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Epilogue
この愛に溺れて
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スローバラードまで三曲を踊りきった私たち。
会場は割れんばかりの拍手で私たちを称えてくれました。
「割と受け入れられましたわね?」
「名残惜しいけど、テラスへ行きましょうか」
王子殿下がお待ちかねです。
ぶっちゃけ婚約者でなかったのなら不敬罪ですよね。
夜会のスタート時に二人の王子殿下が壁際だなんてことは……。
「誰かと踊ってたりして……」
「そんなことするのでしたら、婚約破棄ですわ!」
イセリナはつえーな。
まあ最初のダンスパートナーは本命と相場が決まっていますから、間違っても踊ってはいないと思います。
私たちがテラスに現れると、再び観衆が沸く。
屋内ステージと比較してテラス側の観衆は本当に上位貴族や諸外国の来賓たちで埋められています。
従って、イセリナと踊るといったような真似が許されるはずもありません。
壁際にいる王子殿下たちの元へと私たちは近付いていきます。
「アナ、お前は本当に破天荒な奴だな?」
ルークが呆れています。
イセリナの提案であったのだけど、弁明する気もありません。
私たちは楽しんだだけ。殿方は待っていただくしかないのだと。
「いいじゃない? 他の男性と踊ったわけではないのだから」
「どれだけイセリナが好きなんだよ?」
あら? まさかイセリナにまでヤキモチだなんて。ルークったら本当に独占欲が強いのね。
まあでも安心する。前世と変わらぬ真っ直ぐな想いを私は向けられているのですから。
「ところでルーク、私は準備運動してきたから、初っぱなから全開で行くわよ? ちゃんとついてきなさいよね?」
「俺だって今日の日のために特訓してきた。アナに恥は掻かせないつもり」
どうやらルークも緊張していたみたい。
私と同じくパートナーに恥を掻かせたくないようです。
「ところで、ドレスの感想は?」
私は薄い目をして聞く。
実をいうとルークには完成したドレスを見せていません。だからこそ、彼の感想を聞きたく思います。
「ああ、すまん! 凄く似合ってる! てか、アナは何を着ても格好いいからな!」
やっぱ褒めてないわ。
まるで響かないよ。ルークの好みは知っているけれど、格好いいじゃ納得できない。
「他には?」
ジト目をして一言。睨むような視線にルークもようやく理解したみたい。
「滅茶苦茶可愛い! 誰よりも美人! そして強い!」
まあ許してあげるか。
彼にとって強い女性は褒め言葉みたいだし。
「さあ、始まるわよ!」
気を取り直して、踊りましょう。
今こそ壁際を脱するとき。少しばかりの休憩がこれで終わります。
「アナ!」
差し出された手を取る。
不覚にも再びドキドキとしています。
隣には優しい笑みを浮かべたルーク。そして眼前には望んだままの白銀に輝くステージ。
(この人生を謳歌しよう)
アナスタシア・スカーレットの人生がようやく始まるような気がする。
一歩進むごとに高鳴る鼓動。ステージの中央に近付くにつれ増していく期待感。
きっと私は輝けるだろう。
それは観衆の視線を独り占めすることではなく、たった一人のために私は咲き乱れる。
転生前から望んでいた夢を私はこの場所で叶えられるはずよ。
ステージの中央に私たちが陣取ると、楽団が演奏を始めました。
一転して会場が静まり返る中、私たちのダンスが始まります。
右へ左へ、ステージを余すことなく。堂々と主役を演じていました。
「アナ!」
「ルーク!!」
歓声も視線も気にならない。
今、私は彼だけを見ている。
叶えてはならない恋。切り捨てるべき愛だったはず。
けれども、私は手に入れた。あらゆる試行錯誤の上に、真実の愛を手にしている。
いつまでも踊り続けたい。彼と共に歩みたい。
本気の感情に気付いた私はもう誰にも止められない……。
瞬く間に二曲が終わり、楽曲は再びバラードへと。
直ぐさま私は抱き寄せられている。
もちろん、私の心臓は爆発しそうになっていました。髪にかかる吐息でさえ、愛おしく思う。
全ての愛を受け入れ、私はその愛を彼に返すだけよ。
受け取った量を二倍にした私の愛で溺れさせるために。
「アナ、キスして良いか?」
不意にルークが言った。
密着しすぎて興奮しちゃったのかしら?
まあでも、素敵な時間を過ごせているし、ムードも最高潮だからね。
「駄目って言ったら?」
「駄目でもしたい。君は俺のものだ」
しょうがないな。だったら、ダンスのクライマックスで私は目を閉じよう。
私は返事をしませんでしたが、ダンスは続けます。ルークも分かっているのか、そのときを待っているみたい。
(少しばかり緊張しちゃうな……)
公然と口づけを交わすなんて。
楽曲も最高潮になり、私とルークも曲に合わせて華麗に決める。
最後に抱き寄せられたとき、私は目を瞑るの。
きっと、それだけで伝わるだろうと。
静かに重なる唇。触れ合う肌。
抱かれた肩に温もりを感じる。
(ああ、本当そうだ……)
長い口づけ。世界の時が止まったかのようにも思えていました。
私はようやく知ったのよ。アマンダが文句を言った意味を。
この愛こそ本物だ――――。
向けられる熱量に存在の全てが溶けてしまいそう。
受け止める私の身にもなって欲しいわ。
もう既に心は溶けてしまっているもの。
ありがとう、ルーク。
私は転生して初めて本当の愛を知れた。
前世のままなら、この感情に気付くことはなかったことでしょう。
(アマンダにも感謝を……)
双方向に響き合う心の声。
こんなにも気持ちのいいものだったのね。
反発していた私はもういない。
全て貴方が言った通りよ。だから私は認めるしかないみたいね。
私はこの愛に溺れているから……。
会場は割れんばかりの拍手で私たちを称えてくれました。
「割と受け入れられましたわね?」
「名残惜しいけど、テラスへ行きましょうか」
王子殿下がお待ちかねです。
ぶっちゃけ婚約者でなかったのなら不敬罪ですよね。
夜会のスタート時に二人の王子殿下が壁際だなんてことは……。
「誰かと踊ってたりして……」
「そんなことするのでしたら、婚約破棄ですわ!」
イセリナはつえーな。
まあ最初のダンスパートナーは本命と相場が決まっていますから、間違っても踊ってはいないと思います。
私たちがテラスに現れると、再び観衆が沸く。
屋内ステージと比較してテラス側の観衆は本当に上位貴族や諸外国の来賓たちで埋められています。
従って、イセリナと踊るといったような真似が許されるはずもありません。
壁際にいる王子殿下たちの元へと私たちは近付いていきます。
「アナ、お前は本当に破天荒な奴だな?」
ルークが呆れています。
イセリナの提案であったのだけど、弁明する気もありません。
私たちは楽しんだだけ。殿方は待っていただくしかないのだと。
「いいじゃない? 他の男性と踊ったわけではないのだから」
「どれだけイセリナが好きなんだよ?」
あら? まさかイセリナにまでヤキモチだなんて。ルークったら本当に独占欲が強いのね。
まあでも安心する。前世と変わらぬ真っ直ぐな想いを私は向けられているのですから。
「ところでルーク、私は準備運動してきたから、初っぱなから全開で行くわよ? ちゃんとついてきなさいよね?」
「俺だって今日の日のために特訓してきた。アナに恥は掻かせないつもり」
どうやらルークも緊張していたみたい。
私と同じくパートナーに恥を掻かせたくないようです。
「ところで、ドレスの感想は?」
私は薄い目をして聞く。
実をいうとルークには完成したドレスを見せていません。だからこそ、彼の感想を聞きたく思います。
「ああ、すまん! 凄く似合ってる! てか、アナは何を着ても格好いいからな!」
やっぱ褒めてないわ。
まるで響かないよ。ルークの好みは知っているけれど、格好いいじゃ納得できない。
「他には?」
ジト目をして一言。睨むような視線にルークもようやく理解したみたい。
「滅茶苦茶可愛い! 誰よりも美人! そして強い!」
まあ許してあげるか。
彼にとって強い女性は褒め言葉みたいだし。
「さあ、始まるわよ!」
気を取り直して、踊りましょう。
今こそ壁際を脱するとき。少しばかりの休憩がこれで終わります。
「アナ!」
差し出された手を取る。
不覚にも再びドキドキとしています。
隣には優しい笑みを浮かべたルーク。そして眼前には望んだままの白銀に輝くステージ。
(この人生を謳歌しよう)
アナスタシア・スカーレットの人生がようやく始まるような気がする。
一歩進むごとに高鳴る鼓動。ステージの中央に近付くにつれ増していく期待感。
きっと私は輝けるだろう。
それは観衆の視線を独り占めすることではなく、たった一人のために私は咲き乱れる。
転生前から望んでいた夢を私はこの場所で叶えられるはずよ。
ステージの中央に私たちが陣取ると、楽団が演奏を始めました。
一転して会場が静まり返る中、私たちのダンスが始まります。
右へ左へ、ステージを余すことなく。堂々と主役を演じていました。
「アナ!」
「ルーク!!」
歓声も視線も気にならない。
今、私は彼だけを見ている。
叶えてはならない恋。切り捨てるべき愛だったはず。
けれども、私は手に入れた。あらゆる試行錯誤の上に、真実の愛を手にしている。
いつまでも踊り続けたい。彼と共に歩みたい。
本気の感情に気付いた私はもう誰にも止められない……。
瞬く間に二曲が終わり、楽曲は再びバラードへと。
直ぐさま私は抱き寄せられている。
もちろん、私の心臓は爆発しそうになっていました。髪にかかる吐息でさえ、愛おしく思う。
全ての愛を受け入れ、私はその愛を彼に返すだけよ。
受け取った量を二倍にした私の愛で溺れさせるために。
「アナ、キスして良いか?」
不意にルークが言った。
密着しすぎて興奮しちゃったのかしら?
まあでも、素敵な時間を過ごせているし、ムードも最高潮だからね。
「駄目って言ったら?」
「駄目でもしたい。君は俺のものだ」
しょうがないな。だったら、ダンスのクライマックスで私は目を閉じよう。
私は返事をしませんでしたが、ダンスは続けます。ルークも分かっているのか、そのときを待っているみたい。
(少しばかり緊張しちゃうな……)
公然と口づけを交わすなんて。
楽曲も最高潮になり、私とルークも曲に合わせて華麗に決める。
最後に抱き寄せられたとき、私は目を瞑るの。
きっと、それだけで伝わるだろうと。
静かに重なる唇。触れ合う肌。
抱かれた肩に温もりを感じる。
(ああ、本当そうだ……)
長い口づけ。世界の時が止まったかのようにも思えていました。
私はようやく知ったのよ。アマンダが文句を言った意味を。
この愛こそ本物だ――――。
向けられる熱量に存在の全てが溶けてしまいそう。
受け止める私の身にもなって欲しいわ。
もう既に心は溶けてしまっているもの。
ありがとう、ルーク。
私は転生して初めて本当の愛を知れた。
前世のままなら、この感情に気付くことはなかったことでしょう。
(アマンダにも感謝を……)
双方向に響き合う心の声。
こんなにも気持ちのいいものだったのね。
反発していた私はもういない。
全て貴方が言った通りよ。だから私は認めるしかないみたいね。
私はこの愛に溺れているから……。
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