青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

文字の大きさ
上 下
366 / 377
最終章 世界に光を

多角魔法陣

しおりを挟む
 何度聞いても私は笑みを浮かべてしまう。

 告白って良いものだわ。鬱屈とした現状にも光が満ちている。

 思えば前世の私はこの愛を受け流していたのね。悔やんでも悔やみきれない人生を終えたんだ。

 さりとて、この人生はこれからも続く。アナスタシア・スカーレットは必ずや、ルークの愛を享受し、彩りのある人生を送るわ。

 元よりハッピーエンディングしか私は望んでいないのだから。

「よく見てなさいよ。格好いいところ見せてあげるわ!」

 キスのあと、私はルークに告げた。

 ラブロマンスのあとだとは思えぬ猛々しい台詞を。

「お、おう……」

 色っぽい返答じゃなくてごめんなさい。

 だけど、私は格好よくありたいの。貴方がもっと私を愛せるように。強く気高い女を演じ続けるためにも。

「飛べ、ペガサス!!」

 完全にリフレッシュできた。

 私は戦うんだ。古代魔法ロナ・メテオ・バーストを再構築し、行き詰まったこの戦闘に光明を見出してみせる。

「術式展開……」

 先ほど思考したままに術式を展開していく。

 二枚を一枚に集約し、十二芒星陣という複雑な術式にトライしています。

「落ち着いて構築すれば良い……」

 黒竜の周囲を旋回しつつ、私は術式を脳裏に描いた。

 魔力変換から圧縮、そして物質変換に属性を加えていく。

 とても難解な作業でしたけれど、全速力で黒竜の裏を取りながら私は魔法陣を描き続けています。

「最後は放出……」

 眼前には六枚の十二芒星陣が現れています。

 魔力を注ぎ込んで消失しなければ機能しているはずよ。

「いけぇぇえええっっ!!」

 刹那に現れたのは炎を帯びた巨大な隕石です。

 しかし、明確に前回とは異なる。私が知っている術式よりも確実に大きな隕石が出現していました。

「地形が変わっても知らないから!」

 小さく微笑む私。ようやくとこの世界線に勝機を見出しています。

 ルークは見ているかな? 私が唱えたこの超大魔法を。

 もしも格好いいと思ってもらえたなら、私はそれで本望です。

「ロナ・メテオ・バァァストォォオオオ!!」

 撃ち放たれる超大隕石。前々世で見た映画みたい。大地を割ってしまうほどの隕石が黒竜目がけて落ちていく。

 これまでとは違う絶対的な衝撃。魔法陣にて守られている私にもその威力が伝わっていました。

 耳をつんざく轟音と巻き上がる大量の粉塵。

 確信せざるを得ない。私はきっと本来の力を引き出せたのだと。

「やった……」

 黒竜は右前脚を失っている。

 これまで少しのダメージも与えた様子はなかったのに。

 さりとて、それは黒竜の実体を痛めつけただけ。本体は闇の次元にいるのだと聞いています。

 だけどね、そんなことは分かってるわ。今は試し撃ちしているだけだもの。

「十二芒星陣に纏めただけでこの威力ってことは……」

 何だか欲が出てきました。

 もし仮に二十四芒星陣なる多角魔法陣が形成できるのならと。

 単純に今以上の威力を発揮するはず。

 この世界に二十四芒星陣なんてものは存在しませんけれど、術式が機能するのなら可能ではないかと。

「やってみよう。散々死に戻らせてくれたお礼をしなきゃね……」

 不適な笑みを浮かべる。私は黒竜に仕返ししたくなっていました。

 だからこそ、言い放つ。今以上の魔法をお見舞いしてやるのだと。

「この世に存在した痕跡すら消してあげるわ!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

処理中です...