356 / 377
第十五章 世界と君のために
女神降臨
しおりを挟む
セシルとの魔道通話を終わらせた私は馬車を止めてもらう。
イセリナもついて来たがったけれど、直ぐに戻ると嘘をついて大聖堂へと走り出した。
私が大聖堂に現れるや、信徒たちからざわめきが聞こえたけれど、今は気にしている場合じゃない。
(信じるがままに行動するだけだもの)
愛の女神アマンダ像の前に跪き、私は祈りを捧げていく。
『アマンダ、姿を現しなさい。顕現できるのでしょ? 時間がないの。さっさと現れなさいよ』
心の内に訴える。間違いなくアマンダは現世に干渉できるはずと。
反呪の術式を間接的に知らせたこと。それはきっと私が毎日祈りを捧げるような使徒ではなかったからだ。
恐らく敬虔な信徒を演じていたのなら、その折りにでも助言をくれたはずだわ。
しばらくすると、脳裏に輝きが満ちた。
『ようやく、現れたわね? こういうことは事前に話しておきなさいよ……』
輝きは直ぐに収まり、代わりとして女神アマンダの姿が現れている。
『こうも祈らない使徒だとは思いませんからね? まあでも滅多矢鱈と顕現できないのですよ。脳裏に現れるだけでも大量の神力を要しますのでね……』
ま、今となってはだね。イセリナ時代に一度も顕現しなかったのだし、無理なんだって考えてたわ。
顕現に神力というものを使うのなら、私は要件をさっさと述べるべきです。
『それでアマンダ、私は黒竜を倒せるの? 真相に行き着いちゃったのだけど……』
知らないなら知らないで恋愛ゲームを続けただけ。
しかし、実際に太古の巨悪が蘇ってしまったのなら、使徒である私が対処するしかないようにも思います。
『千紗、貴方はプロメティア世界の真相まで知ってしまいました。世界の意志があるようにも感じます。今もまだリセットされないところを見ると、勝機はあるのかもしれません』
意外な話です。てっきりアマンダ自身がリセットしていると考えていたというのに。
『あんたがリセットしてんじゃないの?』
『いいえ、ワタクシはセーブしているだけ。好みの場面で……』
呆れてしまう。
やはりセーブポイントはアマンダの悪意なのね。
歪んだ愛の女神だわ……。
『リセットは世界に委任しています。先々のシミュレーション結果を天界は世界に通知しておるのです。世界が判定した方が確実ですからね』
『いやいや、世界って意志があるの? 思考できるの?』
『あるような、ないような感じです。概念と呼ぶべき存在。しかし、天界が送信するシミュレーション結果から判断できるくらいには存在がありますね』
まるで意味が分かりませんが、要は天界が医者であり、治療法を患者である世界に伝えている感じかしら?
患者が治療方法を選んでいるような。
『ああそれ! まさしくそんな感じですね!』
『心を読むなっつーの。てことは私はまだ倒せる可能性を含んでいると……』
『そうなります。世界としても千紗に倒して欲しいのでしょうね。火竜の聖女が今度こそ討伐してくれるようにと』
そういや、聞きたいことが他にもあったわ。
なら、時間一杯まで聞かせてもらうわよ。
『やっぱアナスタシアはアンジェラの子孫なのね?』
『ええまあ。実をいうと、この二周目は予定通りなのです。セシルとエリカが結びつく世界線も破滅に繋がると分かっていましたから』
そんなことじゃないかと思ってたけど。
要はイセリナ時代がチュートリアル。本番がこのアナスタシアってわけか。
『しかし、時間を進めることが優先事項であったのは嘘ではありません。イセリナとアナスタシアが二人の王子殿下と結ばれることで、世界は延命できるのですからね』
『そうですかい。じゃあ、どうして私がセシル狙いになったってわけ?』
恋愛経験が乏しいことをアマンダは知っていたはず。
なのに、よく知ったルークではなく、セシルしか選んではいけないと彼女は口にしていました。
アマンダは悪びれることなく、その理由を述べる。
『千紗が愛に気付くかと思いましてね……』
イセリナもついて来たがったけれど、直ぐに戻ると嘘をついて大聖堂へと走り出した。
私が大聖堂に現れるや、信徒たちからざわめきが聞こえたけれど、今は気にしている場合じゃない。
(信じるがままに行動するだけだもの)
愛の女神アマンダ像の前に跪き、私は祈りを捧げていく。
『アマンダ、姿を現しなさい。顕現できるのでしょ? 時間がないの。さっさと現れなさいよ』
心の内に訴える。間違いなくアマンダは現世に干渉できるはずと。
反呪の術式を間接的に知らせたこと。それはきっと私が毎日祈りを捧げるような使徒ではなかったからだ。
恐らく敬虔な信徒を演じていたのなら、その折りにでも助言をくれたはずだわ。
しばらくすると、脳裏に輝きが満ちた。
『ようやく、現れたわね? こういうことは事前に話しておきなさいよ……』
輝きは直ぐに収まり、代わりとして女神アマンダの姿が現れている。
『こうも祈らない使徒だとは思いませんからね? まあでも滅多矢鱈と顕現できないのですよ。脳裏に現れるだけでも大量の神力を要しますのでね……』
ま、今となってはだね。イセリナ時代に一度も顕現しなかったのだし、無理なんだって考えてたわ。
顕現に神力というものを使うのなら、私は要件をさっさと述べるべきです。
『それでアマンダ、私は黒竜を倒せるの? 真相に行き着いちゃったのだけど……』
知らないなら知らないで恋愛ゲームを続けただけ。
しかし、実際に太古の巨悪が蘇ってしまったのなら、使徒である私が対処するしかないようにも思います。
『千紗、貴方はプロメティア世界の真相まで知ってしまいました。世界の意志があるようにも感じます。今もまだリセットされないところを見ると、勝機はあるのかもしれません』
意外な話です。てっきりアマンダ自身がリセットしていると考えていたというのに。
『あんたがリセットしてんじゃないの?』
『いいえ、ワタクシはセーブしているだけ。好みの場面で……』
呆れてしまう。
やはりセーブポイントはアマンダの悪意なのね。
歪んだ愛の女神だわ……。
『リセットは世界に委任しています。先々のシミュレーション結果を天界は世界に通知しておるのです。世界が判定した方が確実ですからね』
『いやいや、世界って意志があるの? 思考できるの?』
『あるような、ないような感じです。概念と呼ぶべき存在。しかし、天界が送信するシミュレーション結果から判断できるくらいには存在がありますね』
まるで意味が分かりませんが、要は天界が医者であり、治療法を患者である世界に伝えている感じかしら?
患者が治療方法を選んでいるような。
『ああそれ! まさしくそんな感じですね!』
『心を読むなっつーの。てことは私はまだ倒せる可能性を含んでいると……』
『そうなります。世界としても千紗に倒して欲しいのでしょうね。火竜の聖女が今度こそ討伐してくれるようにと』
そういや、聞きたいことが他にもあったわ。
なら、時間一杯まで聞かせてもらうわよ。
『やっぱアナスタシアはアンジェラの子孫なのね?』
『ええまあ。実をいうと、この二周目は予定通りなのです。セシルとエリカが結びつく世界線も破滅に繋がると分かっていましたから』
そんなことじゃないかと思ってたけど。
要はイセリナ時代がチュートリアル。本番がこのアナスタシアってわけか。
『しかし、時間を進めることが優先事項であったのは嘘ではありません。イセリナとアナスタシアが二人の王子殿下と結ばれることで、世界は延命できるのですからね』
『そうですかい。じゃあ、どうして私がセシル狙いになったってわけ?』
恋愛経験が乏しいことをアマンダは知っていたはず。
なのに、よく知ったルークではなく、セシルしか選んではいけないと彼女は口にしていました。
アマンダは悪びれることなく、その理由を述べる。
『千紗が愛に気付くかと思いましてね……』
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる