172 / 226
第四章 穏やかな生活の先に
創作本
しおりを挟む
誕生パーティーの準備に取りかかった諒太。既に高級アクセサリーの製作を終え、次はいよいよアクセサリーのケース作りとなっていた。素材は話していたように、ほぼゴミである。ロークアットが必要量を掻き集めてくれていた。
「さてと、やっぱ宝石箱的なやつかな?」
「シンプルでも構わないと思いますよ? 主役はアクセサリーですので……」
豪華にしようと考えたところで、素材はボロ布に古書、あとは廃材である。これらから作るとすれば、やはりシンプルな木箱ということになるのかもしれない。
素材を触ってみてはイメージをする。どのような箱を用意するべきかと。
「んん? これって日記か?」
ロークアットが用意したものの中に、古い革カバーに入った日記のようなものが混じっていた。諒太は思わず、それを手に取っている。
「あ、それは読まないでくださいまし!」
読むなと言われると読みたくなるのが心情だ。ご主人様の意に反することであったが、一ページだけだよと諒太はノートを開く。
『わたくしの英雄』
表紙を捲っただけ。だが、諒太は固まっていた。
間違っても日記などではない。わたくしの英雄と題されたもの。挿絵まであるそれは諒太の興味を惹いている。
「それは子供の頃に書いたものです。ずっと処分しようと考えていたのですが……」
色々な本が重なっていた中から、諒太が選んでしまったもの。どうしてか嫌な予感がしてならない。偶然に諒太がそれを手に取ったこと。再び神の意志が選択させたのではないかと。
「読んでいいか? からかったりしないからさ……」
どうにも気になっている。タイトルだけであれば、深く考える必要もないのだが、ロークアットが描いただろう挿絵がどうしてか不安を掻き立てていた。
「ええまあ……。世界を救った英雄たちを描いたお恥ずかしい内容の創作本ですが……」
同意を得た諒太はページを捲ってみる。やはり内容は日記などではない。
聞いたままに、これは創作本だ。最初にあった勇者という言葉に鼓動が高鳴っていく。
「それはナツ様です……」
ロークアットの説明に頷きを返す。まず最初に出てきた勇者。よもや失われたダライアスであるはずがない。ロークアットが知る勇者は夏美以外にあり得なかった。
子供が描く絵であったけれど、髪の長さも色合いもよく捉えられている。今も装備している白銀の鎧にブレイブシールド+100。薬指に指輪があるのには困惑してしまうが、モデルの名を聞くと、夏美と同じ装備にしか見えなかった。
次のページにあったのもキャラクター紹介のような一枚絵である。
「それはイロハ様ですね……」
何と死に戻ったイロハまで登場していた。ただ彼女は諒太が知る剣士ではないらしい。ローブを身に纏った魔道士的な格好である。これでは名前を聞くまで諒太には分からなかったはずだ。
「隣の絵はアアアア様です。お二人は夫婦でしたので隣のページに描きました」
そういえばアアアアと彩葉は結婚をすると聞いていた。ロークアットの創作話にもそれは反映されているらしい。
こうなってくると次のページにある人物が予想できてしまう。諒太はある程度の予想をしてからページを捲っている。
「これは大司教チカだな?」
「分かっていただけて嬉しいです。それで右手の絵はタルト様。彼は真っ黒なヘビープレートを装備されていましたから……」
人物の絵はタルトが最後であった。かといって、それで終わりではない。次のページには何やら地図らしきものが描いてある。
「この地図はなに?」
「えっと、確か英雄たちが戦った記録だったかと……」
どうやらロークアットは記憶が曖昧らしい。まあしかし、三百年も前の話である。想像で描いたような絵を詳細に覚えているはずもない。
ざっと見た感じはセイクリッド世界の地図だ。お城が三つあり、ダリヤ山脈の北側には教会の絵があった。つまりはセイクリッド三大国と正教会の本部がある都市国家アルカナ。幼い頃と聞いていたけれど、なかなかの画力だと思う。
「へぇ、このバッテンは何だ? 一つはルイナーの封印場所か?」
「その通りかと。恐らく、その×印は英雄たちが戦った場所なんだと思います」
懐かしそうに笑みを浮かべながらロークアットは絵を見ている。恥ずかしいと言っていたけれど、彼女は見入っていた。
「あれ? スバウメシア聖王国の内乱だったか? この×印はエクシアーノから離れすぎていないか?」
「リョウ様、混同されてはいけません。エクシアーノとサンテクトでの大戦にマヌカハニー戦闘狂旗団は参加していないのです。確かにナツ様は参戦されていましたが、チカ様とイロハ様、アアアア様は内乱に関係ございません。そもそもアアアア様の所属は皇国でしたし……」
緊急クエストであったあの戦いは事前に予定されていたものではない。どうやらアアアアは参加申し込みに間に合わなかった模様だ。また死に戻ったイロハは別人として数えられているらしい。
「ああ、そうか……。デカ盛りいちごパフェ団が解散したあとの戦いだったな。てことは、このバッテンは全てマヌカハニー戦闘狂旗団の功績ってことか?」
「だと思います。彼らは世界を飛び回り、戦っていたのですよ。ただ記録として残っている戦いは結成時とルイナーの封印しかございませんので、幼少期のわたくしは想像で彼らの記録を描き足しておりました……」
史実として残っている記録は二つしかないようだ。ロークアット曰く、結成時の戦いとルイナーとの最終決戦だけらしい。
「じゃあ、エクシアーノの北側にあるバッテンは結成時の功績なのか?」
「その通りです! マヌカハニー戦闘狂旗団が編成されたのは、まさにエクシアーノをスタンピードが襲ったからなんです!」
ロークアットが英雄と話すのは、やはりエクシアーノの救世主であったことが大きい。エクシアーノを守るために立ち上がった彼らは聖王国において英雄そのものであった。
次のページには見開きでスタンピードらしき絵が描いてある。迫り来る魔物の軍勢に五人が立ち塞がっている感じの絵であった。
「この巨大な影は?」
「それはアースドラゴンです! 過去に例がない魔物でしたが、ナツ様が最後仕留められたと伝わっております!」
喜々として語るロークアットには思わず笑みを浮かべてしまう。タイトル通りに彼女の英雄たちが描かれているのだとよく分かった。
やはり諒太は気になってしまう。×印は四つあったのだ。最初がスタンピードで最後がルイナーの封印。想像で描いたという二つ目と三つ目の×印では何が起きたのかと。
「残りの二つはどういう英雄譚なんだ?」
「やはり気になりますか!? それでは続きをご覧ください!」
恥ずかしがっていたのが嘘のようだ。ロークアットはネタバレよりも続きを読むようにと促している。
どうせ説明が必要なのにと感じながらも、諒太は次のページを捲った。
「んん?」
次の二ページには意外にも文字が沢山書いてある。挿絵は左側に一つだけ。青色の魔物らしきものが描かれていた。また右側の部分には文章が綴ってあるだけだ。
諒太は早速と目を通す。拙い日本語で書かれているそれは同質化の賜物である。けれど、読みにくいことはなく、整った綺麗な文字が並んでいた。
『幻の丘サンセットヒル――――』
標題らしきもの。想像で書いたというそれは、割と諒太の興味を惹く。本当に存在する地名なのか分からないが、冒険への期待感を掻き立てるタイトルであった。
『マヌカハニー戦闘狂旗団は聖王国の謎を解いた。それは凄いこと。氷に覆われた大地にジンさまが眠っている。はやくイフリートさまと会わせたい』
子供の想像でしかなかったのだが、諒太は息を呑んでいた。意味不明な作中に、突如として飛び出してきた単語。諒太は先日それを目にしたばかりだ。
考えすぎかもしれないけれど、ロークアットは諒太と奴隷契約によって接続している。それが創作であると分かっていたとしても、関連性があるように思えてならない。
「イフリート……?」
「ええ、イフリート様は精霊王。風の精霊王ジン様と対をなすお方です。お二人はセイクリッド世界の守り神。その姿をお見せになることは稀ですが、伝承によると二人の精霊王により世界は秩序を保っておるそうです」
鵜呑みにすると神に匹敵する力がありそうだ。
どうやら精霊王は想像の産物ではなく、事実に基づいているらしい。さりとて、諒太はそういった存在を既に知っている。
「妖精女王とは異なる存在なのか?」
「リナンシー様とは無関係です。双方とも世界の維持に不可欠な存在ではございますが、精霊王は積極的な世界への関与をされません。彼らの存在こそが世界を表しておるのです。昼と夜。有と無。男と女。天と地。光と闇。全ての事象は似て非なるものであって、全てに表と裏があるのです。精霊王のお二人はそれらと同じ事象に括られております。存在はあるようでありません。精神的な存在という意味ではセイクリッド神様に近い存在ですかね」
ロークアットの話によると、精霊王は事象と表現できるほど曖昧な存在らしい。
ところが、諒太は神の存在をその身に感じている。加えて諒太自身が作り出した焔のリングにはどうしてかイフリートの召喚項目があった。
「セイクリッド神様が生み出したる世界を精霊王は間接的に管理されております。対を成す精霊王により、世界はバランスを保っておるのです。仮に一方が欠けてしまうと、世界はバランスを崩してしまうと伝わっております」
「それじゃあ、ジンはどうして眠っているんだ?」
諒太は疑問を重ねている。ジンという風精霊がどうして眠っているのかと。
「そこはお恥ずかしながら創作です。恐らくマヌカハニー戦闘狂旗団の活躍を欲していたのかと。何しろ暗黒竜ルイナーが封印されるまで、マヌカハニー戦闘狂旗団の功績は残念ながら記録されておりませんので。彼らなら世界を救ってれると信じて描いたものでしょう」
小さく笑うロークアット。ようやく思い出せたのか彼女は当時の心情を理解している。
「暗黒竜という世界の異分子によって、精霊王が弱体化したという設定だったかと。それによってジン様の聖域サンセットヒルに悪魔が降臨し、乗っ取ってしまったのです。この世と地獄も表裏一体の関係ですし。それでジン様は悪魔を倒さない限り、眠ったままなんですよ」
クスクスと笑うロークアットに諒太は頷きを返す。
英雄譚であるのだから、恐らくはマヌカハニー戦闘狂旗団により解決済みであると思う。地獄からの使者であろうと夏美たちは勝利したに違いない。
物語の続きには予想したように、勇者ナツたちの戦いが記されていた。
『悪魔クロケル。地獄の公爵。強い悪魔と英雄は戦った。ジン様を助けないと。何度も斬って、魔法を撃って。それでもクロケルは死なない』
苦戦した様子が窺える内容だ。箇条書きであるけれど、意味はちゃんと伝わっている。
このあとジンという精霊王を英雄たちが救うことになるのだろう。
一定の結末を予想していた諒太。しかし、続く物語はまるで予想外であった。
『最後は大洪水を起こして英雄は全滅――――』
見開き二ページに書かれた文章はそこで終わっている。英雄譚の英雄が全滅だなんてあり得ない。子供が書いたものだと理解しているけれど、流石に全滅はないように思う。
絶句していた諒太は直ぐさま次のページを捲っていた。
『強い力。心の強さ。クロケルを倒した』
まるで意味が分からない。全滅のあと、どうしてか悪魔公爵クロケルは討伐されていた。
小首を傾げるしかない内容に、諒太は思わずロークアットと視線を合わす。
「えっと、どういうことでしょうかね……」
ロークアットも流石に苦笑いだ。全滅と記したあとで、勝利してしまうだなんて。子供らしいといえばそれまでだが、端折りすぎであるのは否めない。経過が少しも分からないなんてと。
物語にはまだ続きがある。一つ唾を飲んだあと、諒太は次のページを見てみることに。
どうやら次も悪魔に関する創作のようだ。しかしながら、前話の出来から考えると結末は似たようなものだろう。戦って倒す。それ以上のことが描かれているはずもない。
『アスモデウスは精霊王の力を奪った。ジン様と同じ精霊王。赤き王の力。それで世界を滅ぼそうとした』
どうやら話にあった対となる精霊王も悪魔によって力を奪われているらしい。恐らくロークアットは精霊の物語を好んでいるのだろう。シルフを模したアクセサリーにも彼女は食い付いていたのだから。
『アスモデウスは強かった』
ところが、続きはそこまでであった。その一言があっただけで、次なる標題『ルイナーの封印』が始まっている。経過どころか、結末さえも綴られていない。
「おい、ロークアットさん……?」
薄い目をして彼女を見る。無理矢理に読んだのは諒太自身であるけれど、流石にこの結末はないように思う。
「だから、お恥ずかしいと申したのです……。幼少期のわたくしには物語を書く想像力が不足していたのでしょう」
「まあそうか。幼い頃なら仕方ないな……」
一応は最後まで目を通す。ルイナーの封印は諒太にとっても興味がある話だ。三百年前に何が起きたのかを知りたくなっている。
『ナツ様が中心。ルイナーを斬る。英雄たちはナツ様を助ける。でもルイナーは強い』
もう既に駄目な予感がしている。強いと書けば盛り上がると考えているのだろうか。幼いロークアットの語彙力には期待できそうにない。
『戦いは長かった。でも助けが来た。流れが変わっている』
ここで内容に変化がある。読み手である諒太としては有り難いことだ。強かったの一言だけで終わった悪魔王アスモデウスとは雲泥の差があった。
割と期待をしながら、次のページに手をやる。もう少しくらいは続くことを期待して。
『大賢者さまが現れた――――』
絶句する諒太。この一ヶ月に亘り度々耳にする大賢者がロークアットの創作に登場してきたのだ。
しかしながら、諒太が驚いたのは大賢者の登場などではない。描かれた大賢者自身の格好が問題であった。
「何だ……これは……?」
大賢者のイメージはローブを纏った魔法使い的なもの。杖を持ち大魔法を操るはず。
だがしかし、ロークアットが描いた大賢者は一般的なイメージを払拭するものであった。
その大賢者は物々しい鎧を身に纏い、ドワーフが手にするような鎚を持っている。またその出で立ちは諒太の記憶を激しく掻き乱していた。
「もぐら……叩き……?」
どう見てもそれは超大土竜からドロップした大槌にしか見えなかった。更には大賢者が持つ黒い盾。考えすぎかもしれないけれど、それは諒太が持つものに酷似している。独特の縞模様が描かれたそれは砂海王の堅皮を使用した王者の盾にしか見えない。
鎧は違うようにも思えるが、二つの類似点には困惑する。幼女の妄想に過ぎない創作本であったけれど、特徴を的確に捉えたその絵は一定の結論に導くだけであった……。
「俺が大賢者なのか――――?」
右側のページに大きく描かれた大賢者。それが自分ではないかと諒太は考えてしまう。
疑念は考えるほど深まっていく。装備だけでなく大賢者は黒髪をした人族。また大槌を握るその手には赤いリングが煌めいていたのだ。
「大賢者様は颯爽と現れて、戦闘の流れを変えたと聞きます。彼はイフリート様の加護が宿る指輪の持ち主。その強大な火力で以て、ルイナーを弱体化させました……」
追加的なロークアットの説明は疑念を確信に変えていた。どこでどう世界線が捻れてしまったのか理解不能であるが、諒太は間違いなく焔のリングを持っているのだ。
最後のページにはルイナーを封印したマヌカハニー戦闘狂旗団の絵があった。しかし、突然現れた大賢者の姿は描かれていない。
「ロークアット、どうしてここに大賢者はいないんだ?」
情報が少ないタルトでさえ描かれていたというのに、戦況を一変させたという大賢者がそこにいない理由。諒太には疑問しか思い浮かばなかった。
「大賢者様はルイナーの封印以降、歴史から消えております。ルイナーの封印よりあとは誰もそのお姿を拝見しておりません。彼の情報が何も残っていないのはそのためです」
ロークアットの説明に諒太は一定の覚悟をしていた。何しろ最初と最後の×印はロークアットの創作ではない。最初と最後の間を補う部分だけが創作であったのだ。
つまりは三百年前に大賢者が現れたのは明らかであり、出鱈目な火力を撃ち放ったのだと思われる。
「俺は……」
現状の諒太は勇者である。間違っても大賢者などではない。しかし、セイクリッド世界に伝わる話によると、諒太は大賢者としてルイナーの封印に一役買ったのだという。
幾ら思考しようとも解決を見ない。ルイナーとの決戦に参加したというのなら、やはり諒太は出張データではないことになる。出張時にレベルアップしていたことから、その可能性については考えていたけれど、最終イベントに参加してしまうのなら諒太は明確にセイクリッドサーバー内のプレイヤーだった。
「ロークアット、ルイナーの封印はいつ頃なんだ?」
一応は確認しておく。元がMMORPGである運命のアルカナは延々と続く可能性があったけれど、三百年が経過した世界と比べれば誤差のようなものだ。長く続いたとして十年程度であろう。
「ルイナーの封印が成されたのは、お父様が消息不明になってから三年が過ぎた頃でした……」
時間経過は意外と短かった。かつては一日が一年かと考えていたけれど、どうやらそのような法則はないようである。いちご大福の結婚からBANまでの数日に六年が経過していたのだ。そこからクリアするまで三年しか経っていないのであれば、法則などあったものではない。
改めて諒太は考えている。現状から予測できること。三百年前にルイナーが封印されることは決定事項であったけれど、それは現時点での話だ。
揺れ動く世界線を固定させられるのかどうか。まるで不明であるが、諒太は予想に基づき行動している。
「ロークアット、この創作本は材料にしない。処分したいのかもしれないが、それでも構わないか?」
ただの落書きにも似た創作本であったけれど、自分らしき者を見つけてしまっては、やはり気になってしまう。途中にある想像の話さえも現実になるのではないかと。
「それは構いませんが、お役に立つのですか?」
「うんまあ、そういうこともあるかなと……」
笑って誤魔化しておく。
ロークアットは奴隷契約によって、諒太と深くかかわってしまった。幼少期に描いたものとはいえ、創作本を基軸とした改変が進む可能性を諒太は無視できない。この創作本が未来の手がかりとなる場面もあるかもしれないと思う。
ソファの隣にあるランプ台に創作本を置き、諒太はアクセサリーの箱を製作していく。店番はソラに任せたし、諒太はアクセサリーを綺麗に包装するだけだ。
どうにも困惑していたけれど、今の諒太がやるべきことは先々について思い悩むことではない。
セシリィ女王陛下の誕生パーティーにて商品を完売し、奴隷から脱却するだけであった……。
「さてと、やっぱ宝石箱的なやつかな?」
「シンプルでも構わないと思いますよ? 主役はアクセサリーですので……」
豪華にしようと考えたところで、素材はボロ布に古書、あとは廃材である。これらから作るとすれば、やはりシンプルな木箱ということになるのかもしれない。
素材を触ってみてはイメージをする。どのような箱を用意するべきかと。
「んん? これって日記か?」
ロークアットが用意したものの中に、古い革カバーに入った日記のようなものが混じっていた。諒太は思わず、それを手に取っている。
「あ、それは読まないでくださいまし!」
読むなと言われると読みたくなるのが心情だ。ご主人様の意に反することであったが、一ページだけだよと諒太はノートを開く。
『わたくしの英雄』
表紙を捲っただけ。だが、諒太は固まっていた。
間違っても日記などではない。わたくしの英雄と題されたもの。挿絵まであるそれは諒太の興味を惹いている。
「それは子供の頃に書いたものです。ずっと処分しようと考えていたのですが……」
色々な本が重なっていた中から、諒太が選んでしまったもの。どうしてか嫌な予感がしてならない。偶然に諒太がそれを手に取ったこと。再び神の意志が選択させたのではないかと。
「読んでいいか? からかったりしないからさ……」
どうにも気になっている。タイトルだけであれば、深く考える必要もないのだが、ロークアットが描いただろう挿絵がどうしてか不安を掻き立てていた。
「ええまあ……。世界を救った英雄たちを描いたお恥ずかしい内容の創作本ですが……」
同意を得た諒太はページを捲ってみる。やはり内容は日記などではない。
聞いたままに、これは創作本だ。最初にあった勇者という言葉に鼓動が高鳴っていく。
「それはナツ様です……」
ロークアットの説明に頷きを返す。まず最初に出てきた勇者。よもや失われたダライアスであるはずがない。ロークアットが知る勇者は夏美以外にあり得なかった。
子供が描く絵であったけれど、髪の長さも色合いもよく捉えられている。今も装備している白銀の鎧にブレイブシールド+100。薬指に指輪があるのには困惑してしまうが、モデルの名を聞くと、夏美と同じ装備にしか見えなかった。
次のページにあったのもキャラクター紹介のような一枚絵である。
「それはイロハ様ですね……」
何と死に戻ったイロハまで登場していた。ただ彼女は諒太が知る剣士ではないらしい。ローブを身に纏った魔道士的な格好である。これでは名前を聞くまで諒太には分からなかったはずだ。
「隣の絵はアアアア様です。お二人は夫婦でしたので隣のページに描きました」
そういえばアアアアと彩葉は結婚をすると聞いていた。ロークアットの創作話にもそれは反映されているらしい。
こうなってくると次のページにある人物が予想できてしまう。諒太はある程度の予想をしてからページを捲っている。
「これは大司教チカだな?」
「分かっていただけて嬉しいです。それで右手の絵はタルト様。彼は真っ黒なヘビープレートを装備されていましたから……」
人物の絵はタルトが最後であった。かといって、それで終わりではない。次のページには何やら地図らしきものが描いてある。
「この地図はなに?」
「えっと、確か英雄たちが戦った記録だったかと……」
どうやらロークアットは記憶が曖昧らしい。まあしかし、三百年も前の話である。想像で描いたような絵を詳細に覚えているはずもない。
ざっと見た感じはセイクリッド世界の地図だ。お城が三つあり、ダリヤ山脈の北側には教会の絵があった。つまりはセイクリッド三大国と正教会の本部がある都市国家アルカナ。幼い頃と聞いていたけれど、なかなかの画力だと思う。
「へぇ、このバッテンは何だ? 一つはルイナーの封印場所か?」
「その通りかと。恐らく、その×印は英雄たちが戦った場所なんだと思います」
懐かしそうに笑みを浮かべながらロークアットは絵を見ている。恥ずかしいと言っていたけれど、彼女は見入っていた。
「あれ? スバウメシア聖王国の内乱だったか? この×印はエクシアーノから離れすぎていないか?」
「リョウ様、混同されてはいけません。エクシアーノとサンテクトでの大戦にマヌカハニー戦闘狂旗団は参加していないのです。確かにナツ様は参戦されていましたが、チカ様とイロハ様、アアアア様は内乱に関係ございません。そもそもアアアア様の所属は皇国でしたし……」
緊急クエストであったあの戦いは事前に予定されていたものではない。どうやらアアアアは参加申し込みに間に合わなかった模様だ。また死に戻ったイロハは別人として数えられているらしい。
「ああ、そうか……。デカ盛りいちごパフェ団が解散したあとの戦いだったな。てことは、このバッテンは全てマヌカハニー戦闘狂旗団の功績ってことか?」
「だと思います。彼らは世界を飛び回り、戦っていたのですよ。ただ記録として残っている戦いは結成時とルイナーの封印しかございませんので、幼少期のわたくしは想像で彼らの記録を描き足しておりました……」
史実として残っている記録は二つしかないようだ。ロークアット曰く、結成時の戦いとルイナーとの最終決戦だけらしい。
「じゃあ、エクシアーノの北側にあるバッテンは結成時の功績なのか?」
「その通りです! マヌカハニー戦闘狂旗団が編成されたのは、まさにエクシアーノをスタンピードが襲ったからなんです!」
ロークアットが英雄と話すのは、やはりエクシアーノの救世主であったことが大きい。エクシアーノを守るために立ち上がった彼らは聖王国において英雄そのものであった。
次のページには見開きでスタンピードらしき絵が描いてある。迫り来る魔物の軍勢に五人が立ち塞がっている感じの絵であった。
「この巨大な影は?」
「それはアースドラゴンです! 過去に例がない魔物でしたが、ナツ様が最後仕留められたと伝わっております!」
喜々として語るロークアットには思わず笑みを浮かべてしまう。タイトル通りに彼女の英雄たちが描かれているのだとよく分かった。
やはり諒太は気になってしまう。×印は四つあったのだ。最初がスタンピードで最後がルイナーの封印。想像で描いたという二つ目と三つ目の×印では何が起きたのかと。
「残りの二つはどういう英雄譚なんだ?」
「やはり気になりますか!? それでは続きをご覧ください!」
恥ずかしがっていたのが嘘のようだ。ロークアットはネタバレよりも続きを読むようにと促している。
どうせ説明が必要なのにと感じながらも、諒太は次のページを捲った。
「んん?」
次の二ページには意外にも文字が沢山書いてある。挿絵は左側に一つだけ。青色の魔物らしきものが描かれていた。また右側の部分には文章が綴ってあるだけだ。
諒太は早速と目を通す。拙い日本語で書かれているそれは同質化の賜物である。けれど、読みにくいことはなく、整った綺麗な文字が並んでいた。
『幻の丘サンセットヒル――――』
標題らしきもの。想像で書いたというそれは、割と諒太の興味を惹く。本当に存在する地名なのか分からないが、冒険への期待感を掻き立てるタイトルであった。
『マヌカハニー戦闘狂旗団は聖王国の謎を解いた。それは凄いこと。氷に覆われた大地にジンさまが眠っている。はやくイフリートさまと会わせたい』
子供の想像でしかなかったのだが、諒太は息を呑んでいた。意味不明な作中に、突如として飛び出してきた単語。諒太は先日それを目にしたばかりだ。
考えすぎかもしれないけれど、ロークアットは諒太と奴隷契約によって接続している。それが創作であると分かっていたとしても、関連性があるように思えてならない。
「イフリート……?」
「ええ、イフリート様は精霊王。風の精霊王ジン様と対をなすお方です。お二人はセイクリッド世界の守り神。その姿をお見せになることは稀ですが、伝承によると二人の精霊王により世界は秩序を保っておるそうです」
鵜呑みにすると神に匹敵する力がありそうだ。
どうやら精霊王は想像の産物ではなく、事実に基づいているらしい。さりとて、諒太はそういった存在を既に知っている。
「妖精女王とは異なる存在なのか?」
「リナンシー様とは無関係です。双方とも世界の維持に不可欠な存在ではございますが、精霊王は積極的な世界への関与をされません。彼らの存在こそが世界を表しておるのです。昼と夜。有と無。男と女。天と地。光と闇。全ての事象は似て非なるものであって、全てに表と裏があるのです。精霊王のお二人はそれらと同じ事象に括られております。存在はあるようでありません。精神的な存在という意味ではセイクリッド神様に近い存在ですかね」
ロークアットの話によると、精霊王は事象と表現できるほど曖昧な存在らしい。
ところが、諒太は神の存在をその身に感じている。加えて諒太自身が作り出した焔のリングにはどうしてかイフリートの召喚項目があった。
「セイクリッド神様が生み出したる世界を精霊王は間接的に管理されております。対を成す精霊王により、世界はバランスを保っておるのです。仮に一方が欠けてしまうと、世界はバランスを崩してしまうと伝わっております」
「それじゃあ、ジンはどうして眠っているんだ?」
諒太は疑問を重ねている。ジンという風精霊がどうして眠っているのかと。
「そこはお恥ずかしながら創作です。恐らくマヌカハニー戦闘狂旗団の活躍を欲していたのかと。何しろ暗黒竜ルイナーが封印されるまで、マヌカハニー戦闘狂旗団の功績は残念ながら記録されておりませんので。彼らなら世界を救ってれると信じて描いたものでしょう」
小さく笑うロークアット。ようやく思い出せたのか彼女は当時の心情を理解している。
「暗黒竜という世界の異分子によって、精霊王が弱体化したという設定だったかと。それによってジン様の聖域サンセットヒルに悪魔が降臨し、乗っ取ってしまったのです。この世と地獄も表裏一体の関係ですし。それでジン様は悪魔を倒さない限り、眠ったままなんですよ」
クスクスと笑うロークアットに諒太は頷きを返す。
英雄譚であるのだから、恐らくはマヌカハニー戦闘狂旗団により解決済みであると思う。地獄からの使者であろうと夏美たちは勝利したに違いない。
物語の続きには予想したように、勇者ナツたちの戦いが記されていた。
『悪魔クロケル。地獄の公爵。強い悪魔と英雄は戦った。ジン様を助けないと。何度も斬って、魔法を撃って。それでもクロケルは死なない』
苦戦した様子が窺える内容だ。箇条書きであるけれど、意味はちゃんと伝わっている。
このあとジンという精霊王を英雄たちが救うことになるのだろう。
一定の結末を予想していた諒太。しかし、続く物語はまるで予想外であった。
『最後は大洪水を起こして英雄は全滅――――』
見開き二ページに書かれた文章はそこで終わっている。英雄譚の英雄が全滅だなんてあり得ない。子供が書いたものだと理解しているけれど、流石に全滅はないように思う。
絶句していた諒太は直ぐさま次のページを捲っていた。
『強い力。心の強さ。クロケルを倒した』
まるで意味が分からない。全滅のあと、どうしてか悪魔公爵クロケルは討伐されていた。
小首を傾げるしかない内容に、諒太は思わずロークアットと視線を合わす。
「えっと、どういうことでしょうかね……」
ロークアットも流石に苦笑いだ。全滅と記したあとで、勝利してしまうだなんて。子供らしいといえばそれまでだが、端折りすぎであるのは否めない。経過が少しも分からないなんてと。
物語にはまだ続きがある。一つ唾を飲んだあと、諒太は次のページを見てみることに。
どうやら次も悪魔に関する創作のようだ。しかしながら、前話の出来から考えると結末は似たようなものだろう。戦って倒す。それ以上のことが描かれているはずもない。
『アスモデウスは精霊王の力を奪った。ジン様と同じ精霊王。赤き王の力。それで世界を滅ぼそうとした』
どうやら話にあった対となる精霊王も悪魔によって力を奪われているらしい。恐らくロークアットは精霊の物語を好んでいるのだろう。シルフを模したアクセサリーにも彼女は食い付いていたのだから。
『アスモデウスは強かった』
ところが、続きはそこまでであった。その一言があっただけで、次なる標題『ルイナーの封印』が始まっている。経過どころか、結末さえも綴られていない。
「おい、ロークアットさん……?」
薄い目をして彼女を見る。無理矢理に読んだのは諒太自身であるけれど、流石にこの結末はないように思う。
「だから、お恥ずかしいと申したのです……。幼少期のわたくしには物語を書く想像力が不足していたのでしょう」
「まあそうか。幼い頃なら仕方ないな……」
一応は最後まで目を通す。ルイナーの封印は諒太にとっても興味がある話だ。三百年前に何が起きたのかを知りたくなっている。
『ナツ様が中心。ルイナーを斬る。英雄たちはナツ様を助ける。でもルイナーは強い』
もう既に駄目な予感がしている。強いと書けば盛り上がると考えているのだろうか。幼いロークアットの語彙力には期待できそうにない。
『戦いは長かった。でも助けが来た。流れが変わっている』
ここで内容に変化がある。読み手である諒太としては有り難いことだ。強かったの一言だけで終わった悪魔王アスモデウスとは雲泥の差があった。
割と期待をしながら、次のページに手をやる。もう少しくらいは続くことを期待して。
『大賢者さまが現れた――――』
絶句する諒太。この一ヶ月に亘り度々耳にする大賢者がロークアットの創作に登場してきたのだ。
しかしながら、諒太が驚いたのは大賢者の登場などではない。描かれた大賢者自身の格好が問題であった。
「何だ……これは……?」
大賢者のイメージはローブを纏った魔法使い的なもの。杖を持ち大魔法を操るはず。
だがしかし、ロークアットが描いた大賢者は一般的なイメージを払拭するものであった。
その大賢者は物々しい鎧を身に纏い、ドワーフが手にするような鎚を持っている。またその出で立ちは諒太の記憶を激しく掻き乱していた。
「もぐら……叩き……?」
どう見てもそれは超大土竜からドロップした大槌にしか見えなかった。更には大賢者が持つ黒い盾。考えすぎかもしれないけれど、それは諒太が持つものに酷似している。独特の縞模様が描かれたそれは砂海王の堅皮を使用した王者の盾にしか見えない。
鎧は違うようにも思えるが、二つの類似点には困惑する。幼女の妄想に過ぎない創作本であったけれど、特徴を的確に捉えたその絵は一定の結論に導くだけであった……。
「俺が大賢者なのか――――?」
右側のページに大きく描かれた大賢者。それが自分ではないかと諒太は考えてしまう。
疑念は考えるほど深まっていく。装備だけでなく大賢者は黒髪をした人族。また大槌を握るその手には赤いリングが煌めいていたのだ。
「大賢者様は颯爽と現れて、戦闘の流れを変えたと聞きます。彼はイフリート様の加護が宿る指輪の持ち主。その強大な火力で以て、ルイナーを弱体化させました……」
追加的なロークアットの説明は疑念を確信に変えていた。どこでどう世界線が捻れてしまったのか理解不能であるが、諒太は間違いなく焔のリングを持っているのだ。
最後のページにはルイナーを封印したマヌカハニー戦闘狂旗団の絵があった。しかし、突然現れた大賢者の姿は描かれていない。
「ロークアット、どうしてここに大賢者はいないんだ?」
情報が少ないタルトでさえ描かれていたというのに、戦況を一変させたという大賢者がそこにいない理由。諒太には疑問しか思い浮かばなかった。
「大賢者様はルイナーの封印以降、歴史から消えております。ルイナーの封印よりあとは誰もそのお姿を拝見しておりません。彼の情報が何も残っていないのはそのためです」
ロークアットの説明に諒太は一定の覚悟をしていた。何しろ最初と最後の×印はロークアットの創作ではない。最初と最後の間を補う部分だけが創作であったのだ。
つまりは三百年前に大賢者が現れたのは明らかであり、出鱈目な火力を撃ち放ったのだと思われる。
「俺は……」
現状の諒太は勇者である。間違っても大賢者などではない。しかし、セイクリッド世界に伝わる話によると、諒太は大賢者としてルイナーの封印に一役買ったのだという。
幾ら思考しようとも解決を見ない。ルイナーとの決戦に参加したというのなら、やはり諒太は出張データではないことになる。出張時にレベルアップしていたことから、その可能性については考えていたけれど、最終イベントに参加してしまうのなら諒太は明確にセイクリッドサーバー内のプレイヤーだった。
「ロークアット、ルイナーの封印はいつ頃なんだ?」
一応は確認しておく。元がMMORPGである運命のアルカナは延々と続く可能性があったけれど、三百年が経過した世界と比べれば誤差のようなものだ。長く続いたとして十年程度であろう。
「ルイナーの封印が成されたのは、お父様が消息不明になってから三年が過ぎた頃でした……」
時間経過は意外と短かった。かつては一日が一年かと考えていたけれど、どうやらそのような法則はないようである。いちご大福の結婚からBANまでの数日に六年が経過していたのだ。そこからクリアするまで三年しか経っていないのであれば、法則などあったものではない。
改めて諒太は考えている。現状から予測できること。三百年前にルイナーが封印されることは決定事項であったけれど、それは現時点での話だ。
揺れ動く世界線を固定させられるのかどうか。まるで不明であるが、諒太は予想に基づき行動している。
「ロークアット、この創作本は材料にしない。処分したいのかもしれないが、それでも構わないか?」
ただの落書きにも似た創作本であったけれど、自分らしき者を見つけてしまっては、やはり気になってしまう。途中にある想像の話さえも現実になるのではないかと。
「それは構いませんが、お役に立つのですか?」
「うんまあ、そういうこともあるかなと……」
笑って誤魔化しておく。
ロークアットは奴隷契約によって、諒太と深くかかわってしまった。幼少期に描いたものとはいえ、創作本を基軸とした改変が進む可能性を諒太は無視できない。この創作本が未来の手がかりとなる場面もあるかもしれないと思う。
ソファの隣にあるランプ台に創作本を置き、諒太はアクセサリーの箱を製作していく。店番はソラに任せたし、諒太はアクセサリーを綺麗に包装するだけだ。
どうにも困惑していたけれど、今の諒太がやるべきことは先々について思い悩むことではない。
セシリィ女王陛下の誕生パーティーにて商品を完売し、奴隷から脱却するだけであった……。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる