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第一章 導かれし者
勇者ナツと魔道士リョウ
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翌朝、諒太は眠い目を擦りながら登校していた。今日から授業が始まるというのに、ほぼ徹夜でレベル上げだ。幸いにも夜はアーシェが受付ではなく、気まずい思いをせずに済んでいる。
既にレベルは三十に到達し、風のスクロール【ウィンドカッター】と水のスクロール【ウォーターボール】も購入済み。既に無詠唱で唱えられる程度に新しい魔法も熟練度を上げていた。
「リョウちん、昨日はごめん!」
諒太が自転車を止めていると夏美がやって来た。勇者に選ばれてしまった彼女は式典やらのイベントがあり、レベリングを少しも手伝ってくれなかったのだ。
「俺はLv30まで上げたぞ? 明け方までしてたからな」
「凄いじゃん! 今日は一緒にプレイしようよ!」
「ああ、そのつもり。だけど、勇者って命を狙われるんだろ?」
掲示板をチェックすると、良からぬ話題で盛り上がっていた。勇者は世界に一人だけ。つまりは夏美を倒せば夏美はレベル1の戦士となり、また新たな勇者が誕生することになる。だからこそ妬むものや勇者になりたいものが策を講じていたのだ。
「へーきへーき! 騎士団のみんなが助けてくれるし、あたしは強いからね。それにジョブが勇者になったからステータスは爆上がりだよ!」
何と羨ましい話だと思う。諒太はNPCの好感度を上げるイベントを発生させただけだというのに、ステータス爆上がりとかいう魅惑のイベントを語られてしまった。
「まあチートリングは役にたったよ。近い内にLv50は狙えると思う」
「それは良かった。ジョブは何なの?」
「今は大魔法士から魔道士になった。三つの魔法を無詠唱まで上げたからか、レベルが30に到達したからかは分からんけど」
正直に魔法職は強すぎるように思う。最初に無茶をしたのは確かだが、未だにMPが切れる感じはしないし、大抵の魔物は一撃なのだ。しかも範囲攻撃であるから一網打尽にできてしまう。
「へぇ、やっぱりリョウちんは凄いね? 魔法職は低レベル時にめちゃくちゃ苦労するって聞いたけど」
「いや、壊れ職だぞ? 幾らでも撃てるし攻撃力も半端ない」
どうも夏美は魔法職を誤解しているようだ。苦労するのは呪文が無詠唱になるまでだ。一つでも無詠唱になれば格上の魔物であろうと瞬殺可能である。
「ええ? そんなはずないっしょ? 威力はあってもMP枯渇が激しいはずだよ? 低レベル時はMP回復ポーションを買うお金もないしね。ひょっとしてリョウちん、初期値が凄かったの?」
「アタックは4だったし、インテリジェンスは5だぞ? なかなかだろ?」
諒太は神ステータスを嬉々として伝えた。
基礎ステータスは今後の伸びを計る指標となる。初期値が低いステータスは伸びにくく、高いものは伸びやすい。間違っても諒太は消去法的に魔法士となったわけではなかった。素質なしは運だけであったから、戦士を選んでもそれなりに強くなれたはずである。
「すごっ! あたしは攻撃と運が5で俊敏が4だったけど、あとは3だったよ!」
ところが、諒太のステータスは直ぐさま神レベルから凡庸なものへと急落してしまう。
そういえば夏美は豪運であった。彼女のステータスは確実に諒太よりも恵まれている。運が絡むものに夏美は滅法強かったのを今さらながらに思い知らされていた。
「じゃあ今日中にLv50まで上げよう! 今日は徹底的に付き合ってあげる!」
「サンキュ。勇者様は頼りになるな?」
始まったばかりという諒太のアルカナだが、順風満帆どころか最高の船出となっている。
高校生活二日目にして諒太は授業中を睡眠時間に充てた。なぜなら夜は忙しい。勉強などに体力を使うべきではなかった。学校で十分な睡眠を取り、諒太はアルカナの世界へと舞い戻るつもりだ……。
既にレベルは三十に到達し、風のスクロール【ウィンドカッター】と水のスクロール【ウォーターボール】も購入済み。既に無詠唱で唱えられる程度に新しい魔法も熟練度を上げていた。
「リョウちん、昨日はごめん!」
諒太が自転車を止めていると夏美がやって来た。勇者に選ばれてしまった彼女は式典やらのイベントがあり、レベリングを少しも手伝ってくれなかったのだ。
「俺はLv30まで上げたぞ? 明け方までしてたからな」
「凄いじゃん! 今日は一緒にプレイしようよ!」
「ああ、そのつもり。だけど、勇者って命を狙われるんだろ?」
掲示板をチェックすると、良からぬ話題で盛り上がっていた。勇者は世界に一人だけ。つまりは夏美を倒せば夏美はレベル1の戦士となり、また新たな勇者が誕生することになる。だからこそ妬むものや勇者になりたいものが策を講じていたのだ。
「へーきへーき! 騎士団のみんなが助けてくれるし、あたしは強いからね。それにジョブが勇者になったからステータスは爆上がりだよ!」
何と羨ましい話だと思う。諒太はNPCの好感度を上げるイベントを発生させただけだというのに、ステータス爆上がりとかいう魅惑のイベントを語られてしまった。
「まあチートリングは役にたったよ。近い内にLv50は狙えると思う」
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「今は大魔法士から魔道士になった。三つの魔法を無詠唱まで上げたからか、レベルが30に到達したからかは分からんけど」
正直に魔法職は強すぎるように思う。最初に無茶をしたのは確かだが、未だにMPが切れる感じはしないし、大抵の魔物は一撃なのだ。しかも範囲攻撃であるから一網打尽にできてしまう。
「へぇ、やっぱりリョウちんは凄いね? 魔法職は低レベル時にめちゃくちゃ苦労するって聞いたけど」
「いや、壊れ職だぞ? 幾らでも撃てるし攻撃力も半端ない」
どうも夏美は魔法職を誤解しているようだ。苦労するのは呪文が無詠唱になるまでだ。一つでも無詠唱になれば格上の魔物であろうと瞬殺可能である。
「ええ? そんなはずないっしょ? 威力はあってもMP枯渇が激しいはずだよ? 低レベル時はMP回復ポーションを買うお金もないしね。ひょっとしてリョウちん、初期値が凄かったの?」
「アタックは4だったし、インテリジェンスは5だぞ? なかなかだろ?」
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基礎ステータスは今後の伸びを計る指標となる。初期値が低いステータスは伸びにくく、高いものは伸びやすい。間違っても諒太は消去法的に魔法士となったわけではなかった。素質なしは運だけであったから、戦士を選んでもそれなりに強くなれたはずである。
「すごっ! あたしは攻撃と運が5で俊敏が4だったけど、あとは3だったよ!」
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「じゃあ今日中にLv50まで上げよう! 今日は徹底的に付き合ってあげる!」
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高校生活二日目にして諒太は授業中を睡眠時間に充てた。なぜなら夜は忙しい。勉強などに体力を使うべきではなかった。学校で十分な睡眠を取り、諒太はアルカナの世界へと舞い戻るつもりだ……。
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