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第四章 穏やかな生活の先に
アイスクリーム
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スバウメシア聖王国の西端にある氷のフォールドへとにやって来たマヌカハニー戦闘狂旗団。タルトが目撃したというプリズムの出現を待っていた。
「何だかワクワクするなぁ!」
「超高難度だから、まぁた死に戻っちゃうかもしんない……」
「イロハちゃんのステ管理は気いつけとくんよ。防御値と精神値は重ねがけしとくし」
防御値は主に物理対応であり、精神値は魔法耐性である。防御値を上げると魔法耐性も上昇するのだが、精神値も上げておくと魔法耐性はかなり強化された。
「聖王騎士イロハよ、もう死に戻りは許さんぞ? 攻撃よりも回避重視だ……」
「あいよ。元々、俊敏値は高い方だから、ガッツリ受けるより回避の方が合ってるし」
死に戻って賢さが4となるまで、イロハは素早さと器用さくらいしか目立ったステータスを持っていなかった。素早さは回避しやすいだけでなく、ヒットミスの確率を上昇させる。微々たるものではあったけれど、回避重視は彼女が得意とする戦法に違いない。
「素早くて器用とか盗賊向きだよな……?」
「盗賊言うな! 悪役令嬢は低俗な犯罪などしないの! 密かに毒を盛ったり、ネチネチと精神的に追い込むのが得意……」
「そっちのがヤベぇよ……」
超高難度ダンジョンへ挑むというのに、彼らはいつも通りである。
恐れるよりも、全員が期待していた。まだ誰も踏み入っていない新ダンジョン。一番乗りで攻略できる機会に胸躍らせている。
「ところでよ、イロハは死に戻ってどうだった? リアルに吐くやつまでいるらしいが、ゲロゲロになっちまったか?」
笑い話のついでとばかりにアアアアが聞いた。トラウマという死に戻りの瞬間。アアアアはフレンドに聞いたような話があったのかと尋ねている。
「天上人であるJK舐めんな。我らJKは嘔吐などしないのだよ!」
「本当かよ? じゃあ、気持ち悪い感覚はどれくらい続くんだ?」
「ま、あんま思い出したくないのは確かだね。ゴリさんみたく特殊性癖を習得していないと、リバースもあり得る。剣が突き刺さる感覚。なんてかマジ臨死体験っしょ? 最初に痛みがあって、少しの吐き気を催す。意識があるもんだから、身体に突き刺さった異物感が凄く気持ち悪いの。まあでも、直ぐにブラックアウトして、問答無用で爺ちゃんの前だったね……」
爺ちゃんとはアクラスフィア王のことだろう。運命のアルカナの出発地点であり、それは異世界召喚の場面である。
「ああ、死んだとして何の表示もないのか? イロハは死にました。とか画面にでるのかと……」
「ないない! めっちゃあっさりしてるよ。ブラックアウトしたあと、王様の顔を見て事実に気付く感じ!」
「イロハよ、死に戻りは言うほど悪くないぞ? 実は死に戻りするとプラスに補正が働きやすくなっておる。加えて貴様は良いところを引いた。ラックなら目も当てられん」
どうやらイロハの初期値に4が増えていたのは死に戻りの恩恵である可能性が高いみたいだ。タルトの話にイロハは納得した様子である。
「あっ! 太陽が水平線にかかってきたんよ!」
ここでチカが声を張る。遂に待っていた時間が到来したらしい。
沈みゆく夕陽は周囲を茜色に染めていく。また目映い光は海上にある流氷へと届き、乱反射するようにして流氷の輝きが大地に映し出されていった。
「おおお! すげぇ!」
アアアアが思わず声を上げている。想像していたものよりも遥かに圧倒的な演出に。
プリズムと表現したタルトの話には同意するしかなかった。
「皆の者、行くぞ! 一分程度で消えてしまうのだ。味見をしている間もないと思え!」
タルトがそういった直後のこと、不意に魔物が出現していた。
五人の背後に現れたのはレアモンスターである。交渉によってアイスクリームが貰えるというペン子に他ならない。
「ぐぬぅ! 我が愛しきペン子ではないかっ!?」
「ほら、タルトさん時間がない! 早く!」
夏美に引っ張られるようにして、タルトはサンセットヒルへと入っていく。だが、彼の視線はペン子に向けられたままだ……。
「我のアイスクリーム!!――――」
「何だかワクワクするなぁ!」
「超高難度だから、まぁた死に戻っちゃうかもしんない……」
「イロハちゃんのステ管理は気いつけとくんよ。防御値と精神値は重ねがけしとくし」
防御値は主に物理対応であり、精神値は魔法耐性である。防御値を上げると魔法耐性も上昇するのだが、精神値も上げておくと魔法耐性はかなり強化された。
「聖王騎士イロハよ、もう死に戻りは許さんぞ? 攻撃よりも回避重視だ……」
「あいよ。元々、俊敏値は高い方だから、ガッツリ受けるより回避の方が合ってるし」
死に戻って賢さが4となるまで、イロハは素早さと器用さくらいしか目立ったステータスを持っていなかった。素早さは回避しやすいだけでなく、ヒットミスの確率を上昇させる。微々たるものではあったけれど、回避重視は彼女が得意とする戦法に違いない。
「素早くて器用とか盗賊向きだよな……?」
「盗賊言うな! 悪役令嬢は低俗な犯罪などしないの! 密かに毒を盛ったり、ネチネチと精神的に追い込むのが得意……」
「そっちのがヤベぇよ……」
超高難度ダンジョンへ挑むというのに、彼らはいつも通りである。
恐れるよりも、全員が期待していた。まだ誰も踏み入っていない新ダンジョン。一番乗りで攻略できる機会に胸躍らせている。
「ところでよ、イロハは死に戻ってどうだった? リアルに吐くやつまでいるらしいが、ゲロゲロになっちまったか?」
笑い話のついでとばかりにアアアアが聞いた。トラウマという死に戻りの瞬間。アアアアはフレンドに聞いたような話があったのかと尋ねている。
「天上人であるJK舐めんな。我らJKは嘔吐などしないのだよ!」
「本当かよ? じゃあ、気持ち悪い感覚はどれくらい続くんだ?」
「ま、あんま思い出したくないのは確かだね。ゴリさんみたく特殊性癖を習得していないと、リバースもあり得る。剣が突き刺さる感覚。なんてかマジ臨死体験っしょ? 最初に痛みがあって、少しの吐き気を催す。意識があるもんだから、身体に突き刺さった異物感が凄く気持ち悪いの。まあでも、直ぐにブラックアウトして、問答無用で爺ちゃんの前だったね……」
爺ちゃんとはアクラスフィア王のことだろう。運命のアルカナの出発地点であり、それは異世界召喚の場面である。
「ああ、死んだとして何の表示もないのか? イロハは死にました。とか画面にでるのかと……」
「ないない! めっちゃあっさりしてるよ。ブラックアウトしたあと、王様の顔を見て事実に気付く感じ!」
「イロハよ、死に戻りは言うほど悪くないぞ? 実は死に戻りするとプラスに補正が働きやすくなっておる。加えて貴様は良いところを引いた。ラックなら目も当てられん」
どうやらイロハの初期値に4が増えていたのは死に戻りの恩恵である可能性が高いみたいだ。タルトの話にイロハは納得した様子である。
「あっ! 太陽が水平線にかかってきたんよ!」
ここでチカが声を張る。遂に待っていた時間が到来したらしい。
沈みゆく夕陽は周囲を茜色に染めていく。また目映い光は海上にある流氷へと届き、乱反射するようにして流氷の輝きが大地に映し出されていった。
「おおお! すげぇ!」
アアアアが思わず声を上げている。想像していたものよりも遥かに圧倒的な演出に。
プリズムと表現したタルトの話には同意するしかなかった。
「皆の者、行くぞ! 一分程度で消えてしまうのだ。味見をしている間もないと思え!」
タルトがそういった直後のこと、不意に魔物が出現していた。
五人の背後に現れたのはレアモンスターである。交渉によってアイスクリームが貰えるというペン子に他ならない。
「ぐぬぅ! 我が愛しきペン子ではないかっ!?」
「ほら、タルトさん時間がない! 早く!」
夏美に引っ張られるようにして、タルトはサンセットヒルへと入っていく。だが、彼の視線はペン子に向けられたままだ……。
「我のアイスクリーム!!――――」
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