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第二章 悪夢の果てに
予知夢
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「あたし、もうやめるから――――」
それは衝撃的な台詞だった。突として告げられた夏美の話に諒太は戸惑っている。
しかし、何やら不思議な感覚だ。意識ははっきりしているのだが、諒太自身を放置して諒太らしき者が勝手に喋っている。
「ああ、そうしてくれ。気を遣ってしょうがないし……」
どうしてか諒太らしき者は夏美に同意している。
夏美がやめるもの。考えてみると多くは存在しない。
夏美は部活に入っていないし、塾に通っている事実もなかった。恐らく今現在でやめるという括りに入るのは学校やゲームであろう。
しかし、高校生活は始まったばかりである。諒太とは違って夏美は友達もいるようだし、明るい彼女がイジメに遭うなんて想像もできない。つまり考えられるものは一つ。やめるものがあるとすれば、プレイ中である【運命のアルカナ】となる。
「賛成してくれてありがと……」
これは夢だろうか……。諒太は深夜にセイクリッド世界からログアウトをして、そのまま眠ったはず。なのに今はどうしてか夏美の悩みを聞かされている。
「好きにしろ。俺はどっちだっていい……」
諒太らしき者は少しも説得することなく夏美を突き放すように言った。もしも諒太であるのならば、絶対に否定すべき話であるというのに。
割と続きが気になっていた諒太だが、この夢は突然に終わりを告げてしまう。けたたましく目覚まし時計が鳴り響き、諒太はヘッドセットを被ったままの状態で目覚めていた。
しばし呆然とする。どうにも整理しきれない。間違いなく夢であったけれど、今し方の夢は確かに現実感を覚えるものがあった。
「まさか予知夢?」
ヘッドセットを被ったままであったからか、奇妙なことが起こり得るのではないかと考えてしまう。夢が予知夢であるという超常的な妄想を諒太は始めていた。
「そんな馬鹿な話は……」
異世界が存在するのだ。今となっては予知夢くらいあって当然と思えてしまう。
かといって諒太は先ほどの夢を戒めとすることで思考を停止した。もしも夏美が夢と同じようにゲームを止めようとするのならば、諒太は彼女を制止するだけで良い。結論が用意されていない話は考えるだけ無駄なのだ。
現実の諒太は夢と同じじゃない。仮に夏美がアルカナを止めたいと話したとして、諒太であれば夏美を説得できるはず。絶対に止めさせたりはしないと思う。
せっかく始まった夏美との冒険を終わらせないためにも……。
それは衝撃的な台詞だった。突として告げられた夏美の話に諒太は戸惑っている。
しかし、何やら不思議な感覚だ。意識ははっきりしているのだが、諒太自身を放置して諒太らしき者が勝手に喋っている。
「ああ、そうしてくれ。気を遣ってしょうがないし……」
どうしてか諒太らしき者は夏美に同意している。
夏美がやめるもの。考えてみると多くは存在しない。
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これは夢だろうか……。諒太は深夜にセイクリッド世界からログアウトをして、そのまま眠ったはず。なのに今はどうしてか夏美の悩みを聞かされている。
「好きにしろ。俺はどっちだっていい……」
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せっかく始まった夏美との冒険を終わらせないためにも……。
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