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第二章 悪夢の果てに

告白

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 学校が終わり、諒太と夏美はいつものように自転車置き場へと来ている。休み時間から会話が弾まない。というのも諒太が阿藤との会話を伝えていないからだ。

「リョウちん、阿藤君に何を言われたのか教えて欲しい……」
 思えば夏美は放課後を待っていたのかもしれない。二人きりになってようやく彼女は話を切り出している。

「ああ、別に隠すつもりはなかったけど、クラスでする話題でもないだろ?」
 夏美の真意が分からぬ以上は考えるだけ無駄だ。しかし、それを問おうとは思わない。なぜなら夏美が語ったという妙な話は阿藤の告白を断る口実であるからだ。諒太のことが好きだなんてその場限りの嘘に他ならない。

「友達ができるかもしれなかったんだが、俺は完璧に嫌われたよ。酷いやつだと言われた。余計なお世話とまで……」
 こんな今も停滞を望む諒太がズルくないはずはない。夏美の真意を聞こうとしないだなんて逃げるばかりの弱い人間だ。それを分かっていたというのに、諒太はまだ現状維持を望んでいる。

「ああ、ごめん。迷惑かけちゃったね。それでリョウちんは何か聞いた?」
「いいや、完膚なきまでに断られたとしか……」
「そうなんだ? いやまあしょうがないよね。含みをもたせるのも違うだろうし」
 諒太が考えていた通りである。夏美は普段と何も変わらなかった。やはり予想通りなのだろう。真意は断る口実であったに違いない。

「今日もセイクリッド世界に行きたいけど、移籍初日だからゲームに専念するよ。新しい友達を作らなきゃ」
「そうしてくれ。ちなみにフレンド登録する際は注意しろよ? 誰かれと招いていたら大変なことになる」
「分かってるよ。あたしもあの世界を変えたくないし……」
 夏美は軽率な行動を改めてくれるらしい。いつ何時改変が起こるのか分からないのだ。だとしたら普段から異世界に留意して行動すべきである。

「あとさ……」
 帰路が分かれる交差点へと二人は到着していた。信号待ちの僅かな時間。夏美はまだ話があったのか別れ際に告げる。

「あたしは断るための嘘なんか言ってないから……」
 言って夏美は道路を横断していく。片手を挙げながら颯爽と漕ぎ出していった。
 唖然とする諒太は彼女を見送るようにして立ち止まっている。自転車を走らせる夏美の姿を目で追うだけだ。

 完全に見透かされていたのかもしれない。諒太の様子が普段と違うってこと。妙に言葉を選ぶような諒太に彼女は感付いたのだろう。
 視線をグルリと半周させ、諒太は夏美の台詞について考えている。嘘に当たる話とは何か。考えるまでもない解答を諒太は探していた。結論以外の答えを導き出そうとして。

「濁すんじゃねぇよ……」
 やはり正答は一つしかなかった。少しばかり残念に思うのは遠回しであり、端折られていたことだ。けれど、まず間違いなくあの話だと確信がある。今日一日の出来事において、真実か嘘かを見極めるような場面は伝え聞いたあの話しかない。

「幼馴染みが揃ってズルいとかねぇな……」
 こうなってくると被害者は阿藤しかいない。運命に翻弄されたような阿藤だが、実のところは諒太と夏美に振り回されただけである。

 帰路に就く諒太は少しばかりの懺悔を阿藤に対して繰り返していた……。
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