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第十四章 迫る闇の中で
安らぐ日常
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忙しい毎日を過ごしていました。
領主代行であるリックと密な連絡を取りながら、私は貴族院へと通っております。
イセリナはかなり具合が良くなってきたのですけれど、あと一週間は安静に過ごすとのことで、一人きりでの通学となっています。
あれからミランダは貴族院を辞めました。
処刑を逃れようと他国の修道院へ入ったとの噂を耳にしています。
「アナスタシア様!」
突っかかってくる輩がいなくなったからか、どうしてかエリカが貴族院でも話しかけてくるようになっています。
既に敵対するご令嬢は、ほぼ全滅したのですから別に構わないのですけれど。
「ハイヒールが唱えられるようになったのです!」
朝から何の話かと思えば、エリカはハイヒールが唱えられるようになったそうです。
ハイヒールの術者は殆どおりません。
何しろ風属性や水属性では極端に難易度が上がるものですから、王国でも数えるほどしか術者は存在していないのです。
「凄いじゃない? 努力したのね」
「アナスタシア様のおかげです! シャルロット殿下も驚いていました!」
こんなにも純粋なエリカに闇属性があるなんて間違ってるわ。
やはり彼女は清浄なる光。プロメティア世界の聖女に他ならない。
「ねぇ、エリカ。夢は叶いそう?」
私は問いを投げていました。
プレイヤーでもない彼女が成長しているのだと知って、どうしても聞きたくなっていたのです。
「はい? 夢って……あれですか……?」
「それよ。どうなのかなって思ってさ」
「いやいや、夢は夢ですから……。私なんかとても……」
その姿勢は助かるけれど、私は心のままに動いて欲しい。
人生は一度きりだもの。世界のことなど考えずに歩み出して欲しいな。
そういえば、前世はどうだったのかしら?
気付けばセシルが婚約者に指名していたけれど。
「セシル殿下はエリカのこと気に入っているんじゃないの?」
少しばかりからかうように。
更には確認するように聞いてみました。
「とても良くしていただいておりますけれど……、そのような感じは……」
イセリナだった頃に話を聞くべきだったかな。
エリカは前世でもシャルロットの教育係をしていたし、一目惚れとかそういうのではないはずなんだけど。
「じゃあ、もし求婚されたら受ける?」
「アアア、アナスタシア様、何てことを!? からかわないでくださいまし!」
やっぱ、可愛いわ。エリカは無意識にセシルを籠絡させたのでしょう。
元より、彼女は誰とでもフラグが立つ。王城での役割を持つ現状ならば、既にセシルを攻略済みってところまで考えられるわ。
「光の聖女なんだから、自信を持って。エリカ、人生の結末は自分で決めなさい。特に恋愛においては。私みたいに後で後悔しても知らないわよ?」
「アナスタシア様こそどうなのです!? まだお相手はいらっしゃいませんよね!?」
ムキになっちゃって。まあでも、エリカは夢を叶えそうな気がする。
こうなると、弾き出されるのは眠り姫しかいない。
泣きを見るのは、誰からも不満の声が上がらない地位を持つ彼女なのかも。
「エリカ、私だってそろそろ本気を出すつもりなのよ?」
「ええ? アナスタシア様もセシル殿下を!?」
まあ、そう考えるでしょうね。
だけど、私の狙いは違うのよ。大っぴらに言えない話だけど。
「どうかしらね? しかし、アナスタシア様もってことはエリカってば……?」
「ズルいですよ! 素敵だとは思ってますけど……」
からかい甲斐があるわね。凄くリラックスできるわ。
イセリナがいなくてつまらなかった貴族院が貴方のおかげで楽しめているよ。
「さ、今日も一日頑張りましょうか」
「はい! それでは!」
元気よく席へと戻るエリカを笑顔で見送っています。
授業など出ても意味はないのですけれど、出席日数も必要ですし、貴族として卒業しなければ出世など望めません。
兎にも角にも、私は気を引き締めて授業に臨むのでした。
領主代行であるリックと密な連絡を取りながら、私は貴族院へと通っております。
イセリナはかなり具合が良くなってきたのですけれど、あと一週間は安静に過ごすとのことで、一人きりでの通学となっています。
あれからミランダは貴族院を辞めました。
処刑を逃れようと他国の修道院へ入ったとの噂を耳にしています。
「アナスタシア様!」
突っかかってくる輩がいなくなったからか、どうしてかエリカが貴族院でも話しかけてくるようになっています。
既に敵対するご令嬢は、ほぼ全滅したのですから別に構わないのですけれど。
「ハイヒールが唱えられるようになったのです!」
朝から何の話かと思えば、エリカはハイヒールが唱えられるようになったそうです。
ハイヒールの術者は殆どおりません。
何しろ風属性や水属性では極端に難易度が上がるものですから、王国でも数えるほどしか術者は存在していないのです。
「凄いじゃない? 努力したのね」
「アナスタシア様のおかげです! シャルロット殿下も驚いていました!」
こんなにも純粋なエリカに闇属性があるなんて間違ってるわ。
やはり彼女は清浄なる光。プロメティア世界の聖女に他ならない。
「ねぇ、エリカ。夢は叶いそう?」
私は問いを投げていました。
プレイヤーでもない彼女が成長しているのだと知って、どうしても聞きたくなっていたのです。
「はい? 夢って……あれですか……?」
「それよ。どうなのかなって思ってさ」
「いやいや、夢は夢ですから……。私なんかとても……」
その姿勢は助かるけれど、私は心のままに動いて欲しい。
人生は一度きりだもの。世界のことなど考えずに歩み出して欲しいな。
そういえば、前世はどうだったのかしら?
気付けばセシルが婚約者に指名していたけれど。
「セシル殿下はエリカのこと気に入っているんじゃないの?」
少しばかりからかうように。
更には確認するように聞いてみました。
「とても良くしていただいておりますけれど……、そのような感じは……」
イセリナだった頃に話を聞くべきだったかな。
エリカは前世でもシャルロットの教育係をしていたし、一目惚れとかそういうのではないはずなんだけど。
「じゃあ、もし求婚されたら受ける?」
「アアア、アナスタシア様、何てことを!? からかわないでくださいまし!」
やっぱ、可愛いわ。エリカは無意識にセシルを籠絡させたのでしょう。
元より、彼女は誰とでもフラグが立つ。王城での役割を持つ現状ならば、既にセシルを攻略済みってところまで考えられるわ。
「光の聖女なんだから、自信を持って。エリカ、人生の結末は自分で決めなさい。特に恋愛においては。私みたいに後で後悔しても知らないわよ?」
「アナスタシア様こそどうなのです!? まだお相手はいらっしゃいませんよね!?」
ムキになっちゃって。まあでも、エリカは夢を叶えそうな気がする。
こうなると、弾き出されるのは眠り姫しかいない。
泣きを見るのは、誰からも不満の声が上がらない地位を持つ彼女なのかも。
「エリカ、私だってそろそろ本気を出すつもりなのよ?」
「ええ? アナスタシア様もセシル殿下を!?」
まあ、そう考えるでしょうね。
だけど、私の狙いは違うのよ。大っぴらに言えない話だけど。
「どうかしらね? しかし、アナスタシア様もってことはエリカってば……?」
「ズルいですよ! 素敵だとは思ってますけど……」
からかい甲斐があるわね。凄くリラックスできるわ。
イセリナがいなくてつまらなかった貴族院が貴方のおかげで楽しめているよ。
「さ、今日も一日頑張りましょうか」
「はい! それでは!」
元気よく席へと戻るエリカを笑顔で見送っています。
授業など出ても意味はないのですけれど、出席日数も必要ですし、貴族として卒業しなければ出世など望めません。
兎にも角にも、私は気を引き締めて授業に臨むのでした。
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