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最終章 世界に光を
この愛に生きる
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黒竜の襲来から一週間が経過しました。
延期になっていた議事会がようやく開かれることが決定しています。
以前の議題に加えて、私の陞爵議案も提出されることになるみたいですね。
「とりま、アマンダに報告しておくか……」
この一週間は各地で引っ張りだこになっていました。
黒竜を討伐した話は王国中だけでなく諸外国にまで届き、私は時の人となっています。
流石に外国からの招待まで引き受けられませんので、国内を飛びまわるだけで時間が過ぎていました。
王都ルナレイクの大聖堂。私が入っていくと、騒然とした雰囲気に。
「アナスタシア様!」
一般の礼拝者たちは遠巻きに見ているだけでしたが、教会の関係者はその限りではないようです。
「ベリンガム大司教様……」
「ようこそお越しくださいました。生憎と教皇様は留守なのですが……」
「ああいえ、お祈りに来ただけですわ」
ベリンガム大司教は以前にあった査問会の結果について感謝を述べています。
私としては罰したい者を裁いただけだったのですけれど。
「此度のご活躍をお伺いしました。アウローラ聖教会では貴方様を火竜の聖女として正式に認めるよう動いております」
「あら? 聖女が二人になりますが、よろしいので?」
「もちろんです! 以前から話があったのですが、アナスタシア様はラマティック正教会に所属されていた過去がございますし……」
ま、黒竜討伐の映像が王国の各地で映写されたからね。無視できなくなったのでしょう。
火竜の聖女アンジェラ・ローズマリーの伝説と同じく、巨悪を討った私を。
「お祈りがございますので、私はこれで……」
長話することなく、私は愛の女神アマンダ像の前へと跪いた。
もう地位に執着する必要はないんだもの。私は私ができることで誇れる成果を手にしたのだから。
祈り初めて直ぐ、脳裏が輝き出す。
イセリナ時代にはまるで応えてくれなかったというのに、現金なものだわ。
『千紗、しばらくぶり……』
『ええ、そうね。間違いないと思うけど、私は世界を救ったのよね?』
確認事項はそれだけよ。
何しろ跡形もなく黒竜は消え去ったのです。本当に討伐できたのかどうかを私は知りたかった。
『黒竜は完全に消失しました。おかげさまで魔王の種は根絶できましたよ』
『よく言うわ。適切な指示くらいするでしょ? 主神様なら……』
『必要以上の介入はしない主義なのです。それに千紗は自力で倒せたじゃない?』
本当に食えない女神だわ。
私じゃなかったらグーパンチを浴びせているところよ。
『それで千紗、議事会には出席しなくていいの? 貴方の見せ場でしょうに……』
ここでアマンダは話題を転換した。
今頃、王城では議事会が開かれています。
私は欠席の旨を提出しておりまして、こうして大聖堂で祈りを捧げているってわけ。
『今さらでしょ? 私が出席したとして威圧するだけだわ。何しろ全員があの映像を見ているのだし』
『王国を牛耳るチャンスじゃないの?』
『馬鹿言わないで。私は慎ましく生きるのよ。議事会にはルークとセシルが出席しているし、イセリナも欠席。私だけ出ていくのは何か違うのよ』
欲がないわねぇとアマンダ。
確かに議事会に出席したのなら、一票でも多く賛成が得られる。
だけど、そうじゃないの。私は全員に祝福して欲しい。
私が睨みを利かした中での投票結果に意味などありません。
『それで千紗、またお姫様になれましたね?』
なぜか雑談が続く。
アマンダとしては世界の時間が進むだけで良かったはずなのに。
どう答えたらいいの? 私の夢を知っているアマンダは何を聞きたがっているの?
『ありがとう……』
思うところは色々とあるのだけど、今は感謝だけを。
私をこの世界に喚んでくれたこと。ルークと引き合わせてくれたことに。
『いえいえ、ワタクシは愛の女神ですから。育まれていく愛を見るのは至高の喜び。今世で貴方はどのように喘ぐのか見物です』
『喘がないよ。あんたも言ってたじゃない……』
攻略じゃない愛の形。
私はようやくそれを手にしようとしている。
『この先は溺れていくだけよ――』
私の返答にアマンダは笑みを大きくした。
きっと満足いただけることでしょう。
『それだけ? 他にもあるでしょう?』
『るっさいわね。ちゃんとルークを溺れさせてあげるわ。彼が愛の海で溺死したら、ちゃんとリセットしてよね?』
ここは冗談で返すだけだ。流石に気恥ずかしく思うし。
『それは世界の管轄なのでなんとも……』
『本当ぉ? 私はその話を信じていないのだけど……』
アマンダは一癖も二癖もある女神です。きっと世界だなんて概念は存在しない。
保存を実行している彼女が時間を巻き戻しているだけだわ。
『信じるも信じないも結構。言っておきますが、これからもセーブはしますから。どうかワタクシを楽しませてください』
あれ? この駄女神はこの先もリセットするつもりなのかしら?
だってセーブポイントを作成するってことは巻き戻される前提だもの。
『どうして? 私にまだ使命があるっての?』
『そんなことも分からないの? 貴方にはまだ使徒としてやるべき責務がございます』
マジですか……。流石にもう何もないと考えていたのに。
アマンダは眉根を寄せる私に告げました。私に残る責務とやらを。
『ワタクシの情欲を満たしなさい』
えっと、それ本気で言ってんの?
いや、知っているけど溺愛が足りないとかでリセットするつもり?
『千紗、もしも貴方が不甲斐ない愛の形を見せるのなら、容赦なく巻き戻すのでそのつもりで……』
『あんたねぇ……。少しは自重しなさいっての』
『貴方にとっても良いことでしょ? 何しろ寿命を全うするまで死なないのですから。何だったら貴方の王子様が不足の事態に陥った場合もリセットしてあげましょう』
あーあ、皆まで言っちゃったよ、この人……。
やはり世界という概念は存在しないのね。
とはいえ、有り難い話だわ。私やルークの身に何か起きたのなら、アマンダが時間を巻き戻してくれる。
人生の最後まで私はこの愛を満喫できるのですから。
『素直じゃないね? ま、有り難く受け取っておくわ。クリア後のボーナスステージは楽しみの一つだからね。きっと私はあんたの期待に応えちゃうわ……』
癪だけど、私は間違いなくアマンダの欲求を満たしてしまうはず。
愛に気付いた私は自制していないと、暴走しちゃうかもしれない。
『ああ、そうそう。ミカエルに下級天使の彼女ができたのよ』
ここで妙な話が告げられています。
それは魅惑のエンドコンテンツ。私が一目惚れをしたミカエル様に彼女ができたのだとか。
『そうなの? お幸せにと伝えてくれる?』
『あら、素っ気ないのね? 泣き喚くのかと思ったけど、面白くない反応だわ』
ったく、この駄女神は……。
もう、それに魅力は感じない。
エンドコンテンツはこれから始まるんだもの。
アナスタシア・スカーレットのご褒美は死後の世界に存在しないのよ。
『私はこの愛に全力で挑むわ。燃えかすすら残さないつもりよ?』
アマンダは頷いている。きっと正解なんでしょう。
死んだ後のことなんか考える時間も惜しい。
私はただルークと共に歩んでいくだけだ。
『じゃあね、もう祈ることもないでしょうけれど……』
『それで構いません。素敵な人生を……』
意外とあっさりしてる。
ようやくと世界を救った実感が湧いてきました。
女神のお墨付きならば、悩む必要などありません。
主神に誓ったまま、私はこの愛に生きるだけなのですから。
延期になっていた議事会がようやく開かれることが決定しています。
以前の議題に加えて、私の陞爵議案も提出されることになるみたいですね。
「とりま、アマンダに報告しておくか……」
この一週間は各地で引っ張りだこになっていました。
黒竜を討伐した話は王国中だけでなく諸外国にまで届き、私は時の人となっています。
流石に外国からの招待まで引き受けられませんので、国内を飛びまわるだけで時間が過ぎていました。
王都ルナレイクの大聖堂。私が入っていくと、騒然とした雰囲気に。
「アナスタシア様!」
一般の礼拝者たちは遠巻きに見ているだけでしたが、教会の関係者はその限りではないようです。
「ベリンガム大司教様……」
「ようこそお越しくださいました。生憎と教皇様は留守なのですが……」
「ああいえ、お祈りに来ただけですわ」
ベリンガム大司教は以前にあった査問会の結果について感謝を述べています。
私としては罰したい者を裁いただけだったのですけれど。
「此度のご活躍をお伺いしました。アウローラ聖教会では貴方様を火竜の聖女として正式に認めるよう動いております」
「あら? 聖女が二人になりますが、よろしいので?」
「もちろんです! 以前から話があったのですが、アナスタシア様はラマティック正教会に所属されていた過去がございますし……」
ま、黒竜討伐の映像が王国の各地で映写されたからね。無視できなくなったのでしょう。
火竜の聖女アンジェラ・ローズマリーの伝説と同じく、巨悪を討った私を。
「お祈りがございますので、私はこれで……」
長話することなく、私は愛の女神アマンダ像の前へと跪いた。
もう地位に執着する必要はないんだもの。私は私ができることで誇れる成果を手にしたのだから。
祈り初めて直ぐ、脳裏が輝き出す。
イセリナ時代にはまるで応えてくれなかったというのに、現金なものだわ。
『千紗、しばらくぶり……』
『ええ、そうね。間違いないと思うけど、私は世界を救ったのよね?』
確認事項はそれだけよ。
何しろ跡形もなく黒竜は消え去ったのです。本当に討伐できたのかどうかを私は知りたかった。
『黒竜は完全に消失しました。おかげさまで魔王の種は根絶できましたよ』
『よく言うわ。適切な指示くらいするでしょ? 主神様なら……』
『必要以上の介入はしない主義なのです。それに千紗は自力で倒せたじゃない?』
本当に食えない女神だわ。
私じゃなかったらグーパンチを浴びせているところよ。
『それで千紗、議事会には出席しなくていいの? 貴方の見せ場でしょうに……』
ここでアマンダは話題を転換した。
今頃、王城では議事会が開かれています。
私は欠席の旨を提出しておりまして、こうして大聖堂で祈りを捧げているってわけ。
『今さらでしょ? 私が出席したとして威圧するだけだわ。何しろ全員があの映像を見ているのだし』
『王国を牛耳るチャンスじゃないの?』
『馬鹿言わないで。私は慎ましく生きるのよ。議事会にはルークとセシルが出席しているし、イセリナも欠席。私だけ出ていくのは何か違うのよ』
欲がないわねぇとアマンダ。
確かに議事会に出席したのなら、一票でも多く賛成が得られる。
だけど、そうじゃないの。私は全員に祝福して欲しい。
私が睨みを利かした中での投票結果に意味などありません。
『それで千紗、またお姫様になれましたね?』
なぜか雑談が続く。
アマンダとしては世界の時間が進むだけで良かったはずなのに。
どう答えたらいいの? 私の夢を知っているアマンダは何を聞きたがっているの?
『ありがとう……』
思うところは色々とあるのだけど、今は感謝だけを。
私をこの世界に喚んでくれたこと。ルークと引き合わせてくれたことに。
『いえいえ、ワタクシは愛の女神ですから。育まれていく愛を見るのは至高の喜び。今世で貴方はどのように喘ぐのか見物です』
『喘がないよ。あんたも言ってたじゃない……』
攻略じゃない愛の形。
私はようやくそれを手にしようとしている。
『この先は溺れていくだけよ――』
私の返答にアマンダは笑みを大きくした。
きっと満足いただけることでしょう。
『それだけ? 他にもあるでしょう?』
『るっさいわね。ちゃんとルークを溺れさせてあげるわ。彼が愛の海で溺死したら、ちゃんとリセットしてよね?』
ここは冗談で返すだけだ。流石に気恥ずかしく思うし。
『それは世界の管轄なのでなんとも……』
『本当ぉ? 私はその話を信じていないのだけど……』
アマンダは一癖も二癖もある女神です。きっと世界だなんて概念は存在しない。
保存を実行している彼女が時間を巻き戻しているだけだわ。
『信じるも信じないも結構。言っておきますが、これからもセーブはしますから。どうかワタクシを楽しませてください』
あれ? この駄女神はこの先もリセットするつもりなのかしら?
だってセーブポイントを作成するってことは巻き戻される前提だもの。
『どうして? 私にまだ使命があるっての?』
『そんなことも分からないの? 貴方にはまだ使徒としてやるべき責務がございます』
マジですか……。流石にもう何もないと考えていたのに。
アマンダは眉根を寄せる私に告げました。私に残る責務とやらを。
『ワタクシの情欲を満たしなさい』
えっと、それ本気で言ってんの?
いや、知っているけど溺愛が足りないとかでリセットするつもり?
『千紗、もしも貴方が不甲斐ない愛の形を見せるのなら、容赦なく巻き戻すのでそのつもりで……』
『あんたねぇ……。少しは自重しなさいっての』
『貴方にとっても良いことでしょ? 何しろ寿命を全うするまで死なないのですから。何だったら貴方の王子様が不足の事態に陥った場合もリセットしてあげましょう』
あーあ、皆まで言っちゃったよ、この人……。
やはり世界という概念は存在しないのね。
とはいえ、有り難い話だわ。私やルークの身に何か起きたのなら、アマンダが時間を巻き戻してくれる。
人生の最後まで私はこの愛を満喫できるのですから。
『素直じゃないね? ま、有り難く受け取っておくわ。クリア後のボーナスステージは楽しみの一つだからね。きっと私はあんたの期待に応えちゃうわ……』
癪だけど、私は間違いなくアマンダの欲求を満たしてしまうはず。
愛に気付いた私は自制していないと、暴走しちゃうかもしれない。
『ああ、そうそう。ミカエルに下級天使の彼女ができたのよ』
ここで妙な話が告げられています。
それは魅惑のエンドコンテンツ。私が一目惚れをしたミカエル様に彼女ができたのだとか。
『そうなの? お幸せにと伝えてくれる?』
『あら、素っ気ないのね? 泣き喚くのかと思ったけど、面白くない反応だわ』
ったく、この駄女神は……。
もう、それに魅力は感じない。
エンドコンテンツはこれから始まるんだもの。
アナスタシア・スカーレットのご褒美は死後の世界に存在しないのよ。
『私はこの愛に全力で挑むわ。燃えかすすら残さないつもりよ?』
アマンダは頷いている。きっと正解なんでしょう。
死んだ後のことなんか考える時間も惜しい。
私はただルークと共に歩んでいくだけだ。
『じゃあね、もう祈ることもないでしょうけれど……』
『それで構いません。素敵な人生を……』
意外とあっさりしてる。
ようやくと世界を救った実感が湧いてきました。
女神のお墨付きならば、悩む必要などありません。
主神に誓ったまま、私はこの愛に生きるだけなのですから。
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