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幽霊はいると困る。宇宙人はいないと困る。

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郊外の丘に私、山吹麗華(やまぶき れいか)の住むお屋敷があります。
 お屋敷には厳格なお父様と優しいお母様。身の回りのお世話をしてくれるメイドさんや執事さんの方々が暮らしています。
 「宇宙人に会ったらどうしますか?」
 「今日も元気そうだなお譲。私は仕事があるからその話は別のやつとしてくれ」
 メイドのユキさんは今日もクールです。しかし、そんなことで私の中の宇宙熱は消えたりしません。昨日寝る前に見た海外のドキュメンタリー番組「人類はひとりぼっちなのか」は私に無限の可能性を与えてくれました。
 「ユキさんユキさん。宇宙には知的生命体がほぼ間違いなくいるそうです。私は今まで宇宙人はフィクションの中だけの生き物だと思っていましたが、人類は孤独ではなかったのです」
 「なんでそんな無垢な子供みたいに瞳をキラキラ輝かせてるんだよ」
 「ユキさん宇宙です。時代は宇宙なんです」
 「わかった。気のすむまで話してくれ。私は玄関の掃き掃除してるから」
 「ですから、宇宙人に会えたらどうしますか。私は、私は……」
 「もし宇宙人が地球に来たらか……、殺してでもいいから技術なり資源なりを奪い取る」
 「…………」
 ユキさんは無駄のない動きで玄関の掃き掃除をしています。乱暴な発言とは裏腹に丁寧で、床のタイルを労わるかのような優しい手つきです。それでも私は見逃しませんでした。ユキさんの目が一瞬光を失ったことを。
 「もっとこう友好的な関係を……」
 「いいかお譲。よく聞くんだ。今まで人類史に宇宙人との交流があったか?」
 私は首を横に振ります。
 「そうだな。前例がなく、今後私たちが生きている間に会える可能性も極めて低い。そんな奇跡のような確率を引いたと仮定するならば、その出会いは人類のために絶対に無駄にできない。地球まで光年単位で有人飛行できる技術力、地球には存在しない物質。宇宙人の血肉はもしかしたら不治の病を癒やす特効薬になるかもしれない。なんでもいいから人類が有効活用できるなにかを――」
 「ユキさんのバカ! 私はもっと、宇宙人と仲良くできたらお茶に招待しようとか、一緒に遊びたいとかそういう話がしたかったんです」
 私はユキさんの話が怖くなりその場を後にしました。ユキさんは宇宙のロマンをわかっていません。もっと私の壮大な宇宙人交流計画をわかってくれる方はいないものでしょうか。
 すると、執事の橘さんを見つけました。今日も凛々しく廊下に置かれた調度品のお手入れをしています。素敵です。
 心のお優しい橘さんであればきっと私のロマンに賛同してくれるに違いありません。
 「橘さん。宇宙人に会えたらどうしますか?」
 私は橘さんに駆け寄るや、逸る気持ちを抑えきれず聞いてみました。橘さんは涼やかな笑顔を浮かべて言いました。
 「その知識と技術力あまりに魅力的です。例え返り討ちにあったとしても、人類の持てる全てを使って奪い取ります」
 「…………」
 私が間違っているのでしょうか。それ以来私は二人に宇宙人の話をしなくなりました。
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