25 / 62
第二章 星系を守護する者たち
開戦
しおりを挟む
GUNSソロモンズゲート支部イプシロン基地ではゲートの監視を強化していた。
人類史上かつてない大戦を目前に控え緊張が高まっている。人類から攻め入る予定はなかったものの、もはや開戦は時間の問題だった。
イプシロン基地にはデミトリー総長の姿がある。彼は人類の未来を見届ける覚悟を決めていた。万が一の場合には副総長へと全権を委任するよう準備し、数日前よりイプシロン基地に滞在している。
「緊張状態が続くな……」
「どうせ開戦するのであれば兵士たちの緊張が切れる前にして欲しいところです」
デミトリーの独り言にも似た話に司令官であるクェンティン大将が返した。
敵軍の偵察機は全て撃墜している。人類は手の内を殆ど見せていない。カザインがゲートから侵攻したとしても撃退できると信じていた。
「ゲートに熱源反応です! 来ますっ!!」
にわかに戦況が動き出した。穏やかだったゲートが太陽光を受けたように輝くと一筋のビーム砲が突き抜けていく。それは瞬く間にダミー戦艦を撃ち抜いて、銀河の果てまで届くかのような長い光の尾を引いた。
まるで開戦の狼煙である。両軍共が覚悟を決められたはずだ。
「遂に始まるのか……」
人類として避けたかったはずの銀河間戦争が始まってしまった。デミトリーは過度に緊張している。
「全軍第一戦闘配備! 侵略者共を追い返せっ!」
クェンティン司令の号令が轟く。重イオン荷電粒子砲が起動に入り、戦闘機も宙域へと射出された。各々が通達済みの作戦行動を迅速にこなしている。
「物体複数観測しました! 小型機多数! 座標転送します!」
即時にデータベースへ反映され、末端の戦闘機までもが出現ポイントを確認する。
「ロックオン完了! 迎撃します!」
GUNSのシナリオ通りに進んでいた。第一陣である航宙機は出現と同時にロックオンされ全てが撃墜されている。
「百機撃破! 続いて来ます! 大型……複数! 艦隊です!」
続いて艦船が進入。しかし、ここも即座に座標が転送され、ゲートN面に配置された戦艦や重イオン砲からの一斉砲火を浴びせた。流石に全艦の撃沈とはならなかったものの、通過した艦もほぼ全てが大破状態となっている。
「戦闘機が射出されました!」
「迎撃しろ! 一機残らず撃墜するのだ!」
戦闘機には戦闘機。直ちに航宙機部隊が迎撃へと向かう。
どの部隊も上手く機能していた。ここまでの戦果は想定以上であったに違いない。
「総長、シミュレーション通りに進んでいます。我々の力を見せつけてやりましょう!」
「油断は禁物だぞ? まだ何かを隠しているやもしれん……」
ゲートには次々と新手の戦艦が現れている。重イオン荷電粒子砲や数多の砲台、加えて艦隊からの一斉射撃によってそれらを撃沈していく。しかし、次第に通過を許すようにもなっていた。
「砲撃を続けろ! 機雷の射出急げ! β線に達した敵機は第三、第四戦団が駆逐! 第七戦団以下は待機だ!」
クェンティンの指示は的確だった。それは綿密に練られた作戦通りである。
指揮官もさることながら、部下たちもミスなく働く。誰もが人類の未来を信じており、その為に行動していた。
「航宙機部隊はもっとエリアを意識しろ! 深追いはするな!!」
役割分担を細部まで詰めていた。戦力分布にムラをなくし、同士討ちを避ける意味合いがある。従って利己的な深追いは隊というより作戦自体に迷惑をかけることになった。
「二十番母艦より航宙機隊発進! [βE1・F1]へと入れ! 到着次第、四四三番隊と交代せよ!」
消耗の激しい部隊から順に交代していく。長期戦への対策も万全である。
「損害報告急げ! 各種伝達は迅速且つ正確にこなすんだ!」
ここまでの被害は考えられていたものよりも少ない。想定よりゲートの特性が上手く機能したようだ。逆にそれはカザイン光皇連にとって誤算であっただろう。彼らもゲートの仕組みはある程度理解していたはずだが、ゲートを潜る際のちょっとしたラグが防衛側に有利すぎた。発見からゲートを通過するまでの間に多くがロックオンされて、大多数が宇宙の塵と化したのだ……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
戦闘開始から四時間が経過。ゲートから現れる新手の姿はなくなっていた。宙域に残るカザイン機も数を減らし、素人目にもGUNSが優勢であると分かるほどだ。
「クェンティン大将……?」
「ご心配なく。我々の勝利は目前です。ただ気がかりなのは想定よりも随分と数が少なかったこと。我々を過小評価した結果なのか、或いは偵察の延長であったとも考えられます。いずれにせよ全戦力の一割に満たないのは確実です。本当の戦力を注ぐのは次、若しくはそのまた次の戦闘。決めに来る戦闘が必ずあると推測されます」
以降の予測を交えながらクェンティンが答えた。
既に敵艦は全てが足を止めている。戦闘としては残存敵航宙機の殲滅を残すだけとなった。初陣を勝利するだけでなく被害は最小限。自軍の士気が向上するのは間違いないことだろう。クェンティンは大勝利を確信して、小さく笑みを浮かべていた……。
人類史上かつてない大戦を目前に控え緊張が高まっている。人類から攻め入る予定はなかったものの、もはや開戦は時間の問題だった。
イプシロン基地にはデミトリー総長の姿がある。彼は人類の未来を見届ける覚悟を決めていた。万が一の場合には副総長へと全権を委任するよう準備し、数日前よりイプシロン基地に滞在している。
「緊張状態が続くな……」
「どうせ開戦するのであれば兵士たちの緊張が切れる前にして欲しいところです」
デミトリーの独り言にも似た話に司令官であるクェンティン大将が返した。
敵軍の偵察機は全て撃墜している。人類は手の内を殆ど見せていない。カザインがゲートから侵攻したとしても撃退できると信じていた。
「ゲートに熱源反応です! 来ますっ!!」
にわかに戦況が動き出した。穏やかだったゲートが太陽光を受けたように輝くと一筋のビーム砲が突き抜けていく。それは瞬く間にダミー戦艦を撃ち抜いて、銀河の果てまで届くかのような長い光の尾を引いた。
まるで開戦の狼煙である。両軍共が覚悟を決められたはずだ。
「遂に始まるのか……」
人類として避けたかったはずの銀河間戦争が始まってしまった。デミトリーは過度に緊張している。
「全軍第一戦闘配備! 侵略者共を追い返せっ!」
クェンティン司令の号令が轟く。重イオン荷電粒子砲が起動に入り、戦闘機も宙域へと射出された。各々が通達済みの作戦行動を迅速にこなしている。
「物体複数観測しました! 小型機多数! 座標転送します!」
即時にデータベースへ反映され、末端の戦闘機までもが出現ポイントを確認する。
「ロックオン完了! 迎撃します!」
GUNSのシナリオ通りに進んでいた。第一陣である航宙機は出現と同時にロックオンされ全てが撃墜されている。
「百機撃破! 続いて来ます! 大型……複数! 艦隊です!」
続いて艦船が進入。しかし、ここも即座に座標が転送され、ゲートN面に配置された戦艦や重イオン砲からの一斉砲火を浴びせた。流石に全艦の撃沈とはならなかったものの、通過した艦もほぼ全てが大破状態となっている。
「戦闘機が射出されました!」
「迎撃しろ! 一機残らず撃墜するのだ!」
戦闘機には戦闘機。直ちに航宙機部隊が迎撃へと向かう。
どの部隊も上手く機能していた。ここまでの戦果は想定以上であったに違いない。
「総長、シミュレーション通りに進んでいます。我々の力を見せつけてやりましょう!」
「油断は禁物だぞ? まだ何かを隠しているやもしれん……」
ゲートには次々と新手の戦艦が現れている。重イオン荷電粒子砲や数多の砲台、加えて艦隊からの一斉射撃によってそれらを撃沈していく。しかし、次第に通過を許すようにもなっていた。
「砲撃を続けろ! 機雷の射出急げ! β線に達した敵機は第三、第四戦団が駆逐! 第七戦団以下は待機だ!」
クェンティンの指示は的確だった。それは綿密に練られた作戦通りである。
指揮官もさることながら、部下たちもミスなく働く。誰もが人類の未来を信じており、その為に行動していた。
「航宙機部隊はもっとエリアを意識しろ! 深追いはするな!!」
役割分担を細部まで詰めていた。戦力分布にムラをなくし、同士討ちを避ける意味合いがある。従って利己的な深追いは隊というより作戦自体に迷惑をかけることになった。
「二十番母艦より航宙機隊発進! [βE1・F1]へと入れ! 到着次第、四四三番隊と交代せよ!」
消耗の激しい部隊から順に交代していく。長期戦への対策も万全である。
「損害報告急げ! 各種伝達は迅速且つ正確にこなすんだ!」
ここまでの被害は考えられていたものよりも少ない。想定よりゲートの特性が上手く機能したようだ。逆にそれはカザイン光皇連にとって誤算であっただろう。彼らもゲートの仕組みはある程度理解していたはずだが、ゲートを潜る際のちょっとしたラグが防衛側に有利すぎた。発見からゲートを通過するまでの間に多くがロックオンされて、大多数が宇宙の塵と化したのだ……。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
戦闘開始から四時間が経過。ゲートから現れる新手の姿はなくなっていた。宙域に残るカザイン機も数を減らし、素人目にもGUNSが優勢であると分かるほどだ。
「クェンティン大将……?」
「ご心配なく。我々の勝利は目前です。ただ気がかりなのは想定よりも随分と数が少なかったこと。我々を過小評価した結果なのか、或いは偵察の延長であったとも考えられます。いずれにせよ全戦力の一割に満たないのは確実です。本当の戦力を注ぐのは次、若しくはそのまた次の戦闘。決めに来る戦闘が必ずあると推測されます」
以降の予測を交えながらクェンティンが答えた。
既に敵艦は全てが足を止めている。戦闘としては残存敵航宙機の殲滅を残すだけとなった。初陣を勝利するだけでなく被害は最小限。自軍の士気が向上するのは間違いないことだろう。クェンティンは大勝利を確信して、小さく笑みを浮かべていた……。
10
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
絶滅戦争―毒の星より―
美彌﨑 螽斯
SF
美しい水と大気、適切な気候を備えた地球のような惑星、それは、すべての生命体にとっての快適な環境ではなかった。極度に酸性度の高い液体と大気、摂氏八十度以上の気温の中に暮らす生命体が、彼らの生存圏拡大を望んだ時、地球に脅威が訪れる。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Geo Fleet~星砕く拳聖と滅びの龍姫~
武無由乃
SF
時は遥か果てに飛んで――、西暦3300年代。
天の川銀河全体に人類の生活圏が広がった時代にあって、最も最初に開拓されたジオ星系は、いわゆる”地球帝国”より明確に独立した状態にあった。宇宙海賊を名乗る五つの武力集団に分割支配されたジオ星系にあって、遥か宇宙の果てを目指す青年・ジオ=フレアバードは未だ地上でチンピラ相手に燻っていた。
そんな彼はある日、宇宙へ旅立つ切っ掛けとなるある少女と出会う。最初の宇宙開拓者ジオの名を受け継いだ少年と、”滅びの龍”の忌み名を持つ少女の宇宙冒険物語。
※ 【Chapter -1】は設定解説のための章なので、飛ばして読んでいただいても構いません。
※ 以下は宇宙の領域を示す名称についての簡単な解説です。
※ 以下の名称解説はこの作品内だけの設定です。
「宙域、星域」:
どちらも特定の星の周辺宇宙を指す名称。
星域は主に人類生活圏の範囲を指し、宙域はもっと大雑把な領域、すなわち生活圏でない区域も含む。
「星系」:
特定の恒星を中心とした領域、転じて、特定の人類生存可能惑星を中心とした、移住可能惑星群の存在する領域。
太陽系だけはそのまま太陽系と呼ばれるが、あくまでもそれは特例であり、前提として人類生活領域を中心とした呼び方がなされる。
各星系の名称は宇宙開拓者によるものであり、各中心惑星もその開拓者の名がつけられるのが通例となっている。
以上のことから、恒星自体にはナンバーだけが振られている場合も多く、特定惑星圏の”太陽”と呼ばれることが普通に起こっている。
「ジオ星系」:
初めて人類が降り立った地球外の地球型惑星ジオを主星とした移住可能惑星群の総称。
本来、そういった惑星は、特定恒星系の何番惑星と呼ばれるはずであったが、ジオの功績を残すべく惑星に開拓者の名が与えられた。
それ以降、その慣習に従った他の開拓者も、他の開拓領域における第一惑星に自らの名を刻み、それが後にジオ星系をはじめとする各星系の名前の始まりとなったのである。
「星団、星群」:
未だ未開拓、もしくは移住可能惑星が存在しない恒星系の惑星群を示す言葉。
開拓者の名がついていないので「星系」とは呼ばれない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる