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第二章 星系を守護する者たち
カザイン光皇連
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メシエカタログM31。地球より250万光年の距離にあるこの銀河は一兆個の恒星からなり、天の川銀河の三倍近くもある渦巻き銀河である。
数多ある星系の一つにカザイン光皇連の母星ゼクスがあった。
「カザイン光皇、またもエイリアンによる交渉電信が届いております。ご丁寧に我らの言語を使用しておりますが……」
「放っておけ。既に侵攻は決定事項である。返答はするな。また光皇路にも近付いてはならん。我らは静かに戦いの準備をする……」
ダグマ・レブ・カザイン光皇の居城にやって来たのは皇直属の家臣デリナである。彼は再三再四届くエイリアンからのメッセージを伝えに来たらしい。
「勝てるのですか? 我らが発見した初めての知的生命体でありますが、なかなかの科学力を持っているようです」
「勝たねばならん。戦いに勝つしか皇家の存続はない。全ての計画が破綻したのだぞ? 既に批判が飛び交っておる。ゼクスでは防護服なくして外出もできんのだ。旧時代のエネルギー施設までもを緊急的に稼働させているが全域を賄えるものではない。加えて作物は全滅とくる。そのうち民は皇家や諸侯に対して決起するだろう。だからこそ怒りの矛先を変えてやるのだ。どうせこのままでは半数が死ぬ。だが、幸いにも敵となり得る存在が現れた。だとすれば戦うしかないだろう?」
完全に打つ手なしの状態である。カザイン皇はまだ母星ゼクスで生活していたけれど、近く惑星をあとにする予定だった。
「諸侯たちが結束する前に準備を終わらせろ。奴らは民よりも厄介だ。領民だけでなく領地までを失った諸侯らが宙艦の一室を与えられるだけで納得するはずはない。諸侯たちには星系侵略による報酬を増額して伝えておけ」
「増額ですか? それでは支払いが追いつかないように思いますけれど」
「問題はない。宙間戦争が無血で終わるはずもなかろう? どれだけの諸侯が生き残ると思う? 生きて帰らぬ限りは戦果と認めぬのだから心配無用だ……」
どうやらカザイン皇は戦争による被害も政策の内と考えているらしい。飢餓や環境悪化によって失われるだろう数を戦死者とするつもりのよう。
「では民の徴兵も同じように処理するのでしょうか?」
「当然である。元より三百億という臣民は養いきれんのだ。無駄死にさせるよりも戦争に使った方が賢明だろう? 余は栄えある死を与えてやろうというのだ……」
カザイン皇は語る。無駄に死なせる必要はないと。民は光皇のために存在するのだと。
「必ずやエイリアンの支配地を奪うのだ。貴様は臣民の戦意高揚を促しておれば良い……」
デリナは静かに頷いている。光皇の決定には逆らえなかった。
バーストに関する全ての政策が無駄に終わっている。急場しのぎのエネルギー対策が十分であるはずもない。最低限の生活すら保障できない皇家は戦争を始めるしかなかったようだ。
「了解しました。ハニエム皇連軍総統にはそのようにお伝え致します」
「仮に滅亡への一歩を踏み出していたとしても我らは戻れん。突き進む道しか我らには存在せぬ……」
カザイン皇の命令に再度デリナは頭を下げた。彼とて理解している。カザイン皇家に選択肢がなかったこと。不本意に感じながらもデリナは戦争を受け入れていた。
なぜなら適切な代案があるようには思えないから。消去法にて残った方策が銀河間戦争であったからだ……。
数多ある星系の一つにカザイン光皇連の母星ゼクスがあった。
「カザイン光皇、またもエイリアンによる交渉電信が届いております。ご丁寧に我らの言語を使用しておりますが……」
「放っておけ。既に侵攻は決定事項である。返答はするな。また光皇路にも近付いてはならん。我らは静かに戦いの準備をする……」
ダグマ・レブ・カザイン光皇の居城にやって来たのは皇直属の家臣デリナである。彼は再三再四届くエイリアンからのメッセージを伝えに来たらしい。
「勝てるのですか? 我らが発見した初めての知的生命体でありますが、なかなかの科学力を持っているようです」
「勝たねばならん。戦いに勝つしか皇家の存続はない。全ての計画が破綻したのだぞ? 既に批判が飛び交っておる。ゼクスでは防護服なくして外出もできんのだ。旧時代のエネルギー施設までもを緊急的に稼働させているが全域を賄えるものではない。加えて作物は全滅とくる。そのうち民は皇家や諸侯に対して決起するだろう。だからこそ怒りの矛先を変えてやるのだ。どうせこのままでは半数が死ぬ。だが、幸いにも敵となり得る存在が現れた。だとすれば戦うしかないだろう?」
完全に打つ手なしの状態である。カザイン皇はまだ母星ゼクスで生活していたけれど、近く惑星をあとにする予定だった。
「諸侯たちが結束する前に準備を終わらせろ。奴らは民よりも厄介だ。領民だけでなく領地までを失った諸侯らが宙艦の一室を与えられるだけで納得するはずはない。諸侯たちには星系侵略による報酬を増額して伝えておけ」
「増額ですか? それでは支払いが追いつかないように思いますけれど」
「問題はない。宙間戦争が無血で終わるはずもなかろう? どれだけの諸侯が生き残ると思う? 生きて帰らぬ限りは戦果と認めぬのだから心配無用だ……」
どうやらカザイン皇は戦争による被害も政策の内と考えているらしい。飢餓や環境悪化によって失われるだろう数を戦死者とするつもりのよう。
「では民の徴兵も同じように処理するのでしょうか?」
「当然である。元より三百億という臣民は養いきれんのだ。無駄死にさせるよりも戦争に使った方が賢明だろう? 余は栄えある死を与えてやろうというのだ……」
カザイン皇は語る。無駄に死なせる必要はないと。民は光皇のために存在するのだと。
「必ずやエイリアンの支配地を奪うのだ。貴様は臣民の戦意高揚を促しておれば良い……」
デリナは静かに頷いている。光皇の決定には逆らえなかった。
バーストに関する全ての政策が無駄に終わっている。急場しのぎのエネルギー対策が十分であるはずもない。最低限の生活すら保障できない皇家は戦争を始めるしかなかったようだ。
「了解しました。ハニエム皇連軍総統にはそのようにお伝え致します」
「仮に滅亡への一歩を踏み出していたとしても我らは戻れん。突き進む道しか我らには存在せぬ……」
カザイン皇の命令に再度デリナは頭を下げた。彼とて理解している。カザイン皇家に選択肢がなかったこと。不本意に感じながらもデリナは戦争を受け入れていた。
なぜなら適切な代案があるようには思えないから。消去法にて残った方策が銀河間戦争であったからだ……。
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