幼馴染み(♀)がプレイするMMORPGはどうしてか異世界に影響を与えている

坂森大我

文字の大きさ
上 下
8 / 226
第一章 導かれし者

一方で夏美は……

しおりを挟む
 諒太へのプレゼントを騎士団に預けた夏美はイベントに参戦していた。緊急クエストと題されたそれは初めて行われる大規模戦闘であるらしい。

「ナツ、大福さんの方は問題ないみたい。司令官をさっさと討ち取るわよ!」
「了解! しっかし洞窟に逃げ込むなんてNPCとして失格だね? 重要ターゲットなんだから、堂々とボス的に待ち受けなきゃだよ!」

 夏美はフレンドと共に参加していた。既に大いなる戦果を手にしていた彼女だが、最後までイベントを堪能するようである。

 イベント内容はエルフの国であるスバウメシア聖王国でクーデターが起きたという設定。原因はプレイヤーの一人がエルフの女王と結婚したせいである。プレイヤーは人族であるため、純血主義たちが反旗を翻したとのことだ。またクーデターにはエルフと敵対するドワーフの国ガナンデル皇国もが首を突っ込んでいた。

 エルフとドワーフの勢力に加えて、友好国であったアクラスフィア王国はスバウメシア正規軍についた。アクラスフィア王国の聖騎士である夏美は当然のことスバウメシア正規軍側に立って戦っている。

「しっかし、エクシアーノといいサンテクトといい敵軍はNPCばっかだね?」
「しょうがないよ。ガナンデル皇国に移籍するにはレベルキャップがあるし……」
 フレンドの名はイロハという。彼女は夏美のリアフレであり、中学生時代からのゲーム友達である。夏美と同じアクラスフィア騎士団に所属する聖騎士の一人だった。

「このイベントまで運営は割と良い仕事してたのに、今回はちょい失敗かなぁ……」
「そうだね。せめて私たちを参加させなきゃ互角だったかもしれないのに……」
 二人の総意としてこのイベントは失敗であるらしい。アクラスフィア王国勢までもを参加させたのは間違いであると言いたげだ。戦力差がありすぎたイベントは圧倒的にスバウメシア正規軍側が優位となっている。

「ま、イベント報酬を有り難く頂いちゃおう!」
「アハハ、そうだね! ナツ、こうなったらこのダンジョンも踏破しちゃおうよ! 今から聖王城まで戻る時間もないしさ!」
「よし、なら攻略しちゃおう!」
 二人は目的を見失ったかのように戦闘を続けた。既に彼女たちの部隊に任せられたNPC司令官は討ち取っていたというのに。

 ダンジョンボスまでもを討伐し、夏美たちは意気揚々と洞窟を出る。
 不意に届いたメッセージ。それは聖王城の守護部隊からだ。何でもクーデター首謀者というターゲットNPCを討ち取ったとのこと。
 メッセージを読んだ夏美は笑みを大きくしていた。それはスバウメシア聖王国内の二カ所で行われた大規模戦闘の結末なのだ。イベントの終わりを意味し、同時に自軍の勝利が確定したことでもある。

 夏美が洞窟から現れると待っていたプレイヤーたちが拍手をして迎えてくれた。待っていたのはレベルが足りないプレイヤーやNPCたち。彼らも勝利したことを理解している感じだ。

 大勢に迎えられると流石に身震いしてしまう。勝利の瞬間こそゲーマーにとって最高の一瞬なのだ。夏美はダンジョンボスから剥ぎ取った部位を高々と掲げ、改めてこのイベントの終わりを告げる。
 堂々と聖騎士らしく大声を張って……。

「みんな、おつ!――――」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...