133 / 226
第三章 希望を抱いて
エンジェル・ローズ・ヒップ
しおりを挟む
土竜一頭分の報酬を失ったけれど、ソラのレベルアップにより諒太は気持ちを切り替えている。
だが、気を取り直して進もうかといった矢先、
「なっ!?」
突如として足下が崩れた。どうやらファイアーボールの衝撃によって地盤が崩落してしまったらしい。
為す術なく落ちていく諒太。流石に想定外の事態である。ただし、落ち着いてもいた。落下する諒太を直ぐさまソラが捕まえてくれたからだ。
「マスター、どうします?」
「一度、下に降りてみよう。どうせ降りていくつもりだったし……」
諒太の指示でソラはゆっくりと足がつくまで降下していく。
どうやら大きな空洞となってしまったようだ。網の目のように掘られていた穴が全て繋がったようにも感じられている。
ただし、光魔石の灯りが底や端まで届いていない。その事実だけで、ここが相当に深く広い空間なのだと分かった。
「ま、迷路を進むよりは楽だな……」
諒太は楽観的に考えることにした。一人であれば帰路を考える必要もあったが、今は空を飛ぶ仲間がいる。よって考えるべきは土竜退治だけであった。
「マスター、かなりの数が底にいますよ?」
「マジか。目が良いんだな……?」
諒太にはまだ何も見えない。けれど、ソラが嘘をいうはずもなく、全ての土竜が最下層に落ちたのだと思われる。
「ワタシは夜行性ですから。ある特別な意味合いにおいて……」
「本当にエンジェルなんだろうな!?」
どうにも進化に疑いを持ってしまう。進化先はエンジェルじゃなく、サキュバスの間違いではないかと。
ソラに抱えられ、ゆっくりと降下していた諒太。まだ視界はないに等しかったけれど、諒太にもソラ語った内容が真実なのだと分かる。
【土竜 Lv10】
【土竜(大) Lv20】
【土竜 Lv10】
暗がりにターゲットマークが見えたのだ。ざっと見た感じは10程度。しかし、特大という土竜のマーカーは見つからない。
「ソラ、降ろしてくれ。殲滅する……」
「ええ!? マスター本気ですか!? まだ距離がありますし、地面には隙間なく土竜がいるじゃないですか!」
「良いから手を離せ。俺の心配は無用だ……」
高さはあるけれど、レベルは100以上もあるのだ。少々のことでは死なないだろうと諒太は考えている。
「ゾクゾクします……。マスターがドMだったなんて最高です!」
「誰がドMだって!?」
言ってソラは手を離した。ウフフと耳に届いた笑い声が気になったけれど、今は集中すべきだ。立ち所に斬り裂いてやると諒太は剣を構えて落下していく。
「おらぁぁあああっ!」
ターゲットマークだけを頼りに諒太は斬り掛かった。真下にいたのは土竜(大)だ。落下の勢いと合わせて諒太は真っ二つにしている。
流石に着地は痛みを伴ったけれど、別に問題はない。諒太は直ぐさま近くにいた土竜を叩き斬る。
「うぜぇな!」
夜行性だけあって土竜は暗闇にも適応している。的確に諒太を攻撃してきた。
だがしかし、諒太も負けていない。近付いてくれば光魔石の光源内だし、倒すのに必要な攻撃は剣を一度振るだけなのだ。
速度は諒太が圧倒している。群れる土竜であったけれど、瞬く間にそれは死体の山となっていく。僅か五分ばかりの間に周囲の土竜を殲滅していた。
「マスター、流石です! てっきり土竜に弄ばれてしまうのかと考えておりましたが……」
「お前はその認識を改めろ。進化したのは本当にエンジェルなんだろうな?」
「もちろんエンジェルです。進化前はよくバラに喩えられました。しかし、生まれ変わった今のワタシは薔薇の実のようなものです。薔薇の実は言い換えればローズヒップ。つまりはエンジェル・ローズ・ヒップとでも言いましょうか……」
ソラは饒舌に語る。確かにセイレーンであった頃から美人ではあったけれど、バラに喩えられるだなんて、調子に乗りすぎている気がしないでもない。
「ワタシはエンジェル・ローズ・ヒップ……」
どうにも自己陶酔している感じだ。諒太は生温い視線を送っている。
「略してエ・ロ・尻とお呼びください!」
「尻だけ和訳すんな!!」
戦闘よりも疲れてしまう。明らかにセイレーンから進化させたのは間違いである。通常のエンジェルではあり得ない性格にソラはなってしまった。
「ったく……」
諒太は急いで剥ぎ取りを始めた。時間が経つと魔物は消えてしまうのだ。歩合給である今回の依頼では一頭も無駄にできない。
土竜の剥ぎ取り部位は右前足の親指にあたる爪だ。大きさによって種別を判別できるらしく、報酬をもらうには必ず持ち帰らねばならない。
数えてみると中が7本で大が3本。金額にして2200ナールになる。採掘と比べれば、明確に幸先の良いスタートとなっている。
「でも特大がいるはずなんだ……」
諒太は空洞となった部屋から繋がる通路へと入っていく。特に太いその穴ならば、聞いていた特大土竜がいるのではないかと。
一頭千ナールという報酬を求めて、諒太はダンジョンを彷徨い始める……。
だが、気を取り直して進もうかといった矢先、
「なっ!?」
突如として足下が崩れた。どうやらファイアーボールの衝撃によって地盤が崩落してしまったらしい。
為す術なく落ちていく諒太。流石に想定外の事態である。ただし、落ち着いてもいた。落下する諒太を直ぐさまソラが捕まえてくれたからだ。
「マスター、どうします?」
「一度、下に降りてみよう。どうせ降りていくつもりだったし……」
諒太の指示でソラはゆっくりと足がつくまで降下していく。
どうやら大きな空洞となってしまったようだ。網の目のように掘られていた穴が全て繋がったようにも感じられている。
ただし、光魔石の灯りが底や端まで届いていない。その事実だけで、ここが相当に深く広い空間なのだと分かった。
「ま、迷路を進むよりは楽だな……」
諒太は楽観的に考えることにした。一人であれば帰路を考える必要もあったが、今は空を飛ぶ仲間がいる。よって考えるべきは土竜退治だけであった。
「マスター、かなりの数が底にいますよ?」
「マジか。目が良いんだな……?」
諒太にはまだ何も見えない。けれど、ソラが嘘をいうはずもなく、全ての土竜が最下層に落ちたのだと思われる。
「ワタシは夜行性ですから。ある特別な意味合いにおいて……」
「本当にエンジェルなんだろうな!?」
どうにも進化に疑いを持ってしまう。進化先はエンジェルじゃなく、サキュバスの間違いではないかと。
ソラに抱えられ、ゆっくりと降下していた諒太。まだ視界はないに等しかったけれど、諒太にもソラ語った内容が真実なのだと分かる。
【土竜 Lv10】
【土竜(大) Lv20】
【土竜 Lv10】
暗がりにターゲットマークが見えたのだ。ざっと見た感じは10程度。しかし、特大という土竜のマーカーは見つからない。
「ソラ、降ろしてくれ。殲滅する……」
「ええ!? マスター本気ですか!? まだ距離がありますし、地面には隙間なく土竜がいるじゃないですか!」
「良いから手を離せ。俺の心配は無用だ……」
高さはあるけれど、レベルは100以上もあるのだ。少々のことでは死なないだろうと諒太は考えている。
「ゾクゾクします……。マスターがドMだったなんて最高です!」
「誰がドMだって!?」
言ってソラは手を離した。ウフフと耳に届いた笑い声が気になったけれど、今は集中すべきだ。立ち所に斬り裂いてやると諒太は剣を構えて落下していく。
「おらぁぁあああっ!」
ターゲットマークだけを頼りに諒太は斬り掛かった。真下にいたのは土竜(大)だ。落下の勢いと合わせて諒太は真っ二つにしている。
流石に着地は痛みを伴ったけれど、別に問題はない。諒太は直ぐさま近くにいた土竜を叩き斬る。
「うぜぇな!」
夜行性だけあって土竜は暗闇にも適応している。的確に諒太を攻撃してきた。
だがしかし、諒太も負けていない。近付いてくれば光魔石の光源内だし、倒すのに必要な攻撃は剣を一度振るだけなのだ。
速度は諒太が圧倒している。群れる土竜であったけれど、瞬く間にそれは死体の山となっていく。僅か五分ばかりの間に周囲の土竜を殲滅していた。
「マスター、流石です! てっきり土竜に弄ばれてしまうのかと考えておりましたが……」
「お前はその認識を改めろ。進化したのは本当にエンジェルなんだろうな?」
「もちろんエンジェルです。進化前はよくバラに喩えられました。しかし、生まれ変わった今のワタシは薔薇の実のようなものです。薔薇の実は言い換えればローズヒップ。つまりはエンジェル・ローズ・ヒップとでも言いましょうか……」
ソラは饒舌に語る。確かにセイレーンであった頃から美人ではあったけれど、バラに喩えられるだなんて、調子に乗りすぎている気がしないでもない。
「ワタシはエンジェル・ローズ・ヒップ……」
どうにも自己陶酔している感じだ。諒太は生温い視線を送っている。
「略してエ・ロ・尻とお呼びください!」
「尻だけ和訳すんな!!」
戦闘よりも疲れてしまう。明らかにセイレーンから進化させたのは間違いである。通常のエンジェルではあり得ない性格にソラはなってしまった。
「ったく……」
諒太は急いで剥ぎ取りを始めた。時間が経つと魔物は消えてしまうのだ。歩合給である今回の依頼では一頭も無駄にできない。
土竜の剥ぎ取り部位は右前足の親指にあたる爪だ。大きさによって種別を判別できるらしく、報酬をもらうには必ず持ち帰らねばならない。
数えてみると中が7本で大が3本。金額にして2200ナールになる。採掘と比べれば、明確に幸先の良いスタートとなっている。
「でも特大がいるはずなんだ……」
諒太は空洞となった部屋から繋がる通路へと入っていく。特に太いその穴ならば、聞いていた特大土竜がいるのではないかと。
一頭千ナールという報酬を求めて、諒太はダンジョンを彷徨い始める……。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる