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最終章 勇者として
クレセントムーン
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電気街である冬葉原にある一角。立派なオフィスビルの上層階に株式会社クレセントムーンはあった。
手狭になっていたため、移転計画があったものの、現状は4フロア丸々を使用することで狭いながらも業務をこなしている。
「それで大村君、わざわざプレイヤーの話をするために来たの? こう見えて私は忙しいのだけど……」
大村は運命のアルカナ運営部の部長である。どうやら問題があったようで、プロデューサーである敷嶋奈緒子の意見を聞きにきたらしい。
「このプレイヤーなのですが、アカウントを停止すべきかどうかの判断がつきかねまして……」
大村は印字した資料を敷嶋に手渡す。それには問題となっているプレイヤーの情報が細かく記載されていた。
「えっ? 大賢者……?」
真っ先にジョブを確認した敷嶋が驚いて声を出す。
大賢者は実装されたばかりであり、条件はかなり厳しいものであったはず。
「そうなんです。流石に早すぎて履歴を調べたのですが、どうにも理解が及ばないもので」
大村は嘆息している。それはそのはず、大賢者となったプレイヤーは何から何まで規格外であったのだ。不正を疑うには十分すぎるデータであった。
「これはどういうこと? ドラゴンゾンビや超大土竜をソロ討伐って……?」
「彼はレアモンスターを引きすぎているんです。それも殆どをソロ討伐していますし、的確にレアアイテムを手に入れています。どうにも怪しいと調査しておるのですが、まるで尻尾が掴めません。また、つい先ほどなんですが、終末の実の亜種ともソロで戦っています」
大村の報告に敷嶋は息を呑んだ。
終末の実は実装済みであったけれど、イベントと絡めて出現させる予定だった。しかし、アルカナⅡへの移行が決定するや、イベントはアルカナⅡへと持ち越しとなっている。よって終末の実は実装されていながら、未発表のままであった。
「どうして終末の実のデータを消去してなかったのよ?」
「申し訳ございません。丸井ディレクターの指示です。当時、移行作業が立て込んでおりまして、出現確率を最低値の0.001%とすることで応急的に対処しました。とはいえ、一段落したあとも消去されておりません。エンカウントは完全な不手際であります……」
嘆息する敷嶋。どうにも思うようにならない。丸井ディレクターにまたも足を引っ張られたという表情である。
設定ミスであったドラゴンゾンビと同じなのだ。死に戻ったプレイヤーへの補償を丸井が渋った結果、ドラゴンゾンビはLv140という強大な敵として残さざるを得なくなった。初期対応を間違えた丸井は下方修正できなくなり、出現率を最低値として残すことに決めたのだ。
「終末の実の亜種なんて、どれほどの確率? それでこのプレイヤーは補償を受け入れてくれるかしら?」
敷嶋には一定の未来しか見えていない。終末の実はそれでなくとも高難度モンスターなのだ。それの亜種をソロで引いてしまったなんて、運が悪すぎると思う。
「ああいえ、補償は必要ないかと……」
「はぁ? また丸井君が文句を言ってるわけ? ソロで終末の実の亜種に勝てるはずがないじゃないの?」
クレームが入る前に対応すべきであり、その初期対応は渋るべきではない。データの復旧だけでなく、白金貨でも送っておけば大抵のプレイヤーは納得してくれるのだ。最初から渋い対応をするのは明らかに悪手である。
だが、敷嶋は知らされていた。思いもしない事態となっていることを。
「既に終末の実亜種は討伐されています――――」
唖然と首を振るしかない。企画していたのは稀に出現する終末の実の討伐数を競うイベントであったけれど、そもそもソロで参加するようなイベントではなかったのだ。
「亜種のレベルは最低値だったの?」
「いえ、レベルは191でした。インフェルノを二十発撃ち込んで討伐しています」
聞き捨てならない話が続く。こうなってくると自身に確認を求めた理由が分かる。
インフェルノのドロップイベントは僅か数時間のみの開催であった。ドロップ確率の最適値を模索するための試験的なドロップイベントであったのだが、超極小確率に設定されたそれは全サーバーで三個しかドロップしていない。
「インフェルノの出所が不明なのね?」
「ああいえ、出所はセイクリッドサーバーの勇者ナツです。ミノタウロスの石ころと交換したらしいですね。今のところ彼のデータに不審な点は一つとしてありません。ですが、それだけに気になってしまって……」
交換したのであれば何も問題はない。だとすれば、運営チームの懸念は一つ。大賢者となったプレイヤーが過度に強すぎることであろう。
敷嶋はデータを見直している。手渡された資料を見る限り、勇者だと言われておれば信じていただろう。それだけ彼のステータスは恵まれすぎていた。
ふと敷嶋は思い出す。そういえばこのプレイヤーネームには聞き覚えがあることを。
『プレイヤーネームはリョウです! セイクリッドサーバーで……』
ファーストフード店で会った男の子。確かに、あの男の子は大賢者だと言った。感じの良い少年という印象である。
「リョウというプレイヤーはセイクリッドサーバーに一人だけなの?」
「一人だけですね。彼は一体何者なのでしょう?」
大村は知るはずもない疑問を投げていた。運営部にも顔を出すことはあるけれど、基本は制作部を指示する敷嶋に向かって。
「分からないわ。しかし、レベル147ってどのサーバーでもトップじゃないの?」
「現在は149になっていますね。彼の次にレベルが高いプレイヤーは143ですから」
「どうして大賢者なの? 彼はなぜ勇者に選定されていないのよ?」
どうにも不可解である。勇者とはそのままの意味だ。率先して戦う力を持つ者。勇敢であり、善行を重ねる者。特に強敵を屠る回数は重要視されていたのだ。リョウの履歴とステータスを見る限り、勇者ではない理由が敷嶋には分からなかった。
「彼がプレイを始めて直ぐ、勇者にはナツというプレイヤーが選ばれましたから。セイクリッドサーバーにおいて、リョウが勇者となる目はありませんでした……」
「後発プレイヤーなの!?」
敷嶋が声を荒らげている。流石にあり得ない。勇者が選定されたのは発売日から四ヶ月後。その時期にプレイし始めたプレイヤーがトップにいるなんて考えられないことであった。
「そうなんです。我々も不審に思ってリョウの履歴を追ったのですが、不審な行為は一つも見当たりません。多少、無理をするプレイスタイルですけれど、真っ当にプレイしております。ですが、それだけに気になってしまって……」
敷嶋は溜め息を吐いた。彼女が知るリョウであれば、恐らく不正行為などしていない。彼は真っ直ぐに目を見つめて、ルイナーを討伐できるか聞いていたのだ。あのような純真な目をする少年が不正をするはずもないと。
「リョウ君には会ったことがある。彼は不正などしていないわ。何しろ彼はルイナーを討伐できるかどうかを聞いてきたの。不正をするような輩の思考じゃないわね。それよりも私は気になっている。彼ほどのプレイヤーがどうして野良プレイしてるの?」
「完全な野良というわけではないですね。履歴によるとリョウは勇者ナツと聖騎士イロハと共闘しております。グレートサンドワーム亜種との一戦のみですが……」
たった一度だけ、リョウというプレイヤーが共闘したデータがあった。彼はそこでグレートサンドワーム亜種の素材を手にしており、王者の盾をカモミールというプレイヤー工房にて製作したらしい。
「勇者ナツとの関係は?」
「恐らくリアフレではないかと。幾度となく勇者ナツは彼にアイテムを譲渡しておりますし、唯一の共闘にも参加しておりますから……」
登録情報も隣町ですと大村。リョウという謎のプレイヤーは勇者の助力を得て現在の位置までのし上がったという。
「しかし、クランの勧誘が引っ切りなしにあるはずでしょ? どうして彼はソロにこだわるのかしら……?」
「ああいえ、現在の彼は野良ではなく、クランに入っています。マヌカハニー戦闘狂旗団という小規模クランですが……。いちご大福というプレイヤーをご存じですか?」
いちご大福というプレイヤーは敷嶋も聞いたことがあった。BANに関する報告書に詳しく記載されていたからだ。
「確かサーバーデータを片っ端から書き換えたハッカーよね?」
「ええ、その認識で間違いありません。低レベル帯の魔物データを軒並み書き換えた凄腕のハッカーです。彼の本体IDはブロックしたのですが、本体を買い直して再びプレイし始めているのです」
「今もプレイ中ってことは、今回は何もしていないのでしょ? それがどうかした?」
「常に注視しておりますが、今のところは何もしておりません。ですが、リョウが入ったクランは彼が新設したマヌカハニー戦闘狂旗団という小規模クランなのです……」
ようやく敷嶋はわざわざ大村がやって来た真意を知る。突然、現れた最強プレイヤー。凄腕ハッカーが立ち上げたクラン員であるならば、不審に思うのも無理はなかった。
「なるほどね。さっきも言ったけど、リョウ君に私は会ったことがあるの。彼は不正などしないわ。だから、運営部は安心しなさい。リョウ君は純粋にプレイを楽しむ少年なのだから……」
履歴を見るたびに小首を傾げたくなる理由は敷嶋にも分かった。しかし、どれも工夫と発想力で乗り越えている。だからこそ、彼が会った印象と大差がないプレイをしているのだと思う。
「了解しました。今現在は悪魔王アスモデウスと戦っているようですが、もう報告は必要ないですかね? 魔力回復ポーションを二十個保有し、勇者ナツから譲渡されたディバインパニッシャーを持つ大賢者の経過報告は……」
「構わないわ。レベル149ならソロ討伐するでしょう。何しろ彼の目標はちんけな悪魔を倒すことじゃない……」
敷嶋は笑みを浮かべている。冗談だと受け取っていた話が本気であったのだと気付いたから。少年の想いを真摯に受け止めていた。
「彼は本気でルイナーを討伐するつもりよ?――――」
現実世界は明らかに同質化を図っていた。矛盾を生まぬよう過度な脚色を加えながら。
まるでセイクリッド神や世界の意志であるかのように。
勇者の邪魔はさせないという明確な意図がそこにはあった……。
手狭になっていたため、移転計画があったものの、現状は4フロア丸々を使用することで狭いながらも業務をこなしている。
「それで大村君、わざわざプレイヤーの話をするために来たの? こう見えて私は忙しいのだけど……」
大村は運命のアルカナ運営部の部長である。どうやら問題があったようで、プロデューサーである敷嶋奈緒子の意見を聞きにきたらしい。
「このプレイヤーなのですが、アカウントを停止すべきかどうかの判断がつきかねまして……」
大村は印字した資料を敷嶋に手渡す。それには問題となっているプレイヤーの情報が細かく記載されていた。
「えっ? 大賢者……?」
真っ先にジョブを確認した敷嶋が驚いて声を出す。
大賢者は実装されたばかりであり、条件はかなり厳しいものであったはず。
「そうなんです。流石に早すぎて履歴を調べたのですが、どうにも理解が及ばないもので」
大村は嘆息している。それはそのはず、大賢者となったプレイヤーは何から何まで規格外であったのだ。不正を疑うには十分すぎるデータであった。
「これはどういうこと? ドラゴンゾンビや超大土竜をソロ討伐って……?」
「彼はレアモンスターを引きすぎているんです。それも殆どをソロ討伐していますし、的確にレアアイテムを手に入れています。どうにも怪しいと調査しておるのですが、まるで尻尾が掴めません。また、つい先ほどなんですが、終末の実の亜種ともソロで戦っています」
大村の報告に敷嶋は息を呑んだ。
終末の実は実装済みであったけれど、イベントと絡めて出現させる予定だった。しかし、アルカナⅡへの移行が決定するや、イベントはアルカナⅡへと持ち越しとなっている。よって終末の実は実装されていながら、未発表のままであった。
「どうして終末の実のデータを消去してなかったのよ?」
「申し訳ございません。丸井ディレクターの指示です。当時、移行作業が立て込んでおりまして、出現確率を最低値の0.001%とすることで応急的に対処しました。とはいえ、一段落したあとも消去されておりません。エンカウントは完全な不手際であります……」
嘆息する敷嶋。どうにも思うようにならない。丸井ディレクターにまたも足を引っ張られたという表情である。
設定ミスであったドラゴンゾンビと同じなのだ。死に戻ったプレイヤーへの補償を丸井が渋った結果、ドラゴンゾンビはLv140という強大な敵として残さざるを得なくなった。初期対応を間違えた丸井は下方修正できなくなり、出現率を最低値として残すことに決めたのだ。
「終末の実の亜種なんて、どれほどの確率? それでこのプレイヤーは補償を受け入れてくれるかしら?」
敷嶋には一定の未来しか見えていない。終末の実はそれでなくとも高難度モンスターなのだ。それの亜種をソロで引いてしまったなんて、運が悪すぎると思う。
「ああいえ、補償は必要ないかと……」
「はぁ? また丸井君が文句を言ってるわけ? ソロで終末の実の亜種に勝てるはずがないじゃないの?」
クレームが入る前に対応すべきであり、その初期対応は渋るべきではない。データの復旧だけでなく、白金貨でも送っておけば大抵のプレイヤーは納得してくれるのだ。最初から渋い対応をするのは明らかに悪手である。
だが、敷嶋は知らされていた。思いもしない事態となっていることを。
「既に終末の実亜種は討伐されています――――」
唖然と首を振るしかない。企画していたのは稀に出現する終末の実の討伐数を競うイベントであったけれど、そもそもソロで参加するようなイベントではなかったのだ。
「亜種のレベルは最低値だったの?」
「いえ、レベルは191でした。インフェルノを二十発撃ち込んで討伐しています」
聞き捨てならない話が続く。こうなってくると自身に確認を求めた理由が分かる。
インフェルノのドロップイベントは僅か数時間のみの開催であった。ドロップ確率の最適値を模索するための試験的なドロップイベントであったのだが、超極小確率に設定されたそれは全サーバーで三個しかドロップしていない。
「インフェルノの出所が不明なのね?」
「ああいえ、出所はセイクリッドサーバーの勇者ナツです。ミノタウロスの石ころと交換したらしいですね。今のところ彼のデータに不審な点は一つとしてありません。ですが、それだけに気になってしまって……」
交換したのであれば何も問題はない。だとすれば、運営チームの懸念は一つ。大賢者となったプレイヤーが過度に強すぎることであろう。
敷嶋はデータを見直している。手渡された資料を見る限り、勇者だと言われておれば信じていただろう。それだけ彼のステータスは恵まれすぎていた。
ふと敷嶋は思い出す。そういえばこのプレイヤーネームには聞き覚えがあることを。
『プレイヤーネームはリョウです! セイクリッドサーバーで……』
ファーストフード店で会った男の子。確かに、あの男の子は大賢者だと言った。感じの良い少年という印象である。
「リョウというプレイヤーはセイクリッドサーバーに一人だけなの?」
「一人だけですね。彼は一体何者なのでしょう?」
大村は知るはずもない疑問を投げていた。運営部にも顔を出すことはあるけれど、基本は制作部を指示する敷嶋に向かって。
「分からないわ。しかし、レベル147ってどのサーバーでもトップじゃないの?」
「現在は149になっていますね。彼の次にレベルが高いプレイヤーは143ですから」
「どうして大賢者なの? 彼はなぜ勇者に選定されていないのよ?」
どうにも不可解である。勇者とはそのままの意味だ。率先して戦う力を持つ者。勇敢であり、善行を重ねる者。特に強敵を屠る回数は重要視されていたのだ。リョウの履歴とステータスを見る限り、勇者ではない理由が敷嶋には分からなかった。
「彼がプレイを始めて直ぐ、勇者にはナツというプレイヤーが選ばれましたから。セイクリッドサーバーにおいて、リョウが勇者となる目はありませんでした……」
「後発プレイヤーなの!?」
敷嶋が声を荒らげている。流石にあり得ない。勇者が選定されたのは発売日から四ヶ月後。その時期にプレイし始めたプレイヤーがトップにいるなんて考えられないことであった。
「そうなんです。我々も不審に思ってリョウの履歴を追ったのですが、不審な行為は一つも見当たりません。多少、無理をするプレイスタイルですけれど、真っ当にプレイしております。ですが、それだけに気になってしまって……」
敷嶋は溜め息を吐いた。彼女が知るリョウであれば、恐らく不正行為などしていない。彼は真っ直ぐに目を見つめて、ルイナーを討伐できるか聞いていたのだ。あのような純真な目をする少年が不正をするはずもないと。
「リョウ君には会ったことがある。彼は不正などしていないわ。何しろ彼はルイナーを討伐できるかどうかを聞いてきたの。不正をするような輩の思考じゃないわね。それよりも私は気になっている。彼ほどのプレイヤーがどうして野良プレイしてるの?」
「完全な野良というわけではないですね。履歴によるとリョウは勇者ナツと聖騎士イロハと共闘しております。グレートサンドワーム亜種との一戦のみですが……」
たった一度だけ、リョウというプレイヤーが共闘したデータがあった。彼はそこでグレートサンドワーム亜種の素材を手にしており、王者の盾をカモミールというプレイヤー工房にて製作したらしい。
「勇者ナツとの関係は?」
「恐らくリアフレではないかと。幾度となく勇者ナツは彼にアイテムを譲渡しておりますし、唯一の共闘にも参加しておりますから……」
登録情報も隣町ですと大村。リョウという謎のプレイヤーは勇者の助力を得て現在の位置までのし上がったという。
「しかし、クランの勧誘が引っ切りなしにあるはずでしょ? どうして彼はソロにこだわるのかしら……?」
「ああいえ、現在の彼は野良ではなく、クランに入っています。マヌカハニー戦闘狂旗団という小規模クランですが……。いちご大福というプレイヤーをご存じですか?」
いちご大福というプレイヤーは敷嶋も聞いたことがあった。BANに関する報告書に詳しく記載されていたからだ。
「確かサーバーデータを片っ端から書き換えたハッカーよね?」
「ええ、その認識で間違いありません。低レベル帯の魔物データを軒並み書き換えた凄腕のハッカーです。彼の本体IDはブロックしたのですが、本体を買い直して再びプレイし始めているのです」
「今もプレイ中ってことは、今回は何もしていないのでしょ? それがどうかした?」
「常に注視しておりますが、今のところは何もしておりません。ですが、リョウが入ったクランは彼が新設したマヌカハニー戦闘狂旗団という小規模クランなのです……」
ようやく敷嶋はわざわざ大村がやって来た真意を知る。突然、現れた最強プレイヤー。凄腕ハッカーが立ち上げたクラン員であるならば、不審に思うのも無理はなかった。
「なるほどね。さっきも言ったけど、リョウ君に私は会ったことがあるの。彼は不正などしないわ。だから、運営部は安心しなさい。リョウ君は純粋にプレイを楽しむ少年なのだから……」
履歴を見るたびに小首を傾げたくなる理由は敷嶋にも分かった。しかし、どれも工夫と発想力で乗り越えている。だからこそ、彼が会った印象と大差がないプレイをしているのだと思う。
「了解しました。今現在は悪魔王アスモデウスと戦っているようですが、もう報告は必要ないですかね? 魔力回復ポーションを二十個保有し、勇者ナツから譲渡されたディバインパニッシャーを持つ大賢者の経過報告は……」
「構わないわ。レベル149ならソロ討伐するでしょう。何しろ彼の目標はちんけな悪魔を倒すことじゃない……」
敷嶋は笑みを浮かべている。冗談だと受け取っていた話が本気であったのだと気付いたから。少年の想いを真摯に受け止めていた。
「彼は本気でルイナーを討伐するつもりよ?――――」
現実世界は明らかに同質化を図っていた。矛盾を生まぬよう過度な脚色を加えながら。
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