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最終章 世界に光を
廃プレイヤー
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長い時間をかけて愛を確かめ合った。
私はルークに微笑んで、決意と感謝を述べる。
「黒竜は魔王を誕生させる災厄。私は世界を救って、幸せを手に入れるの」
もう失いたくはない。
許されぬ愛に気付いてから、前世をどれだけ悔やんだのか分かりません。
しかし、あの時間を堪能していたのなら、此度の愛は存在しないのかも。
「待っていてね、ルーク……」
先に謝っておくわ。
この人生で最大の試練。恐らく何度も貴方は愛を囁き、私を抱きしめることになる。
私が黒竜を討つ時までこの時間軸は繰り返されるのだから。
ズシンズシンと地鳴りが聞こえている。
ポゼウムを襲ったという黒竜が真っ直ぐにリーフメルへと向かっているのでしょう。
まだ姿は見えませんが、黒竜は確実にリーフメルへと近付いているはず。
「さてと、行くわ」
「アナスタシア様、我々にできることはないのでしょうか?」
モルディン大臣の話には首を振る。
私だって一人で戦うのは怖いけれど、貴方たちにできることなど一つも存在しないのよ。
「祈りを。愛の女神アマンダに祈りを捧げてくださいな」
ゴンドラと結ぶ鞍をペガサスから外し、私はそれに跨がっています。
「あ、あれが黒竜……ですか……?」
ようやくと巨大な影が見えてきました。
まるで死に神が纏う暗雲のようにも見える。
地平線の彼方に現れた黒竜を見ると、流石にモルディン大臣も協力するなんて言葉を絞り出せないみたいね。
「世界に終焉を告げる者の使い。あれを倒さねば魔王が顕現します。プロメティア世界は滅びの直前まで来ているのです」
言って私は飛び立つ。無駄話している場合ではないと。
一度きりの戦闘で勝てるはずもありません。これよりこの時間軸は永遠にも思える時間を繰り返すのですから。
空に上がると雲行きが怪しくなってきました。雨が降るのかもしれない。
隣を飛ぶマリィも、雲の流れを気にしている感じ。
「マリィ、貴方は何もしなくて良いわ」
「がぁぁ?」
本当に分かってるのかな。
アンジェラは二頭の幼竜をおびき寄せる餌としていましたが、此度はリーフメルへと向かっていますのでマリィの出番はなさそうです。
「ねぇ、マリィ。貴方って私が火竜の聖女だと分かっているのよね?」
「がぁぁっ」
問いかけようと返事があるだけ。
せめて言葉を操れたなら意思疎通ができるのですけど、生憎とマリィは返事の内容まで口にできません。
「ま、恐らくマリィは火竜の聖女の面影を私に投影してる。産まれた瞬間に魂の記憶と重なって見えたはず。でもなければ、十二歳の少女に付き従うはずもないわね」
私は一人じゃない。マリィが側にいる。
それだけで心を強く持てそうな気がしていました。
みるみるうちに迫ってくる巨大な竜の影。まだ距離があるというのに、想像を絶する大きさでした。
「これはヤバいわ。トイレ済ませていないのに……」
不意に頬を雨が濡らした。
恐怖まで洗い流してくれたら助かるね。あとお漏らししちゃっても分からないのは有り難いかも。
「さあ、やってやるわよ!」
気持ちを切り替える。
リセットは織り込み済み。私は絶対に諦めない。
黒竜を倒したその先にしかハッピーエンドがないのだから、諦めてしまったアンジェラとは違う。
思えばアンジェラは既に幸せを手にしていました。だからこそ、最後の最後まで足掻けなかったのよ。
「ヌルいプレイしてたのね。私のご先祖様は……」
何だか笑っちゃうわ。アルティメットモードを選んだのなら、難易度に応じた時間が必要なのよ。
百回で駄目なら千回。一万回だってリスタートしてやる気概がないとね。
「廃プレイヤーを舐めんじゃないわ!」
やってやろうじゃん。リセット再プレイはゲーマーの基本なのよ。
フラグを全回収するまで、私は戦うと決めた。
黒竜の精神力が尽きるまで、付き合ってあげるわ。
私は誰にも負けないのよ。
選ばれしBlueRoseの廃プレイヤーなのだから。
私はルークに微笑んで、決意と感謝を述べる。
「黒竜は魔王を誕生させる災厄。私は世界を救って、幸せを手に入れるの」
もう失いたくはない。
許されぬ愛に気付いてから、前世をどれだけ悔やんだのか分かりません。
しかし、あの時間を堪能していたのなら、此度の愛は存在しないのかも。
「待っていてね、ルーク……」
先に謝っておくわ。
この人生で最大の試練。恐らく何度も貴方は愛を囁き、私を抱きしめることになる。
私が黒竜を討つ時までこの時間軸は繰り返されるのだから。
ズシンズシンと地鳴りが聞こえている。
ポゼウムを襲ったという黒竜が真っ直ぐにリーフメルへと向かっているのでしょう。
まだ姿は見えませんが、黒竜は確実にリーフメルへと近付いているはず。
「さてと、行くわ」
「アナスタシア様、我々にできることはないのでしょうか?」
モルディン大臣の話には首を振る。
私だって一人で戦うのは怖いけれど、貴方たちにできることなど一つも存在しないのよ。
「祈りを。愛の女神アマンダに祈りを捧げてくださいな」
ゴンドラと結ぶ鞍をペガサスから外し、私はそれに跨がっています。
「あ、あれが黒竜……ですか……?」
ようやくと巨大な影が見えてきました。
まるで死に神が纏う暗雲のようにも見える。
地平線の彼方に現れた黒竜を見ると、流石にモルディン大臣も協力するなんて言葉を絞り出せないみたいね。
「世界に終焉を告げる者の使い。あれを倒さねば魔王が顕現します。プロメティア世界は滅びの直前まで来ているのです」
言って私は飛び立つ。無駄話している場合ではないと。
一度きりの戦闘で勝てるはずもありません。これよりこの時間軸は永遠にも思える時間を繰り返すのですから。
空に上がると雲行きが怪しくなってきました。雨が降るのかもしれない。
隣を飛ぶマリィも、雲の流れを気にしている感じ。
「マリィ、貴方は何もしなくて良いわ」
「がぁぁ?」
本当に分かってるのかな。
アンジェラは二頭の幼竜をおびき寄せる餌としていましたが、此度はリーフメルへと向かっていますのでマリィの出番はなさそうです。
「ねぇ、マリィ。貴方って私が火竜の聖女だと分かっているのよね?」
「がぁぁっ」
問いかけようと返事があるだけ。
せめて言葉を操れたなら意思疎通ができるのですけど、生憎とマリィは返事の内容まで口にできません。
「ま、恐らくマリィは火竜の聖女の面影を私に投影してる。産まれた瞬間に魂の記憶と重なって見えたはず。でもなければ、十二歳の少女に付き従うはずもないわね」
私は一人じゃない。マリィが側にいる。
それだけで心を強く持てそうな気がしていました。
みるみるうちに迫ってくる巨大な竜の影。まだ距離があるというのに、想像を絶する大きさでした。
「これはヤバいわ。トイレ済ませていないのに……」
不意に頬を雨が濡らした。
恐怖まで洗い流してくれたら助かるね。あとお漏らししちゃっても分からないのは有り難いかも。
「さあ、やってやるわよ!」
気持ちを切り替える。
リセットは織り込み済み。私は絶対に諦めない。
黒竜を倒したその先にしかハッピーエンドがないのだから、諦めてしまったアンジェラとは違う。
思えばアンジェラは既に幸せを手にしていました。だからこそ、最後の最後まで足掻けなかったのよ。
「ヌルいプレイしてたのね。私のご先祖様は……」
何だか笑っちゃうわ。アルティメットモードを選んだのなら、難易度に応じた時間が必要なのよ。
百回で駄目なら千回。一万回だってリスタートしてやる気概がないとね。
「廃プレイヤーを舐めんじゃないわ!」
やってやろうじゃん。リセット再プレイはゲーマーの基本なのよ。
フラグを全回収するまで、私は戦うと決めた。
黒竜の精神力が尽きるまで、付き合ってあげるわ。
私は誰にも負けないのよ。
選ばれしBlueRoseの廃プレイヤーなのだから。
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