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第十五章 世界と君のために
愛こそが……
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翌朝、朝食を取ったあと、リーフメルへと向かう準備をしていました。
着替えが終わった頃にリックがやって来ています。
「アナスタシア様、王都から議事会の出欠確認書が届いておりますが?」
意外な話でしたが、私は理解してもいます。
「来たわね……」
「ご存じなのですか? まぁた上位貴族を廃爵に追い込もうとしているのでしょうか?」
失礼しちゃうわね。私は敵対していない者にまで突っかからないわ。
無差別に攻撃するほど暇じゃなくてよ?
「それは査問会じゃないの。ルーク殿下の婚約破棄について話し合う場でしょう。加えてセシル殿下の婚約についても議論されるかもしれません」
「婚約破棄ですか? 急な話なのですね」
まあ北部にまで届いていないかもだけど、上位貴族にはそれとなく情報が漏れているはずよ。
「別に急な話でもないわ。私も一枚噛んでいるし……」
一枚どころか全部かもしれない。
私はここも利己的に自身の望みを優先させたのよ。
「アナスタシア様が関わっているということは、ひょっとしてルーク殿下を?」
頭の回転が速いわね。
まあでも、その通り。私が割り込んだことで、イセリナが婚約破棄されるのよ。
「その方向だけど、私は子爵だからね。立場的な問題がある。それに婚約破棄は私が口を出さずとも進んでいたわ」
「ああ、無自覚な人たらしですもんね?」
この男は……。
契約を結んでいるというのに、色々と主人の悪口を言いすぎだわ。心臓が破裂したって知らないからね。
「私は人たらしじゃないって……」
そういえば、どうしてルークは私を選んだのだろう。
アンジェラの日記によれば、呪印により惹かれ合うはず。
でも、ルークは私を選んで、セシルはイセリナを選んでいる。
(呪印の効果は……?)
前世界線ではセシルとエリカが結ばれた。
それ以前はルークとエリカが何度時間を巻き戻しても魔王を降臨させてしまうと聞いている。
だから、呪印の効果がないはずもありません。
(呪印を上回るものがあって、効果を阻害しているの?)
そうとしか思えないね。呪印の効果が抗えないほど強力なものであれば必ず結びつくはずだし。
そもそも何千年も経過する前に魔王が誕生しているはずよ。
(だとしたら……)
何となく分かった気がする。
強い力。世界を動かす力。闇の存在にも干渉できない世界を照らす力について。
(それは愛なのかもしれない)
愛こそが光ではないだろうか。闇に対抗する手段ではないのかと。
愛の女神は世界を誘っている。使徒である私でさえも。
(溺れてなどいないか……)
今になって天界での言葉が身に染みる。
確かに私は愛に溺れていなかった。求められるがままに身を任せていただけ。
向けられる愛を受け止めることなく、受け流していたのよ。
何だか笑っちゃうわ。
高宮千紗とイセリナ・イグニス・ランカスタの人生を費やしたとして、私は愛に気付かなかったなんて。
(本当にどうしようもない喪女だったわ……)
二度の転生機会を与えられて、ようやく理解できた。
何よりも手に入れたい愛というものを。
(分かったわよ、愛の女神アマンダ……)
この人生では期待に応えてあげる。
私の愛がどれほどのものか見てなさい。
息することすら叶わぬ愛の澱みへ沈んであげるわ……。
着替えが終わった頃にリックがやって来ています。
「アナスタシア様、王都から議事会の出欠確認書が届いておりますが?」
意外な話でしたが、私は理解してもいます。
「来たわね……」
「ご存じなのですか? まぁた上位貴族を廃爵に追い込もうとしているのでしょうか?」
失礼しちゃうわね。私は敵対していない者にまで突っかからないわ。
無差別に攻撃するほど暇じゃなくてよ?
「それは査問会じゃないの。ルーク殿下の婚約破棄について話し合う場でしょう。加えてセシル殿下の婚約についても議論されるかもしれません」
「婚約破棄ですか? 急な話なのですね」
まあ北部にまで届いていないかもだけど、上位貴族にはそれとなく情報が漏れているはずよ。
「別に急な話でもないわ。私も一枚噛んでいるし……」
一枚どころか全部かもしれない。
私はここも利己的に自身の望みを優先させたのよ。
「アナスタシア様が関わっているということは、ひょっとしてルーク殿下を?」
頭の回転が速いわね。
まあでも、その通り。私が割り込んだことで、イセリナが婚約破棄されるのよ。
「その方向だけど、私は子爵だからね。立場的な問題がある。それに婚約破棄は私が口を出さずとも進んでいたわ」
「ああ、無自覚な人たらしですもんね?」
この男は……。
契約を結んでいるというのに、色々と主人の悪口を言いすぎだわ。心臓が破裂したって知らないからね。
「私は人たらしじゃないって……」
そういえば、どうしてルークは私を選んだのだろう。
アンジェラの日記によれば、呪印により惹かれ合うはず。
でも、ルークは私を選んで、セシルはイセリナを選んでいる。
(呪印の効果は……?)
前世界線ではセシルとエリカが結ばれた。
それ以前はルークとエリカが何度時間を巻き戻しても魔王を降臨させてしまうと聞いている。
だから、呪印の効果がないはずもありません。
(呪印を上回るものがあって、効果を阻害しているの?)
そうとしか思えないね。呪印の効果が抗えないほど強力なものであれば必ず結びつくはずだし。
そもそも何千年も経過する前に魔王が誕生しているはずよ。
(だとしたら……)
何となく分かった気がする。
強い力。世界を動かす力。闇の存在にも干渉できない世界を照らす力について。
(それは愛なのかもしれない)
愛こそが光ではないだろうか。闇に対抗する手段ではないのかと。
愛の女神は世界を誘っている。使徒である私でさえも。
(溺れてなどいないか……)
今になって天界での言葉が身に染みる。
確かに私は愛に溺れていなかった。求められるがままに身を任せていただけ。
向けられる愛を受け止めることなく、受け流していたのよ。
何だか笑っちゃうわ。
高宮千紗とイセリナ・イグニス・ランカスタの人生を費やしたとして、私は愛に気付かなかったなんて。
(本当にどうしようもない喪女だったわ……)
二度の転生機会を与えられて、ようやく理解できた。
何よりも手に入れたい愛というものを。
(分かったわよ、愛の女神アマンダ……)
この人生では期待に応えてあげる。
私の愛がどれほどのものか見てなさい。
息することすら叶わぬ愛の澱みへ沈んであげるわ……。
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