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第三章 希望を抱いて
予期せぬ展開
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土竜が作り出したというダンジョン。ファイアーボールにて崩壊したかのように考えていたけれど、それはほんの一部分でしかないようだ。
諒太は10頭を狩ったあと、ダンジョンの奥地を当てもなく彷徨っている。
「割と広いな……」
「ワタシはダンジョンに初めて入ったのですが、どうにも恐ろしく感じております。真っ暗ですし、助けを求めようと誰にも声が届かないだなんて……」
諒太の独り言にソラが返した。彼女は先ほどの土竜殲滅のおかげでレベルが14にまで上がっていたけれど、慣れぬダンジョンに恐怖を覚えているらしい。
「ソラ、大丈夫だよ。俺がいるから……」
「そうだと良いのですが……」
どうやらソラはまだ諒太の実力に懐疑的な様子。諒太としては安心して欲しいところなのだが、彼女は不安に苛まれている。
「暗がりや人の気配がないこと。もしも襲われたとして、誰も助けに来ませんよ? 良いのですか? マスターはそれでも構わないと仰るのですか?」
どうも混乱している感じだ。恐怖により精神値が低下すると起きる症状なのかもしれない。
「とても正気ではいられないのです! ワタシは恐ろしいのです!」
急にソラは声を荒らげた。大袈裟に頭を振る彼女は平静ではないのだと思われる。
「マスターの純潔を奪ってしまいそうな自分がっ!!」
「俺が危ねぇの!?」
やはり進化元を間違ったとしか思えない。完全なる堕天使を生み出してしまったらしい。
嘆息する諒太。彼女はエンジェルではあるが、純粋なエンジェルではないと改めて思い知らされている。
「やっぱキューピッドから進化させねぇと駄目だな……」
「お仕置きなら大歓迎です! さあ、この卑しいワタシをぶってくださいまし!」
空を飛ぶ以外に役に立ちそうもない。凡そ天使とは思えぬ言動には呆れ果ててしまう。
ソラが騒いでいると、何やら前方から邪悪な気配を感じる。
「向こうからお出ましか……」
恐らくは餌が迷い込んだと考えているのだろう。家畜をも食べると聞いているし、騒ぐソラの声に惹き付けられたのだと思われる。
【土竜(特大)】
【Lv60】
現れたのは待ちに待った特大土竜だった。さりとてレベルは60である。今となっては楽勝であるのだが、アクラスフィア王国内としては強敵に違いない。
「マスター!?」
「問題ねぇ。一撃だよ……」
言って諒太が斬り掛かる。スキルも何も必要ないのだと。かつて苦戦したリトルドラゴンよりも弱い魔物に諒太が負けるはずもない。
ところが、諒太はすっかり忘れていた。
『稀に毒を吐くのが厄介なところじゃ――――』
デネブが言っていたこと。視界の悪さから気付けなかった。まさか土竜が口を開いているだなんて。
「うおっ!?」
諒太は顔面に毒を浴びてしまう。だが、剣をそのまま振り下ろす。毒を浴びたくらいで怯んではいられないと。
結果として、土竜(特大)は一刀両断にされている。毒を受けてしまったものの、諒太は討伐に成功していた。
「マスター、大丈夫ですか?」
「ただの毒だろ。問題ねぇ……」
言って解毒薬を取り出そうとした瞬間、諒太は気付いてしまう。
【リョウ】**猛毒**
「嘘だろ……?」
それはドラゴンゾンビが吐いたものと同じであった。猛毒は回復方法が限られているため、ゲーム内において使用する魔物は殆どいない。けれども、土竜(特大)は希有な猛毒スキルを持っていたらしい。
「ステータス確認を怠ったせいだな……」
とりあえずポーションは買いだめしていたから問題はない。ただ治療にはセンフィスへと戻らねばならなかった。
司教以上にしか治療できぬ猛毒が僻地にある農村で治せるはずもない。
デネブが言っていたのだ。使役する従魔が毒にやられたのだと。仮に治癒士がいたのなら、そんなことにはなっていないはずである。
素早く爪を剥ぎ取る諒太。土竜を殲滅する予定であったが、早速と方針転換を迫られている。何しろポーションは10個しかないのだ。猛毒で死ぬなんてあり得ない。諒太はこの依頼を中断してでも治療に向かうべきである。
「仕方ねぇな……」
「マスター、キュアなら四回ほどかけられますので!」
ソラが心配している。緊急的にはキュアをお願いするかもしれないが、キュアは下位の回復魔法であり、回復量はポーションの半分ほどしかない。
「ソラは魔法の残数が分かるのか?」
「ええまあ、感覚的なので大凡ですけれど……」
ソラ曰く四回という詠唱回数。足しにはなるだろうが、それは十分といえるものではない。息切れ状態から全快まで諒太が回復するには、現状でポーションが二つか三つ必要である。つまりキュア4回では全快に近いところまで一度回復できるだけだ。
「一旦、センフィスへと戻ろう……」
幸いにも諒太は勇者である。転移魔法があるのだから、何の問題もなかった。
何事もなければ――――――。
諒太は10頭を狩ったあと、ダンジョンの奥地を当てもなく彷徨っている。
「割と広いな……」
「ワタシはダンジョンに初めて入ったのですが、どうにも恐ろしく感じております。真っ暗ですし、助けを求めようと誰にも声が届かないだなんて……」
諒太の独り言にソラが返した。彼女は先ほどの土竜殲滅のおかげでレベルが14にまで上がっていたけれど、慣れぬダンジョンに恐怖を覚えているらしい。
「ソラ、大丈夫だよ。俺がいるから……」
「そうだと良いのですが……」
どうやらソラはまだ諒太の実力に懐疑的な様子。諒太としては安心して欲しいところなのだが、彼女は不安に苛まれている。
「暗がりや人の気配がないこと。もしも襲われたとして、誰も助けに来ませんよ? 良いのですか? マスターはそれでも構わないと仰るのですか?」
どうも混乱している感じだ。恐怖により精神値が低下すると起きる症状なのかもしれない。
「とても正気ではいられないのです! ワタシは恐ろしいのです!」
急にソラは声を荒らげた。大袈裟に頭を振る彼女は平静ではないのだと思われる。
「マスターの純潔を奪ってしまいそうな自分がっ!!」
「俺が危ねぇの!?」
やはり進化元を間違ったとしか思えない。完全なる堕天使を生み出してしまったらしい。
嘆息する諒太。彼女はエンジェルではあるが、純粋なエンジェルではないと改めて思い知らされている。
「やっぱキューピッドから進化させねぇと駄目だな……」
「お仕置きなら大歓迎です! さあ、この卑しいワタシをぶってくださいまし!」
空を飛ぶ以外に役に立ちそうもない。凡そ天使とは思えぬ言動には呆れ果ててしまう。
ソラが騒いでいると、何やら前方から邪悪な気配を感じる。
「向こうからお出ましか……」
恐らくは餌が迷い込んだと考えているのだろう。家畜をも食べると聞いているし、騒ぐソラの声に惹き付けられたのだと思われる。
【土竜(特大)】
【Lv60】
現れたのは待ちに待った特大土竜だった。さりとてレベルは60である。今となっては楽勝であるのだが、アクラスフィア王国内としては強敵に違いない。
「マスター!?」
「問題ねぇ。一撃だよ……」
言って諒太が斬り掛かる。スキルも何も必要ないのだと。かつて苦戦したリトルドラゴンよりも弱い魔物に諒太が負けるはずもない。
ところが、諒太はすっかり忘れていた。
『稀に毒を吐くのが厄介なところじゃ――――』
デネブが言っていたこと。視界の悪さから気付けなかった。まさか土竜が口を開いているだなんて。
「うおっ!?」
諒太は顔面に毒を浴びてしまう。だが、剣をそのまま振り下ろす。毒を浴びたくらいで怯んではいられないと。
結果として、土竜(特大)は一刀両断にされている。毒を受けてしまったものの、諒太は討伐に成功していた。
「マスター、大丈夫ですか?」
「ただの毒だろ。問題ねぇ……」
言って解毒薬を取り出そうとした瞬間、諒太は気付いてしまう。
【リョウ】**猛毒**
「嘘だろ……?」
それはドラゴンゾンビが吐いたものと同じであった。猛毒は回復方法が限られているため、ゲーム内において使用する魔物は殆どいない。けれども、土竜(特大)は希有な猛毒スキルを持っていたらしい。
「ステータス確認を怠ったせいだな……」
とりあえずポーションは買いだめしていたから問題はない。ただ治療にはセンフィスへと戻らねばならなかった。
司教以上にしか治療できぬ猛毒が僻地にある農村で治せるはずもない。
デネブが言っていたのだ。使役する従魔が毒にやられたのだと。仮に治癒士がいたのなら、そんなことにはなっていないはずである。
素早く爪を剥ぎ取る諒太。土竜を殲滅する予定であったが、早速と方針転換を迫られている。何しろポーションは10個しかないのだ。猛毒で死ぬなんてあり得ない。諒太はこの依頼を中断してでも治療に向かうべきである。
「仕方ねぇな……」
「マスター、キュアなら四回ほどかけられますので!」
ソラが心配している。緊急的にはキュアをお願いするかもしれないが、キュアは下位の回復魔法であり、回復量はポーションの半分ほどしかない。
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何事もなければ――――――。
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