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第十五章 世界と君のために

女神降臨

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 セシルとの魔道通話を終わらせた私は馬車を止めてもらう。

 イセリナもついて来たがったけれど、直ぐに戻ると嘘をついて大聖堂へと走り出した。

 私が大聖堂に現れるや、信徒たちからざわめきが聞こえたけれど、今は気にしている場合じゃない。

(信じるがままに行動するだけだもの)

 愛の女神アマンダ像の前に跪き、私は祈りを捧げていく。

『アマンダ、姿を現しなさい。顕現できるのでしょ? 時間がないの。さっさと現れなさいよ』

 心の内に訴える。間違いなくアマンダは現世に干渉できるはずと。

 反呪の術式を間接的に知らせたこと。それはきっと私が毎日祈りを捧げるような使徒ではなかったからだ。

 恐らく敬虔な信徒を演じていたのなら、その折りにでも助言をくれたはずだわ。

 しばらくすると、脳裏に輝きが満ちた。

『ようやく、現れたわね? こういうことは事前に話しておきなさいよ……』

 輝きは直ぐに収まり、代わりとして女神アマンダの姿が現れている。

『こうも祈らない使徒だとは思いませんからね? まあでも滅多矢鱈と顕現できないのですよ。脳裏に現れるだけでも大量の神力を要しますのでね……』

 ま、今となってはだね。イセリナ時代に一度も顕現しなかったのだし、無理なんだって考えてたわ。

 顕現に神力というものを使うのなら、私は要件をさっさと述べるべきです。

『それでアマンダ、私は黒竜を倒せるの? 真相に行き着いちゃったのだけど……』

 知らないなら知らないで恋愛ゲームを続けただけ。

 しかし、実際に太古の巨悪が蘇ってしまったのなら、使徒である私が対処するしかないようにも思います。

『千紗、貴方はプロメティア世界の真相まで知ってしまいました。世界の意志があるようにも感じます。今もまだリセットされないところを見ると、勝機はあるのかもしれません』

 意外な話です。てっきりアマンダ自身がリセットしていると考えていたというのに。

『あんたがリセットしてんじゃないの?』

『いいえ、ワタクシはセーブしているだけ。好みの場面で……』

 呆れてしまう。

 やはりセーブポイントはアマンダの悪意なのね。

 歪んだ愛の女神だわ……。

『リセットは世界に委任しています。先々のシミュレーション結果を天界は世界に通知しておるのです。世界が判定した方が確実ですからね』

『いやいや、世界って意志があるの? 思考できるの?』

『あるような、ないような感じです。概念と呼ぶべき存在。しかし、天界が送信するシミュレーション結果から判断できるくらいには存在がありますね』

 まるで意味が分かりませんが、要は天界が医者であり、治療法を患者である世界に伝えている感じかしら?

 患者が治療方法を選んでいるような。

『ああそれ! まさしくそんな感じですね!』

『心を読むなっつーの。てことは私はまだ倒せる可能性を含んでいると……』

『そうなります。世界としても千紗に倒して欲しいのでしょうね。火竜の聖女が今度こそ討伐してくれるようにと』

 そういや、聞きたいことが他にもあったわ。

 なら、時間一杯まで聞かせてもらうわよ。

『やっぱアナスタシアはアンジェラの子孫なのね?』

『ええまあ。実をいうと、この二周目は予定通りなのです。セシルとエリカが結びつく世界線も破滅に繋がると分かっていましたから』

 そんなことじゃないかと思ってたけど。

 要はイセリナ時代がチュートリアル。本番がこのアナスタシアってわけか。

『しかし、時間を進めることが優先事項であったのは嘘ではありません。イセリナとアナスタシアが二人の王子殿下と結ばれることで、世界は延命できるのですからね』

『そうですかい。じゃあ、どうして私がセシル狙いになったってわけ?』

 恋愛経験が乏しいことをアマンダは知っていたはず。

 なのに、よく知ったルークではなく、セシルしか選んではいけないと彼女は口にしていました。

 アマンダは悪びれることなく、その理由を述べる。

『千紗が愛に気付くかと思いましてね……』
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