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第四章 穏やかな生活の先に
大詰め
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スタンピードが始まってから二時間が過ぎている。大型連休初日ということもあり、緊急クエストは大盛り上がりであった。
持ち場を間違えたプレイヤーたちもエクシアーノ北東へと集まり、スタンピードクエストに参戦している。
そんな中、相変わらず最前線に陣取るのは五人のパーティー。マヌカハニー戦闘狂旗団という新参クランであった。
「ヌルい! ヌルいぞ! スタンピードとはこんなものか!?」
タルトのロールプレイも安定感を増している。また彼が語るように、戦況はプレイヤー側が圧倒していた。
「レベルが100を超えてきたよ!」
緊急クエストであったが、予想よりも多くのプレイヤーが参加していたらしい。
レベル100の魔物が出現するのは明確に脅威であったけれど、参加者たちは歓喜の声を上げている。
何しろ緊急クエストは参加人数により難易度が設定され、魔物の強さによって報酬が豪華になっていくのだ。レベルが100を超えるのなら、報酬にも期待できるはずだと。
「こりゃ、最後はレイド並みかもな……」
「あり得るね。時間的にレベル120くらいのボスが来て終わりってとこ?」
「ふわぁ、わたしの僧兵はもう役に立ちそうにないし、しまっとくわぁ……」
僧兵は育てるのが大変とのことで、チカは僧兵を撤収。今後は治癒士に専念するらしい。
あと1時間。そろそろ大ボスが出現してもおかしくはなかった。クエストの最後を締めくくるに相応しい魔物が必ず現れるはずだ。
レベルが100を超えてくると、流石に犠牲が出始める。やはり全員が生き残るなど困難であった。しかしながら、最前線は相変わらずだ。彼らに向かう魔物は一匹たりとも後方へと流れていない。
「やっとおでましかよ……」
アアアアがポツリと呟く。運営の思惑通りに死に戻りが生まれている現状。とどめを刺すかのような魔物に嘆息している。
【アースドラゴン】
【Lv115】
【物理】強
【火】強
【水】無効
【風】強
【土】無効
【雷】弱
巨大な影はドラゴンであった。
運命のアルカナにボス級のドラゴンは珍しい。従って待ち受けるプレイヤーたちは戦々恐々としている。
「やった! ドラゴンスレイヤーの出番!」
大半のプレイヤーが愕然としていたというのに、歓喜の声を上げるものがいた。
それは勇者ナツ。彼女はドラゴンスレイヤーを高々と掲げて、全員を振り返っている。
「勇者ナツよ、ならば余の為に戦うがよい! 自由を許そう。地を這うトカゲなど、貴様の敵ではないだろう?」
「まーせて! 倍ダメ叩き込んであげる!」
タルトの王様ロールに突っ込むことなく夏美は意気込んだ。
「皆のもの、狼狽えるではない! アースドラゴンはマヌカハニー戦闘狂旗団が引き受ける! 貴様らは雑魚を手分けして屠るだけでいい! それくらいはできるな?」
タルトの声に、ようやくプレイヤーたちは我に返っていた。強大な魔物の相手を任せてもいいのなら、これまでと何も変わらないのだ。
即座に威勢のいい返事が返されている。これによりマヌカハニー戦闘狂旗団の仕事は再びボス退治となった。
「タルトさん、引き受けるってどうやって戦うつもり?」
彩葉が問いを投げた。クラン員は五人しかいないのだ。レイド級ボスであるはずのアースドラゴンをどうやって引きつけるのかと。
「聖王騎士イロハよ、我のタゲ取りを甘く見るな。類い稀なる我の挑発スキルは狙った魔物を逃しはせん!」
「いや、それじゃタルトさんがヤバくない?」
「構わぬ! どうせ一度死んだ身だ。我は何度でも蘇るだけ!」
こうしている間にもドスンドスン近付く影。作戦を決定する時間はあまり残されていない。
「魔道士二人はデバフ支援と、隙を見て弱点を狙い撃て。貴様らならば雷撃魔法を手に入れていると確信している。大司教チカは勇者ナツのステータス管理を徹底しろ。我の回復はその都度指示を出す」
タルトは実装されたばかりの雷撃魔法を魔道士二人が手に入れたと疑っていない。AランクとBランクの雷撃魔法スクロールは共にレアドロップであったというのに。
「Bランク【サンダーカッター】だけなんだけど、無詠唱だよ! 撃ちまくるね!」
「俺はAランク【ライトニングウェーブ】を撃つぞ!」
アアアアと彩葉はタルトの期待に応える。実装直後のイベントに必要だろうと二人はドロップをし、無詠唱までレベルを上げていたらしい。
「ステ管理了解なんよ! 状態異常も体力値管理も任せとき!」
チカもまた問題はない。僧兵を収納した彼女は治癒士に専念するようだ。自信満々に返答を終えている。
「それでこそ我が軍勢である! 未知なる敵であろうと恐るるに足らず! 我らが旗艦となり圧倒するだけだ!」
割と大雑把な作戦であったが、互いをよく知る彼らにはそれで十分だった。
いよいよ大一番である。タルトはエリアチャットにて意気込みを伝えるのだった。
「愚民共、刮目せよっ!!――――」
持ち場を間違えたプレイヤーたちもエクシアーノ北東へと集まり、スタンピードクエストに参戦している。
そんな中、相変わらず最前線に陣取るのは五人のパーティー。マヌカハニー戦闘狂旗団という新参クランであった。
「ヌルい! ヌルいぞ! スタンピードとはこんなものか!?」
タルトのロールプレイも安定感を増している。また彼が語るように、戦況はプレイヤー側が圧倒していた。
「レベルが100を超えてきたよ!」
緊急クエストであったが、予想よりも多くのプレイヤーが参加していたらしい。
レベル100の魔物が出現するのは明確に脅威であったけれど、参加者たちは歓喜の声を上げている。
何しろ緊急クエストは参加人数により難易度が設定され、魔物の強さによって報酬が豪華になっていくのだ。レベルが100を超えるのなら、報酬にも期待できるはずだと。
「こりゃ、最後はレイド並みかもな……」
「あり得るね。時間的にレベル120くらいのボスが来て終わりってとこ?」
「ふわぁ、わたしの僧兵はもう役に立ちそうにないし、しまっとくわぁ……」
僧兵は育てるのが大変とのことで、チカは僧兵を撤収。今後は治癒士に専念するらしい。
あと1時間。そろそろ大ボスが出現してもおかしくはなかった。クエストの最後を締めくくるに相応しい魔物が必ず現れるはずだ。
レベルが100を超えてくると、流石に犠牲が出始める。やはり全員が生き残るなど困難であった。しかしながら、最前線は相変わらずだ。彼らに向かう魔物は一匹たりとも後方へと流れていない。
「やっとおでましかよ……」
アアアアがポツリと呟く。運営の思惑通りに死に戻りが生まれている現状。とどめを刺すかのような魔物に嘆息している。
【アースドラゴン】
【Lv115】
【物理】強
【火】強
【水】無効
【風】強
【土】無効
【雷】弱
巨大な影はドラゴンであった。
運命のアルカナにボス級のドラゴンは珍しい。従って待ち受けるプレイヤーたちは戦々恐々としている。
「やった! ドラゴンスレイヤーの出番!」
大半のプレイヤーが愕然としていたというのに、歓喜の声を上げるものがいた。
それは勇者ナツ。彼女はドラゴンスレイヤーを高々と掲げて、全員を振り返っている。
「勇者ナツよ、ならば余の為に戦うがよい! 自由を許そう。地を這うトカゲなど、貴様の敵ではないだろう?」
「まーせて! 倍ダメ叩き込んであげる!」
タルトの王様ロールに突っ込むことなく夏美は意気込んだ。
「皆のもの、狼狽えるではない! アースドラゴンはマヌカハニー戦闘狂旗団が引き受ける! 貴様らは雑魚を手分けして屠るだけでいい! それくらいはできるな?」
タルトの声に、ようやくプレイヤーたちは我に返っていた。強大な魔物の相手を任せてもいいのなら、これまでと何も変わらないのだ。
即座に威勢のいい返事が返されている。これによりマヌカハニー戦闘狂旗団の仕事は再びボス退治となった。
「タルトさん、引き受けるってどうやって戦うつもり?」
彩葉が問いを投げた。クラン員は五人しかいないのだ。レイド級ボスであるはずのアースドラゴンをどうやって引きつけるのかと。
「聖王騎士イロハよ、我のタゲ取りを甘く見るな。類い稀なる我の挑発スキルは狙った魔物を逃しはせん!」
「いや、それじゃタルトさんがヤバくない?」
「構わぬ! どうせ一度死んだ身だ。我は何度でも蘇るだけ!」
こうしている間にもドスンドスン近付く影。作戦を決定する時間はあまり残されていない。
「魔道士二人はデバフ支援と、隙を見て弱点を狙い撃て。貴様らならば雷撃魔法を手に入れていると確信している。大司教チカは勇者ナツのステータス管理を徹底しろ。我の回復はその都度指示を出す」
タルトは実装されたばかりの雷撃魔法を魔道士二人が手に入れたと疑っていない。AランクとBランクの雷撃魔法スクロールは共にレアドロップであったというのに。
「Bランク【サンダーカッター】だけなんだけど、無詠唱だよ! 撃ちまくるね!」
「俺はAランク【ライトニングウェーブ】を撃つぞ!」
アアアアと彩葉はタルトの期待に応える。実装直後のイベントに必要だろうと二人はドロップをし、無詠唱までレベルを上げていたらしい。
「ステ管理了解なんよ! 状態異常も体力値管理も任せとき!」
チカもまた問題はない。僧兵を収納した彼女は治癒士に専念するようだ。自信満々に返答を終えている。
「それでこそ我が軍勢である! 未知なる敵であろうと恐るるに足らず! 我らが旗艦となり圧倒するだけだ!」
割と大雑把な作戦であったが、互いをよく知る彼らにはそれで十分だった。
いよいよ大一番である。タルトはエリアチャットにて意気込みを伝えるのだった。
「愚民共、刮目せよっ!!――――」
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