30 / 226
第一章 導かれし者
いざ魔道塔へ
しおりを挟む
セイクリッド世界に戻った諒太は騎士団本部の詰め所へと駆け込んだ。レベルが88になったことで、魔道塔へと向かうべくワイバーンを用意してもらうためだ。
いつものように受付でフレアを呼んでもらう。ドロップ確率を考えると、急がねばならない。悠長にしている暇はなかった。
「リョウ、どうした?」
毎日、会うたびに同じ会話から始まる。この辺りはNPCの名残りを感じずにはいられない。
「実はレベルが88になったので魔道塔に行きたいのです」
諒太は希望を告げただけ。いつでも頼ってくれという彼女の言葉に甘える格好で。しかし、フレアは難しい顔をしている。どうも諒太の要請は期待通りに運ばない感じだ。
「すまない。流石にまだだと考えていた。ワイバーンは出払っていて、今日は使えそうにないんだ。申し訳ないがしばらくはレベル上げをしてくれないか……?」
聞けば大規模な魔物被害が王国内で起きたらしい。騎士団員は総出で掃討作戦に向かったとのこと。場所が王都より離れているために、ワイバーンでの移動を余儀なくされているようだ。
「私もアーシェを救いたい。けれど、騎士団の任務を投げ出すわけにはならない。この作戦には大勢の命がかかっているのだ……」
「ああいえ、分かっています。大人しくレベル上げをしておきますから……」
当てが外れてはどうしようもない。フレアも断腸の思いであったはず。アーシェを救いたいと考えているのは彼女も同じなのだから。
「ところでリョウ、その胸のチョーカーはアーシェにもらったのか?」
ここで妙な話になる。首にかけたチョーカーはロークアットにもらったものだ。遠隔通話が可能になるという便利な魔道具である。
「えっと、ちょっとした知り合いに……」
「何だと!? 誰にもらった!? 洗いざらい吐くまでワイバーンは貸し出さんぞ!?」
どうしてか声を荒らげるフレア。諒太は眉根を寄せるしかない。しかし、ワイバーンを人質に取られるのであれば、正直に話すしかないだろう。
「スバウメシア聖王国のロークアット殿下ですけど……?」
諒太の返答にフレアは顔を真っ赤にして怒りを露わにしている。このあと彼女が何を発言したとしても、諒太が怒られる未来は確定的であろう。
「青い宝石のチョーカーを男に贈るのは特別な意味があるのだぞ!? 誓いのチョーカーだといってなかったか!? 女は赤い宝石を身に纏い、男は青い宝石。異性にそれを手渡すのはセイクリッド世界において告白も同然だ!」
ゲーム内での交際や結婚なんて諒太は考えたことがない。従って、その辺りの設定について彼は調べていなかった。ロークアットの様子からそこまで大袈裟なことではないと思うけれど、慣例を聞いてしまったあとでは意識せずにはいられない。
「まさかアクラスフィア王国を裏切ったのではないだろうな!?」
「滅相もない! 今もまだここにいるのがその証拠ですって!」
裏切りイベントという面倒ごとまで抱え込みたくなかった。そもそも諒太はアクラスフィア王国に属しているというより、セイクリッド世界に所属していると考えているのだから。
「アーシェが大変なときだというのに他の女をたぶらかし、ましてそれが王族だなんて。私はエクシアーノではなくサンテクトへと君を送ったはずだが、どうすればロークアット殿下とお近づきになれるんだ?」
薄い目を向けるフレア。とはいえ彼女の言い分は理解できる。諒太だって初めてのスバウメシア訪問で王族と関わり合いを持つとは考えもしなかったのだ。
「あの……早速レベリングしますので、今日のところはこれくらいに……」
「弁明はまた聞くとしよう。とはいえ君には感謝もしている。切り捨ててもいいはずのアーシェのために君は命を懸けて戦ってくれているのだ……」
最後に彼女は小さく礼をしてくれた。だが、諒太としては自分のために戦っているつもり。軽率な行動のせいでアーシェは死の淵にいる。だからこそ諒太の行為は全て贖罪に他ならない。
騎士団をあとにし、路地裏にてリバレーションを唱えようとしたところ、
『リョウ様! ご無事だったのですね!?』
脳裏に声が響いた。それは誓いのチョーカーによる遠隔通話だ。スナイパーメッセージの通信よりもずっと身体の内部に届く感じ。もちろん相手はロークアット殿下である。
「ロークアットか? どうしたんだ?」
『今朝からリョウ様の気配を感じられなくなったので心配しておったのです……』
どうやら諒太がセイクリッド世界からログアウトしたことを彼女は感じ取れるのかもしれない。ログイン状態まで分かるだなんて誓いのチョーカーは侮れないと思う。
「俺は定期的に気配を消すけど、死んだわけじゃないから心配しないで欲しい」
『それなら良いのですが……。今はアクラスフィアに戻られたのでしょうか?』
「よく分かるんだな? 騎士団でワイバーンを借りようとしたのだけど、ワイバーンは全て出払っていたんだ」
他国の王女殿下に話す事情でもなかったのだが、意気込みを削ぐような事態は自然と愚痴を漏らすように諒太の口を滑らせていた。
『ワイバーンですか……』
アクラスフィア王国は一騎のワイバーンも用意できないと思われたかもしれない。それこそフレアが激怒したように裏切り行為に当たる気もする。
『わたくしの愛騎であればお貸しできますけれど……』
ところが、ロークアットは想像と異なる反応をした。彼女はアクラスフィア王国に対して邪推することなく、諒太にワイバーンを貸してくれるという。
「本当か? 是非お願いしたい。俺は魔道塔へ行きたいんだ!」
『構いませんけれど、条件があります』
眉根を寄せたのは諒太だ。混じりっけなしのピュアな美少女かと思いきや、ロークアットは打算的な交換条件を出してきた。
『わたくしも連れて行ってください……』
諒太はゴクリと息を呑む。確かに魔道塔へ行くと伝えたはず。そこは言わずと知れた不死王リッチの住み処であり、間違ってもお姫様をエスコートするようなスポットではない。
「死ぬかもしれないんだぞ? そんなこと俺には受諾できない」
『だとすれば貸し出しは却下です。これでもわたくしは【不動王】の娘。父親譲りのスキルを有しています。きっとお力になれるはず』
不動王はいちご大福の二つ名である。また彼のスキル【金剛の盾】は装備品の防御力を強化できる。発動時に攻撃力を失うデメリットはあるのだが、それだけにスキル効果は高い。
諒太は悩んでいた。容易な選択ではない。アーシェに起きたことを考えると、ロークアットを仲間にするなんてできなかった。
『何も問題ありませんよ。何しろリョウ様は……』
決断できない諒太にロークアットが続ける。
『勇者様なのでしょう?――――』
またも諒太は絶句させられてしまう。ひょっとするとロークアットはステータス閲覧のスキルを所有しているのかもしれない。
『お母様が話しておられました。リョウ様が勇者であること。かつて母は勇者ナツ様にお会いしています。だから秘められし力が同質であると分かったそうです。神命が下った者だけに与えられる力だとも……』
恐らくそれは神聖力と呼ばれるものだろう。セシリィ女王はまだ目覚めていない諒太の神聖力を感じ取っていたらしい。
『わたくしは覚悟していますから。どこまでもお供いたします。けれど、失われるつもりはありません。世界のためにわたくしも助力したいだけなのです』
ロークアットが話すように諒太はセイクリッド世界を託されている。暗黒竜ルイナーを再び封印する義務が彼にはあった。さりとて今はただ一人のためだけに戦っている。
一秒でも早く不死王の霊薬を手に入れること。病床に伏す彼女を救うためだけに剣を振っていた。そんな諒太に高い志を掲げる彼女を連れて行く資格はない。
「絶対に勝てるという保証はない。俺は撤退も考えているからな。不死王リッチのレベルは90。俺はリッチよりも弱い。だからロークアットを守り切る自信がないんだ」
『覚悟していると言ったはず。わたくしは協力したいのです。それこそ命を賭してまで』
問答していても無駄のよう。どうやらロークアットは可憐でお淑やかな姫君ではないらしい。想像よりも強い心を持ち、それでいて頑固。彼女を説き伏せる台詞など考えつかなかった。
ならば諒太は同意したフリをしようと思う。承諾したことにしてワイバーンを借りるだけだ。始めから諒太は一人で戦うつもりであるし、彼女を絶対に巻き込んではいけない。
「分かった。今からエクシアーノに行く。場所は王城の貴賓室でいいか?」
『お待ちしております』
諒太はボス部屋にロークアットを入れないつもりである。以前に見た夏美のプレイ状況から、定番モンスターなら彼女も戦えるだろう。ボス部屋の外に取り残されたとしても、ロークアットであれば逃げ切れるはずだ。
リバレーションを唱え、諒太は先日通された貴賓室へと到着。直ぐさまチョーカーに手をやり到着したことを念じた。
待つこと二分。まだドレス姿のロークアットが貴賓室へと飛び込んできた。
「やはり勇者様であられたのですね? 移動魔法をお使いになるとは……」
「隠してもしょうがないしな。それより着替えてきてくれ。あと衛兵に捕まらないように話をしてくれよ?」
ロークアットは笑っている。これより勇者ナツしか踏破していない高難度ダンジョンへ向かうというのに、彼女はまるでピクニック気分のようだ。
「了解しました。竜舎でお待ちください」
ベルを鳴らすや現れた衛兵に連れられ、諒太はワイバーンの竜舎へと案内されている。
初めて見るワイバーンは想像以上に大きい。飼い慣らされているらしいが、見た目は魔物そのものである。
「お待たせいたしました! さあ行きましょうか!」
「ん? 誰がワイバーンを操るんだ? 衛兵は戻ってしまったぞ?」
竜舎には諒太とロークアットだけだ。とても準備が整ったとは思えない。
「わたくしです! 兵を動かすとお母様に見つかりかねませんからね?」
「おいおい、女王様に秘密なのか? とんでもないお転婆姫だな……」
初めての空を美女とデートするのは悪くない。人生最後の旅となるかもしれないのだから、ここは無粋な衛兵がいなくて良かったと考える。元より彼女を危険に晒す気はなかったのだから。
諒太は束の間のデートを楽しもうと思い直している……。
いつものように受付でフレアを呼んでもらう。ドロップ確率を考えると、急がねばならない。悠長にしている暇はなかった。
「リョウ、どうした?」
毎日、会うたびに同じ会話から始まる。この辺りはNPCの名残りを感じずにはいられない。
「実はレベルが88になったので魔道塔に行きたいのです」
諒太は希望を告げただけ。いつでも頼ってくれという彼女の言葉に甘える格好で。しかし、フレアは難しい顔をしている。どうも諒太の要請は期待通りに運ばない感じだ。
「すまない。流石にまだだと考えていた。ワイバーンは出払っていて、今日は使えそうにないんだ。申し訳ないがしばらくはレベル上げをしてくれないか……?」
聞けば大規模な魔物被害が王国内で起きたらしい。騎士団員は総出で掃討作戦に向かったとのこと。場所が王都より離れているために、ワイバーンでの移動を余儀なくされているようだ。
「私もアーシェを救いたい。けれど、騎士団の任務を投げ出すわけにはならない。この作戦には大勢の命がかかっているのだ……」
「ああいえ、分かっています。大人しくレベル上げをしておきますから……」
当てが外れてはどうしようもない。フレアも断腸の思いであったはず。アーシェを救いたいと考えているのは彼女も同じなのだから。
「ところでリョウ、その胸のチョーカーはアーシェにもらったのか?」
ここで妙な話になる。首にかけたチョーカーはロークアットにもらったものだ。遠隔通話が可能になるという便利な魔道具である。
「えっと、ちょっとした知り合いに……」
「何だと!? 誰にもらった!? 洗いざらい吐くまでワイバーンは貸し出さんぞ!?」
どうしてか声を荒らげるフレア。諒太は眉根を寄せるしかない。しかし、ワイバーンを人質に取られるのであれば、正直に話すしかないだろう。
「スバウメシア聖王国のロークアット殿下ですけど……?」
諒太の返答にフレアは顔を真っ赤にして怒りを露わにしている。このあと彼女が何を発言したとしても、諒太が怒られる未来は確定的であろう。
「青い宝石のチョーカーを男に贈るのは特別な意味があるのだぞ!? 誓いのチョーカーだといってなかったか!? 女は赤い宝石を身に纏い、男は青い宝石。異性にそれを手渡すのはセイクリッド世界において告白も同然だ!」
ゲーム内での交際や結婚なんて諒太は考えたことがない。従って、その辺りの設定について彼は調べていなかった。ロークアットの様子からそこまで大袈裟なことではないと思うけれど、慣例を聞いてしまったあとでは意識せずにはいられない。
「まさかアクラスフィア王国を裏切ったのではないだろうな!?」
「滅相もない! 今もまだここにいるのがその証拠ですって!」
裏切りイベントという面倒ごとまで抱え込みたくなかった。そもそも諒太はアクラスフィア王国に属しているというより、セイクリッド世界に所属していると考えているのだから。
「アーシェが大変なときだというのに他の女をたぶらかし、ましてそれが王族だなんて。私はエクシアーノではなくサンテクトへと君を送ったはずだが、どうすればロークアット殿下とお近づきになれるんだ?」
薄い目を向けるフレア。とはいえ彼女の言い分は理解できる。諒太だって初めてのスバウメシア訪問で王族と関わり合いを持つとは考えもしなかったのだ。
「あの……早速レベリングしますので、今日のところはこれくらいに……」
「弁明はまた聞くとしよう。とはいえ君には感謝もしている。切り捨ててもいいはずのアーシェのために君は命を懸けて戦ってくれているのだ……」
最後に彼女は小さく礼をしてくれた。だが、諒太としては自分のために戦っているつもり。軽率な行動のせいでアーシェは死の淵にいる。だからこそ諒太の行為は全て贖罪に他ならない。
騎士団をあとにし、路地裏にてリバレーションを唱えようとしたところ、
『リョウ様! ご無事だったのですね!?』
脳裏に声が響いた。それは誓いのチョーカーによる遠隔通話だ。スナイパーメッセージの通信よりもずっと身体の内部に届く感じ。もちろん相手はロークアット殿下である。
「ロークアットか? どうしたんだ?」
『今朝からリョウ様の気配を感じられなくなったので心配しておったのです……』
どうやら諒太がセイクリッド世界からログアウトしたことを彼女は感じ取れるのかもしれない。ログイン状態まで分かるだなんて誓いのチョーカーは侮れないと思う。
「俺は定期的に気配を消すけど、死んだわけじゃないから心配しないで欲しい」
『それなら良いのですが……。今はアクラスフィアに戻られたのでしょうか?』
「よく分かるんだな? 騎士団でワイバーンを借りようとしたのだけど、ワイバーンは全て出払っていたんだ」
他国の王女殿下に話す事情でもなかったのだが、意気込みを削ぐような事態は自然と愚痴を漏らすように諒太の口を滑らせていた。
『ワイバーンですか……』
アクラスフィア王国は一騎のワイバーンも用意できないと思われたかもしれない。それこそフレアが激怒したように裏切り行為に当たる気もする。
『わたくしの愛騎であればお貸しできますけれど……』
ところが、ロークアットは想像と異なる反応をした。彼女はアクラスフィア王国に対して邪推することなく、諒太にワイバーンを貸してくれるという。
「本当か? 是非お願いしたい。俺は魔道塔へ行きたいんだ!」
『構いませんけれど、条件があります』
眉根を寄せたのは諒太だ。混じりっけなしのピュアな美少女かと思いきや、ロークアットは打算的な交換条件を出してきた。
『わたくしも連れて行ってください……』
諒太はゴクリと息を呑む。確かに魔道塔へ行くと伝えたはず。そこは言わずと知れた不死王リッチの住み処であり、間違ってもお姫様をエスコートするようなスポットではない。
「死ぬかもしれないんだぞ? そんなこと俺には受諾できない」
『だとすれば貸し出しは却下です。これでもわたくしは【不動王】の娘。父親譲りのスキルを有しています。きっとお力になれるはず』
不動王はいちご大福の二つ名である。また彼のスキル【金剛の盾】は装備品の防御力を強化できる。発動時に攻撃力を失うデメリットはあるのだが、それだけにスキル効果は高い。
諒太は悩んでいた。容易な選択ではない。アーシェに起きたことを考えると、ロークアットを仲間にするなんてできなかった。
『何も問題ありませんよ。何しろリョウ様は……』
決断できない諒太にロークアットが続ける。
『勇者様なのでしょう?――――』
またも諒太は絶句させられてしまう。ひょっとするとロークアットはステータス閲覧のスキルを所有しているのかもしれない。
『お母様が話しておられました。リョウ様が勇者であること。かつて母は勇者ナツ様にお会いしています。だから秘められし力が同質であると分かったそうです。神命が下った者だけに与えられる力だとも……』
恐らくそれは神聖力と呼ばれるものだろう。セシリィ女王はまだ目覚めていない諒太の神聖力を感じ取っていたらしい。
『わたくしは覚悟していますから。どこまでもお供いたします。けれど、失われるつもりはありません。世界のためにわたくしも助力したいだけなのです』
ロークアットが話すように諒太はセイクリッド世界を託されている。暗黒竜ルイナーを再び封印する義務が彼にはあった。さりとて今はただ一人のためだけに戦っている。
一秒でも早く不死王の霊薬を手に入れること。病床に伏す彼女を救うためだけに剣を振っていた。そんな諒太に高い志を掲げる彼女を連れて行く資格はない。
「絶対に勝てるという保証はない。俺は撤退も考えているからな。不死王リッチのレベルは90。俺はリッチよりも弱い。だからロークアットを守り切る自信がないんだ」
『覚悟していると言ったはず。わたくしは協力したいのです。それこそ命を賭してまで』
問答していても無駄のよう。どうやらロークアットは可憐でお淑やかな姫君ではないらしい。想像よりも強い心を持ち、それでいて頑固。彼女を説き伏せる台詞など考えつかなかった。
ならば諒太は同意したフリをしようと思う。承諾したことにしてワイバーンを借りるだけだ。始めから諒太は一人で戦うつもりであるし、彼女を絶対に巻き込んではいけない。
「分かった。今からエクシアーノに行く。場所は王城の貴賓室でいいか?」
『お待ちしております』
諒太はボス部屋にロークアットを入れないつもりである。以前に見た夏美のプレイ状況から、定番モンスターなら彼女も戦えるだろう。ボス部屋の外に取り残されたとしても、ロークアットであれば逃げ切れるはずだ。
リバレーションを唱え、諒太は先日通された貴賓室へと到着。直ぐさまチョーカーに手をやり到着したことを念じた。
待つこと二分。まだドレス姿のロークアットが貴賓室へと飛び込んできた。
「やはり勇者様であられたのですね? 移動魔法をお使いになるとは……」
「隠してもしょうがないしな。それより着替えてきてくれ。あと衛兵に捕まらないように話をしてくれよ?」
ロークアットは笑っている。これより勇者ナツしか踏破していない高難度ダンジョンへ向かうというのに、彼女はまるでピクニック気分のようだ。
「了解しました。竜舎でお待ちください」
ベルを鳴らすや現れた衛兵に連れられ、諒太はワイバーンの竜舎へと案内されている。
初めて見るワイバーンは想像以上に大きい。飼い慣らされているらしいが、見た目は魔物そのものである。
「お待たせいたしました! さあ行きましょうか!」
「ん? 誰がワイバーンを操るんだ? 衛兵は戻ってしまったぞ?」
竜舎には諒太とロークアットだけだ。とても準備が整ったとは思えない。
「わたくしです! 兵を動かすとお母様に見つかりかねませんからね?」
「おいおい、女王様に秘密なのか? とんでもないお転婆姫だな……」
初めての空を美女とデートするのは悪くない。人生最後の旅となるかもしれないのだから、ここは無粋な衛兵がいなくて良かったと考える。元より彼女を危険に晒す気はなかったのだから。
諒太は束の間のデートを楽しもうと思い直している……。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる