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最終章 勇者として
諒太がいない世界
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聖域をあとにした諒太。しかし、目が合った僧兵に直ぐさまメイスを向けられていた。
「貴様、何者だ!?」
意味が分からない。大した時間を過ごしたわけではないというのに、僧兵は諒太が誰であるのかを問う。
「俺はリョウだが……?」
「聖域で何をしていた!? ここは立ち入り禁止なのだぞ!?」
どうやら惚けているわけではないようだ。彼は本気で諒太を忘れている。
「改変の影響なのか……?」
「引っ捕らえてやる!!」
どうにも話が通じそうにない。諒太は弁明することをやめ、直ぐさまリバレーションを唱え出す。
少しばかり緊張していたけれど、今も諒太は勇者であるらしい。捕らえられることなく、転移に成功していた。
思わず転移した先はアクラスフィア王国の石室。召喚陣が描かれた部屋であった。
「どうも、さっきまでセイクリッド世界にいた事実がなくなってる感じだな?」
僧兵は先ほども会った人物である。従って彼が諒太を認識できなかった理由は訪れた事実がなくなっていたからだろう。仮に顔を覚えていなくても、誰かが聖域に入った事実くらいは覚えているはずなのだ。
「改変を確かめてみよう……」
諒太はリバレーションを唱え、騎士団本部の裏手へと飛ぶ。念のためアクラスフィア王城の兵に見つからないようにと。
「本部は変わっていないみたいだ」
騎士団の本部前。王城も街並みも変化がないように思う。しかしながら、諒太は愕然とさせられてしまう。本部前の広場にあった銅像。勇者ナツ像がなくなっていたからだ。
「嘘だろ……?」
確かに過度な変化が起きたと聞いた。だが、諒太はそこまで大袈裟に考えていなかったのだ。まさか勇者ナツ像がなくなり、代わりの銅像が建てられているなんて。
「ハピル像……」
勇者ナツ像の代わりに建てられていたもの。それはβテストからアルカナの世界にあるというハピルの銅像であった。
この事実により、セイクリッド世界がなお一層ゲーム世界に近付いているのだと分かる。
呆然と眺めていると、
「見かけない顔だな?」
諒太は声をかけられていた。それも知った声。しかしながら、声かけの内容は諒太の経験を否定している。
「フレアさん……」
「んん? 如何にも私はフレア・マキシミリアンだが、初対面の君に名を呼ばれるのは快いものではないな?」
フレアは諒太を覚えていなかった。勇者リョウが過去の偉人となった今、もう彼女との接点はなくなってしまったらしい。
「すみません。騎士団長さんですよね?」
「如何にも。私はセンフィスの平穏を守る人間だ。少しでもおかしな真似をすると君を捕らえねばならない。観光であれば大通りに行ってみるといい。美味しい食べ物から地方では珍しいものまで手に入るだろう」
先日、一緒に妖精の国まで行ったところだというのに。既に諒太は彼女にとって他人でしかなく、地方からやって来た観光客と間違えられるような関係に成り下がっていた。
諒太は礼を言って、センフィスへと歩いて行く。どうにも落ち込んでいたけれど、フレアに逮捕されないように言われたまま街へと向かう。
「アーシェも覚えていないのだろうな……」
諒太は冒険者ギルド前で立ち止まる。通り過ぎようかと思うも、悩んだ挙げ句ギルドへと入っていく。
「冒険者ギルドにようこそ! 新規登録でしょうか?」
受付にいたアーシェはいつもと変わりない笑顔を見せてくれる。けれども、やはり諒太のことは覚えていない感じだ。
「少し聞きたいのだけど、君は大怪我をして入院したことってある?」
とても冒険者ギルドの受付でする話ではなかったけれど、諒太は問わずにいられない。
「え? ないですけど、どうかしました?」
「じゃあ、妖精の国に行ったことは?」
小首を傾げるアーシェ。諒太の質問の答えは当然のこと否定だろうが、妙なことを聞く諒太が何を考えているのか分からなかったのだろう。
「おい坊主、うちの受付を口説いてんじゃねぇぞ?」
ここで諒太を威圧するのはダッドギルド長であった。論ずることなく彼も諒太のことは分からないらしい。
「別に口説いたわけじゃないですよ。少し知り合いに似ていたから……」
「ほう、言い訳するんだな? そこは素直に謝罪するところだぜ? 俺はこれでも冒険者上がりでな。ギルドのいざこざを腕力でねじ伏せている」
どう見ても新人冒険者だと思ったのだろう。ダッドは諒太の話を信用せず、アーシェに群がる羽虫のように見ていた。
「本当ですよ。証拠があります」
流石にムッとした諒太はスクショをダッドに見せた。妖精の泉で撮ったアーシェの写真を。
「うお! マジだったのか!?」
「この人、わたしにソックリです!」
二人して驚いている。まあしかし、本人なのだから似ていて当たり前。諒太の話が真実であることは二人にも分かってもらえただろう。
加えてスクショに驚かない二人によって、セイクリッド世界がアルカナの世界と更なる同質化を果たした証明となっている。
「いや、すまんな。てっきりまたアーシェが口説かれてるのかと思ったんだ」
「別に良いです……。最後に会ったのが、妖精の泉なんです。彼女はどこかに行ってしまった……」
目の前のアーシェは諒太が知る彼女ではない。瀕死の重傷を負うこともなければ、酔い潰れて騎士団に預けられた彼女とも違う。
「彼女さん、だったのでしょうか……?」
「おいおいアーシェ、まさか冒険者に惚れたんじゃないだろうな?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!?」
顔を赤くするアーシェ。どうやら、この世界線でも彼女は諒太の魅力値に反応しているらしい。
「俺はもう行きます。旅の続きがありますから……」
心が痛んだ。綺麗さっぱり忘れられてしまうこと。想像以上につらく悲しいと思えている。
諒太は一つ頷いたあと、別れを告げる。もう二度と会うこともないだろうと。
「二人ともお元気で――――」
思わず涙がこぼれ落ちそうになってしまう。けれど、不審がられては駄目だ。諒太は唇を噛みながら感情をコントロールし、ギルドをあとにしていく。
裏路地へと入り、一人嘆息する。あれだけ仲が良かったというのに、誰も覚えていないなんてと。
「婿殿、そう気落ちするな。妾はちゃんと覚えておるぞ?」
鎧の隙間に隠れていたリナンシーが慰めのような言葉をくれる。今となってはリナンシーの存在が救いであるように思う。彼女だけは諒太の奮闘ぶりを知っているのだから。
「忘れられたい奴だけが覚えているなんてな……?」
「酷いのじゃ! 妾は美人で一途! 旅のお供に最適じゃろう!?」
「そういや、ウルムさんに預けた素材はどうなってるんだ?」
ここで疑問が思い浮かぶ。ウルムにはレア素材とフェアリーティアを預けている。既に彼が諒太のことを覚えているとは思わないが、あの素材はルイナー討伐戦に必要なのだ。
「最後のフェアリーティアは残っている……」
アイテムボックスを見ると、フェアリーティアが一つだけ残っていた。間違いなく諒太は預けていたけれど、現状の様子からなかったことになっている可能性は高い。
「確認しておこう……」
諒太は直ぐさまカモミールへと向かう。路地裏から猛ダッシュで駆け込んでいた。
「んん? こんな時間に客か? 適当に見ていってくれ……」
「ウルムさん、待ってください! 俺はココさんの知り合いとパーティを組んでいる冒険者のリョウといいます。俺が預けたカタストロフィの欠片とフェアリーティアはどうなっているのでしょうか!?」
とりあえずココの名を出しておれば、彼が気を悪くすることはない。よって要件を告げる前に知り合いであることをアピール。
「むぅ? 婆ちゃんの知り合いとパーティー? 何百年前の話をしてんだ?」
「て言われてもなぁ。ああ、そうだスクショがある!」
そういえば諒太は夏美たちとスクリーンショットを撮っていた。勇者ナツであればウルムも知っているだろうと。
早速とスクショを見せてみる。恐らくそれでウルムは分かってくれるはずだ。
「おお! アアアア公爵夫人とニホさんまで一緒に撮ったのか!?」
どうも皇国においては夏美よりも彩葉の方が有名であるらしい。ニホよりも触れられないだなんて、考えもしないことだ。
「若く見えるのに、リョウは俺より年上だったか! エルフの血でも入っているのか?」
「いやまあ、エルフではないですけど、俺は割と長生きする種族なんですよ……」
「なるほどな! 了解した。それで要件は婆ちゃんに依頼した品物を受け取りに来たってことか?」
どうやらウルムはカタストロフィの欠片について何も覚えていないらしい。ココに預けたと勘違いをして、古い戸棚から帳簿を取り出している。
「リョウという冒険者は……」
帳簿に載っているはずがない。何しろ諒太はココと会ったことすらなかったのだ。ウルムが覚えていないのなら、カタストロフィの欠片は改変の闇に消えてしまったのだろう。
「あった! って受け取り済みじゃないか?」
意外なことに帳簿には諒太の注文書が残っていたらしい。どうしてか諒太はココに依頼したことになっている。
「マジっすか!?」
「ほれ見ろ、長生きしてるもんだから忘れたんだろ?」
言ってウルムは帳簿を見せてくれる。
【種別】オーダー
【金額】90万ナール
【備考】素材持ち込み・納期指定・マーク入れ(三つ葉)
【終末の鎧+91】
【DEF100+91(補正+100)】
【レアリティ】★★★★★
【魔法耐性】火(微強)・水(強)・風(強)・土(強)・雷(微強)・氷(強)
【特殊錬成】★★★★★
【依頼者】リョウ
※納品済み5月14日
諒太は驚いている。間違いなく諒太がウルムに依頼したものだ。しかし、それは三百年前の出来事であり、ココが受注し納品も済ませている。
「これは事実なんだろうな……」
「当たり前だろ? どこかにしまったんじゃないか? もし見つかったら俺にも見せてくれ。婆ちゃん渾身の鎧とかレア中のレアだしな!」
独り言に反応されてしまう。諒太にとってはまだ未来の出来事。しかし、ウルムにとっては間違いなく過去の話であった。
「ありがとうございました。また来ます……」
「おう、特級の素材を持ち込んでくれよ!」
上機嫌なウルムとは対称的に諒太は浮かない表情だ。店を出たあとも、とめどなく溜め息が漏れてしまう。
誰も覚えていない。あれ程までに頑張ってきたというのに、諒太を知る者はセイクリッド世界にはいなくなった。2番目の勇者という微妙な立ち位置は誰の記憶にも残っていないのだ。
「どうすっかな……」
常々、引き際を考えていたけれど、それらは全て無駄になっている。好意を寄せてくれたアーシェですら少しも覚えていないのだ。別れを切り出す必要がなくなったのは助かるけれど、こんな別れはないように感じる。セイクリッド世界のために戦ってきた全てが意味を失ったと考えてしまう。
セイクリッド神が言った最悪の未来。今ならば諒太にも理解できる。心に空いた大きな穴は決して埋まることがないように思う。
「婿殿、妖精の国へ行くのじゃ……」
「あん? どうして残念な本体に会いに行かなきゃならんのだ?」
「妾も本体が気になるでの。まだリンクが切断されたままなんじゃ……」
リナンシーもまた改変の影響を受けている。アルカナの世界で顕現してしまったからか、彼女は本体と切り離されているままだ。
「分かった。直接中に飛ぶぞ?」
諒太は再びリバレーションを唱え出す。今度の行き先は妖精の国だ。泉の前へと直接転移していく。
「うーん、うーん……」
どうにも既視感を覚えて仕方がない。リナンシーの本体はまたも横になっていた。まるで魔力切れを起こした先週と同じである。
「おい、起きろ!」
以前と同じように蹴り起こす。諒太は八つ当たりするように思い切り蹴飛ばしていた。
「む、婿殿……?」
「おお、繋がったぞ! 婿殿、良くやってくれた!」
本体が蹴り起こされたというのに、分身体は大喜びだ。どうにも彼女は不安だったのだろう。本体が死んでしまったのではないだろうかと。
「リナンシー、何があった? お前は俺が知るままか?」
「うう、頭が痛いのじゃ。色々な情報がなだれ込んできての。少しはマシになったが酷い目に遭ったわい……」
やはりリナンシーの本体は改変の全貌を知っている感じだ。有無を言わさず書き換えられた者たちとは異なり、魂を共有する諒太の力によって彼女は改変の影響をあまり受けていないらしい。
「リナンシーは全てを覚えているのか……?」
「恐らくの。確信は持てんが、婿殿に加護を授けてからの記憶なら間違っていないじゃろう。分身体と同期したことで益々混乱しておるがの……」
リナンシーは諒太に加護を与えてからの記憶のみ確かだという。ここでも諒太に与えられた時空を歪めし者が効果を発揮しているはずだ。
「この世界におった暗黒竜は今や存在していないといっても構わん。過去次第で存在を強める可能性はあるが、今のところは脅威といえるものじゃない。その点に関して言えば婿殿と分身体はよくやったの。何しろ邪神の呪いを別の世界になすりつけてしまったのじゃからな……」
リナンシーは理解している。明確に過去であるアルカナの世界。しかし、そこは作られた過去であり、歪んで繋がっただけの世界である。元々、セイクリッド世界に科せられた暗黒竜をアルカナの世界に追いやったことをリナンシーは褒めていた。
「じゃあ、この世界はどこまで変わった? 向こう側はどこから同期している?」
過度に同質化したという二つの世界。諒太を勇者として改変するのに、どこまで巻き戻り、書き換えられたのかと。
「妾の記憶が正しいのかは分からん。妾に書き加えられた記憶を考えると、婿殿との出会い。その辺りから記憶がグチャグチャとしておるの……」
やはり起点はリナンシーとの出会いである可能性が高い。そこから整合性を図ったのだと思われる。あるべき姿へと無理矢理に当て嵌められたのだと。
「ナツもまた改変を受けた。やはり向こう側はセイクリッド神の管轄外なのか……」
魂レベルで繋がるリナンシーとは異なり、勇者ナツとは通信を介して接続しているだけ。セイクリッド神の加護が及ぶはずもなかった。
「アルカナの初期設定が優先されているのなら、ダライアスやベノンの代理なんていなくなっただろうな。討伐に切り替わった現状はダライアスの封印を否定するし……」
「ダライアス? 誰じゃそれは?」
「ああ、元々この世界にいた勇者だよ。邪神により生まれ落ちたルイナーを封印した者だ。でも、俺とリナンシーが出会う前に改変によって消された。ダライアスを召喚した大賢者ベノンも同じだ……」
「むぅ、それはまことか? 妾も改変を受けておったのか!?」
諒太は説明していく。現状で正式な歴史を知る者はセイクリッド神と諒太だけであること。向こう側と同質化する上で二人の偉人が痕跡すら消去されてしまったことを。
「しかし、婿殿が行き来する道はまだ残っておるのじゃろ?」
「残念だが召喚陣は向こう側にもあんだよ。元々それはセイクリッド世界にあった大賢者ベノンの召喚陣を同質化したものだろう。だけど、向こう側には大賢者や勇者の情報は同質化されていない。この度の同質化は向こう側の設定が有効であり、どうやって存在したとかいう情報は残ってないと思う……」
元々あった召喚陣が同質化によりアルカナへと書き込まれ、此度の逆流ともいえる同質化によって元々あった情報はクリアされたと考えられた。
「何にせよ現在のセイクリッド世界は平穏を取り戻した。それは俺が望んだまま。だから俺は向こう側でルイナーを討伐するだけだ……」
既に諒太は過去の偉人にすぎない。歴史にある二人目の勇者。セイクリッド世界で成し遂げる問題はもう何もなかった。
「婿殿のやるせない気持ちは理解するぞ。あれだけのことをしたというのに誰も覚えていないなんての……」
「いやまあ、お前だけでも覚えていてくれるのは有り難いよ。俺だって命を懸けて戦ってきたんだからさ……」
認めてもらうために戦ったわけじゃない。しかしながら、空気のように扱われてしまうのは流石に滅入る話だ。残念妖精とはいえ、諒太の足跡を知る者の存在は精神的な安定を得られる要素である。
「婿殿、別に妾だけではないぞ?」
長い息を吐く諒太にリナンシーが続けた。彼女曰く他にも諒太を知る者がいるらしい。
疑問符を並べる諒太にリナンシーは頷きを返す。
「婿殿の従魔じゃ。今もテイムされておる。やきとりは兎も角、知恵のある方はヤバいのじゃ。流れ込んだ情報の中に見たぞ。恐らくは妾以上に苦しんでおるはず。あやつは存在自体があやふやじゃからな。酷く乱れた時系列により、歪んだ歴史が書き加えられておるじゃろう。記憶の矛盾に思考が耐えられるか分からん。救いは上級モンスターであることと、ステータスに優れること。恐らく時間が解決すると思うが、今は世界の変化によりもたらされる情報を処理できずにいるはずじゃ……」
驚きを禁じ得ない。テイムしたソラもまた諒太を覚えているらしい。しかも彼女は多大なる改変情報によって苦しんでいるようだ。
「おいリナンシー、ソラはどこにいる!?」
あの変態天使が今もテイムされているなんて考えもしなかった。更には苦しんでいるとは放っておけない。
「あれは恐らく聖王城……。エルフが見えておった……」
行き先はスバウメシア聖王国。諒太は頷きを返している。かの国であれば酷い扱いは受けていないだろうが、それでもマスターとして諒太には責任があった。
「リナンシー、俺は聖王国へと行く。流石に放っておけない」
「そうしてやってくれ。あやつは今も婿殿を待っておるはずじゃ……」
意外にもリナンシーは咎めなかった。かつては嫌っていたような発言をしていたというのに、今は諒太の背中を押している。
諒太は転移していく。忘れ去られたこの世界。
かつて所属していたというスバウメシア聖王国へと……。
「貴様、何者だ!?」
意味が分からない。大した時間を過ごしたわけではないというのに、僧兵は諒太が誰であるのかを問う。
「俺はリョウだが……?」
「聖域で何をしていた!? ここは立ち入り禁止なのだぞ!?」
どうやら惚けているわけではないようだ。彼は本気で諒太を忘れている。
「改変の影響なのか……?」
「引っ捕らえてやる!!」
どうにも話が通じそうにない。諒太は弁明することをやめ、直ぐさまリバレーションを唱え出す。
少しばかり緊張していたけれど、今も諒太は勇者であるらしい。捕らえられることなく、転移に成功していた。
思わず転移した先はアクラスフィア王国の石室。召喚陣が描かれた部屋であった。
「どうも、さっきまでセイクリッド世界にいた事実がなくなってる感じだな?」
僧兵は先ほども会った人物である。従って彼が諒太を認識できなかった理由は訪れた事実がなくなっていたからだろう。仮に顔を覚えていなくても、誰かが聖域に入った事実くらいは覚えているはずなのだ。
「改変を確かめてみよう……」
諒太はリバレーションを唱え、騎士団本部の裏手へと飛ぶ。念のためアクラスフィア王城の兵に見つからないようにと。
「本部は変わっていないみたいだ」
騎士団の本部前。王城も街並みも変化がないように思う。しかしながら、諒太は愕然とさせられてしまう。本部前の広場にあった銅像。勇者ナツ像がなくなっていたからだ。
「嘘だろ……?」
確かに過度な変化が起きたと聞いた。だが、諒太はそこまで大袈裟に考えていなかったのだ。まさか勇者ナツ像がなくなり、代わりの銅像が建てられているなんて。
「ハピル像……」
勇者ナツ像の代わりに建てられていたもの。それはβテストからアルカナの世界にあるというハピルの銅像であった。
この事実により、セイクリッド世界がなお一層ゲーム世界に近付いているのだと分かる。
呆然と眺めていると、
「見かけない顔だな?」
諒太は声をかけられていた。それも知った声。しかしながら、声かけの内容は諒太の経験を否定している。
「フレアさん……」
「んん? 如何にも私はフレア・マキシミリアンだが、初対面の君に名を呼ばれるのは快いものではないな?」
フレアは諒太を覚えていなかった。勇者リョウが過去の偉人となった今、もう彼女との接点はなくなってしまったらしい。
「すみません。騎士団長さんですよね?」
「如何にも。私はセンフィスの平穏を守る人間だ。少しでもおかしな真似をすると君を捕らえねばならない。観光であれば大通りに行ってみるといい。美味しい食べ物から地方では珍しいものまで手に入るだろう」
先日、一緒に妖精の国まで行ったところだというのに。既に諒太は彼女にとって他人でしかなく、地方からやって来た観光客と間違えられるような関係に成り下がっていた。
諒太は礼を言って、センフィスへと歩いて行く。どうにも落ち込んでいたけれど、フレアに逮捕されないように言われたまま街へと向かう。
「アーシェも覚えていないのだろうな……」
諒太は冒険者ギルド前で立ち止まる。通り過ぎようかと思うも、悩んだ挙げ句ギルドへと入っていく。
「冒険者ギルドにようこそ! 新規登録でしょうか?」
受付にいたアーシェはいつもと変わりない笑顔を見せてくれる。けれども、やはり諒太のことは覚えていない感じだ。
「少し聞きたいのだけど、君は大怪我をして入院したことってある?」
とても冒険者ギルドの受付でする話ではなかったけれど、諒太は問わずにいられない。
「え? ないですけど、どうかしました?」
「じゃあ、妖精の国に行ったことは?」
小首を傾げるアーシェ。諒太の質問の答えは当然のこと否定だろうが、妙なことを聞く諒太が何を考えているのか分からなかったのだろう。
「おい坊主、うちの受付を口説いてんじゃねぇぞ?」
ここで諒太を威圧するのはダッドギルド長であった。論ずることなく彼も諒太のことは分からないらしい。
「別に口説いたわけじゃないですよ。少し知り合いに似ていたから……」
「ほう、言い訳するんだな? そこは素直に謝罪するところだぜ? 俺はこれでも冒険者上がりでな。ギルドのいざこざを腕力でねじ伏せている」
どう見ても新人冒険者だと思ったのだろう。ダッドは諒太の話を信用せず、アーシェに群がる羽虫のように見ていた。
「本当ですよ。証拠があります」
流石にムッとした諒太はスクショをダッドに見せた。妖精の泉で撮ったアーシェの写真を。
「うお! マジだったのか!?」
「この人、わたしにソックリです!」
二人して驚いている。まあしかし、本人なのだから似ていて当たり前。諒太の話が真実であることは二人にも分かってもらえただろう。
加えてスクショに驚かない二人によって、セイクリッド世界がアルカナの世界と更なる同質化を果たした証明となっている。
「いや、すまんな。てっきりまたアーシェが口説かれてるのかと思ったんだ」
「別に良いです……。最後に会ったのが、妖精の泉なんです。彼女はどこかに行ってしまった……」
目の前のアーシェは諒太が知る彼女ではない。瀕死の重傷を負うこともなければ、酔い潰れて騎士団に預けられた彼女とも違う。
「彼女さん、だったのでしょうか……?」
「おいおいアーシェ、まさか冒険者に惚れたんじゃないだろうな?」
「そ、そんなわけないじゃないですか!?」
顔を赤くするアーシェ。どうやら、この世界線でも彼女は諒太の魅力値に反応しているらしい。
「俺はもう行きます。旅の続きがありますから……」
心が痛んだ。綺麗さっぱり忘れられてしまうこと。想像以上につらく悲しいと思えている。
諒太は一つ頷いたあと、別れを告げる。もう二度と会うこともないだろうと。
「二人ともお元気で――――」
思わず涙がこぼれ落ちそうになってしまう。けれど、不審がられては駄目だ。諒太は唇を噛みながら感情をコントロールし、ギルドをあとにしていく。
裏路地へと入り、一人嘆息する。あれだけ仲が良かったというのに、誰も覚えていないなんてと。
「婿殿、そう気落ちするな。妾はちゃんと覚えておるぞ?」
鎧の隙間に隠れていたリナンシーが慰めのような言葉をくれる。今となってはリナンシーの存在が救いであるように思う。彼女だけは諒太の奮闘ぶりを知っているのだから。
「忘れられたい奴だけが覚えているなんてな……?」
「酷いのじゃ! 妾は美人で一途! 旅のお供に最適じゃろう!?」
「そういや、ウルムさんに預けた素材はどうなってるんだ?」
ここで疑問が思い浮かぶ。ウルムにはレア素材とフェアリーティアを預けている。既に彼が諒太のことを覚えているとは思わないが、あの素材はルイナー討伐戦に必要なのだ。
「最後のフェアリーティアは残っている……」
アイテムボックスを見ると、フェアリーティアが一つだけ残っていた。間違いなく諒太は預けていたけれど、現状の様子からなかったことになっている可能性は高い。
「確認しておこう……」
諒太は直ぐさまカモミールへと向かう。路地裏から猛ダッシュで駆け込んでいた。
「んん? こんな時間に客か? 適当に見ていってくれ……」
「ウルムさん、待ってください! 俺はココさんの知り合いとパーティを組んでいる冒険者のリョウといいます。俺が預けたカタストロフィの欠片とフェアリーティアはどうなっているのでしょうか!?」
とりあえずココの名を出しておれば、彼が気を悪くすることはない。よって要件を告げる前に知り合いであることをアピール。
「むぅ? 婆ちゃんの知り合いとパーティー? 何百年前の話をしてんだ?」
「て言われてもなぁ。ああ、そうだスクショがある!」
そういえば諒太は夏美たちとスクリーンショットを撮っていた。勇者ナツであればウルムも知っているだろうと。
早速とスクショを見せてみる。恐らくそれでウルムは分かってくれるはずだ。
「おお! アアアア公爵夫人とニホさんまで一緒に撮ったのか!?」
どうも皇国においては夏美よりも彩葉の方が有名であるらしい。ニホよりも触れられないだなんて、考えもしないことだ。
「若く見えるのに、リョウは俺より年上だったか! エルフの血でも入っているのか?」
「いやまあ、エルフではないですけど、俺は割と長生きする種族なんですよ……」
「なるほどな! 了解した。それで要件は婆ちゃんに依頼した品物を受け取りに来たってことか?」
どうやらウルムはカタストロフィの欠片について何も覚えていないらしい。ココに預けたと勘違いをして、古い戸棚から帳簿を取り出している。
「リョウという冒険者は……」
帳簿に載っているはずがない。何しろ諒太はココと会ったことすらなかったのだ。ウルムが覚えていないのなら、カタストロフィの欠片は改変の闇に消えてしまったのだろう。
「あった! って受け取り済みじゃないか?」
意外なことに帳簿には諒太の注文書が残っていたらしい。どうしてか諒太はココに依頼したことになっている。
「マジっすか!?」
「ほれ見ろ、長生きしてるもんだから忘れたんだろ?」
言ってウルムは帳簿を見せてくれる。
【種別】オーダー
【金額】90万ナール
【備考】素材持ち込み・納期指定・マーク入れ(三つ葉)
【終末の鎧+91】
【DEF100+91(補正+100)】
【レアリティ】★★★★★
【魔法耐性】火(微強)・水(強)・風(強)・土(強)・雷(微強)・氷(強)
【特殊錬成】★★★★★
【依頼者】リョウ
※納品済み5月14日
諒太は驚いている。間違いなく諒太がウルムに依頼したものだ。しかし、それは三百年前の出来事であり、ココが受注し納品も済ませている。
「これは事実なんだろうな……」
「当たり前だろ? どこかにしまったんじゃないか? もし見つかったら俺にも見せてくれ。婆ちゃん渾身の鎧とかレア中のレアだしな!」
独り言に反応されてしまう。諒太にとってはまだ未来の出来事。しかし、ウルムにとっては間違いなく過去の話であった。
「ありがとうございました。また来ます……」
「おう、特級の素材を持ち込んでくれよ!」
上機嫌なウルムとは対称的に諒太は浮かない表情だ。店を出たあとも、とめどなく溜め息が漏れてしまう。
誰も覚えていない。あれ程までに頑張ってきたというのに、諒太を知る者はセイクリッド世界にはいなくなった。2番目の勇者という微妙な立ち位置は誰の記憶にも残っていないのだ。
「どうすっかな……」
常々、引き際を考えていたけれど、それらは全て無駄になっている。好意を寄せてくれたアーシェですら少しも覚えていないのだ。別れを切り出す必要がなくなったのは助かるけれど、こんな別れはないように感じる。セイクリッド世界のために戦ってきた全てが意味を失ったと考えてしまう。
セイクリッド神が言った最悪の未来。今ならば諒太にも理解できる。心に空いた大きな穴は決して埋まることがないように思う。
「婿殿、妖精の国へ行くのじゃ……」
「あん? どうして残念な本体に会いに行かなきゃならんのだ?」
「妾も本体が気になるでの。まだリンクが切断されたままなんじゃ……」
リナンシーもまた改変の影響を受けている。アルカナの世界で顕現してしまったからか、彼女は本体と切り離されているままだ。
「分かった。直接中に飛ぶぞ?」
諒太は再びリバレーションを唱え出す。今度の行き先は妖精の国だ。泉の前へと直接転移していく。
「うーん、うーん……」
どうにも既視感を覚えて仕方がない。リナンシーの本体はまたも横になっていた。まるで魔力切れを起こした先週と同じである。
「おい、起きろ!」
以前と同じように蹴り起こす。諒太は八つ当たりするように思い切り蹴飛ばしていた。
「む、婿殿……?」
「おお、繋がったぞ! 婿殿、良くやってくれた!」
本体が蹴り起こされたというのに、分身体は大喜びだ。どうにも彼女は不安だったのだろう。本体が死んでしまったのではないだろうかと。
「リナンシー、何があった? お前は俺が知るままか?」
「うう、頭が痛いのじゃ。色々な情報がなだれ込んできての。少しはマシになったが酷い目に遭ったわい……」
やはりリナンシーの本体は改変の全貌を知っている感じだ。有無を言わさず書き換えられた者たちとは異なり、魂を共有する諒太の力によって彼女は改変の影響をあまり受けていないらしい。
「リナンシーは全てを覚えているのか……?」
「恐らくの。確信は持てんが、婿殿に加護を授けてからの記憶なら間違っていないじゃろう。分身体と同期したことで益々混乱しておるがの……」
リナンシーは諒太に加護を与えてからの記憶のみ確かだという。ここでも諒太に与えられた時空を歪めし者が効果を発揮しているはずだ。
「この世界におった暗黒竜は今や存在していないといっても構わん。過去次第で存在を強める可能性はあるが、今のところは脅威といえるものじゃない。その点に関して言えば婿殿と分身体はよくやったの。何しろ邪神の呪いを別の世界になすりつけてしまったのじゃからな……」
リナンシーは理解している。明確に過去であるアルカナの世界。しかし、そこは作られた過去であり、歪んで繋がっただけの世界である。元々、セイクリッド世界に科せられた暗黒竜をアルカナの世界に追いやったことをリナンシーは褒めていた。
「じゃあ、この世界はどこまで変わった? 向こう側はどこから同期している?」
過度に同質化したという二つの世界。諒太を勇者として改変するのに、どこまで巻き戻り、書き換えられたのかと。
「妾の記憶が正しいのかは分からん。妾に書き加えられた記憶を考えると、婿殿との出会い。その辺りから記憶がグチャグチャとしておるの……」
やはり起点はリナンシーとの出会いである可能性が高い。そこから整合性を図ったのだと思われる。あるべき姿へと無理矢理に当て嵌められたのだと。
「ナツもまた改変を受けた。やはり向こう側はセイクリッド神の管轄外なのか……」
魂レベルで繋がるリナンシーとは異なり、勇者ナツとは通信を介して接続しているだけ。セイクリッド神の加護が及ぶはずもなかった。
「アルカナの初期設定が優先されているのなら、ダライアスやベノンの代理なんていなくなっただろうな。討伐に切り替わった現状はダライアスの封印を否定するし……」
「ダライアス? 誰じゃそれは?」
「ああ、元々この世界にいた勇者だよ。邪神により生まれ落ちたルイナーを封印した者だ。でも、俺とリナンシーが出会う前に改変によって消された。ダライアスを召喚した大賢者ベノンも同じだ……」
「むぅ、それはまことか? 妾も改変を受けておったのか!?」
諒太は説明していく。現状で正式な歴史を知る者はセイクリッド神と諒太だけであること。向こう側と同質化する上で二人の偉人が痕跡すら消去されてしまったことを。
「しかし、婿殿が行き来する道はまだ残っておるのじゃろ?」
「残念だが召喚陣は向こう側にもあんだよ。元々それはセイクリッド世界にあった大賢者ベノンの召喚陣を同質化したものだろう。だけど、向こう側には大賢者や勇者の情報は同質化されていない。この度の同質化は向こう側の設定が有効であり、どうやって存在したとかいう情報は残ってないと思う……」
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「何にせよ現在のセイクリッド世界は平穏を取り戻した。それは俺が望んだまま。だから俺は向こう側でルイナーを討伐するだけだ……」
既に諒太は過去の偉人にすぎない。歴史にある二人目の勇者。セイクリッド世界で成し遂げる問題はもう何もなかった。
「婿殿のやるせない気持ちは理解するぞ。あれだけのことをしたというのに誰も覚えていないなんての……」
「いやまあ、お前だけでも覚えていてくれるのは有り難いよ。俺だって命を懸けて戦ってきたんだからさ……」
認めてもらうために戦ったわけじゃない。しかしながら、空気のように扱われてしまうのは流石に滅入る話だ。残念妖精とはいえ、諒太の足跡を知る者の存在は精神的な安定を得られる要素である。
「婿殿、別に妾だけではないぞ?」
長い息を吐く諒太にリナンシーが続けた。彼女曰く他にも諒太を知る者がいるらしい。
疑問符を並べる諒太にリナンシーは頷きを返す。
「婿殿の従魔じゃ。今もテイムされておる。やきとりは兎も角、知恵のある方はヤバいのじゃ。流れ込んだ情報の中に見たぞ。恐らくは妾以上に苦しんでおるはず。あやつは存在自体があやふやじゃからな。酷く乱れた時系列により、歪んだ歴史が書き加えられておるじゃろう。記憶の矛盾に思考が耐えられるか分からん。救いは上級モンスターであることと、ステータスに優れること。恐らく時間が解決すると思うが、今は世界の変化によりもたらされる情報を処理できずにいるはずじゃ……」
驚きを禁じ得ない。テイムしたソラもまた諒太を覚えているらしい。しかも彼女は多大なる改変情報によって苦しんでいるようだ。
「おいリナンシー、ソラはどこにいる!?」
あの変態天使が今もテイムされているなんて考えもしなかった。更には苦しんでいるとは放っておけない。
「あれは恐らく聖王城……。エルフが見えておった……」
行き先はスバウメシア聖王国。諒太は頷きを返している。かの国であれば酷い扱いは受けていないだろうが、それでもマスターとして諒太には責任があった。
「リナンシー、俺は聖王国へと行く。流石に放っておけない」
「そうしてやってくれ。あやつは今も婿殿を待っておるはずじゃ……」
意外にもリナンシーは咎めなかった。かつては嫌っていたような発言をしていたというのに、今は諒太の背中を押している。
諒太は転移していく。忘れ去られたこの世界。
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