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第十四章 迫る闇の中で
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二年生の初日は午前中のみで解散となっています。
最初の授業以外をパスして図書室で過ごした私ですけれど、どうにも煮詰まっていました。
闇属性だけを排除する術式なんて本当に構築できるのかと溜め息を吐くしかありません。
「ま、明らかに無茶してるよね……」
先日から、無駄な行為だと思えていました。
なぜなら、私はミカエル様から魔道書をいただいたのです。呪いを反呪させる術式を天界は私に授けてくれたのですから。
「これだけ頑張っているのに、天界が助力してくれない理由は一つ……」
反呪の術式は切羽詰まっていたとはいえ、迅速な対応が得られました。
しかし、エリカの闇属性に関しては放置されているのです。
まだ焦る時期ではないにしても可能性があるのならば、天界は何らかのアクションを取ってくれるように感じます。
「無理なら無理と言ってくれたら助かるのに」
私の思惑は筒抜けであるはず。加えて、天界はそれを容認しているのです。
更新され続けるセーブポイントは世界線が行き詰まっていないと確信させるものでしたが、明らかに天界はエリカを切り捨てている。私とイセリナだけで完結できるはずなのだと。
「実際に転生前の命令と大差がないし。迎えようとしている未来はイセリナと私の立ち位置が入れ替わっただけだもの……」
イセリナがルークと結ばれ、私がセシルと結ばれる。
それこそが停滞する世界を動かす手段であって、天界が出していた答えでした。
現状の世界線は相手が変わっただけでありまして、当初の計画と大差ありません。
「でも、私が陞爵しなければ、天界の思惑も破綻するのよね……」
アマンダの考えが本当に分からない。
既に私が何らかの功績を残すことが確定しているかのように進めているのです。
現状は少しもそんな予感がなかったというのに。
「闇属性の除去か……」
ここで私は思い出しています。
そういえばエリカの闇属性は遺伝的なものでした。ゲームではアンジェラ・ローズマリーが巨悪と戦った折りに植え付けられたもの。
それが子孫である彼女に発現したものでした。
「私が読んだところには書かれてなかったな。呪いで検索すれば出てくるのかしら?」
俄に希望を見出しています。
アンジェラ・ローズマリーの日記に呪いを受けた話が載っているかもしれません。
原因が分かれば、除去できる可能性もあるのではないかと。
「帰ったら読んでみよう。手がかりが得られるかも……」
そうと決まれば帰り支度。イセリナが待っているとも思えないので徒歩での帰宅となりますが、私はやる気に満ちている。少しでも希望があるってことは何よりも励みになるのですから。
図書室を出て、長い回廊を歩いていると前方に人影が見えました。
この先は王宮へと繋がる回廊です。
こんなところで誰が立ち話をしているのでしょうかね。
思わず私は柱の陰に隠れました。直ぐそこの廊下を曲がるだけだというのに。
「セシル殿下、良くお考えください!」
甲高い声はエレオノーラです。
また会話する相手はセシルみたいね。
どうやら何らかの要求があってエレオノーラが詰め寄っている感じです。
「こりゃ、退散するしかないね……」
流石に盗み聞きするのも悪いと思い、私は引き返して回り道することにしました。
「二年生だもんね。みんな友好度上げが忙しい時期だわ……」
ふと乙女ゲームBlueRoseを思い出しています。
NPCとはいえ、エレオノーラも恋愛ゲームの参加者です。
運命が導くまま、セシルを攻略しているのでしょう。
これから先の未来。どうなるのかまるで分かりませんけれど、全員が幸せを掴むなんてことにはならないでしょう。
少なからず涙する者が現れるはずで、最後に笑うため全員が動き始めている。
迎え得る結末は一体どうなってしまうのでしょうかね。
最初の授業以外をパスして図書室で過ごした私ですけれど、どうにも煮詰まっていました。
闇属性だけを排除する術式なんて本当に構築できるのかと溜め息を吐くしかありません。
「ま、明らかに無茶してるよね……」
先日から、無駄な行為だと思えていました。
なぜなら、私はミカエル様から魔道書をいただいたのです。呪いを反呪させる術式を天界は私に授けてくれたのですから。
「これだけ頑張っているのに、天界が助力してくれない理由は一つ……」
反呪の術式は切羽詰まっていたとはいえ、迅速な対応が得られました。
しかし、エリカの闇属性に関しては放置されているのです。
まだ焦る時期ではないにしても可能性があるのならば、天界は何らかのアクションを取ってくれるように感じます。
「無理なら無理と言ってくれたら助かるのに」
私の思惑は筒抜けであるはず。加えて、天界はそれを容認しているのです。
更新され続けるセーブポイントは世界線が行き詰まっていないと確信させるものでしたが、明らかに天界はエリカを切り捨てている。私とイセリナだけで完結できるはずなのだと。
「実際に転生前の命令と大差がないし。迎えようとしている未来はイセリナと私の立ち位置が入れ替わっただけだもの……」
イセリナがルークと結ばれ、私がセシルと結ばれる。
それこそが停滞する世界を動かす手段であって、天界が出していた答えでした。
現状の世界線は相手が変わっただけでありまして、当初の計画と大差ありません。
「でも、私が陞爵しなければ、天界の思惑も破綻するのよね……」
アマンダの考えが本当に分からない。
既に私が何らかの功績を残すことが確定しているかのように進めているのです。
現状は少しもそんな予感がなかったというのに。
「闇属性の除去か……」
ここで私は思い出しています。
そういえばエリカの闇属性は遺伝的なものでした。ゲームではアンジェラ・ローズマリーが巨悪と戦った折りに植え付けられたもの。
それが子孫である彼女に発現したものでした。
「私が読んだところには書かれてなかったな。呪いで検索すれば出てくるのかしら?」
俄に希望を見出しています。
アンジェラ・ローズマリーの日記に呪いを受けた話が載っているかもしれません。
原因が分かれば、除去できる可能性もあるのではないかと。
「帰ったら読んでみよう。手がかりが得られるかも……」
そうと決まれば帰り支度。イセリナが待っているとも思えないので徒歩での帰宅となりますが、私はやる気に満ちている。少しでも希望があるってことは何よりも励みになるのですから。
図書室を出て、長い回廊を歩いていると前方に人影が見えました。
この先は王宮へと繋がる回廊です。
こんなところで誰が立ち話をしているのでしょうかね。
思わず私は柱の陰に隠れました。直ぐそこの廊下を曲がるだけだというのに。
「セシル殿下、良くお考えください!」
甲高い声はエレオノーラです。
また会話する相手はセシルみたいね。
どうやら何らかの要求があってエレオノーラが詰め寄っている感じです。
「こりゃ、退散するしかないね……」
流石に盗み聞きするのも悪いと思い、私は引き返して回り道することにしました。
「二年生だもんね。みんな友好度上げが忙しい時期だわ……」
ふと乙女ゲームBlueRoseを思い出しています。
NPCとはいえ、エレオノーラも恋愛ゲームの参加者です。
運命が導くまま、セシルを攻略しているのでしょう。
これから先の未来。どうなるのかまるで分かりませんけれど、全員が幸せを掴むなんてことにはならないでしょう。
少なからず涙する者が現れるはずで、最後に笑うため全員が動き始めている。
迎え得る結末は一体どうなってしまうのでしょうかね。
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