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第十五章 世界と君のために
望む世界を
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「アナスタシア様……?」
「ああ、ごめん。少し考え事をしてたから……」
愛の行方は定まっています。
問題は私がその道程を歩めるのかどうか。加えてエリカをどうすべきかだけ。
「ねぇ、リック。貴方って好きな人いるの?」
どうしてか領主代行を願ったリックに私は問いを投げています。
「え? 私はアナスタシア様とか嫌ですよ?」
「ざけんな。私だって嫌よ」
無職の旅人でしかなかったところを拾ってあげたというのに。
リックには恩義ってものがないのかしらね。
「貴方に紹介したい人がいるの……」
別に押し付けるつもりはありません。
愛を理解した私は二人が自然と惹かれ合うことを期待しているだけ。
「どのような方でしょう? 私は割と面食いなのですが……」
「容姿も立場も超一級品。貴方の立ち位置では手が届かないような人よ」
眉根を寄せるリックですが、私は誰であるのかを告げる。
「光の聖女……」
皆まで言う必要などありません。
火竜の聖女が私ならば、光の聖女もまた一人しかいないのですから。
「それってアウローラ聖教会の公認聖女じゃないですか!?」
「そうよ。エリカ・ローズマリーと会ってみなさい。別に強要するつもりはないし」
エリカが誰を選ぶのか。私は選択肢を増やしてあげることにしました。
現状で彼女の夢を叶えるのは困難。だけど、エリカにも愛を手に入れてもらいたいの。
「私は領主代行でしかないのですよ!? 無理に決まってます!」
「無理? そんなはずないわ」
結論から言うと充分な可能性があります。
何しろ私は決めたのです。リックを選択肢に加えるのだと。
「貴方は北部地域を統べる大貴族になるのだから……」
呆然とするリック。まあそういう反応になるわね。
領主代行ではなく、私は彼を北部地域のお殿様にしようと口にしているんだもの。
「絶対に不可能ですから! 私などでは務まりません! って、そもそも貴族になれるはずが……」
「意外と頭が固いのね? 私はこの先にリーフメルをも手に入れるつもりよ? 北部地域を統一してみせる」
「いや、しかし……」
切れ者の印象だったけど、自分の事になるとからっきしなのね?
「私はこの先に王族となるでしょう。そうなると統治者がいなくなってしまう。だけどね、私は目的を遂げる前に動くつもりなの……」
起死回生の方法が一つだけあった。
イセリナの話によって閃いた方策を口にしています。エリカの夢を叶え、尚且つ私の夢も叶える唯一の方法について。
「リック、貴方は私の養子となりなさい」
再び声を失うリック。信じられなくても無理はない。ただし、思いつきではないの。
私は常に未来を切り開いていくだけだから。
「でも、貴方様は未成年でしょう!?」
「来年には成人を迎える。準備をしておくので、心しておきなさい」
後継者に爵位を譲るだけよ。
議会は口出し出来ない。スカーレット家の問題なのですから。
「これは命令です」
契約したままのリックは私の命令に背けない。
私は私が信じる道だけを行くの。
「はぁ……、承知しました。まさか王国でも貴族になるとは……」
「ただの貴族じゃないわ。私は王家に嫁ぐ地位を手に入れるの。貴方はそれを継ぐのだからね」
最低でも伯爵位。領地的には侯爵家となる可能性もある。
今見える未来は一つだけでした。私は何度死に戻ろうとも、絶対に成し遂げて見せるわ。
「気苦労が絶えませんね?」
「優秀な妻を娶りなさい。顔合わせでしっかりとアピールするのよ?」
溜め息ばかり零すリックですが、頷いてもいます。
私の命令に背けない彼は憂鬱な未来をも受け入れていました。
「ああ、ごめん。少し考え事をしてたから……」
愛の行方は定まっています。
問題は私がその道程を歩めるのかどうか。加えてエリカをどうすべきかだけ。
「ねぇ、リック。貴方って好きな人いるの?」
どうしてか領主代行を願ったリックに私は問いを投げています。
「え? 私はアナスタシア様とか嫌ですよ?」
「ざけんな。私だって嫌よ」
無職の旅人でしかなかったところを拾ってあげたというのに。
リックには恩義ってものがないのかしらね。
「貴方に紹介したい人がいるの……」
別に押し付けるつもりはありません。
愛を理解した私は二人が自然と惹かれ合うことを期待しているだけ。
「どのような方でしょう? 私は割と面食いなのですが……」
「容姿も立場も超一級品。貴方の立ち位置では手が届かないような人よ」
眉根を寄せるリックですが、私は誰であるのかを告げる。
「光の聖女……」
皆まで言う必要などありません。
火竜の聖女が私ならば、光の聖女もまた一人しかいないのですから。
「それってアウローラ聖教会の公認聖女じゃないですか!?」
「そうよ。エリカ・ローズマリーと会ってみなさい。別に強要するつもりはないし」
エリカが誰を選ぶのか。私は選択肢を増やしてあげることにしました。
現状で彼女の夢を叶えるのは困難。だけど、エリカにも愛を手に入れてもらいたいの。
「私は領主代行でしかないのですよ!? 無理に決まってます!」
「無理? そんなはずないわ」
結論から言うと充分な可能性があります。
何しろ私は決めたのです。リックを選択肢に加えるのだと。
「貴方は北部地域を統べる大貴族になるのだから……」
呆然とするリック。まあそういう反応になるわね。
領主代行ではなく、私は彼を北部地域のお殿様にしようと口にしているんだもの。
「絶対に不可能ですから! 私などでは務まりません! って、そもそも貴族になれるはずが……」
「意外と頭が固いのね? 私はこの先にリーフメルをも手に入れるつもりよ? 北部地域を統一してみせる」
「いや、しかし……」
切れ者の印象だったけど、自分の事になるとからっきしなのね?
「私はこの先に王族となるでしょう。そうなると統治者がいなくなってしまう。だけどね、私は目的を遂げる前に動くつもりなの……」
起死回生の方法が一つだけあった。
イセリナの話によって閃いた方策を口にしています。エリカの夢を叶え、尚且つ私の夢も叶える唯一の方法について。
「リック、貴方は私の養子となりなさい」
再び声を失うリック。信じられなくても無理はない。ただし、思いつきではないの。
私は常に未来を切り開いていくだけだから。
「でも、貴方様は未成年でしょう!?」
「来年には成人を迎える。準備をしておくので、心しておきなさい」
後継者に爵位を譲るだけよ。
議会は口出し出来ない。スカーレット家の問題なのですから。
「これは命令です」
契約したままのリックは私の命令に背けない。
私は私が信じる道だけを行くの。
「はぁ……、承知しました。まさか王国でも貴族になるとは……」
「ただの貴族じゃないわ。私は王家に嫁ぐ地位を手に入れるの。貴方はそれを継ぐのだからね」
最低でも伯爵位。領地的には侯爵家となる可能性もある。
今見える未来は一つだけでした。私は何度死に戻ろうとも、絶対に成し遂げて見せるわ。
「気苦労が絶えませんね?」
「優秀な妻を娶りなさい。顔合わせでしっかりとアピールするのよ?」
溜め息ばかり零すリックですが、頷いてもいます。
私の命令に背けない彼は憂鬱な未来をも受け入れていました。
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