだよ」
「気持ち悪い?」
「そうじゃないけど」
「そうじゃないなら、お願い。当たらないようにするから。いつ撮影があってもいいように、距離感を確かめたいんだ」
つかさは恥ずかしさに唇を噛み、視線をさまよわせた。
触れないなら、力になってもいいんじゃないか。
悩むこと数秒。つかさはコクリと頷いた。
すると、スリッパの擦る音が近づき、つかさの前でピタリと止まった。
「ありがと。時間ないから、すぐ練習させてもらうよ。つかささんは立ってるだけでいいから。顔、上げて」
つかさはおずおずと顔を上げた。
恥ずかし過ぎて、ナツキの顔なんてまともに見れない。だが、どんなに視線をそらしても、視界の端にナツキを捉えてしまう。
近づいてくるナツキの顔に、ドキドキが止まらない。
すごく見つめられている気がして、これ以上ないほどに緊張した。叶うなら、今すぐ逃げ出したい。
ナツキの気配が肌に触れ、背中がゾクゾクと震える。
ふたりの間にできた距離は数センチ。あまりにも近過ぎて、緊張に耐えられなくなったつかさは、ギュッと目を閉じた。
(一、二、三……離れた? もういいかな。さすがに終わった、よね?)
ゆっくりと目を開けると、ナツキの顔はまだ近いところにあった。それどころか目が合ってしまった。キスの距離ではないけれど、背伸びをすれば触れてしまいそうな距離に、瞬きも忘れて固まる。
ナツキはつかさの瞳と唇を交互に見て、微笑んだ。
「可愛い」
「ッ……!?」
甘い囁きに心が溶かされる。
自分は可愛いとは無縁だと思っていた。だから、だろうか。その言葉が余韻となって、つかさの頑なだった気持ちを揺り動かした。マネージャーとして己を律する自分と、ナツキに惹かれる自分が、綱引きをするみたいに引っ張り合う。
少しでも力を抜けば、ナツキに好きだと伝えてしまいそうだ。ギリギリの精神力で、マネージャーとしての自分が踏ん張っていた。
つかさは半歩下がって、顔をそらした。
「アドリブ付きだとは思わなかったな」
「ドキドキした?」
答えに窮するつかさを庇うように、オーブントースターがチンと鳴った。
つかさはこれ幸いと振り返り、クッキーの焼き具合を確かめた。火傷に注意しながら箸で突くと、硬さが足りない気がした。
「余熱じゃ心許ないかも。もう少し焼こうかな」
「焼き足りない場合は、更にもう一分って書いてたよ」
「じゃあ、もう一分」
そう言ってタイマーをセットして、焦げないように様子を見守る。いや、ナツキと向き合うのが怖かっただけだ。
サッ、サッとスリッパの音が近づいて、つかさの後ろで止まった。
「すごい見張るじゃん」
「だって、焦げたら悲しいじゃない」
「そうだね。俺も見たいから、ちょっと隣にずれて」
「う、うん」
言われた通り横にずれると、オーブントースターのなかを確かめるようにナツキが身を屈めた。
なんともいえない間ができて気まずい。
目を伏せ、なにか言おうかと逡巡していると、ナツキの顔がすっと動いた。
チュッと、音が立ち、つかさは目を丸めた。
頬にはなにも触れていない。なのに、つかさは頬に手を当てて、反射的にナツキを見た。
「今のは不意打ちキスの練習」
「うっ、や、約束が違う」
チン、とオーブントースターが鳴る。
ナツキは眉を上げておどけたように微笑んだ。
「俺はタイマーが止まるまでって言ったよ。もう一度タイマーをかけたのは、つかささん」
「そういうの、屁理屈って言うんだよ」
「そう? じゃあ次は、クッキーの粗熱が取れるまでキスを避ける練習をさせて。いいよね?」
まるで決定事項のように念押しされる。
キスを避ける練習なんて聞いたことがないし、やる意味があるのか甚だ疑問だ。
つかさは顔を赤らめながら、眉をひそめ疑わしそうな目でナツキを見た。
「本当に避けられるの?」
「そのための練習でしょ。まずはやってみないと」
「く、口が当たったら、どうするの」
「当たってから考える」
(それだと困るんだけど)
軽い調子で返されて唖然とする。
ナツキはわざとらしいため息をついて、またシンクに寄りかかった。
「海原さんと最後までいい雰囲気で撮影を終えたいだけなのに。もし事故でキスして気まずくなったら、つかささんのせい」
「横暴だ!」
「なんとでも。けど、プロ意識が高いつかささんのことだから、なんだかんだ言って付き合ってくれるでしょう?」
「…………、キスしちゃったらどうするの」
避けられなかったら、という意味じゃない。
つかさが立場も忘れてナツキの唇を奪ったらどうするつもりなのかと、そう聞きたかった。こっちはドキドキが止まらないし、顔のほてりも取れない。心の綱引きも限界に来てる。
「プロは時間を無駄にしない。つかささんが教えてくれた言葉だよ」
「休めるときは休むとも言ったはずだよ」
「そうだっけ?」
くくっと笑うナツキに、つかさはムッとした。誰のせいで頭を悩ませていると思っているのか。半ば自棄になって、ナツキの腕を掴んで自分の前に立たせた。
ナツキは変わらず余裕ある顔で――いや、嬉しそうに目を細めて、チラッと横を向いて笑った。
それを見て、まんまと網にかかった気分になる。
「俺からキスをするから、顔が離れる瞬間に来て」
「三、二、一で行けばいい?」
「それだと練習にならないだろ。不意打ちでこないと。はい、じゃあ、アクション」
ナツキは小気味好く指を鳴らして、つかさに顔を近づけた。
今度はキスの終わりを確認しないといけない。
恥ずかしさに耐えながら目を開けてじっとしていると、ナツキの口角が笑いをこらえるようにくっと持ち上がった。
(絶対、面白がってる。こうなったら、遠慮なくやってやる)
つかさは息を呑み、そのときを待った。すっと離れていく気配を感じて、ナツキの目を見ないまま、唇に狙いを定めて床から踵を離す。
ナツキがうまくかわしてくれるものだと思っていたのに――つかさは柔らかい感触にハッとして、弾かれたように身を引いた。初めてのキスになにか思うよりも、罪悪感が込み上げてくる。
「ごめッ……! 当たっ……ちゃっ、た……」
ナツキは指先で唇を隠し、目を伏せた。
「ファーストキス、奪われちゃった」
「えっ……ええ!?」
「俺、誰とも付き合ったことないし、初めてだから」
罪悪感が濃さを増し、胸をザワつかせた。
(この見た目で? この性格で?)
ナツキと付き合いたいと思う女子なら、いくらでもいただろう。告白されたことだってあるはず。それを全て断って、純粋なままで育ってきたというのか。
キスの経験がないから、キスシーンの練習にこだわっていたのか。いやまさか、そんな。
つかさは頭を混乱させ、冷や汗をかいた。
「ご、ごめんね! どうしようっ、み、水で洗う?」
「なんで」
「気持ち的にそうしたほうがいいのかなって」
「必要ない」
どうしてだか、ナツキは不機嫌だった。
冗談を本気にしたせいだ。まさか本当にキスをしてくると思っていなかったのかもしれない。
自分もファーストキスだったことすら忘れ、ナツキの態度にうろたえた。
すると、ナツキは顔をほのかに赤らめて、目端に怒りを滲ませて見つめた。
「いったいどれだけ近づけば、つかささんは堕ちてきてくれるの」
「え……?」
「つかささんを抱きしめる覚悟なら、とっくにできているのに。なんで、そんなに頑ななの。俺を求めてくれないの!?」
ナツキが一歩、つかさに近づく。一歩、また一歩と、後退るつかさを壁際に追い込んでいった。
「待って……お願い、待って! それ以上は」
「またマネージャーの顔をするの?」
壁に手をついたナツキの両腕が、逃げ道を塞ぐ。
「無駄だよ。つかささんは大根役者だから、マネージャー役を演じきれない。そうでしょ?」
「私は役じゃなくて、本物の」
「俺のこと好きだって、顔に書いてるよ。それなのに、まだ演技を続けるの?」
近づいてくる顔から逃れるように、横を向く。
ドキドキし過ぎて胸が痛い。まるで心臓を鷲掴みにされた気分だ。
暴かれたら、認めたら終わりだ。だが、暴かれたいと願う自分がいる。暴かれて楽になりたい。
「俺の気持ちに気づいてるでしょう?」
ナツキは、こんなときでも「触れない」という約束を守り続けていた。触れない代わりに、誘惑が止まない。
「わからないなら、俺がどれだけあなたを愛しているのか教えてあげる」
理性を保たないと。
「いっ、いらなッ――」
マネージャーとしての自分を手放したら、もう演じられない。
「本気で拒みたいなら、俺の目を見て迷惑だって言えばいい」
耳朶に吐息が触れ、つかさは潤んだ瞳を瞼の奥に閉じ込めた。
「聞いて、つかささん。俺はあなたが好き。……愛してる」
「何分だっけ?」
「三分だよ」
「りょーかい」
メモリに合わせてツマミを回した。
あとは焼き上がりを待つだけだ。その間に洗い物を済ませようと身体の向きを変えたときだった。
シンクに寄りかかっていたナツキが、一歩つかさに近づいた。
つかさは目を瞬き、歩きかけた足を止めた。不意なことだったため、心臓がドキッと跳ねた。
「ねぇ、つかささん」
「な、なに?」
「タイマーが止まるまで、キスシーンの練習させてよ」
予想もしなかった発言にまた驚く。
カッと頬が熱くなって、たちまち鼓動が速くなる。
「やっ、やだよ」
「気持ち悪い?」
「そうじゃないけど」
「そうじゃないなら、お願い。当たらないようにするから。いつ撮影があってもいいように、距離感を確かめたいんだ」
つかさは恥ずかしさに唇を噛み、視線をさまよわせた。
触れないなら、力になってもいいんじゃないか。
悩むこと数秒。つかさはコクリと頷いた。
すると、スリッパの擦る音が近づき、つかさの前でピタリと止まった。
「ありがと。時間ないから、すぐ練習させてもらうよ。つかささんは立ってるだけでいいから。顔、上げて」
つかさはおずおずと顔を上げた。
恥ずかし過ぎて、ナツキの顔なんてまともに見れない。だが、どんなに視線をそらしても、視界の端にナツキを捉えてしまう。
近づいてくるナツキの顔に、ドキドキが止まらない。
すごく見つめられている気がして、これ以上ないほどに緊張した。叶うなら、今すぐ逃げ出したい。
ナツキの気配が肌に触れ、背中がゾクゾクと震える。
ふたりの間にできた距離は数センチ。あまりにも近過ぎて、緊張に耐えられなくなったつかさは、ギュッと目を閉じた。
(一、二、三……離れた? もういいかな。さすがに終わった、よね?)
ゆっくりと目を開けると、ナツキの顔はまだ近いところにあった。それどころか目が合ってしまった。キスの距離ではないけれど、背伸びをすれば触れてしまいそうな距離に、瞬きも忘れて固まる。
ナツキはつかさの瞳と唇を交互に見て、微笑んだ。
「可愛い」
「ッ……!?」
甘い囁きに心が溶かされる。
自分は可愛いとは無縁だと思っていた。だから、だろうか。その言葉が余韻となって、つかさの頑なだった気持ちを揺り動かした。マネージャーとして己を律する自分と、ナツキに惹かれる自分が、綱引きをするみたいに引っ張り合う。
少しでも力を抜けば、ナツキに好きだと伝えてしまいそうだ。ギリギリの精神力で、マネージャーとしての自分が踏ん張っていた。
つかさは半歩下がって、顔をそらした。
「アドリブ付きだとは思わなかったな」
「ドキドキした?」
答えに窮するつかさを庇うように、オーブントースターがチンと鳴った。
つかさはこれ幸いと振り返り、クッキーの焼き具合を確かめた。火傷に注意しながら箸で突くと、硬さが足りない気がした。
「余熱じゃ心許ないかも。もう少し焼こうかな」
「焼き足りない場合は、更にもう一分って書いてたよ」
「じゃあ、もう一分」
そう言ってタイマーをセットして、焦げないように様子を見守る。いや、ナツキと向き合うのが怖かっただけだ。
サッ、サッとスリッパの音が近づいて、つかさの後ろで止まった。
「すごい見張るじゃん」
「だって、焦げたら悲しいじゃない」
「そうだね。俺も見たいから、ちょっと隣にずれて」
「う、うん」
言われた通り横にずれると、オーブントースターのなかを確かめるようにナツキが身を屈めた。
なんともいえない間ができて気まずい。
目を伏せ、なにか言おうかと逡巡していると、ナツキの顔がすっと動いた。
チュッと、音が立ち、つかさは目を丸めた。
頬にはなにも触れていない。なのに、つかさは頬に手を当てて、反射的にナツキを見た。
「今のは不意打ちキスの練習」
「うっ、や、約束が違う」
チン、とオーブントースターが鳴る。
ナツキは眉を上げておどけたように微笑んだ。
「俺はタイマーが止まるまでって言ったよ。もう一度タイマーをかけたのは、つかささん」
「そういうの、屁理屈って言うんだよ」
「そう? じゃあ次は、クッキーの粗熱が取れるまでキスを避ける練習をさせて。いいよね?」
まるで決定事項のように念押しされる。
キスを避ける練習なんて聞いたことがないし、やる意味があるのか甚だ疑問だ。
つかさは顔を赤らめながら、眉をひそめ疑わしそうな目でナツキを見た。
「本当に避けられるの?」
「そのための練習でしょ。まずはやってみないと」
「く、口が当たったら、どうするの」
「当たってから考える」
(それだと困るんだけど)
軽い調子で返されて唖然とする。
ナツキはわざとらしいため息をついて、またシンクに寄りかかった。
「海原さんと最後までいい雰囲気で撮影を終えたいだけなのに。もし事故でキスして気まずくなったら、つかささんのせい」
「横暴だ!」
「なんとでも。けど、プロ意識が高いつかささんのことだから、なんだかんだ言って付き合ってくれるでしょう?」
「…………、キスしちゃったらどうするの」
避けられなかったら、という意味じゃない。
つかさが立場も忘れてナツキの唇を奪ったらどうするつもりなのかと、そう聞きたかった。こっちはドキドキが止まらないし、顔のほてりも取れない。心の綱引きも限界に来てる。
「プロは時間を無駄にしない。つかささんが教えてくれた言葉だよ」
「休めるときは休むとも言ったはずだよ」
「そうだっけ?」
くくっと笑うナツキに、つかさはムッとした。誰のせいで頭を悩ませていると思っているのか。半ば自棄になって、ナツキの腕を掴んで自分の前に立たせた。
ナツキは変わらず余裕ある顔で――いや、嬉しそうに目を細めて、チラッと横を向いて笑った。
それを見て、まんまと網にかかった気分になる。
「俺からキスをするから、顔が離れる瞬間に来て」
「三、二、一で行けばいい?」
「それだと練習にならないだろ。不意打ちでこないと。はい、じゃあ、アクション」
ナツキは小気味好く指を鳴らして、つかさに顔を近づけた。
今度はキスの終わりを確認しないといけない。
恥ずかしさに耐えながら目を開けてじっとしていると、ナツキの口角が笑いをこらえるようにくっと持ち上がった。
(絶対、面白がってる。こうなったら、遠慮なくやってやる)
つかさは息を呑み、そのときを待った。すっと離れていく気配を感じて、ナツキの目を見ないまま、唇に狙いを定めて床から踵を離す。
ナツキがうまくかわしてくれるものだと思っていたのに――つかさは柔らかい感触にハッとして、弾かれたように身を引いた。初めてのキスになにか思うよりも、罪悪感が込み上げてくる。
「ごめッ……! 当たっ……ちゃっ、た……」
ナツキは指先で唇を隠し、目を伏せた。
「ファーストキス、奪われちゃった」
「えっ……ええ!?」
「俺、誰とも付き合ったことないし、初めてだから」
罪悪感が濃さを増し、胸をザワつかせた。
(この見た目で? この性格で?)
ナツキと付き合いたいと思う女子なら、いくらでもいただろう。告白されたことだってあるはず。それを全て断って、純粋なままで育ってきたというのか。
キスの経験がないから、キスシーンの練習にこだわっていたのか。いやまさか、そんな。
つかさは頭を混乱させ、冷や汗をかいた。
「ご、ごめんね! どうしようっ、み、水で洗う?」
「なんで」
「気持ち的にそうしたほうがいいのかなって」
「必要ない」
どうしてだか、ナツキは不機嫌だった。
冗談を本気にしたせいだ。まさか本当にキスをしてくると思っていなかったのかもしれない。
自分もファーストキスだったことすら忘れ、ナツキの態度にうろたえた。
すると、ナツキは顔をほのかに赤らめて、目端に怒りを滲ませて見つめた。
「いったいどれだけ近づけば、つかささんは堕ちてきてくれるの」
「え……?」
「つかささんを抱きしめる覚悟なら、とっくにできているのに。なんで、そんなに頑ななの。俺を求めてくれないの!?」
ナツキが一歩、つかさに近づく。一歩、また一歩と、後退るつかさを壁際に追い込んでいった。
「待って……お願い、待って! それ以上は」
「またマネージャーの顔をするの?」
壁に手をついたナツキの両腕が、逃げ道を塞ぐ。
「無駄だよ。つかささんは大根役者だから、マネージャー役を演じきれない。そうでしょ?」
「私は役じゃなくて、本物の」
「俺のこと好きだって、顔に書いてるよ。それなのに、まだ演技を続けるの?」
近づいてくる顔から逃れるように、横を向く。
ドキドキし過ぎて胸が痛い。まるで心臓を鷲掴みにされた気分だ。
暴かれたら、認めたら終わりだ。だが、暴かれたいと願う自分がいる。暴かれて楽になりたい。
「俺の気持ちに気づいてるでしょう?」
ナツキは、こんなときでも「触れない」という約束を守り続けていた。触れない代わりに、誘惑が止まない。
「わからないなら、俺がどれだけあなたを愛しているのか教えてあげる」
理性を保たないと。
「いっ、いらなッ――」
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「本気で拒みたいなら、俺の目を見て迷惑だって言えばいい」
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