青き薔薇の悪役令嬢はその愛に溺れたい ~取り巻きモブとして二度目の転生を命じられたとしても~

坂森大我

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第十五章 世界と君のために

真実は……

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『千紗が愛に気付くかと思いましてね……』

 ちくしょうめ。そんなことだろうと思ったわ。

 案の定、私は愛に気付いて、とんでもなく遠回りをしてしまったのだけど。

『じゃあさ、エリカに転生できないってのは事実なの? それが疑問なのよ。あの子は双子の片割れでしょ? アナスタシアに転生できるのならエリカにも転生できそうじゃない?』

『エリカには転生できません。千紗も知っているでしょ? あの子にある呪印。一応はワタクシも神聖な存在でしてね。闇の魔王因子を持つ魂を使徒にはできないのです』

 そゆことか。エリカを動かせないという理由でも口にしないと、魔王の話をすることになるからね。

『じゃあ、エリカの死でリセットされる原因は何? どうにも不可解だと思うのだけど』

 エリカが使徒にできないという理由なら、別に彼女を守る理由は発生しない。

 けれど、私は二度の人生で二回、エリカの死でリセットされています。

『エリカが失われると、魔王が発生する。それは千紗を召喚する前に実行した結果から明らかなのです』

『嘘? 番となる以外にキーがあったの?』

『実際にはエリカの遠い祖先に王家の血が混じっている。しかし、それは限りなくゼロに近いものであり、間接的に交わったと思われるもの。エリカが持つ生命力を使用して顕現するようです。よって彼女が老衰するまでに死んだ場合は魔王が顕現してしまう。彼女が自然と生命力を失わねば、リセットされることになります』

 どうやらエリカの血は単独でも魔王因子の発現条件を満たしているらしい。

 ただ単独で発現するにはエリカの生命力を使い切る必要があったみたいね。

『エリカの魂が天へと還るとき、力を余していては駄目なのよ。彼女が生きている間は光属性の抵抗がありますので阻止できるのですが……』

『私はどのような状況でも転生したけどね?』

『それは猛々しいこと。千紗はすっかり脳筋聖女になったのね?』

 それは血筋だよ。先祖にノーキン・スカーレットとかいるんだし、不可抗力だわ。

『もう少し聞きたい。アンジェラも貴方の使徒なのでしょう?』

 これは完全な推論でしかない。とはいえ、確信があったりする。

 目を丸くするアマンダ。流石にこれは突飛すぎる話だったのかな……。

『驚いた。流石はミカエルの召喚陣に引っかかる魂ね?』

 ハズレかと思いきや、アマンダは肯定する話を始めてしまう。

『アンジェラ・ローズマリーはワタクシの使徒でした』

 ゴクリと息を呑み込む。

 やっぱ、そうか。どうにも上手く流れすぎていると違和感があったのよね。

 アンジェラの日記には失敗談が一つも書かれていないんだもの。

 加えてアンジェラが用意した封印式。ロナ・メテオ・バーストと同じく、アマンダが彼女に授けたのだと思う。

『じゃあ、彼女は世界に伝わっているような古代エルフではないのね?』

 日記を読む限り、一度もエルフだなんて台詞はでてこなかった。

 きっとアンジェラは人族だったはずよ。

 少しばかり返答に時間を使ったアマンダでしたが、小さく答えています。


 ご名答――――と。
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