幼馴染み(♀)がプレイするMMORPGはどうしてか異世界に影響を与えている

坂森大我

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第三章 希望を抱いて

ジャスミス大鉱山

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 ジャスミス村へと到着した諒太はセリスに聞いた大鉱山を目指していた。
 見渡す限りに木々のない岩山であり、まさしく辺境の地である。しかし、鉱山があるからだろうか、村は割と賑わっている感じだ。

「あれか?」
 岩肌に洞窟らしきものが見えてきた。恐らくそこが鉱山の入り口。洞窟前にドワーフが一人立っているのは見張りなのかもしれない。

「よう兄ちゃん、一儲けしようと来たのかい?」
 早速と諒太はドワーフに声をかけられる。彼は大鉱山管理組合の係員のようで、入山料を徴収するためにいるらしい。

「入山料は千五百ナールだよ。あとマトックの貸し出しもしているからね? マトックは五百ナールだ」
「マジっすか。じゃあ、マトック付きで……」
 痛い出費である。諒太は二万ナールしかもっていないのだ。入山の時点で一割も必要になるとは考えていなかった。

 渋々と代金を払ってマトックを受け取る。こうなると一日中掘り続けるしかない。最低でも利子分の十万ナールくらいは稼ぎたいところだ。
「気をつけてな。一応はダンジョンだから魔物が湧く。一階層なら雑魚しか現れんが、二階層以下は急に強くなるから注意が必要だぞ」
 係員らしく注意事項を教えてくれた。元より戦闘は気にしていない。問題は買い取り金額が高いミスリルをどれだけ採掘できるかどうかだ。

 係員が入り口の鉄格子を開けてくれる。まるで牢屋のようであるけれど、魔物が外へとでないようにとの対策であろう。
 マトックを片手にダンジョンを進んでいく。やはり目指すべきは最下層である。ライバルが少ないだろうし、少しでもミスリルの採掘確率が上がるはずと。

「雑魚でも割と強いな……」
 現れる魔物は二階層に下りたところだというのに平均レベルが75もあった。聞いていたように一階層とは別物である。のちにスバウメシア聖王国やアクラスフィア王国で実装された高難度ダンジョンに近いレベル帯であるらしい。

 それでも諒太は突き進んでいく。その都度マッピングをしながら、階層を下りていった。
 一階層にはドワーフの姿もちチラホラと見受けられたけれど、やはり魔物が強くなるからだろう。二階層には一人のドワーフもいなくなっていた。

「Aランク冒険者でもなきゃ、これは無理だな……」
 一介の鉱夫に二階層以下の採掘は不可能だと思われる。オツの洞窟で強敵だったリトルドラゴンや、同じレベル帯の魔物が割と多く湧いていたからだ。
 ともあれ諒太は四階層まで到着。何階層まであるのか不明であったため、この辺りで少しばかり掘ってみることにした。

 アイテムボックスからマトックを取り出して採掘と念じる。
 基本的に採掘はスキルと同じだ。念じればマトックを自動的に振り上げて、鉱石を掘ることができた。だが、そのモーションは異様に遅く、もう少し早くならないものかと苛立ちを覚えてしまう。

 記念すべき最初の採掘は黒っぽい鉱石が転がっているだけであった。
「全部、鉄鉱石だな……」
 割と面倒であることに気付く。モーションは長いし、掘る度に屈んで拾い集めなければならない。かといって金策が目的であるのだから、放置するわけにもならなかった。
 黙々と一時間ばかり。しかし、掘れども掘れども、諒太は鉄鉱石しか見つけられない。

「やべぇ……。やっぱ幸運値のせいか?」
 原因は明らかであったけれど、そのせいにしてしまうと精神力が持ちそうにない。謎の指輪をロークアットに返却してからというもの、諒太の幸運値は二桁にすら届いていないのだ。

 昼食時まで掘り続けたけれど、結局諒太は大量の鉄鉱石を手にしただけである。現状で幾らになるのか計量したい気もするけれど、それは一日が終わったあとにするべきだ。入り口で身分証を提示しているのだから、間違いなく管理されているはずで、再び入るには再入場料が必要になると思われる。
「夜食を食ってから、リバレーションでここに戻ってこよう」
 両親がいるという状況である。諒太は顔を見せておくことにした。
 直ぐさまログアウトを選択。計量は最後にすると決めた。余計な出費は少しでも抑えるべきであると。
 考えていたよりも金策は難しいと理解できた。勇者ナツでさえ金欠になる世界なのだ。簡単には稼げないのだと諒太は思い直している……。
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