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最終章 世界に光を

黒竜の攻撃

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 迫る黒竜。山ほどもある図体は少しずつ西へと進んでいます。

「がぁぁあああ!!」

 え? 何もしなくて良いと言ったのに!?

 マリィの火球による先制攻撃にて戦いが始まりました。

 どうやらマリィは何も私の話を聞いていなかったみたいです。

「ま、どうせ中間はないのだし。死ぬか生きるかよ!!」

 私も腹を括って詠唱を始める。

 まずはアンジェラが黒竜の動きを止めたように、ロナ・メテオ・バーストを撃ち放つ。

「ロナ・メテオ・バースト!!」

 巨大な隕石は此度も強大な威力を発揮しています。

 しかしながら、超巨大な黒竜は少しばかり立ち止まっただけで、効いている素振りすらありません。

「いやいや、これ一撃で仕留められるの!?」

 その刹那、私の視界が暗黒に染まる。

 どうやら黒竜が何かを吐き出したみたいです。

(終わった……)

 アンジェラも繰り返し挑んだというのです。

 黒竜が何も攻撃してこないはずはありませんね。視界が失われたまま、私は意識を失っています。

 どうやら死に戻り。一撃ですら耐えられないプレイを強いられているのだと理解できました。

 まあしょうがない。ラスボスは得てして理不尽な攻撃をするのですから……。


「ずっと好きだった。俺は初めて君を見た瞬間から君のことが好きだった。君は理想の女性だった。だから俺から離れていったとき、もの凄く落ち込んだ。まるで陽の光が当たらない暗闇に閉じ込められたかのように……」

 意識を戻した私は聞いたばかりの台詞を再び耳にしています。

 これは私の思惑通り。してやったりの展開です。

 直前でのセーブを望んだ私に嫌だと返していたアマンダでしたが、熱々のキスを見せられてはここで保存するしかなかったみたいね。

 記憶の通りに遣り取りをして、私は口づけを交わす。

 しかしながら、次の戦法を考えてもいました。

 思いのほかスピードのある攻撃。距離は充分にあったはず。

 何かを吐くとか事前に聞かされていないのには腹が立ちますけど、まあ竜種に入るのなら何かを撃ち出してくるのは当然かもね。

(旋回しながら攻撃してみるか……)

 常に黒竜の頭の向きを意識する。

 私はペガサスに乗っているのだし、上空を旋回しながら飛べば良い。

(よし、その方向で試してみよう)

 此度もまた死に戻り前提です。欲張ったとして結果は変わりませんし。


 再び私はルークたちに別れを告げ、空へと舞う。

 向かう先は明確に死地であるのですけれど、不思議とやる気に満ちていました。

「マリィも暗黒に気を付けてね?」

「があああ!」

 威勢の良い返事には笑ってしまいます。

 死なば諸共のスーパーなんちゃらシスターズよ。今回は討てる限りにファイアーボールを喰らわせてあげなさい。

「いけぇぇっ!」

 私がロナ・メテオ・バーストを討つと、マリィもまた火球を吐く。

 効いているのか不明な攻撃を仕掛けていました。

 旋回するように飛ぶと、黒竜が吐く暗黒の大きさが判明しています。

 直径三十メートルくらいでしょうか。黒竜は黒い炎のようなものを吐き出している。

「あれに当たれば一撃だよね……」

 口から吐き出しているので、正面に入らなければ避けられる。

 あとは最終的な攻撃が問題なんだけど、ロナ・メテオ・バーストは少しも効果を発揮していないように思えます。

「どうしてなの? アンジェラの魔法威力が足りないだけかと考えていたけど……」

 本を正せばロナ・メテオ・バーストは天界がアンジェラに授けた術式です。

 黒竜を倒す手段としてアマンダが構築したものであるはず。

「ひょっとして私はまだこの術式の力を引き出せていないの?」

 そう思考した直後、視界は失われていました。

 全身に走る悪寒のような感覚は明確に攻撃を受けたのだと分かる。

 少しの隙すらも与えられない。光の速さで飛ぶような闇に呑み込まれている。

(ちっくしょ……)

 ブラックアウトしたあとも、悪寒が残っている。

 恐らく魂が魔王因子に汚染されたのだと思われます。

 時間を巻き戻すことで呪印はなくなるのですが、精神にトラウマが蓄積していくような気がしてしまう。


 まあしかし、まだ始まったばかりよ。

 こう見えて私は豪胆だと言われているの。少しくらいの精神攻撃で勝ったような気にならないでよね。

 次こそは光明を見出してみせるわ!
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