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第三章 希望を抱いて
都市伝説
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二度目の採掘を終えた夏美と彩葉。意気揚々とボス部屋へと挑む。大扉を閉めるや先ほどと変わらず、黒い渦の中からネクロマンサーが現れていた。
「ナツ、やっぱドラゴンゾンビの噂は信じられないね?」
出現エフェクトを眺める彩葉が言った。未だに噂の域を出ないドラゴンゾンビ。ジャスミス大鉱山は割と周回していたし、仲間内でも聞いたことがない。引退をしたプレイヤーの嘘に大勢が乗っかったとしか思えなかった。
「どうだろうね。レアボスの確認がないのは事実だし……」
正直に夏美もレアボス設定がないだけだと考えていた。スクショすらない現状はその話を信じる根拠が不足している。
「まあ、今度も楽に勝たせてもらいますか……」
「だね? 五分で周回できるんだから最高だよ!」
言って二人は戦い始めた。夏美はネクロマンサーに斬りかかり、彩葉は死霊を担当している。それだけで何の問題もないはずであった。Aランクスクロールのドロップを待つだけであったというのに。
「ナツ、何かおかしくない?」
かれこれ五分が経過しようかというところであった。
見慣れぬモーションをネクロマンサーが始めている。どうしてか両手を天に向かって掲げ、何やら唱えだしていた。
次の瞬間には出現時と同じような黒い靄が視界に映し出された。更には巨大な魔法陣まで浮かび上がり、出現した靄を吸い込むようにしている。
かといって夏美たちは特に気にした様子もない。未知なる猛攻撃が繰り出されようとも、何ら問題はないと考えている。
だが、その反応は間違っていた。次の瞬間には二人ともが気付く。
巨大な魔法陣による魔法攻撃ではなかったこと。死霊とは異なる強大な魔物を呼び寄せる召喚陣であったことを……。
「嘘……?」
視界を覆うほどの影。浮かび上がるシルエットに二人は理解した。都市伝説的に信憑性のなかった噂話が現実になったのだと……。
「ドラゴンゾンビ――――」
流石に唖然と立ち尽くしてしまう。夏美たちは目の前の光景が信じられなかった。しかし、見た目は明らかであるし、表示されるウインドウの内容も噂通りである。
【ドラゴンゾンビ】
【Lv140】
【物理】強
【火】微弱
【水】強
【風】強
【土】強
本当にレベルが140もあった。先日はレベル200のグレートサンドワーム亜種と戦った彼女たちであるが、その場面には諒太もいたし、何より彩葉のレベルも100を超えていたのだ。この今とは明確に状況が異なっている。
「ナツ!?」
珍しく彩葉が動揺している。予想外すぎる展開に思考が追いつかない。
「イロハちゃんは距離を取って! なんかヤバい気がする!」
「一人で大丈夫なの!?」
彩葉は唇を噛む。自身が死に戻ったことで夏美に迷惑をかけているのだと。かといって、死に戻った理由は勇者ナツを守るためだ。だからこそ悔いなどなかったのだが、結果として足手まといとなっている。
「やるっきゃないよ! ログアウトはできないんだし、大扉は閉じちゃったし!」
夏美は踏ん切りがついた感じだ。倒すか倒されるかの二択であるかのように。
目一杯に思考する彩葉。この状況で自身ができることは指示を出すくらいしかなかった。
「ナツ! ネクロマンサーを倒せば消えるかも!」
思いつきを口にする。確かにドラゴンゾンビはネクロマンサーにより召還されていた。従って元凶を討伐すれば、脅威が去るのではないかと。
「りょ! 先に倒すよ!」
言って夏美が斬り掛かる。ネクロマンサーは既に瀕死であるはず。だから先に倒すのは必然であり、有効な作戦に違いない。
夏美はなぜか笑みを浮かべている。強大な敵が現れたこと。ゲームにあるべき緊張感が彼女を高揚させていた。
絶対に勝てるはずと夏美は疑わない……。
「ナツ、やっぱドラゴンゾンビの噂は信じられないね?」
出現エフェクトを眺める彩葉が言った。未だに噂の域を出ないドラゴンゾンビ。ジャスミス大鉱山は割と周回していたし、仲間内でも聞いたことがない。引退をしたプレイヤーの嘘に大勢が乗っかったとしか思えなかった。
「どうだろうね。レアボスの確認がないのは事実だし……」
正直に夏美もレアボス設定がないだけだと考えていた。スクショすらない現状はその話を信じる根拠が不足している。
「まあ、今度も楽に勝たせてもらいますか……」
「だね? 五分で周回できるんだから最高だよ!」
言って二人は戦い始めた。夏美はネクロマンサーに斬りかかり、彩葉は死霊を担当している。それだけで何の問題もないはずであった。Aランクスクロールのドロップを待つだけであったというのに。
「ナツ、何かおかしくない?」
かれこれ五分が経過しようかというところであった。
見慣れぬモーションをネクロマンサーが始めている。どうしてか両手を天に向かって掲げ、何やら唱えだしていた。
次の瞬間には出現時と同じような黒い靄が視界に映し出された。更には巨大な魔法陣まで浮かび上がり、出現した靄を吸い込むようにしている。
かといって夏美たちは特に気にした様子もない。未知なる猛攻撃が繰り出されようとも、何ら問題はないと考えている。
だが、その反応は間違っていた。次の瞬間には二人ともが気付く。
巨大な魔法陣による魔法攻撃ではなかったこと。死霊とは異なる強大な魔物を呼び寄せる召喚陣であったことを……。
「嘘……?」
視界を覆うほどの影。浮かび上がるシルエットに二人は理解した。都市伝説的に信憑性のなかった噂話が現実になったのだと……。
「ドラゴンゾンビ――――」
流石に唖然と立ち尽くしてしまう。夏美たちは目の前の光景が信じられなかった。しかし、見た目は明らかであるし、表示されるウインドウの内容も噂通りである。
【ドラゴンゾンビ】
【Lv140】
【物理】強
【火】微弱
【水】強
【風】強
【土】強
本当にレベルが140もあった。先日はレベル200のグレートサンドワーム亜種と戦った彼女たちであるが、その場面には諒太もいたし、何より彩葉のレベルも100を超えていたのだ。この今とは明確に状況が異なっている。
「ナツ!?」
珍しく彩葉が動揺している。予想外すぎる展開に思考が追いつかない。
「イロハちゃんは距離を取って! なんかヤバい気がする!」
「一人で大丈夫なの!?」
彩葉は唇を噛む。自身が死に戻ったことで夏美に迷惑をかけているのだと。かといって、死に戻った理由は勇者ナツを守るためだ。だからこそ悔いなどなかったのだが、結果として足手まといとなっている。
「やるっきゃないよ! ログアウトはできないんだし、大扉は閉じちゃったし!」
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